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ハーフエルフの父~エルフの里国編~  作者: タマツ 左衛門之介久


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トキヒコハウスに集まりし者達

 『トキヒコハウス』に帰宅となったリーザは、目に入って来た、その周囲の状況に少し言葉を失ってしまうかの様であった。

 トキヒコハウスの周辺には、様々な生有る者達が集まっていた。


 獣と呼ばれる鬼牛、小振りな山豚、ネズミ、ウサギ、イタチと、、、地球上において、それぞれに置き換えられる姿が近い動物達。

 鳥類の姿も多く見られる。トキヒコが『紫鳥』と呼ぶフィオレトウィ・ゴラーブに始まり、大型の猛禽類であるジャストロザブ・オルゼール、中間サイズの鳩、雉。小鳥も多く、それらに屋根部分は占領されるかが如く覆われていた。

「いったい、、、何が、何が起ころうとする、、、はっ、トキヒコさん!」

 リーザは慌ててトキヒコハウスの上流側のドアを開いた。


「トキヒコさん!、、、この者達は、、、?」

 扉を開けたリーザは、やはり言葉を失ってしまった。


 トキヒコハウスの戸を開けたその先、リーザが目にした光景は、溢れんばかりの生き物たちの集まりであった。

 それは今見た外の光景と変わらず、獣、鳥、小動物、、、虫と位置づけされる者も集まる。それぞれが勝手気ままに、寝そべり、集まり、歩き、トキヒコの周囲に絡み付く様な者すら居る。

 この集まり、リーザは一瞬、何かの幻術を見せられているかとの思考が働き、戸惑を憶えた。


 尚も大きくリーザを戸惑わしたのは、獣同士の並びを目にしたからである。

 エルフの里国にも地球上と変わらず、食物連鎖、弱肉強食の世界が構成されている。

 だがこの場には『食う者』と『食われる者』が、それこそ肩を並べるかの様にしている。


 リーザは元々狩りを行う者であった。

 それは父親である『ホーリョンの狩りの刃』よりの教えがあった。

 リーザは大いに狩りを好んだ。

 狩り対して不謹慎ながらも、狩る者・狩られる者とのやり取りであり駆け引きをリーザはそれを楽しむ傾向を持っていた。しかしそれは、自身の身を危険に晒す結果となった過去を持つ。


 『食う者』と『食われる者』、それは『狩る者』と『狩られる者』と変わらず。

 それ故にリーザは、それぞれの置き位置、立場を理解しているために、尚も戸惑った。


「ああリーザ、こっちへ」

 トキヒコは寝そべる者達を跨ぎ越え、自身に絡まっている者達もそのままに、床に居る者達を踏まぬ様に、リーザに向い歩き進む。

 トキヒコは何時もと変わらない。

「トキヒコさん、この者達は如何に、、、」トキヒコに声を掛けられるも、リーザの戸惑いは解消されない。


 この場には、ロスリーノゼルカ・レアムパートさえも居る。

 ロスリーノゼルカ・レアムパートはエルフ達に『臆病者』とする不名誉なあだ名を付けられてしまっている獣の一種。

 臆病者、、、それは、広範囲に渡る嗅覚を持ち、なおも広い視野を持つ、異常なまでの警戒心から、その姿を他者に見られない様な行動と性質を持つ。

 、、、それがこの場では、目を瞑り、伏せった姿勢で、他の集まりし者達と変わらずに居る。


「うん、ユーカナーサリーが結界を掛けたと」

「ユーカナーサリーの結界、と成りまするか、、、」

(「私の知れぬ刻にて、ユーカナーサリーがこの場への来訪があられた、、、だが、ユーカナーサリーの結界が何を成す?」)


「ユーカナーサリーか結界を掛けて下さったと聞いたけど、この有様」

 トキヒコはあっけらかんと両腕を広げる。


「その広さは分からないんだけど、なんでもこの結界の中は『殺生を禁ずる』との本質を持たせたって、仰られたんだ」

 ユーカナーサリーによる結界。リーザもそれは感じていた。

 それはトキヒコに対する良きモノとして感じていたが、その本質となる『殺生の禁止』には理解が届いてはいなかった。


「でもリーザ、何か面白いでしょ」

 立ち竦む様に戸惑っていたリーザであったが、トキヒコにそう言われ、この場に集まる皆を避けるように手を引かれた。

 トキヒコからの楽天的過ぎると思われる言葉を聞かされ、尚もその身が触れたならば、リーザの戸惑いは一瞬で解消される。

 トキヒコが良いと思うならそれでいい。それ以外の事など、どちらでも良かった。



「でもですねトキヒコさん、この様に多くの者が集まりし刻、それはトキヒコさんの活動に影響を及ぼし兼ねません。」

 私への影響かぁ、コイツらを順にスケッチして行くなら申し分ない、、、『トキヒコ観察記』に向けて、色々と道具を準備しなくっちゃな。だけどリーザの日常に影響は有るな。このままだと、ご飯とか作ってもらえないし。


「リーザ、不思議なんだけどさ、コイツらって『出て行けー』とか『はいはい退散〜』とか言うと、帰って行くんだよ」

「帰られます?」

「そう、森の中へと帰って行くんだ」

 しかし周囲にいる者、奥で寝そべる者、何者も動きもしない。まるでこの場で休息でも取っているかの如く、動き出す様子は更々無い。

 それは『休息の場』生きる者にとり、何にも代えられない大事な場所のひとつ。


「ちょっと見てて」

 トキヒコは振り返り、部屋の中に集まっている者達を見回した。


『パシィーン』

 トキヒコはその場で柏手を打った。

「じゃあ皆んな、今日は解散〜」

 トキヒコが柏手を打ち、そのひと声で、この場に集まった者達が動き出す。

 獣達は立ち上がり、緩慢とも取れる動作で動き出す。

 鳥達は飛び立つ先を見付け翼を広げる。

 寝そべっていた者はむっくりと起き上がる。

 開け放たれた左右の窓、天窓、開かれた戸を目指し、獣、鳥、虫達が一斉に動き出す。どの者も慌てる事無く、穏やかに動き出す。


「こんな事って、、、」

 リーザは再び言葉を失ってしまった。

「どお?不思議でしょ。オレって、もしかしてあの有名な動物学者を越えたのかも?!」

 トキヒコは少し得意げであった。でもそこにはおごりも無く、優越感も持たず。

 ただ、エルフの里国では起こり得る、珍しくも無い、極普通の現象なのだろうと思っていた。


「ユーカナーサリーには『粗相も禁止』を付け加えてもらったから、アイツら帰った後でも、意外とキレイでしょ」

 トキヒコにそう言われ、リーザは床を見回した。

 獣達の毛や落ちた羽、何モノかの体表から落ちたであろう砂粒などは観測出来る。粗相、、、糞尿などは確かに無い。


「この結界の効果は凄いよなぁ。以前いた世界では人間に対して、それは意志や意識を持つ者に対してだったけど、(アレって一種の幻覚だし、反則技だったんだけど)相手が動物でも通じちゃうんだから。ユーカナーサリーは一段進んだエルフにでも成ったのかなぁ」

 女王ユーカナーサリーに起こった変化。


「リーザはユーカナーサリーの魔力量とか魔力チカラが、身体の変化に合わせて、変わったとかは感じるの?」

 魔力を内に秘める者であれば、相手に変化が起こったりしたら分かるのかなぁ。

「そうですね、確かにユーカナーサリーのその持たれます魔力は大きく成ったと思われます。ですが私では測り知れぬ事と成りまする。」

 ん、リーザちょっと悔しい?


「トキヒコさんこそ、大きな魔力を持つ者に憧れておりませんか?」

 これはリーザの嫉妬から来る、問いであった。

「魔力に対する憧れかぁ〜、確かに有るよ」

 リーザは『ハイ・エルフ』の域には達しようが、その持つ魔力はザーララやユーカナーサリーには届かぬ。


「でも、魔力を持てなくても死にはしないし、無いなら無いなりに何とかなるし、そもそも持って無かったから。それに魔力が必要な場面だったら頼めばいいんだし。そう、出来ない事はエルフの皆に頼めるから。何時も頼んじゃうのはリーザが筆頭になっちゃうけどね」


「トキヒコさん、もっと、」

「もっと?」

(「 、、、もっと私を頼って下さい。全ての事柄に対して頼って下さい。」)

(「私はあなたのエルフなのですから。」)

 リーザはトキヒコに対して『開い』ていた。


「だけどさ、少し抵抗あるよね」

「抵抗と成りまするか?」


「だってさ、彼らのどれかを自分が食べちゃってるかも知れないし、彼らもこの場所から出れば『食う食われる』立場に戻るのだから」

 トキヒコの言う事は最もだった。


「命を持つ者は他の者の犠牲の上に生を繋げる、、、ユーカナーサリーが仰られていたけど、私は当たり前に考え過ぎていたのかも知れない」


「以前の生活でも、このエルフの里国であっても、それは同じなのに」

 精進料理とか言って、動物にしろ魚類にせよ、その肉の類を食べない事を良しとして、野菜類を食べる。動物は意識を持つからだとか言う人もいるけどさぁ、細胞を持ち、細胞を大きくし、細胞を増やす者は命を持つのに変わらないのに。

 肉類を食べない理由が、動物は意識を持つ者だからって、、、。

 だけど、植物だって表現方法やその姿形が違うだけで、意識や意志を持っているのだろう。人間が分かって無いだけで、何時でも草や木に呆れ顔で見られているかもよ。


 だけど食べ物に対して、常に命がどうだこうだとも考えられない。空腹には適わない。

 それが『食物連鎖』の中にいる者のさがなんだと納得するしかない。

  野菜や魚だったら、その姿のまま食卓に乗る場面もある。

 だけどそこまでの感情移入には至らない。

 切り出された肉片からは、生前の姿が連想されない様に、私の脳は都合良く出来ている。

「だけどやっぱりお腹は減る。リーザ、何か作れる?」



 『トキヒコハウス』での生活も始まり、リーザとの関係性も修復出来た(?)ので『トキヒコ観察記』の準備を始める事にした。

 『トキヒコハウス』に集まる連中も対象だけど、この住処の周囲の散策をする事にした。

 実は全然、周囲の環境というか状態を知らない。

(そもそも、エルフの里国において、この場所がどこら辺なのかも把握してないけど。地図が欲しい!)


 エルフの明るい森を進めば、多くの者達に出会う。

 地球上には、約175万種の確認されている生物がいるらしい。

 でも、昆虫類だけでも100万種以上といわれ、未知の種は500万種だとか1,000万種だとか、絶えてしまった者などを含めればもうどれだけの種類の昆虫が存在し、存在していたのかも分からない。

 全体の生物種とされる者達も未確認のモノを含めれば300万種だとか3000万種、1億種だとかとも。実際は誰にも分からないだろう。

 例え誰かが地球上で順番に数える事が出来たとしても、数えた端から消えてしまう者、順番を待つまでも無く消えてしまった者、、、『地球上』で暮らして来た者を人間がカウントする前に絶滅した者達、恐竜時代やそれ以前の時代。


 一概に生物と言っても、陸上にも海の中で暮らす者達もいる。それらには動物や植物に分けられ、菌類まで含まれる。一般的に目で見えない者達も居る分けだから、誰にも知られず誕生し、誰にも知られず絶滅しまった種は想像すら出来ないであろう。


 生物達は取り巻く環境や生物同士の相互作用による生態系を形成して来たが、何かが崩れれば全体が崩壊してしまう。

 ある種が何かのきっかけ(環境破壊や乱獲等)で消え去ってしまったら、生態系の相互作用は無くなる。周辺の生物達も絶滅の危機に瀕する。

 地球は、人間は、繰り返し行って来た。

 それは今日、今も、明日もどこかで起こっている。


 そしてココ、エルフの里国の在るこの世界には、どれだけの生物達が暮らしているのだろう。

 私がココで経験し感じて来た環境から想像するに、その種の数は地球上と変わらぬ多くの者達が溢れているのだろう。

 そしてやはりその数を知る者もこの世界には居ないのかも知れない。


 いや、ここは地球上とは違う、エルフの里国の在る世界だ。もしかしたら『知っている者』がいたりして!?

 『トキヒコ観察記』を記すにあたって、生物の種類やその数を知っている事は役に立つかも知れないけど、自分がやれる事の限界というか、自分の程度は理解しているつもり。

 それに動植物を分類し、全てを解析すべく使命なんて持ってないしなぁ。

 だけどやるなら、どうせやるなら行けるトコまで行ってみましょう!



 リーザと上流に沿う様に、森に散策に出掛ければヘビが何か爬虫類系のモノを咥えている姿に出くわす。

「さっきまで『トキヒコハウス』に居た者同士なのかも知れない」

 弱く小さな者の末路、可愛そう、、、助けたならば咥えていた者は獲物を逃し、それもやっぱり可愛そうなのだ。

 この小さな者は運命だったのか。私が助けてしまう事で、目の前に在る二つの運命を変えてしまうのか。

 

 『食う食われる』の図式の中で、私が『可愛そうだから』と死に直面している側に手を伸ばせば『他者の運命に影響を及ぼす』誰かに言われた。

 そう、自分のエゴであり自分勝手な事なのかも。

 私では理解の出来ない大きな流れが世界を取り巻いていて、世界はその流れに乗っている。自分ではどうにもならない、、、それは運命なのか。 

 運命なんてクソ喰らえだ!だけど運命は或るのだろう。

 誰かに言われた。


 何処に居ようが、大自然の中にはルールが有る。

 エルフの里国の民達には、コレと言った決まりは無い。

 だけど、自然の中で生きて行く事と同じで、ルールはある。

「それを感じて理解しなくちゃ」

 

 『決まりが無い』と言っても、私が知らないだけでルールは有る。

 エルフ達は意思の疎通を行える。だからそれは秩序に繋がる。

 この世界で生きて行くのならば、私はそれに乗らなくてはならない。


 「『我らはこのラス(森)にて学ぶ』。我らの森は、我らの教えと成ろう。」

 これも誰かに言われた。


 何処かで誰かに教えられながら、この先ココで私は暮らして行くのだろう。

 特別な意味も持たず。

 だけど今のまま、ありのままの自分を続けて行きたいんだ。

 隣でリーザが微笑んでいてくれる限り。


「『ラス、ウシィヅィック シァー』」

 トキヒコの思考をなぞる様に、つぶやく声が届いた。

 そして、つぶやき声の主は、大樹の向こうから姿を現した。




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