表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/42

トキヒコの見た夢 前王ナステプニィの申し入れ

 夢を見た。

(『、、、済まぬ、、、よ、赦せ、、、』)

 誰かの声が届いて来る、、、

「ん、誰?」


(『、、、ゆるせ、、、』)

 私は夢の中で贖罪なのか、誰かの訴えを聞かされる。


(『、、、済まぬ、、、』)


(『、、、赦せ、、、我を、、、』)

「何だよ、なんなんだよ!」

(『お前は、何と申す者と成ろうか、、、』)

 あっ、何か問われた?


「私は、」

(『届かぬ、、、届かぬのだ、、、』)

「何が届かないんですか?」オレの名前?

(『届かぬのだ、、、』)


(『、、、至らぬ、、、届かぬ、、、』)

「(だから)何がぁ?」


(『届かぬ、、、この地の理と成ろうのか、、、』)

「そこ、何処です?」

(『届かぬ、、、』)

「だからぁ」


(『、、、よ、、、済まぬ、、、』)


(『、、、我を、、、赦せ、、、』)


「謝ってる、、、詫びてるのか?」

(『我の届かぬ想い、、、お前が届けてはくれぬか、、、』)

 夢はここまでだ。

 自分が声を出せる夢、まるで白昼夢のようだった。


 白昼夢は、目覚めていながら夢を見ているかのように感じる事。本当に寝ていたのか?と。現実から離れて何かを考えている状態だったりするが、私は寝ていた。


「ああリーザ、おはよう」

 判る。

 

「リーザ、出掛けなくっちゃ」

 顔や姿は見た事が無い。だけど、判る。

「トキヒコさん、どちらへ?」

「うん、エルフの王宮へ」



 私の夢に現れたのは、エルフ王家の姉弟妹の父親、母王ジールの伴侶であり、エルフの里国の前王である”コンチヌォワック・デジエデジクヅィク・ナステプニィ“だ。でもこの名前、良く覚えたなぁ。


「私が届ける、彼の想いって、、、」

 何だろう?

 そして、どうして前王ナステプニィは、私の夢に現れたのだろう。


 私はリーザを伴い(トキヒコハウスからエルフの王宮まで歩いて行くには遠すぎる)、エルフの王宮、女王ユーカナーサリーのおあす、玉座のある花の間の扉の前に立った。

「スルガトキヒコ、スルガ・リーザリー・エストラルク・ホーリョン・サー・フェアルン、我が王への謁見に参りました!」

 リーザの透き通る声が響く。

 リーザが右手を扉に向けると、花の間の扉は中から瑞々しい木々や花々の良い香りと共に、開かれる。


 エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーは、その玉座に着き、何時もと変わらず私達を迎え入れて下さる。

「トキヒコ殿、『越える者』よくぞ参った。もっと頻繁成る来城でも良いぞ。」

 カッカッカッっとエルフの里国で唯一と思われる、洒落とジョークの通じるお方。

 だけど今日は単刀直入、細かな挨拶は端折らさせて頂いて。


「女王様、私は気になる夢を見まして、」

「トキヒコ殿の夢とな」

 エルフは睡眠中に夢を(ほとんど)見ない。

 その中で、エルフの王が夢を見たなら、それは現実に起こりうる、正夢か神託の様な性質を持つ。

「はい、少し奥でお話し出来ません?」


「トキヒコ殿の見た夢、興味深い。夢とは、その者の持つ意識の深層部での一部の顕れでもあろう。トキヒコ殿の奥底を覗き見ようか。」

 うわぁ、オレの奥底が見られちゃったら、バレちゃう事が多過ぎる。

 エルフは睡眠中の夢を(ほとんど)見ない。

 だから夢に対して懐疑的であったり、珍重される場面も有る。だが、エルフの里国の王は、自身の経験からも、夢に対して理解は深い。


 ユーカナーサリーがエルフの王として、夢に対する理解は、フロイトやユングが研究した深層心理学などとは少し違う。

 それは、夢が無意識の働きを把握する為のモノだとか、抑圧されている意識が出す願望であったりとか、願望を表す為のひとつの方法などの考えとはイコールとならない。


 かと言い、寝ながら見る夢は、その者の願望を表す部分に変わらず、とも。

 だが、何かの影響が有れば、夢の中に現れる。それには外的な要因も含まれる。とエルフの里国の王、女王ユーカナーサリーはお考えだとの事(以前少し聞かされたが、イマイチ良く理解は出来てません)。


 、、、今回私が見た夢は、その『外的な要因』だと思う。何が理由で、何がきっかけとなったのかは分からないけど、デジエデジクヅィク・ナステプニィの『想い』は、私の夢に影響を与えたのだろう。

 私が見る、エッチな夢は願望以外の何ものでも無い、エヘン!


 女王ユーカナーサリーは私の申し出に対して、その座から立つ。

「トキヒコ殿が人目を憚るなど珍しき。なに、我を手籠めとする気に成ったと申すか、我は拒まぬぞ。だがな、リーザの許可は得らねば成るまいな。」

 カッカッカッ、っとお笑いになられますけど、冗談を自ら発信するエルフって、女王ユーカナーサリーぐらいしか居ません。あれ?オレの感覚が伝染うつっちゃたのかもな。


 私と女王ユーカナーサリー、リーザを伴い玉座を回り込み、玉座の後手に位置する扉の先に向かった。

 だが、そのまま王の部屋とは向かわず、私はユーカナーサリーの腕を取った。

「ユーカナーサリー、このままジール、母王ジールの元へ行きましょう」

「トキヒコ殿何を申す、母様の元へ伺おうなど畏れ多く。」

 女王ユーカナーサリーでも、母王ジールの存在は特別だ。

 だけど私は問題無い。人間であってエルフの里国の民でも無い。それよりも、昼メシ奢ったし、肉体的に迫られた事も有るし。


 女王ユーカナーサリーは、母王ジールの居室の前で戸惑いを見せる。

「トキヒコ殿、母様の部屋へ、、、我も同席せねば成るまいのか?」

「あーユーカナーサリー、私から行きますので」

 その扉をノックしようとしたら、扉が先に外へと向い開かれた。

 母王ジールはその部屋の奥、王と王妃の並ぶ座の王側に着いていた。


「スルガトキヒコ、ようやく我を手籠めに参ったか。我の準備は整のおておろうぞ。」

 何だよ、親子揃って。親子だからか?

 リーザとユーカナーサリーは扉の前で片膝を付き、母王ジールから許可を得られなければ、自分からはこの部屋には入れないみたいだ。

 まあ、私は気にせず入って行きますけど。だって扉を開けてくれたし。

「違ますよ。母王ジール、ご機嫌麗しゅう。突然の訪問と慣れない言葉遣いなのは、お許し下さい」

 何も気にせずスタスタと、母王ジールの元へ。 

 振り返ったが、二人の姿勢はそのままだ。


「少し、お話しをするお時間を頂けませんか?」

「我は構わぬ。夜が更けようと、翌朝を迎えようと、お前と向き合おう。」

 そんなに長くはなりませんよ。まあ、許可は頂いたな。

 私はリーザとユーカナーサリーを手招きした。



「さて、スルガトキヒコよ、何であろう。」

 まあ私の今持つ意識から、大体の事はお察し頂いているでしょうけど。

「話しと言うのは、私の見た夢の事です。ですがあれは夢では無い、前王からの申し入れです」エルフの里国の前王、デジエデジクヅィク・ナステプニィ。


 私が切り出すと、女王ユーカナーサリーは少し驚きの色を出す。母王ジールは身動きすらしない。

「逃げ出した者に用事など無き。」

 母王ジールの感覚だと、来る者拒んで、去る者追わずだなぁ。


「トキヒコ殿、父王が何を、」

 ユーカナーサリーがたまらず口を開いたが、母王の前である事を咄嗟に気付き、口を閉ざした。

 私はエルフ達の様に、相手の意識を読み取る事は出来ないので、私に対して言葉でもって先ず、対応して下さるのは女王ユーカナーサリーの自然な対応である。声を発してしまうのは、ある意味私に対する”癖“になったのかも。ありがたい事。


「ユーカナーサリーよ、許す。申せ。」

 当然の事ながら、母王ジールも人間である私が、相手の意識を読み取れない事をお知りである。だけど、ユーカナーサリーの反応がちょっと見たことも無い感覚だった。何故だろう。

 それと、母王ジールは女王ユーカナーサリーに対して何だか凄い威圧感だなぁ。

「スルガトキヒコ、我らは親児成る。児が親に対して畏怖の念に並び、敬意を持つのは至極当然。気にするな。」

 あ〜、さくらにも聞かせたい。


「で、では改め申す。トキヒコ殿、父王はトキヒコ殿の夢の中にて、何と申された。」

 ありゃ、何か口調が少し改まってる?

「ええ、実はそこなんですよ。前王は夢の中で私に『届かぬ想い』それを伝えろと。彼は誰に、何を伝えたいのでしょう」

 『赦せ』とか『済まぬ』とか仰ってましたけど、伝えたい相手は母王ジールが一番手ではないかと思った。

「母王ジールであれば、その想いも、誰に対して届けるのかも、分かるのではないかと思いまして」

 それか、自分の家族であるエルフ王家の皆かも知れない。


「スルガトキヒコ、我では無き。」

 えっ、何で?

「我とアレは済んだ事。」

 済んだ事ってぇ〜?

「スルガトキヒコ、我らエルフの持とう側面のひとつと思え。」

 いや、良く分かりませんが。


「ではまぁそう言う事として。では、母王ジールでは無いのであれば、前王ナステプニィはいったい誰に伝えたいと?」

 母王ジールでないとすると、誰に?

「ユーカナーサリーである。」

 ユーカナーサリー!でも、そうなんだ。でも何で?

「スルガトキヒコ、ユーカナーサリーは玉座に就こう。」

「はい」

「どの者が決めた。」

 えっ、知りません。確かに順番として考えたら、長兄となるロウが妥当なのかなぁ。

 母王ジールがザーララさんを連れ、エルフの王宮を去った時、残されたのは前王、ロウそしてユーカナーサリー。


 ただ、ユーカナーサリーが自身でその座に就く事をしなかったとしたら、、、決めたのは、前王ナステプニィ?

 でもだとしたら、ロウではなくて、何でユーカナーサリー?

「然様、ロウは我らと共にした。この場に残されたるはユーカナーサリーのみ。」

 えっ、知らなかった。ロウもてっきりエルフの王宮に残ったものだと。

 

 すると、前王デジエデジクヅィク・ナステプニィとユーカナーサリーはここ、エルフの王宮に、、、どれぐらいの期間かは知らないかど、二人で過ごした。

 そして、あの部屋で私のどこかに張り付いてしまったかの様に、最も残ったひとつの記憶、、、悲しむユーカナーサリー、、、あれは、前王ナステプニィが最後に見た、この場所に最後に残した記憶であったのであろうか。



「それで、場所は何処と成る?」

 人間は、夢を見る。

 人間が見る夢は、自分の意識を別の次元へといざなう。そして、外的な要因の影響を受ける。

 だから前王の微弱な電波の様な念話の一部は、私の持った記憶に辿り着き、夢に対する外的要因となり届いたのだろうか。


「ええ、私が受けた感覚ですと『ザカザニー・ラス』。禁忌の場のひとつ、禁忌の森です」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ