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揺れる?トキヒコハウス

 エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーよりトキヒコに示された罰。

 それは『当面の間、自身の里(日本)に帰る事を禁ずる』事であった。


「当面の間って、何時までなんだろう?でも、向こうには帰らない、その覚悟を持ってこっちに移住して来たんだから、罰にならないよなぁ」

 それに、あっちとこっちを『渡る』事なんて、自分自身では出来ないし。

 でも、行っちゃダメと言われると、行きたくなる。アレコレと思い出し、思い返してしまう。

 あ〜、人間って、未練たらしく、ワガママでどっち着かずだよなぁ。


 加えて、女王ユーカナーサリーは、ある時よりトキヒコに対して『殿』との敬称を付けなくなった。

 『君』『さん』『様』『殿』、、、エルフには相手に対して敬称を付ける事など行わない。

 特別な相手となる存在、王、母王意外には。


 元々女王ユーカナーサリーがトキヒコに『殿』付けして呼んでいたのは、トキヒコは自身の事を王と呼ぶ。

 尚も自身の里国の民でも無く、ましてや別成る世界で暮らす者より敬称付けされてしまえば、こちらも応えなくては成らない。

 だが、そこに大きな配慮も確執も無く、自然と行っていた。

 ただ、トキヒコという存在に対し、相手を敬いその位置付けを自身と同等にしたかった。


 ユーカナーサリーがトキヒコを呼ぶ時に『殿』が消えた。

 それはトキヒコの位置を下げたのでは無く、トキヒコに対する自身の位置を下げてしまったからであった。




「あーさくら、ちょっと」


 私のエルフ里国での生活(移住)が始まって、そこそこの日は過ぎて来たが、少しだけリーザの『変化』というか、向こうで暮らしていた時との若干の違いを感じる。


 それは少しの感覚のレベルなんだけど、ほんの少しだけ、受ける印象に変化が感じられている。

 『リーザがエルフのままで在りますように』リーザが人間社会に染まり切らない、あくまでもエルフで在り続けて欲しい(少なくとも、私が死んだ後にはエルフの里国へと還って欲しかった)、エルフの里国に移住を決めたひとつの理由だ。

「さくら、リーザが持つ、現れそうな人間の持つ側面って、何だ?」

 私がリーザの印象の変化をココら辺の事と思った。

 ザーララさんは教えてくれず、自分で感じろと言われたけど、分かんない。


「う〜ん、言ってもいいのかなぁ〜」

「そんならさずに、教えて」

「ママにはナイショよ。」

 エルフ相手に”内緒“は通じるのか?


「それはねお父さん『嫉妬』。嫉妬と言っても要求や欲求が満たされない事から来る感情とは違って、そう、妬きもちね。お父さん愛されてるのね。」

 えー!妬きもちって、、、だけどリーザが機嫌を損ねたら、どうなる?

 実は未経験だ!リーザは人間社会に於いて、とにかく私に添い、過ごしてくれた。

 少し(多く)怒られた事があったけど、それは生活態度が緩慢だったり、相手に対する態度が悪かったり、社会に反する行動や考え方への卑しめであった。だからリーザ自身が『怒りの当事者』となった事は無かったかも。


 リーザに感じた少しの変化、、、でもそれが『嫉妬』だなんて。浮気は許しませんよっ!って事だ。既にヤバい、既に手遅れ。


 それにオレっていつの日からか、『分け隔てなく』って態度を取り出しちゃったから。年上年下、男と女、エルフと人間、、、人間社会だと年上や上司に対して失礼だとか、相手が女性だったらセクハラだとか、ちっぽけな事を良く言われたけど、オレの中では相手を尊重するからの態度だったんだけどなぁ、、、好きでも無い相手に話し掛けないよ、、、理解はされなかった。


 そうか、エルフ達は私の意識を読み取ってくれるから、親しげに話したり、横柄な態度であっても、私の持つ“本意”を知ってくれていたのかも、、、それを人間社会でやってたから、そりゃ非難されるわな。


 あ〜、この間ザドエッタにハグしちゃたよ、リーザの目の前で。

 だけど、ちょっとちょっと、いやちょっと待って!シヅロック(男エルフ)は妻を替えたり多妻の面も持ち、エルフには『浮気』は概念すら無い、、、って聞いているんだけどー!


 あーそもそもオレって、エルフじゃ無いじゃん。

 それにリーザからは『浮気』を人間社会で知る事となったとも、聞かされた事がある。ヤバいなぁ。




『トキヒコハウス』

 リーザとさくら、トキヒコハウスにはスルガ家が揃い、、、何か家族会議、みたいな?


「しかし、前王デジエデジクヅィク・ナステプニィが亡くなっていたなんて」

 言葉を失う。あの場面を思い出すと。

 前王ナステプニィは亡くなっていた。あんなにも私の夢の中で訴え、若干のやり取りもあったと思われたのに、、、そして、枯れていた。

 エルフの死が『枯れる』事だとは聞いていた。だけど何か表現方法の違いだとか、例えだと思っていたのに、文字通り枯れていた。

 あの姿を目にした時の驚きと言うか、トラウマになってしまう程の衝撃だった。

 今でも、どう感じ表現していいのかが分からない。

 だけど死者を見送るエルフ姉妹の姿。

 美しいとの表現するのとは別の次元の姿であった。


 そして、女王ユーカナーサリーが現した変化、トキヒコはその場に立ち合う事になったにも関わらず、未だに信じられない思いであった。

「前王ナステプニィの死、女王ユーカナーサリーの変化。立て続けに衝撃の波に2回も呑まれた」


「でも女王様、ユーカナーサリーが変身とも言える程の姿が変わったのに、何か二人からの驚きと言うか、特に本人確認もしないで受け入れちゃってるのは、なんで?」

 エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーは、父親の死を目の当たりにして、その持つ血が、種族を存続させるべき働きを興した。


 それは種族の血を繋ぐ事、エルフとしての『時期』を迎え、『性の目覚め』が訪れた。

 そしてそれは身体の変化を生み出したモノであった。


「お父さん、波動なの。」

「波動ねぇ〜?」


「この世の物、万物も波動を発しているわ。それは草も木も、鳥だって石だって。お父さんもよ。」

「ふぅ~ん」何、オレは石と一緒?

「姿や形が変われど、発せられる波動は変わらないの。」

 何か波動を感じれば、、、石か、もしくはオレ?


「エルフ達(私も含めて)は、目で見た情報よりも、波動から伝わり感じるモノを重視する傾向が有るの。」

 う〜ん、波動って見えないし、良く分からん。


「確かに、女王様の転身とも呼べる見た目の変化には驚かさせられちゃったけど、それは私が半分人間だからかも。それより先に波動を感じ理解しちゃうの。『女王様』だねって。」

 そんなモノなのぉ。

 波動なんて、何にも感じないから。オレはやっぱ目から入った情報を優先するからなぁ。波動、見えません。

 目からの情報が先、人間であれば普通です。


「そこはリーザも一緒なの?」

「そう成りまする。」

 あ、リーザ口数が少ない。ちょっと何だか、怖い。


 だけど突然の体の変化、子供が大人に一瞬にしてなったのと変わらない。

 もしかして、逆も有ったりして?

「お父さん、それ、エルフ達は現さないわ。」

 ふぅ~ん。



「じゃあ、」

(「波動ってね、相手と長い時間接していると、僅かに移り残る事も有るのよ。」)

 はあぁ?

 さくらから、念話とも小声とも判断付かない『声』が届いた。

(「お父さん、がんばってね。」)

 えっ、あっ、う〜ん、、、。

 さくらはザーララの北山の山岳城へと帰って行った。


 私はリーザと取り残された、、、って、自分(達)の家なんですが、気不味い。



 私はベッドの上でリーザと向き合って座った。(正座です。)

 長い時間を一緒に過ごすと、波動が僅かでも移り残るって、、、それだと、ザーララとの知られちゃマズイ事を意識の深い所へ落としていた私の『技』は、効果が無かったって事だ。あわわわゎゎゎ、、、

 『移り香』『残り香』香水だったり、体臭だったりするのだろうか、移り残った波動、、、あったりして?


 リーザ、、、怒ってる。だろう。

 だから今回のユーカナーサリーとの事は、ちょんバレだ。

 誰かが言いつけたのでは無いけど、リーザには伝わっている、、、私に残された波動が有るのか無いのかは分からないけど、、、それは、判る。

 でもリーザが怒った姿って、、、やっぱり見た事無いかも。



 リーザの怒り。

 エルフは人間と比べその筋力を『何倍』と表す事は難しいが、エルフが力を込めた一撃は、人間の骨を砕くには容易いだろう。

 トキヒコに対するリーザの怒りの一撃!

 その時、この物語はココで終演となる。

 いや『エルフに捨てられた男』として、新たな物語を紡ぐも、一計やも。



 リーザも怒ると青い稲妻とか赤い炎を出したりするのか?いや、もっと凄いヤツだったりして!

 それか『離婚です!』と三行半を突き付けられるのかも。


 リーザ、リーザが居ないとこの先、エルフの里国では過ごして行けません。

 だけど、すべての原因は私ですし、リーザでは無い他のフェアルンと致したのは事実です。40半ばですが“雄”の本能を抑える理性が有りませんでした。


「トキヒコさん!」

 あわわわぁ、、、

 リーザが怒ってる。だけど私はエルフでは無いので、リーザの意識は読み取れません。あわわわわぁぁぁ、、、



「トキヒコさん!、、、お赦しいたします。」

 ギャーわあぁー!えっ?


「此度の事、今後の事、全て赦します、お許し致しまする。」

 リ、リーザ、、、


「我らエルフは罪も罰も持たず。ですが、」


「ですが、私はエルフでありながら知ってます。其の事は、トキヒコさんもお知りでしょう事。」

 リーザは人間社会で暮らす中にて『浮気』を知った。

 それはパートナーの精神に影響を及ぼし尚も、人間社会においては社会から制裁を受ける場合も有る事を。

 『浮気』は『罪』と『罰』を生じさせる事象。

 エルフには浮気の概念は無い。


「トキヒコさんが他のフェアルンと交わろう共、その中心に私を置いて下さります事は、伝わります、分かります、有り難さを感じます。」


「ですが私は知るのです、ですから少し切ないのです。」

 切ない、、、エルフが持たない感情。トキヒコはエルフが持たぬ思いである事を知らない。


 リーザの鉄拳を喰らったり、リーザが涙を見せる分けでは無かった。

 でもその口調、表情、姿勢、、、泣いているのとは変わらなかった。

 私は、罪深い。


「でもですねトキヒコさん、全てを許すと申しましたが、罰は受けて頂きます。」


「ばっ、罰〜!」

「そう、罰と成りまする。尚も、、、」


 男心は波を漂う木の葉の如く。

 強き波には押されましょう、

 強き流れには引かれましょう、

 強き風が吹けば飛びましょう。


 成らば私も波と成り、風と成り、木の葉を引き込む流れを起こしましょう。いつまでも、いつまでも、、、

 恒久成る流れを起こせば、いつまでも、いつまでも、木の葉をこちらに、向けましょう。


 木の葉、、、トキヒコさん、私は貴方を離しませぬ。

 

 私は何時までも、いつまでも、、、尽き果ててでも、

 私は流るるままに、貴方を引き求めましよう事、貴方を離しませぬ事を。

 それが私が与えます、罰と成りまする。


 嗚呼、許します、許します、、、私を置いて行かないで下さい。

 嗚呼、何処へでも、何処までも、木の葉と成り、飛び立つ事も許します。


 ですが、最後には必ず私の元へと、戻ります事を、、、。



 トキヒコがエルフの里国へと移住を果たし、リーザは自分の世界へと帰って来た。

 しかし、トキヒコと過ごすリーザの意識、思考は、人間のソレに近かった。いや、人間的であった。


 しかしエルフとして、ザーララ、ユーカナーサリーの2エルフがトキヒコに対してフェアルンとしての持つ気概も知る。

 それは『トキヒコのエルフ』として、それぞれが持つ自覚。

 フェアルンとして持つ意識が、リーザを留めさせる。

 それが故に、リーザはトキヒコを責められない。

 だが、リーザは葛藤する。


 『赦す』はエルフのソレであったとしても、『思いを内に秘める』のは、人間のソレである。

 リーザは、自身もトキヒコも、誰もが分からぬ程、エルフであり人間的であった。


「、、、トキヒコさん、夜は長ごうございます。」

 はい、喜んで!


 なんだけど、リーザからその『罰』を示されていない。

 エルフには、罪も罰も無い筈なんだけど、、、私、エルフでは無い!

 だから何か凄い事を熟考中なのか?!

 まさかリーザも青い稲妻や渦巻く炎を出すのか?!

 いずれにせよ、タダでは済まない事しか思いつかない、、、さくら、今夜はこっちで泊まらないのかっ!



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