樹木を渡る『技』の名前は?
「ドルゼワゥを使いし、其れらの間に道を見出すだと?」
ザーララさんに、リニジュカさんから頂いた『技』を聞いてみた。
「知らぬな。」
「あー」ザーララさんはこの『技』の様に、樹木を媒体にしたりせずとも、場所を移動出来る。そこには時間と空間の概念を超越してしまう、、、良く分からん。
「少し気に入らぬな。」
「えっ、何がですか?」
「トキヒコが我らの里にて自身の脚以外の移動手段を得たと成ると、わたしの出番が減ってしまおう。気に入らぬ。」
そこは『トキヒコおめでとう、魔法使いの仲間入りだな』って感じで。
「いえいえ、木が無い所は無理みたいですし、物理的な制約が有ります。それに上手く使いこなせるか、、、」
まあ、副作用的な事は無いそうですけど。
あれ?魔力を内には秘めない私が、魔法を使ったとしたら、そのマジックポイントは何が消費されるんだ?やっぱ寿命?
コレ、どういった仕組みの『技』なんだ?
「トキヒコが使おう『技』か、其に魔力を費す働きは無き。」
マジックポイントの消費が無い魔法?
「魔力では無き、、、プルーゼプリィーウ、、、トキヒコは流れに乗ろうぞ。」
「流れ、、、」リニジュカさんもそう言っていたと思う。
委ね、ありのままの自分を示せと。でもザーララさん、分かっちゃうんだ、スゲー!
「流れ、、、ですか。でも、木の中の流れって何なんでしょう?どんな流れなんですか?」見えません。
見えたのなら、それは認識となり、理解につながる、、、だろう。そしたら難なく見つけられて、安心・確実に乗れそうなんだけど。
「トキヒコ〜、目に見えるモノが全てでは無き。見えざる事象の存在は、自身で想像し感じろ。そして認識まで至れ。」
ん〜、人間スルガトキヒコ、視覚情報が第一ですし、見えもしない、その上有るのか無いのか分からない事を感じて、それを知れって、、、無理じゃん。
空想とか、あり得ない事の妄想は得意なんですけど。
「それでザーララさん、この『技』に、何かいい名前は有りません?」
「トキヒコ、其成る行為必要か?」
「だって、何かを行う時に、掛け声ってするじゃないですか」
”魔力“を行使する何かだったり、各種の『術』だって、何か名前とか有ったりするじゃないですか。
いや待てよ、エルフ達は『術』を使う時に掛け声なんて出さない。『うりゃー』とか『そりゃー』とか言わない。ザーララさんだって“魔力”を行使する時は無言だ。あっ、基本リーザだってそうだ。
(『はっ!』とか声が出た時は、ヤバいけど。)
(リーザには掛け声とポージングをお願いして、やってもらってる事も有るけど。)
私が知らぬ間に『術』は行われている。
でもさ、出撃する時とか、ビームを出す時に掛け声って出すじゃん。それに剣道なんて『技』と『声(気合い)』が一致していないと、一本は貰えないぞ。
、、、人間独特の事かも。
「まぁトキヒコ、見せてみよ。お前が得たとする『技』を。」
「はい!」よ〜し、あれ?
そう言えば、まだ実際に試して無いよ。
なんか不安。いやいや、上手くいかなかったら、そこはザーララさんもいる事だし。
まあ、やってみなくちゃな。何事も経験、実践有るのみ!
トキヒコは、自身の体の倍以上の幹幅を持つ、大木の前に立った。
「では、行きます!」
(「でもやっぱ、せっかく『技』を繰り出すのに無言だと、何んだかなぁ〜」)
(「いやいや、雑念を払い、、、こういう時って、やっぱ無の胸中を目指して、そんで、えぇ〜っと、在るがまま、ありのままオレ、スルガトキヒコ行きます!」)
トキヒコは正面より大木に倒れ込む様に体を預ける。
「委ねる!」
『『ゴッチぃ〜ん!』』
「あがー!」
トキヒコは見事に、大木の幹を抱える様に額からぶつかった。
「木っ!硬ってぇ〜!痛ってぇ〜!あたたたた、、、」
やっぱり木の中に入るって、何なんだよ?!
「あははは、其れ成るがトキヒコの得たという『技』か。ドルゼワゥ(樹木)に抱き付くならば、わたしを抱けば良かろう。」
「いや、こんなハズでは」
あの時、確かにリニジュカさんと木の中に入って、木と木を渡ったんだよなぁ。
何が違う?何が足りない?
やはり、『技』の名前だな。