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『トキヒコハウス』賄い料理  ダニアリュブネ、ミエーソォ(魚料理、肉)

 カニエンプラツァとロウとリーザのおかげで、バーベキューをイメージした鉄板焼き代わりの石焼き(実際は岩焼き)の形が出来上がった。

 

 白い岩板の表面は、四カ所に正方形に切り出された熱鉱石が組み込まれていて、そこだけ色が違う。模様というか、良い感じのアクセントになっている。

 その表面を手の平で撫でるけど、石の冷たさとツルツルの表面は真っ平らで、熱鉱石が組み込まれられた場所に段差も溝も感じられず、一体化している、、、ロウの力、凄いなぁ~。


 そして、ロウに作って貰った台にセットされた岩焼き板の姿を見たら、、、会議室にあるテーブルに見えなくもないけど。

「せっかく立派な岩焼き『トキヒコ岩焼きグリル』(突如として命名)が出来たのだけど、問題が二つ有るんだ」

 そう、問題が二つ有る。

「ひとつは、第1番目の食材として考えてた、リュバックから差し入れしてくれるって言っていたリュブネ(魚)が届かない」

 特に何時いつって約束した分けではないから、コレは何か別の食材を調達しよう。そうなるとやっぱり”肉”だな。

「リーザ、お肉を何とかして下さい!」哀願。


「それと、もうひとつ」こっちの方が大問題かも?

「トキヒコさん、如何成る事が?」

 う〜ん、実は、、、

「私では、熱鉱石の持つ力を引き出せ無い!」

 今更であるが、現実だ。こっちは致命的かも。

 ”魔力”を持たない私では『術』を使って熱鉱石の持つ性質を引き出す事なんて出来ないし、その温度調節も出来る筈が無い。『トキヒコ岩焼きグリル』を稼働させる事が出来ない。

 ”魔力”を内に秘めたエルフの誰かに頼まないと、岩焼きバーベキューは出来ません。あ~


 でも、フライパンなり鉄板焼きって、表面温度は何度なんだ?触ると火傷するぐらい熱い事は分かる。

「トキヒコさん、焼き物、炒め物にて使われます調理器具の表面温度は、160℃から180℃程が適当かと。200℃を越えます場合もございますが。」

 ふぅ~ん、それぐらいなんだ。

「そして対象となります食材に対し、180℃前後の温度を保ちます事は求められますね。」

 ああ鉄板焼きは、確か鉄板の表面温度を250℃ぐらいに熱くしてから、温度を下げて行く感じで焼き上げて行くって、誰かから聞いた事がある。どうやってその温度を測るのかは知らないけど。

 フライパンの表面温度なんて考えた事も無かった。リーザ流石主婦!熱鉱石をエルフの術でもって使えば、希望する温度まで熱する事や適温に温度を保つ事だって出来るのだろう。魔力を内に秘め『術』が使えるエルフならばね。オレはエルフじゃない。

「あっ、そもそもだけど、熱鉱石でそれだけの温度を発生させる事って、出来るの?」

 ありゃ〜、魔力以前の問題だった。

「トキヒコさん、問題ございませんよ。」

 ふぅ~、良かった。ん?熱鉱石って、実際どれぐらいの熱(熱さ)を出す事が出来るのだろう、、、まあ、今回は考え無くていいでしょう。


 そうだなぁ、熱鉱石の性質を使うのは誰かに頼むとして、

「あ〜リーザ、再び申し訳けないのだけど、何か食材を調達して来てもらう事は頼めるかなぁ」

 何でもリーザ頼み。

「よろしいですよ、王宮の厨房へと向いましょう。ですがトキヒコさん、如何程のモノがご入用で?」

 うーん、食材の量か。ザドエッタを筆頭とするストラシィ(大工相当者)が3エルフ、カニエンプラツァも3エルフ、水回りとか土木作業をしてくれているルジィニエリアとラードゥワの2エルフ。私とロウとリーザを足せば11人分の食材が要るのかな。シエシイエカニエイカの里長チョロポワテイを含めれば12人前。ちょっとしたパーティーだな。

 リーザは再び、エルフの王宮へと向かってくれた。

 度々エルフの王宮から持ち出す事になるから、女王ユーカナーサリーには今度謝っておこう。


 よし、リーザが食材の調達をしてくれてる間に、調理器具を作ろう。

「ロウ、『トキヒコハウス』の現場からさ、今度は木材を調達したい。大きな物では無くて木の端材みたいな小さ目の物。それを使って調理器具とかお箸やフォークなんかを作りたいので、一緒にやってくれる?」木材の加工を得意とするズレヅノォグロマジチキシェ(木材で組む者、建具屋)のストラーカがこの場に居たら良かったのになぁ。

 彼の『トキヒコハウス』への出番は、そろそろだと思うけど。


 木の端材は、難なく揃った。削り出す為のナイフや小刀も借りる事が出来た(木のグリップに刃先は薄い石なんだけど)。

 おっ、石の刃先と侮っていたけど、カッターの刃なんかとは遜色無く、木が削れる。それに、凄く使い易い。


 石焼き用(鉄板焼きみたい)に、木から削りだした炒め物用のヘラと返しヘラ。木製でオシャレなのが出来た(自己満足)。

 菜箸とお箸。お箸は一部のエルフも知ってるけど、何よりも自分用。

 エルフが食事の時に使う、大小が組となったヘラはロウに任せて10組程。

 ロウは“魔力”を行使せずに、私の隣で手作業だ。作業は丁寧で器用だ。意外だなぁ、でっかい体に太い手足に太い指。何か違う一面を見た感じ。それと今なら『物との対話』をしながら、ヘラ作りをしているのかな。


 私はどんどん木から削り出します。(雑だけど。)

 木製の二股のフォーク(三股は難しいから)、串焼きみたいに出来る様な長い串。

 今後、自分で使って行く食器になるかも知れないな。そうだ、

「ロウ、作業中申し訳ないけど、木をくり抜いてさ、大きな御椀かボールって作れる?」

 今後の生活を過ごす為の食器作りなら、この機会に色々と揃えたい。

 エルフの里国では、粘土質の土から作る素焼きの食器や鍋なんかもあるけど、木製のお椀とかお茶碗ってオシャレじゃん。

 私は長い木の枝で、地面に御椀だかボウルの絵を描いた。

「これぐらいの大きさで」

 ロウは合点がいったのか、乾いた木を持って来て、魔力を行使した。(ここは刃物でくり抜いて行くんじゃないのね。)


 目の前でみるみると木が削られる。空気が回転でもしているかの様に木が削られて行く。

 でも、周囲に木片が飛び散る分けでも無く、御椀の形が作られて行く、木片なり削りカスは、その周囲に留まったままだ!魔法! 

 私の顔サイズに近い、木製のボウルが現れた。やっぱ“魔力”スゲー!魔法!

 木製ボウルを上から見ると、ほぼ真円と思われる精度だ。どうやった?

 だけどロウ、コレって私が描いた地面の絵を見本にしたのでは無く、私が想像した意識を読み取ったんだな。

 でもスゴい!次いでに、木製の『お玉』も作ってもらった。


「しかし、ロウが魔力を使わずに、器用に小刀を使って、木から削り出してヘラを作ったのは意外だったなぁ」

 見た目がゴッツいのは、不器用だと思ってしまうから。

「トキヒコ殿、私は見様見真似と成りましょう。」

 えっ、誰のを真似た?ここでこんな事してるのって、、、オレ?

「もしかして、オレの真似をしたの?」

 ロウは頷く。

「いやロウ、全然真似になってないよ!」

 作った物は違っても、仕上がりが違うじゃん。ロウの作ったエルフのヘラは形がしっかりしていて、面や線は真っ直ぐだ。その仕上がった表面も美しいよ。

「いえトキヒコ殿、刃物の使い方やその動作。私は今、トキヒコ殿より学んだ次第であります。」

 オレから学んでいたなら、もっと荒く、雑な仕上がりのはずだろ。

「トキヒコ殿、選びましたる材料の差、加工を行う方向性からの違いが有るやも知れませんね。」

 違いって、全然違うじゃん!同じ様な材料だったのに。

 ロウは材料となった「木材の端」と語っていたのか、、、流石エルフ!


 道具はまあ揃っただろう。

 さて、『トキヒコハウス』の建設に携わってくれているエルフの皆に『賄い料理』って何を作ろう。

 まあ、リーザが何を仕入れてくれるかによるのだけど、、、

 大鍋で豚汁やカレー作りが定番な気もするけど、ここはエルフの里国だ。向こうでの経験や知識は、ちょっと避けておかないと、、、何でも今の状況と向こうの世界を比べてしまう自分に気付く。

 比べる事はいい事だ。それこそ原始の時代だったら、自分の生命に直結する様な選択を迫られる場面も多かっただろう。


 だけど私は、その場で直ぐに自分の生命に直結する様な選択肢を迫られる場面は無かった。(車やバイクの操作や、仕事の選択とかは、実際に生活に直結する選択なんだけど。)

 何かを選択する場面って、好き嫌い、優劣を着ける時は価値観に対して表す時が多い。欲しいとか要らないとか、、、現代社会の人間が持つ価値観の性かな。金銭的な価値が高いから良い物だって、美味しいって、だから欲しいとか。

 改めて、ここはエルフの里国だ。今まで私が得てきた価値観なんて捨てないと、この先ここでは暮らして行けないかも。

 だけど長年染み込んだ意識や感覚を変える事は、なかなか出来ない事も知っている。価値観によって優劣を付け、それが良い事だと信じて育ち、暮らして来たんだ。




 リーザが大きな包みを幾つか背負いつつ、帰還した。

 エルフの王宮に食材を貰いに行ってくれたのだけど、何か荷物の量が多くないか、、、いや、エルフって私(一般人)に比べ大食いなんだった。

 リーザが包みを広げると、フォカッチャの生地に生肉や魚、野菜も有る。あー、女王ユーカナーサリーの採られる食に影響が出ませんように。


 フォカッチャはエルフの主食に位置する物で、特別美味しいとは思えないけど、不思議と多く食べられるパンだかナンみたいな物。でもフォカッチャって、石窯で焼いていたよなぁ。

 そうだ!フォカッチャの生地に細かくした肉や魚、野菜を混ぜ込んで平にして焼く。お好み焼き風にしたらどうだろう?

 いや、上手く行くかも。

 そうなると何か調味料が欲しい。さすがにお好み焼きソースは無理だけど、、、やっぱり向こう(元居た世界)と比べてる、無い物を探している、、、もうこれは『癖』って言うレベルを越えてるかも。

 本当にこのままだと、何でもかんでも以前の暮らしであり、以前居た世界と比べてしまう。

 そして便利で不自由の無かったあの生活を思い出し、何処かでエルフの里国の不便さを呪ってしまうのだろうか。

 自分の中で情けなく、許せない思いを再び起こして、感じてしまうのだろうか。

 やっぱり私には、エルフの里国で暮らす“資格”が無かったのか、、、。


「トキヒコさん、どうされました?」

 リーザは私の気持ちの変化や迷う思いに直ぐに気付いてくれる。

 そこには“魔力”も『術』も介さない。私の意識ではなく、顔色や仕草で感じ取ってくれる、、、から、誤魔化しが効かない面も有る。

「私は、エルフの里国で暮らす資格が無い」

 これは、こちらに向う前に思った事。

「資格、ですか。」

「うん、何かにつけ、人間世界の文明文化とこちらの世界を比較してしまう。そして科学的な発展をしていないこの世界が劣っているとさえ思ってしまう、、、」


 それが嫌とまでは行かないが、優劣を着けているのは事実だ。そんな考えを持つ時点で、私にはエルフの里国で過ごす資格は無い。

 嫌であるなら、元の世界に戻れって事だ。


「トキヒコさんの持たれました覚悟は何処へと行かれました。」

 覚悟、、、そう、私は覚悟を持って、エルフの里国へと移住を決めたんだ。だけどオレの持った覚悟って、こんなちっぽけなモノだったのか?

 このままだと、逃げ出すみたいだ。

「でもですね、私もトキヒコさんと同じですよ。」

 リーザが私と一緒?


「私はトキヒコさんと共に進むと決め、あちらの世界にて過ごす事と成りました。見るもの聞くものが全て今までに無い事柄。多くの戸惑いに直面し、多くの葛藤も有りました。」

 そうだ、リーザは今の私とは逆の立場で経験したんだ!

 だけど、リーザが受けて来た事柄は、私の比では無い!リーザの覚悟は想像を絶する、、、気付いてあげられなかった。


 リーザは経験した事の無い、それこそ理解に及ばない『見た、聞いた』を初めて『見て』『知る』世界に飛び込んだんだ。それは戸惑いや葛藤では済まされない程の自分の意識や意志の変革さえ求められたのかも知れない。

 だけど私の場合は、有って当たり前、有るべき物が無い。だから不便だとか劣っていると思ってしまう。無い物ねだりに他ならない、それは自分の個人的な都合の他ならない。それじゃあこの世界、エルフの里国では暮らして行けない。


 リーザには当初、私の世界を楽しんで欲しいと思った。だけどそこには、私の想像も及ばない戸惑いや葛藤が有ったんだ、楽しむ事なんて不可能だったのかも知れない、、、だけどそんな素振り見せず、、、気付いてあげられて無かった。やっぱりリーザには苦労しかさせてなかったんだ。


「トキヒコさん、比較では無く、知識の応用でしょう。」

 応用?

 「そうです、応用と成りましょう。私もあちらで多くの経験と知識を得る事と成りました。」

「うん、、、」

 だけどリーザは戸惑い、葛藤する日々の中、どう乗り越え、過ごして来たのだろう。

「私は共に進むと決めた者が居たからこそ、トキヒコさんが

いらっしゃられたからこそ。」

 リーザ、ゴメン、そして愛おしい、、、おっと、今ここで抱きしめたいけど周囲のエルフ目が。


 リーザが経験して来た戸惑いや苦労は、今の私なんて比では無い、置き換える事なんて出来ない。

 リーザは今の私では想像も着かない、別の世界、全く知らない世界で、たった一人で苦悩を抱えて来たんだ。私なんかと比べる事さえ、おこがましい。

 だけど今の私の周りには仲間と呼べるエルフもいるし、友と呼べるエルフもいる。頼れる者達に囲まれている、、、あの日のリーザに比べ、立場が良過ぎる。私は恵まれ過ぎている。


(『トキヒコ切り替えろ』)いつかザーララさんから伝わって来た言葉が意識の中で重なる。

 そうだ、リーザが言ってくれた様に、今まで得た知識や経験を『応用』するんだ。人間は簡単に変わる事なんて出来やしない。いままでの事を忘れ去ったり捨てる事は出来ないんだから。トキヒコ、切り替えろ!

「うんリーザ、ありがとう。そうするよ」

 やはり私は皆に助けられている。

 何よりリーザが側に居てくれるのであれば、それだけで、私が抱える何かは全て解決するだろう。


 あっ!ロウが近くに居たから、さっきのオレの『リーザを抱きしめたい』意識が伝わった?何かニヤけて無いか?




 ありゃ、今度はさくらが来た。

「お父さん『トキヒコハウス』が、、、う〜ん、出来たの?」

 その『う〜ん』は何だ?

「お父さん、これはデジャ ビュ?いいえ『トキヒコハウス』のこの既視感、、、大きなタンクローリー車の後ね。ガスとか石油を運ぶヤツ。」

 確かに、、、いや、放っとけ!それも有り得ると分かってたよ。でもエルフ達は知らないだろっ!

「いやさくら、住まいとするにはまだ色々と時間が掛かるそうなんだ」

 さくらは『トキヒコハウス』の外観に悪態をつきつつも、フンフンと鼻を鳴らして嬉しそうな顔をする。

 そう、オレとさくらの好みは、何処か似ている所がある、、、のかな?いや、あるハズだ。あると思う。


「ん、お父さんコレは?」

 続いてさくらの目に、岩焼き台が映し出される。

「お嬢さん、お目が高い。コチラは『トキヒコ岩焼きグリル』鉄板焼きを岩板で模したバーベキュー台です」

 どうだ、スゴいだろう!(皆に作ってもらったんだけど。)


「うわぁ、カニエンプラツァの皆さんが切り出して磨いて下さった岩をロウさんが台座を作って熱鉱石を組み込んだのね。」

 はあ?何でもお見通しかよ!

「さくら、何で判る?」

「ああゴメン、”波動“なの。」

 波動〜?


 さくらは今、ザーララさんの下で”魔力“についての教えを受けている。

 エルフの”魔力“や『術』の伝承は、本来親子間で行われるモノだが、さくらは人間社会で暮らして来て、その間はエルフの里国の王、女王ユーカナーサリーにお願いしてエルフの力や

魔力を抑える為の枷を掛けていた。

 だから親子間でのエルフが行う伝承には遅れてしまった、、、オレのせいで。

 そして何よりさくらは”力“を持つ。

 私が神の力と見紛う程のザーララさんの力なり魔力を凌駕してしまう程の。

 だけど波動って、そんなに何でもかんでも伝えるモノなの?

 カニエンプラツァ達は、岩板作りに”魔力“を行使してないぞ。


「でもこのままだと、お父さんが使えないわね。」

 そうなの、魔力に内に秘めない私は『術』を使えません。


「お父さんの為に、3つの”スイッチ”を作ってあげる。」

 スイッチぃ〜?

「概念的になるけど、先ずはON/OFFね。それはココに」

 さくらは岩板の端っこを指で示す。具体的なスイッチが付く分けではないので、見えません。

「次に温度調節のスイッチ。隣のココが160℃、その隣を200℃に設定しましょう。」

 ON/OFFスイッチに続いて、2つのスイッチが示されたけど、同じく見えません。

「ではお父さん、スイッチを入れてみて。」

 あ~、確かココら辺だね。見えないから、半信半疑。

「では、トキヒコ岩焼きグリル器の点火です。ポチットな!」

 さくらがON/OFFと示した場所に指を当てる。程なく4つの熱鉱石からの熱が伝わって来た!

「おお~」見えざるボタンでスイッチが入った。何か魔法でも使ったみたい。


「お父さん、次は温度の変更ね。今度は3番目のスイッチを押してみて。」

 そう言われても、相変わらずスイッチの場所は具体的に見えない。さくらが言っていた感覚での場所。

「では今度は、200℃になるのかな。ポチットな」

 熱鉱石が発していた熱が一段上がった様に感じる。なんとなくだけど、空気を通して感じていた熱が上がったかな。しかしいずれにしても、スゲー!

「うん、試点火は合格ね。スイッチをONにして160℃か200℃を選んで使って。焼きや炒める料理の温度って、だいたいそれぐらいだと思うから、温度を途中で切り替える事で調節してね。」

 調理の温度は、リーザから教えてもらったけど、さくらが知ってるなんて、意外。さくらはリーザと台所に立つ機会は増えたみたいだけど、その頻度は知りません。

 ただ、”魔力“や『術』の伝承と並行して、家庭料理も教わってるみたいだけど。

 さくらが台所に立ち、料理を作っている、、、想像が着かない。

 さくらは野山を走っているか、ボールを蹴っている姿ばかりが、、、

「お父さん、何か失礼ね。」

 そうか?元気な姿のお前が好きなんだよ。

「まぁいいわぁ。この岩焼き?温度の設定は変更出来るから、いつでも言ってね。」


 そうだ、丁度いい!

「さくら、フォカッチャを使ってお好み焼き(風)を作ろうと思う。それでさ、申し訳ないけど、何かソースになるとか調味料の類を取って来てくれないかなぁ」


「いいわよ。でも私の分もお願いね。お父さんの作る料理って、なんかジャンクフードっぽいけど、美味しい時もたまにあるもんね。」

 『美味しい時』って何だ、その上『たまに』は余計だろ。まあ確かに、味付けに失敗して、何だか分からなく成る事もあるけどさぁ。


 そう言うと、さくらは調味料の調達にエルフの王宮の厨房へと向かって行った。(消える様に行っちゃった?!)

 焼き岩板にスイッチの設置、、、見えないけど、我が娘ながらそんな技が出来るだなんて、、、何かズルいなぁ。でもいずれにせよ、ありがたい。


 さくらに温度調整の”スイッチ”を作ってもらった。(見えません、だいたいの位置)


「あれ?今はスイッチ入っているのか?」

 見た目だけだは分かりません。今岩板が熱を帯びているのはON状態だから?残熱なのか?まあ、とりあえずもう一回押しましょう。

 見えざるボタンでON/OFFだ。これで何だか私も魔法使い!

「ポチッ熱っち!」

 さくらに作ってもらった、岩焼きのスイッチの場所は岩板の表面だから、、、そりゃぁ熱いよ!







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