『マーダリィ・シェズローワィエク』リニジュカ 何しに来た?
“コントロイヤ・リニジュカ”
この世界を構成する理であり『理界』を知る者。
そして、ザカザニー・ラスの集合意識であり、ザカザニー・ラスを整える為の制御を行う支配者である。
以前トキヒコはザカザニー・ラスへと入り、リニジュカと出逢う機会を得た。
あの時は、トキヒコの意識の中にリニジュカが入り込んだ。
今はトキヒコの体の外、お互いに宙を挟んだ位置付けでの対面となっている。
ただし、リニジュカに実体は無い。
その森の精霊が、トキヒコに会いに来た?
「リーザ、こちらは女王様、ユーカナーサリーが『マーダリィ・シェズローワィエク』(賢者相当者)とお呼びされた存在、リニジュカさん」
(「やっぱ、居たんだぁ。それでお会いしていたんだ。」)
「リニジュカさん、ご無沙汰してました(って、記憶が飛んでいたからなぁ)。こちらは我妻フェアルンのエルフ、リーザリーです。」
リーザは深々と頭を下げるも、それは人間式の挨拶である。
「『スルガトキヒコが持とう家族。その一員である存在。別成る存在でありながら、共に進むとした者。』」
「はい」
『「それは喜びと悲しみを分かち合う存在だと、スルガトキヒコは申したが。」』
「そうです」そんな感じ。
「『家族、、、やはり興味深い事象と成るな。』」
(「またぁ〜、家族を事象だなんて、、、まあ、リニジュカさんの周囲には、結婚とか家族とかが存在しない出来事なのかな。」)
(「でも家族って、、、親や兄弟であれば、血の繋がりが有るけど。」)
(「血の繋がりだけが家族の定義だとしたら、伴侶となる者は何時まで経っても他人のまま、まぁ、役所に届出は出すけど。」)
(「家族の定義は、血の繋がりだけなのか?」)
「う〜ん、何か違う。足りない」
(「違う。血の繋がりが全てでは無い。ザーララさんもユーカナーサリーも、恐れながら私は勝手に家族だと思っているし、でもロウを兄弟と呼ぶには失礼過ぎるか。」)
「『スルガトキヒコ、悩みか?』」
「いえ、どちらかと言うと、迷いですね」
「『家族』について、以前リニジュカさんに説明させて頂いたのですが、改めて思った時、血の繋がりだけが家族の定義としていいのだろうか、と」
「『我らはスルガトキヒコに『家族』を教わる側。我らでは其に答えられぬ。』」
(「家族は、一概に血の繋がりだけを重視するのでは無く、もっと広義なコトだと思う。」)
「トキヒコさん、差し出がましく。ですがトキヒコさんの想いが在ればこそ、家族は成り立ちませぬか。」
(「そうだよ、『人類皆兄弟』では無いけど、赤の他人であっても、お互いが大切に想え合えばこそ、その先に家族という関係性になれるのかも。」)
「うんリーザ、ありがとう」
(「そうだよ、ここで暮らすエルフ達だって、ひとつの家族みたいなモノだよ。まぁ、私の一方的な思いかも知れないけど。」)
「リニジュカさん、どうやら私は『家族』について、まだまだ探究中の様です。ですから何時の日かきっと、もっとお話し出来るようにしておきます。多くの『自慢の家族』を貴方に紹介させて頂けるように頑張ります」
「『そうである。スルガトキヒコは思い悩む事は似合わなおう事。』」
(「いえいえ何かに付け、変に悩み込む中年男子ですよぉ〜。」)
(「迷い、悩みかぁ。そうだ、リニジュカさん何かいいタイミングで来て下さった。賢者であるなら、全てを知り、この世界で生息している生き物達の数も知ってたりして?!」)
「『スルガトキヒコ、以前も話としたが、我らでは『全てを知る』には至らぬ。』」
(「ああ、リニジュカさんにも私の意識は筒抜けだ。でも、そんなお話しって、、、したわ。」)
「『この世に存在するで在ろう、生在る者達の数と成ろうか。』」
「ええ、この世界にはどれだけの者達が暮らし、また果ててしまったのか。想像する事すら出来ませんが、まだ見た事も出会った事も無い者達がどれだけいるのかは、興味をそそられます」
(「数と言うより種類なんだけど、だけどその数も大切かも。生存している数が少なかったら、この先の繁殖や生存率にも影響しちゃうだろうから。」)
「『スルガトキヒコ、其に答えは無い。故に回答も無い。』」
「えっと、ちょっと意味が解りません」
「『何者にも測れぬ事は有る。測れぬ事象の存在は、適う事象より多かろう事。』」
「う〜ん」答えが無い。
(「答えが無い、見つからないからこそ、皆は研究して探究するんじゃないのかなぁ〜、いや、オレ研究者でも無ければ学者でもないや。」)
(「『トキヒコ観察記』趣味の延長として考えていたけど、だけどやるなら、とうせやるのなら、そこまで徹底しないと」)
「『スルガトキヒコは、眼前と成る事象に対し探究すべきと我らは諭そう。』」
(「、、、これは、リニジュカさんの気遣いだ。今見えていない事を追うよりも、身近な所に目を向けろと。それは私が持つ『時間』、人間が生きる時間を照らし合わして下さったんだ。」)
(「何故だろう、何か伝わって来る。」)
(「リニジュカさんと接すると、何故だか前向きな気持ちになれる。」)
トキヒコとリニジュカは、トキヒコの中、トキヒコ精神世界での出逢いを行った。
それは短い時間であったかも知れぬ。
だが二者の間には確実に『累』が結ばれた。
それはお互いに引き合う関係性へと発展する。
「あー、それと、ちょっと今更感が有るのですが、お聞きしてもよろしいですか?」
「『スルガトキヒコ、何なりと。』」
「何故ザカザニー・ラスでの私の記憶を消した(薄めた)んですか?」
(「絶対に、リニジュカさんの仕業だと思う。」)
「『スルガトキヒコが得たであろう彼の刻での意識。それはその後の行く先とせよ、雑念としか残らず。』」
(「折角得た意識だか知識、記憶が雑念だなんて?」)
「『事実、スルガトキヒコに残されよう記憶は、スルガトキヒコの一部を縛るに至った。』」
(「ん、何?」)
「私が縛られる程の、残された記憶って、、、?」
「『イミトワクが発した事柄と成ろう。』」
(「イミトワク?、、、あっ!」)
「エルフも枯れる、、、」
私に残された、記憶の一部。
確かに、どこかで何時も思っていたのかも知れない。
いや、何時もどこかで考えていた。
どうして、あの唄の一節が私の記憶に残ったのだろうと。どうして、あんな内容の一節だったのだろうと。
だけど、誰にも聞けない、聞く事はタブーだとも感じた。
だからこの記憶を意識の深い所に落とそうと、、、落ちなかった。
だってエルフが枯れるなんて、どうなる事なのだろうかと。
ある日あの時、森の声だとか言う”レイシィ・グロース”は、エルフが『枯れる』のは、エルフの”死”だと言った。
それを聞いて(キカイだか目に見えないモノから発せられた言葉だったしな)私は素直に納得は出来なかった。
エルフが例え枯れるのだとしても、それがエルフの“死”であるだなんて、現実的では無いと思ったし、何かの言い換え、揶揄だと思ったから。
想像と言うか、連想なんて出来なかった。
もしくは、あの時に出会ったリーシス、『小さきエルフ』クラァスノルウド・エルフィー達だけに当てはめられる事だとかも、思った。
『エルフも枯れる、、、』本当は、何を示す事なのだろう、、、デジエデジクヅィク・ナステプニィ前王の姿を見るまでは、、、確かにどこかで思っていた。
「ああっ!」
「トキヒコさん、如何されました?」
トキヒコが突然発した、奇声とも取れる声。
「リニジュカさんスイマセン。折角お越し頂いたのに、すっかり立ち話しになってしまいました」失礼しました。
「ウチに寄ります?」
(「この先に、エルフ達に建ててもらった『トキヒコハウス』が有ります。」)
(「そうだ、あのステキな外観をリニジュカさんならどういった感想を持たれるのか、聞きたいなぁ。」)
「『スルガトキヒコ、今在る我らでは、この場を離れるは出来ぬ。』」
「えっ、そうなの?」
「『我らはこのラスにて、このドルゼワゥ(樹木)よりシラー・ウミエジェトノシク(力)を借りよう事、故に制限が掛かる。」』
(「リニジュカさんが制限だなんて、、、その背後の木から、何を借りてるの?でも、『トキヒコハウス』を見てもらえないのは、ちょっと残念。」)
「それで、今日はどうされたんすか?」何しに来た?
『「スルガトキヒコと会するに、別段の理由は要するのか?」』
「いえいえ(来る者拒まずですが、ちょっと、いや、多分大物過ぎるか?!)、それよりも遠路はるばる恐れ入ります」
「スルガトキヒコ、求めよう事象が在ろう事。」
(「えっ?いや確かに。昔乗っていたバイクのプラモデルの発売アナウンスがあったけど、発売前にこっちに来ちゃいましたから、、、流石リニジュカさん、何でもお見通しだ!」)
「『否。』」
「えっ違うの?」じゃあ、何だ?