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プラトフォーマ・トナシィ・パーゼプリィウ 源流を求めて

 シエックの案内で、『プラっとフォー、、、?シィープリ?』何だっけ(プラトフォーマ・トナシィ・パーゼプリィウ『浮き沈みの流れ』)場所へ、今は地下水路となっていると聞かされた、森の中へと到着した。 

 今日、私が歩き進んだ道を戻ったのと変わらない。

 ただただ豊かな森の中。私が使った”道”は、徒歩のエルフや荷馬車、台車などが通る、ちょっとした道になっている。そう、皆が日常的に使う道だ。


「ここに川が有った。それが、今はその川が地下だか地中を流れると言われてもなぁ」

 そんな事、想いもしなかった。仮に今、地中を流れる、地下水脈だったとしても、それはどれ位の深い位置を流れているのだろう。

 先ずは周囲を見回した。

 しかし、別段周囲との違いが感じられない。ここに川が流れていたであろう形跡、川沿いに育っていただろう植物達の名残りなど、何も無い。

 私が感じられないだけなのか、見付けられないだけなのか。気が付かないだけなのか。

「シエックが知っているそのレゼカ(川)って、どれぐらいの川幅なの?大きさなんだけど。」

 シエックは私をこの場に立たせると、私に背を向け歩き出す。

「この辺りとなろう。」

 そう言って振り返ったシエックは50mは向こうだ。

 想像していたまたげる様な小川とは違う。

 もっとしっかりとした河川だ。

 そんな立派な川が地中に消えてしまって、また、ある日には地上に現れる。それは繰り返される、、、そんな事有るのか?

「じゃあさ、今はこの足元、地下だか地中を川が流れているって事?」

 3エルフ共に同時に頷いた。

 『嘘っだぁ〜』なんて言えない、ここはエルフの里国。私の知らない事、私の想像では追い付かない事、それはこれからもまだまだ現れるのだろう。


 改めてもう一度周囲を見てみるが、

 川が流れれば、その周辺環境も大きな変化が有る筈だ。

 水辺が有れば、水様性の植物が増え、水生の生き物達も集まる。水辺が有ると無いとじゃ、その環境や生態系は大きく変わる。それは地球上に限らず、エルフの里国でも同じであろう。

 一本の川が流れれば、それは水辺に留まらず、もっと川から離れた場所の環境や植物、生き物達に及ぼす影響は測り知れない。


 だけど、私が川の無い状態のこの地を訪れても、川の名残も、水辺が創り出したであろう環境の雰囲気すら感じられない。

 今立つ足元に川が有ったと聞かされても、視界に入る周辺との違いが無い。

 水が川の流れを形取っていた『窪み』というか土地と川との段差が無い。

 木々や草花は、見える先とこの場所に違いは無い。

 やっぱ、私が思うより凄く昔に川が流れていたって事?時間の感覚や過ぎる時間の流れも違うからか?

 しかし、シエックに限らず、ロダッズも川が地上と地下に流れる事は“繰り返される”と言った。

 今が地表に川が出現しない時期(年)であったとしても、何故繰り返されるのであろう。そしてそれは何時現れるのだろう。


 それは、この川が持つ“気性”らしいけど、やはり地形の影響や流れる水の流量の変化なのだろうか?

 それ以上の理由となると、予想にすら辿り着けない。

 確か中央アジアには『さまよえる湖』ロプノールが存在していたとされたが、それは地形や河川の流れ込む影響が有ったから移動したとの推測がなされ、結局のところはどう『さまよえる』のかは推測の域を脱しておらず、私の知る限り現在その湖は消滅したままである。


「ここにレゼカが流れていて、今は地中を流れているのは分かった。でもどうして地上を流れたり、地下水路なのか地下水脈になったりするのを繰り返す?」

 3エルフ共に首を振る。

 ここにある川が地上を流れたり地中を流れたりする事実は知る。だけどエルフ達は、それについての考察はされていない様だ。

 まあ、皆の実生活に影響が無いから問題も無いのかな?

 いや、影響は有るだろう。50m程の川幅があれば、向こうとこちらは分断される。幾ら何でも跨いだり、飛び越えられない。そうだ!ならば川を渡る為の“橋”が有るはずだ、有ったはずだ。


「ここにレゼカが有った時期に、渡る為の橋が有ったはずだ。その橋は今どうなってるの?」

 周囲を見た限り、橋なんて無い。もしかしたら、折り畳み式だったり、収納型の橋だったりして。


「スェシォワニエ(架橋)などせず、モースト(橋梁)など無くとも歩き進もう。」

「トキヒコ、それは浅く穏やか成る流れにて、渡るべきモースト(橋)など不要な事。」

 現れる川は、足首程度の深さであったそうだ。流れも強く無いので、歩き渡れると。

 それって流れる水溜まり?でもそのエルフ達の行動って、ワイルドと言うか、田舎暮らしと言うか。まあ、あえて時期により川が消えれば、不要となる物は作らないのも正解か。


「ここにレゼカ、『川』プラトフォーうにゃうにゃウが有ったという事は分かった(良く分からないけど)。で、今度は何時現れる?」

 3エルフは再び首を振る。


 何故、地下水路とも呼べる流れが、ある時には地上に現れ、川の流れとなるのだろう。

 何か理由が有るはずだ。

「それで、その川が初めに地上に現れる場所は決まってるの?源流と言うか、始まりの場所」

 ロダッズは北方面、森の奥を指し示す。

「在るんだぁ〜、そこまで行ける?」

「ああ、向かえ様ぞ。」


 私と3エルフは、揃って森を奥へと進む。少し傾斜になり出した。

「しかしトキヒコ(『浮き沈みの流れ』)プラトフォーマ・トナシィ・パーゼプリィウに興味を示すが。」

「なんかオレって、流れるレゼカが好きなんだよ。そこに住む者達を見たり探すのも好きなんだ」

 幼少の頃はキレイな川に憧れた。上流、渓谷、清流、人里離れた場所で流れる川を見てみろよ、それは美しい。

 湧水の溢れる水源や源流なんか見ちゃったら、興奮するかも。

 流れる水面の光の反射を避けながら目を凝らし、その先に魚の背が見えたり、流れとは違う動きをする水生生物を見付けたなら嬉しいじゃん!


 川って上流に行けば行く程、水が持つ、本来の美しさが強調される気がする。

 地中に溜まった水が、湧き水となり地上に現れる。

 地面の中でろ過された水は、キラキラと光輝く透明だ。

 それは正しき自然の在り方と思ってしまう。


 そして水は川を使って旅をする。

 地下水路や地下水脈だって、立派な水の旅路だ。

 雨となり、大地に降り注いだ水は地面に染み込めば地中にて原水となって溜まる。

 地中に入り地上に現れなかった水は、地下水のまま、高い所から低い場所へと重力通りに流動して行く。その流れはまさしく地下水脈だろう。

 その水の旅路は地層とか断層の影響を受け、浸透性の少ない粘土層の上を伝って、水の旅路は続くのだろう。


 また、原水が地表に姿を現し湧水となれば、川となって下流に向かうその旅路には、人間が関与してしまう。

 旅路の道中に土手を作ったり、コンクリートで固めたり、水流を調整する為の水門や樋門を作り、引堤や築提、護岸を石やコンクリートで固めたりする、、、それは、川の氾濫等による水害から身を守る手段である。場合によっては、寄生虫を宿す種を絶やす為に環境を変えてしまう事もあったりした。

 そして、上流で生まれた透明な水は、下流に向う程多くのモノが混ぜ込まれ、川によっては濁ってしまう。生活から出た排水なんかはその代表かも、、、そして、多くの小さな流れが合流し、太い川へと育って行く。地球上であれば、行き着く先は海と成る、、、海に届いた水は、旅の途中で大地から得た多くの要素を抱きしめて、次は海への恵みとなる。

 小さいのが大きく育って、段々と汚れ、濁って行く、、、水の旅路である川の流れって、何か人の一生みたい。


 川は昔から人間生活で出される、不要物の一種の廃棄所の役割の様相を担って来た。昔は、何でもかんでも川に流し、水は濁り、川は汚染された。

 ただ、日本は水が綺麗な大国だと言っても過言無かろう。

 四季が有り、雨に恵まれ(近年は異常気象に襲われる機会が増えちゃったけど。)、気候的な面から言えば湧水を多く蓄える水資源の大国だ。梅雨や台風だって、乾季の地域や乾期がやって来る国、湧き水が枯渇してしまった場所を持つ者から見れば、望ましく感じるかも。水は人間の命を繋ぐ。

 そんな、水が綺麗で美味しい水が飲める日本であっても、水が汚れた、、、そんな場所は多くあったし、今も有るだろう。

 都市部なら尚更だが、だけど近年になって、上下水道は整備と良い水質を維持する事が達せられ、環境問題だとか、景観だとかで見直され河川の水質を整える事も多くなった。

 実際に昔は川の水を摂取した事に起因する、伝染病や公害被害もあった。

 まあ、川は昔から人間生活に密着していた。だからもっと川をキレイに保ち、この後も一緒に流れ続く様にしなくっちゃな。


 そして川は、上流(大体山岳部)から降りるにしたがって、そこに住む者達も違って来る。

 だから実際は、源流に憧れを持ちつつも、多くの水生生物が暮らす、下流の川の方が好きだったりして。

 カエルにイモリにザリガニ、水生昆虫。下流に住む者達の方が好きかも。

 余り趣味を持たないエルフ達からしたら、特に生活に直結しない事に強い興味を示すオレの想いって、変に見えているかもな。


「トキヒコは多くに興味を示すな。」

 知らない事、未知なる物を見たり聞いたり、直面したら興味が湧くだろ?

「レゼカ等ここに在れば良い、そうは思わぬか?」

 いや、今は無いじゃんか。

「だってさ、ひとつの川が、ある時は地下水脈で、ある時は地上を流れる。そんなの見た事も聞いた事も無い。」

 興味をそそられらるじゃんか。エルフ、関心無さ過ぎだろ。


「どれだけの時間を地表で川として流れているのかは知らないけど、川が流れれば周囲の環境も川の影響を受ける筈だ。水に棲む生き物達だって集まる筈だ。だけど今この辺りには川が流れていたという形跡が無い。不思議だ、ミステリーだよ」


 そう話しながら進む森の道中は、傾斜がキツくなり出し、草木の背丈も高くなり、、、キツい!

 息を上げ出した私を見かねて、シエックは私の手を引き、ロダッズ、リュバックは後ろから背中に手を当て押してくれる。

 エルフ達には伝わる。

 言葉を発しなくても、こちらの思いは伝わる。

 その上、私なんかに比べモノとはならない、屈強さを持ちその上逞しい!

 まあ、意識が伝わるという便利な反面、エルフが目の前にいたら、滅多な事を考えられないのも、正直な所だが。

「頼んだのはオレなのに、足手まといだなぁ。スマン、助かる〜」


 そのまま緩やかさが、少し急斜面に変わっても、登る様にを歩き進むと、大きな岩に出くわした。『大きな』では済まされない、巨大な岩壁とも呼べるモノが傾斜面から突き出す様に現れた。

「なんかスゲぇー」

「トキヒコ、到着と成る。あの岩の元を探るが良い。」

 ロダッズの指差す岩の根元へ四ツ這いとなり、手を伸ばし、まさぐる。

「ん?おっ?あ?」

 岩の下には、何か空間に続きそうな割れ目が続いている。

 それはこの岩の割れ目なのか、地面と岩との間に有る溝なのか。それが岩の下に沿って左右に10m以上は続いているのだろうか。

 でも、その割れ目の奥に有るだろう空間からは、水の流れる音とか、匂い、特別な湿気も感じない。何かの動物の巣穴と間違ってもおかしくは無いだろう。


 この割れ目だか溝、確かに手で触れ、見るからに水が流れた事により削り作られた『丸み』が岩壁のこの溝部分には有る。それは森の中を流れる川が有った事を示す、唯一の形跡か名残と感じる。

「ここから水が出されて、それが川となって、ここから下って行ったのか、、、」

 この場から見下ろす景色の中にも、川が流れていた名残を感じさせるモノは見付けられない。

 何か不思議だ、、、そんな感想しか出て来ない。

 どれぐらいの水がこの溝から吐き出されたのだろう。

 川を形成する程だ、勢いが強く無くとも、途切れる事無く流れ続けていたのだろう。


 だけどやっぱり、どうして水が流れ出したんだ?そこにはどんな条件があって、川となる目的は?この岩壁の下からどうやって、、、そして、何故地表を流れていた川は、地中に帰って行ったのだろう。そしてそれが繰り返えされるって、、、。


「どうしたトキヒコ。」

「う、うん。やっぱ考えれば考える程不思議だ」

 どうやら答えは直ぐに見付けられそうに無い。実際にこの場所から水が流れ出し、川になる状態が見たい!

 だけど、何時まで待てば川は現れるのだろう。

 私が生きている内に、見れるのか?



「今日は皆んな、付き合ってくれてありがとう。プラトフォーマ・トナシィ・パーゼプリィウ、、、だったっけ、明日は下ってみるよ。」

 不思議な川のスタート地点は確認出来た。

 そうなるとやっぱり、その川の到達地点はどうなっているのだろうかの疑問も湧く。もしかしたら大きな池だか、それこそ湖とでも呼べるモノが有ったりして。

「トキヒコ、住み家と成ろう場の探索となったのか?」

「住み家の見当と成ろう事に繋がったか?」

 あー、それは今日ココまで来たひとつの目的だったわ。

「あー、ちょっと保留かも。不思議な川の存在を教えられたから、そっちに気が向いちゃったよ。シエックのせいだぜ」

 シエックが申し訳無さそうな顔をする。エルフ冗談が通じにくいからなぁ。

「シエック、冗談だよ。シエックはオレの家の場所探しよりも、もっと凄い事を教えてくれたんだ。この地で暮らして行く楽しみが増えたよ。ありがとう」

 シエックはサムズアップして見せた。

「皆、今日は本当に付き合ってくれてありがとう。でも、まだオレの住み家の場所探しに、また行くぞ!」


 ジエジオラ湖の湖畔の食堂まで帰り着くと、リーザが私を迎えに、待ってくれていた。



 私はリーザの『術』にて、ザーララの山岳城へと向かった。

 リーザはエルフの里国へと(正式に?)戻る事となり、人間社会に置いて制限させていた『術の使用は基本禁止』から解放されたはずだが、その見た目は何も変わっていない様だ。

 そもそも、あちら(人間社会)で暮らしていて『術』の使用の制約が掛かっていた時も、その外観からは何も感じさせる事は無かった。

 『ママって凄い』さくらの言葉が呼び起こされる。

 そう、リーザは凄いんだ。私もリーザの凄さは知っているつもりだったけど、私の知らない凄さはもっと多く有るんだろうなぁ。

 エルフの里国で暮らして行けば、リーザの多くを知る事が出来るのだろう。

 そう思うと、何か嬉しくなった。


「トキヒコさん、良き事がございましたか?」

「うん、ああ、今日は住む家のイメージ図を描いて」

 その後皆んなで出掛けたけど、場所の見当が付いて無かった。

「いやぁ~何処に家を建てようかと、場所探しで皆で出掛けたんだけど、出たり消えたりする川、ブラトーシナ、パーリクだっけ?それの痕跡を探しただけだった。」明日は下流に向かおうと思うけど。

 まあ、新居となる場所探しの一環だと思えばいいよな。


「『プラトフォーマ・トナシィ・パーゼプリィウ』でしょうか?」

「そう、それ。リーザ知ってる?」

「はい、浮き沈み姿を現す川が流れますね。でも何と言いましょうか、河川と表すより弱き『水の流れ』が適当と成りましょうか。」

 ふぅ~ん。


 夕飯はザーララの山岳城で。

「リーザリーはわたしの嫁と成れ。リーザリーの支度する食には何者も敵わねな。」

 ザーララは、リーザの作る食事、お菓子が大のお気に入りだ。多分。

「トキヒコがリーザリーを離さぬ理由と成ろうのか。」

 はい、しっかりと胃袋は掴まれてますが、そうでなくともリーザの事は私が離しません。

 だけどザーララさん、同性婚が希望か?

「私も手伝ったのよ。」

 さくらはリーザから、お袋料理の伝承か?

「うん。さくら、ありがとう。どれも美味しいよ」


「トキヒコ〜、わたしはトキヒコに物申すぞ。」

「えっ?何でしょう」

「トキヒコが我らの里にて住まうに当たり、棲家を作ると聞き及ぶ。」

「ええ、何処かに家を建てたいなぁ、と思ってますが」

「トキヒコには以前よりココで暮らせと申し入れている。わたしの話しを聞いていたのか、甚だ疑わしいぞ。」

 あー、リーザやさくらの前で、もぅ〜


「お父さん、どんな家を建てようとしてるの?」

 おお〜さくら、話しの筋をズラす、ナイスプレイ!

「ああ、今日湖畔の食堂でイメージ図を描いたんだ。だけど置いて来ちゃったよ」

 食事の後に、用紙と書き道具を揃えてもらった。そしてもう一度、同じ様に家のイメージ図を描いて見た。

 あー、さっきの方が上手く描けたなぁ。

「変なのー。」

「いやさくら、そこはステキだろ。この絵を見て皆んな興味を持ってくれたぞ」賛辞は無かったけど。

「皆んなって誰よ?」

「男エルフが三人」


「お父さん、コレって何人用?全体の大きさが掴み難いわ。」

 あー、そこまで考えてなかった。

「どうだろう?正直言ってオレ一人の隠れ家的な想像をしていたけど、、、」その上、ここでの『実生活』も考えてなかった。

 寝泊まりして、外を眺める、、、家と言うより部屋のレベルだ。


 エルフの里国に在る、個としての家屋は、一軒1軒は大きく部屋数も多いが、基本としては人間社会と左程大きくは変わらない構成をしている。

 入口(玄関)から入ってキッチンやダイニング、寝室相当も分かれていて、リビングも在る。特徴的なのは、食糧庫や倉庫に充てるスペースを広く大きく取っている事かな。


 私のイメージ図は横向きの吹き抜けと言うか、一部屋だ。

 そう、家屋内を仕切らぬ事が、家と言うより部屋であるとの印象付けに繋がっている。それが家が持つ生活感が感じられなくしている様だ。

 あー、リーザと過ごすだけの空間は考えよう。

 、、、だけど、いいんじゃない?

「まあ、いいんじゃない。だけどこれだと外から丸見えね。」

 かもな。大きな窓はカーテンか開き戸を考えましょう。



「それで場所も決めなくちゃならないんだけど、それよりも『プラトフォーマ・トナシィ・パーゼプリィウ』(合ってる?)ってのを知った。ある日流れていた川が消えて、でもそれは地中を流れる事に変わって(逆かも)。またある時は再び地上を流れる川になって、、、それが繰り替えされるって、そんなの見た事も聞いた事も無い」

 ある日流れていた川が消えてしまう事は有るだろう。

 上流の水源が枯渇してしまったとか、川が流れる方向が大きく変わったとか。ダムとか作ったら、上流からの流量が少なくなったとか。

 でも、再び川が現れて、、、それが繰り替えされるって。それが差ほどは長い期間では無い中で。


「プラトフォーマ・トナシィ・パーゼプリィウ、か。」

「はい、私がエルフの里国を訪れていた時に、その場所に川が流れていた事は見ませんでした。気付かなかっただけかもしれませんが」

ホント、全然知らなかった。

「トキヒコ、現れ様ぞ。」

「えっ、それって何時、現れるんです?」

「時期に来よう。」

「時期?もうちょっと?」


「トキヒコ、下流となる地に棲もう者が水を求めておる。」

「水を求める、、、プラトーなんとかの下流に住む者が水を求める事によって、川は流れ出すんですか?」

 そんなぁ、川を呼び寄せる者なんて居るのか?もし居るなら凄いヤツに違いない!自然環境を創り出してしまうような者?大魔法使いとか神とか?

「その棲もう“者”とは何者なんです?」

 もしかしたら、ザーララさんを越える”力”を持った者が存在するって事~?


「『ナドジエーミア・シレーナ』と我らは呼ぶがな。」

「何です?それ」

 大魔法使いや神様の名前っぽくないなぁ。


「トキヒコ流で言うならば『地上魚』とも呼ぶが適当か。」

 地上魚?はぁ?

「常には地上で暮らし、繁殖の際には魚類の面が現れる。一種の変化へんげを起こす者達だ。」

「へぇ~」それって、プラトフォーマ・トナシィ・パーゼプリィウ『浮き沈みの流れ』より不思議な存在だったりして。興味深い!

 地上で暮らして、繁殖となったら水に入る。獣の類が魚になるのぉ〜?


「プラトフォーマ・トナシィ・パーゼプリィウが現れる故に彼の者達は集まるか、ナドジエーミア・シレーナが水を呼ぶのか、、、お前の社会の『卵と鶏の議論』だな。どちらが先か誰にも決められぬ事は、我らの世界にも存在しようぞ。」

 へぇ~、ザーララさんでも判別出来ない事が有るんだ。

「トキヒコ、わたしを買い被るな。わたしでも知らぬ事は多かろうぞ。特にトキヒコ、お前の事に於いてはな。」

 いえいえここで、私を絡めないで下さい。


「ナドジエーミア・シレーナは、水への依存が強い存在と成ろう。流れが来ぬなら種としては絶えてしまおう。流れを変えねば絶えてしまう。だがそれも、例え種が絶えようと自然の摂理だがな。」


 ナドジエーミア・シレーナ、、、川が来るから集まるのか、集まるから川が来るのか。どっちだとしても、不思議はいっぱいだ。

「ナドなんとか、シレーナ、そいつはどんな姿をしているのですか?リーザ見た事有る?」

 もしかして、猟の対象で、既にオレが食っちゃてたりして。

「トキヒコさん、ご心配無く。トキヒコさんはナドシエーミア・シレーナを食されていませんよ。尚も狩猟の対象では無き存在。トキヒコさんはまだ見ぬ存在やも知れませんね。」

 はぁ~、食べてはいないと聞かされて、ちょっとホッとした。

「その姿は四足の獣の其れと同様ですが、後ろ足にて立ちます。前足は発達しておりまして、物を掴む、木に登る事が行えます。木の実、木の皮を主食とし、自身より小柄な者、甲虫やその幼虫も食します。動きとしては鈍重に近く基本は温厚な者でしょう。」


「ただですね、ザーララが申しました『繁殖の際に水へと入る』私は存じておりません。それは狩猟の対象では無き存在故にて、余り彼の者達についての考察が行われていないからでしょうか。」

 って事は、リーザの知らない事を知っている、ザーララさんはやっぱモノ知りだ。

「トキヒコ~、わたしを褒めているのか、けなしてしるのか?」

「褒めてるに決まってるじゃないですか。なっ、さくら」

「ザーララさん、父は思考も表現力も脆弱な為、お許し下さい。」

 娘が父親を貶してどうするっ!

「やはりトキヒコ、測れぬな。」

 ん?今のこそ、褒められたのか、貶されたのか?


 今日一日で、不思議な存在の川と興味深い生き物を知った。

 どちらもまだ見ていないけど、間違いなく興味をそそられている。

 そうだ、オレはこの川(跡)沿いに住んで、その川が現れるのを待つのもいいのかも。

 ナドシエーミア・シレーナ達を見る事も出来るかも知れないしな。


 トキヒコがエルフの里国へ移住した、第1日目は過ぎ去った。

 それは何時もの日常と、特には変わらず。



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