『トキヒコハウス』建設が始まる エルフの友、ロウ
カニエンプラツァによって白い岩から切り出してもらった一枚岩は、結局カニエンプラツァ達の里『シエシイエ・カニエニイア』の里長スタラスヅ・ブラト・チョロポワティに届けてもらう事になった。
でも、どうやって運んで来てくれる?
スタラスヅ・ブラト・チョロポワティ本人も自分達の里の者の働き振りが見たいと、『トキヒコハウス』にも少しながら興味が有ると。興味を持ってもらえる事は嬉しい。
何、土台造りをしてくれてるカニエンプラツァって、シエシイエ・カニエニイアからの者達なんだ。
無償の出稼ぎだ。こりゃあよっぽど、何かしてあげなくっちゃな。
私とロウは一足先に、再びロウの魔力を行使して『トキヒコハウス』の現場へと戻った。
そして里長スタラスヅ・ブラト・チョロポワティが運んでくれる鉄板代わりの石焼き岩板を納める土間の土台造りを行う事とした。
場所としては簡易的な休憩兼宿泊場所の隣の位置で、イメージとしては屋外バーべキューのつもり。
「ロウ、あの一枚岩板をここら辺にセットしたいのだけど」
カニエンプラツァ達が行っている『トキヒコハウス』の土台作りを真似て、岩板用の土台を作りたい。
一枚岩板はそこそこの重量だろうから、しっかりとした土台が必要と思った。
「今、カニエンプラツァ達が作る土台を真似てさ、岩板の置き場を作りたいんだけど」
ロウは合点がいってくれる。いや、私の意識が伝わったかな?
ロウは何やらカニエンプラツァ達の元へ歩き進むと、少しの会話を行い(言葉数も少ないし、何て言っているのか分からなかった。)、『トキヒコハウス』の土台造り用の岩の中から幾つか調達してくれた。
腰の位置ぐらいの高さが欲しいので、そのひとつ一つは大きな岩の塊となった。
ちなみに、ロウが左右に抱える大岩のひとつでも、私では持てません。
ロウが四方向に大岩を置き並べると、そのひとつに対して魔力を行使した。
ロウが置いた岩の一部が音も無く切り取られ、岩には垂直のはめ込む角を持った窪みが作られた、、、言葉が出ない、出す間も無い。魔力、スッゲぇ!でもそれだと、物(岩)との対話になって無いんじゃないの?
「トキヒコ殿、あの岩板が届きますれば、此の位置にて置きましょう事。中間とされる場にも、支えとなる土台を足しましょう。」
ロウは『モノとの対話』を気にしてないのか?
ただ、ロウの魔力の『術』だか『技』がどんなモノかは分からないけど、ノミなんかが無くても、こうも鋭角に石なり岩が削り取られるなんて、、、それも一瞬で!もう何かの工作機械でも使ったような、手作業のエルフ達に怒られちゃうよ。
残りの三つの岩に対しても、同じ様に角を持つ窪みの溝が作られた。
ロウの魔力によって、一枚岩板を迎え入れる場所は整った。外から見ていたら呆気無く、そして想像した通りに。
岩を分けてもらい、少し運んで、岩板を置くのに安定させる加工を行った、、、でも私は、ロウの行う作業を隣で見ていただけだ。
指示すらしていない。ロウは私がやりたい事のイメージを共有してくれて、理解して、実際に行ってくれた。まるで自分と同じ思考を持った別の体の超人がやったように。
「ロウ、ありがとう。でも、エルフってこんなにも他者の思いを共有して、実際にも行動しているモノなの?」
自分の持つ『想い』や『希望』が伝わる事は便利に思えるけど、受けた相手は大変だよ。
「全ての行いがそうとは成りません。我らも個を持ちまする故。個性とまでは行かず共、個々の行動なり思考は別と成ります。」
そう、エルフの考えや行動は自身が決めるんだ。
「確かに共同作業と成りますれば、思考を共有する事により人間と比べれませれば、より秀でていると言えるでしょうか。」
おや、考え方や状態に優劣を付けるなんて珍しい。でも其れは、私に分かり易くだな。
人間も共同作業はする。会社組織がその例のひとつかも知れない。
会社組織はトップがその活動の方向性を決める。
トップが示したビジョンでありベクトルを社員が一丸となってモチベーションを上げ、ゴール(目標)に向かう。
だけど人間は相手の思いや考えは言葉で聞くか、文字を読むか相手の態度から読み取らなければならない。それで100%の伝達となるかは怪しいし、そこにそれぞれの『我』が加わるからややこしくなる。その上、思考の偏りや傾向を持つ。
だから『決り』を作り一体感では無く、統一性を図る。それは会社だけでなく社会構成も同じだ。
まあ、それでもあぶれ者は出る。オレみたいにさ。
「だけどロウは今、オレがやりたい、こう出来ないかなぁ〜と思った事をその通りにしてくれた」
「トキヒコ殿、そこは今の刻、トキヒコ殿と過ごしますればこそ。尚も私は我らの里において、トキヒコ殿の手助けと成る事を行うべき存在です。」
「えぇ?手助けってする存在って、、、何時から?」
それじゃザーララさんの言う『お前のエルフ』とロウも一緒になっちゃうじゃんか。
「以前寄りです。」
「以前って?」
「トキヒコ殿が私の事を“友”と申されました時点よりと成りまする。友とは、お互いが刻を共有し過ごす事と学びます。」
エルフ、大袈裟だなぁ。でも『友達』の存在に対して、理由とか根拠とか何かを考えた事って無かった。
改めて考えると、何だろう?
ああ、コイツと一緒にいると楽しい。コイツは何でも知っている。コイツは便利だ。コイツは助けてくれる、、、相手の事が嫌いじゃない、むしろ好きだからこそ一緒にいる。そして何処かで相手を当てにして利用している事も有るかも知れない。
だけど、自分が相手に対して持つ思いを相手にも同じにしてやろう、、、そう思うのが『友達』なのかも知れない。
「いやロウ、友達以前にありがとう。オレ一人だとアレやろう、コレやろうと思っただけで、ロウが居なかったら実際には何もやれて無かったよ、いつもロウには頼りっ放しだよ」
ロウが私の意識を読み取っての行動、、、元居た場所でもそうだったが、エルフの里国であっても、食事にしろ『トキヒコハウス』を作る事にしろ、誰かに助けてもらわなくちゃ何も出来ない事を痛感させられている。
この先オレはここ、エルフの里国で過ごして行くのに大丈夫か?
「ロウ、お礼次いでに言っておくけど、オレは何もお返しが出来ないぞ」
そう、何も出来なければ、何も持っていない。
「トキヒコ殿、礼には及びません。尚も見返りなど求め無きが友ではありませんか。」
そう、お互いの関係性に説明も定義なんて必要無いからこそ『友達』なんだ。
それは子供同士であっても、大人だって同じだ。
友達の概念を強くは持たないエルフに諭されたよ。
「でもさ、エルフの里国の皆は何時も相手の意識を読み取る事によって、相手の考えや思いに応えてるの?」
意識の統一性を図るのには便利かも知れないけど、何時も気遣いしてるみたいで、どこかで何か疲れないか?
「トキヒコ殿、常にはございませんよ。確かに我らは、行いし方向性や内容を共有化する事は多ございますが、そこにはそれぞれの“個”の存在が前提に在ります。共同作業を行いし際には、其れが強く顯れます事、ですね。」
う〜ん、相手の考えや思いを知ってしまったら、どうなんだろう。手伝うのか放っておくのか、エルフの線引が分からないなぁ。
「共同作業を意識を統一して取り組む、それは効率化に繋がるし、やっぱ便利?」
「効率よりも備えですね。不意な何やらが生じますれば、対策を要しましょう。多くの者が過程を知れば改善・対策も見付けられましょう事。うむ、其れ成れば『効率化』には繋がりますね。」
ロウは微笑む。
エルフ達は感情を表には現さない(苦手な面も持つ)が、ロウの現す表情は自然だ。それは、感情を調整されなかった(失敗したと言われている)エルフの子孫だからなのか、人間社会で過ごした事があるからなのか、それとも、オレに合わしてくれているからなのか、、、いや、止めよう。そんな詮索は友達に対して相応しく無い。
ただ、ロウと過ごすと何か落ち着く。
問いに対しては人間的な側面で返事をしてもらえるし、肉体的にも重労働だろうが格闘だろうが難なくこなしてしまう。そして強き魔力を持つ。
エルフの里国において、頼れる者は多く存在する。
リーザを筆頭に女王ユーカナーサリー、ザーララ、、、いや、エルフの皆が頼れる存在だ。どうしてこうもオレの事を受け入れてくれるのかは不明だけど、、、その中でもロウは別格だな。それこそ友達としてオレの事を扱ってくれているのだろう、かな。
『トキヒコハウス』に屋根部分が乗せられた。
アールを持った長い木材がまるでログハウスの様に順番に並べられ、正面から見て楕円の“形”に整った。緩やかなアール状に切り出された木材は隙間無く、ピッタリと美しい楕円を描いている。
そう、コレ!私がエルフの食堂で描いた設計図(雑なイメージ図)の形!
私は小走りに『トキヒコハウス』から距離を取り、少し遠目で眺める。
今度は建物に近づき、前から奥へと眺めながら通り過ぎる、、、震えた。何だか震えた。言葉が出ない。
「ザドエッタ、、、出来た、、、『トキヒコハウス』が出来た!」感動!
屋根に上がっていたザドエッタが降りてくる。
「いえスルガトキヒコ、まだ住居としては何ひとつ成せてません。各所の固定もされてません、予定されます明かり取りの天窓、側面窓。排水、給水。内部の造作も手付かずでして、、、」
ザドエッタの続く説明は耳に入らなかった。
ただ、姿を現した『トキヒコハウス』に感動していた。
「リーザ、ロウ、、、『トキヒコハウス』が出来た!」
私の隣でリーザもロウも喜んでくれている。
「トキヒコさん、よろしかったですね。ですがザドエッタの説明も有りました様に、住居と成る過程への道筋は多く残されてますよ。」
うん、そうなんだけど、“形”を見たら何と言うか、、、やっぱ感動!感激!
「住まうには、まだ幾らばかの刻を要しましょうとの事ですね。」
私が体を震わして、感動に浸っていると、カニエンプラツァの里長スタラスヅ・ブラト・チョロポワティが、見た事も無い台車を見た事の無い動物に引かせて到着した。
何だコイツ?サイか?でも到着がちょっと早くないか?
「リーザ、チョロポワティが連れて来た、アイツは何者?」
角を持たないサイみたいな、デカくて白くて、そして可愛い小さな耳を持つ、でもちょっと怖い。
「アレ成るは『ビアリィ・ノソロゼク』。カニエンプラツァが何処から連れて来たかは不明ですが、我らの里国には暮らさず種と成ります。」
『ビアリィ・ノソロゼク』かぁ、何かすげぇなぁ。牛では無くて、やっぱサイだよなあ。凄い馬力を持ってそうだ。とにかくデカい!
「リーザ『ビアリィ・ノソロゼク』は危険な種?」
「此度のトキヒコさんの反応は宜しいですね。何時もであらば、彼の者に先に手を伸ばしていましょうに。」
いやー、だっていきなり突進でもされたら避け切れそうにないから。
「大丈夫ですよトキヒコさん、基本は草食の大人しき種。しかし彼の者も気性を持ちまする故、無闇には手を出さらずべからずですね。」
私はスタラスヅ・ブラト・チョロポワティとビアリィ・ノソロゼクに小走りして走り寄った。
「チョロポワティ、作って頂く事をお願いした上に、わざわざ岩板を運んで頂きありがとうございます。それよりも、スゴいの連れて来ましたね」
ビアリィ・ノソロゼク、鼻の頭に角を持たないサイだ。大きなコブのように発達した前足の付け根(肩の位置)に大きな筋肉を持ち、カニエンプラッツァ達の体付に似てたりして。
後脚は太く短いが、突進するには十分な力強さが伝わって来る。
ポンポンと首元を優しく叩くと、顔がデカい!固い!小さな耳をクルクルと回し、クリクリの目が可愛い!
こいつに乗ったら、どこまで行ける、、、ああ、リーザに怒られるな。
「こいつは何処から連れて来たのですか?」
運んで貰った岩板はそっちのけだ。
「スルガトキヒコは初めて見ようか。ビアリィ・ノソロゼク。草、木の少なき土地にて下草を好んで食しよう。」
優しく肩を撫ぜるスタラスヅ・ブラト・チョロポワティに、すごく馴れているようだ。
「スルガトキヒコが想像するに同じく。ビアリィ・ノソロゼクの突進を避ける事も受ける事など不可であろう。」
あっ、意識読み取られた。でも何か強烈な力、突進力を持っているのは見て分かる。それでそいつを良くぞ飼い馴らしているよなぁ。
カニエンプラツァの持つ力だったら、コイツを抑え込んでしまえるのか?
「それで、コイツらは何処で暮らしているのですか?」
「我らの里森を抜け様先に下草の地が広がる、其の場にて暮らす者。我らが共とする機会は多いぞ。」
でっかい石だか岩を運ぶのに、カニエンプラッツァだけだと流石に疲れるだろうからな。
それより、下草の広がる地、、、荒野でも在るのか?でも『エルフの里国』の外世界の情報だ。ここの世界も地球の様に、多くの地域が広がっているんだ。いつか行くぞ!
里長の登場に、カニエンプラツァ達が集まって来たあ!里長人気者だ。
「スルガトキヒコ、我らが里の者達の働きは如何に?」
そんなに面と向かって聞かれてもなぁ。カニエンプラッツァ達が実際に何を行ってくれているのかは細かいところまで十分理解していない。けど、彼らが迅速に『トキヒコハウス』の土台となるべき岩を組んでくれたから、今日『トキヒコハウス』の全容が見られたんだ。
「チョロポワティ、この場に集まってくれたカニエンプラツァ達の働きがあったがこそ、今日『トキヒコハウス』が見れました。外観が完成しました。どうでしょう!」
チョロポワティは『トキヒコハウス』の全容を見るなり、首を傾げた。
ん?何か変か?いやいやステキな形状を持った外観だろう!
「スルガトキヒコ、良いか?」
「ええ、何でしょう」
「スルガトキヒコの申す『トキヒコハウス』。これを住居とし、此の後この建屋で過ごそう事とするか。」
何か問題が?エルフの慣習だか習慣に反してたりする?
「少し安定と申し用か、大地との境を持つ住居とは初見と成る。故にか、理解に刻を要した。」
なんだよ、理解に時間が掛かるって!
「そうですか。ですが分かって頂くと、カッコイイでしょ」
それでもスタラスヅ・ブラト・チョロポワティは、腕組みしたまま微動だにせず。
「カッコイイ、、、すまぬ、我らは余り使わぬ意識であれ表現と成ろう。カッコイイか、学ねば成まいな。」
『カッコイイ』は学ぶ事じゃないよ。自分が感じて思う事だ。でも価値観が違ったら、、、いやいやエルフって比較から好みだとかの優劣を付けないから、もしかしたら『カッコイイ』の概念を持って無かったりする?
集まっていたカニエンプラツァ達によって、台車から岩板が降ろされる。
凄く慎重に丁寧に扱ってくれて、コレをこの後に熱したり食べ物を焼く道具にしたら怒られないのか心配になって来た。
そして、ロウの指示にてセットされた岩板は、土台の岩を切り欠いた位置にピッタリだ。
ロウは採寸も位置出しもしなかったのに、岩板は土台の窪みに組み込まれる様にガッチリと収まった。不思議というか感心しか無い。
でも何か、やっぱ勿体ない様な。ツルツルのピカピカに磨き上げられた白い一枚岩板。大理石みたいだしなぁ。
「あ〜チョロポワティ、この美しく仕上げて頂いた岩板で魚や肉を焼く事に使うと、怒られません?」
やっぱちょっと心配。
「スルガトキヒコの好きにすれば良い。我らは受け取られし者が満たされるが一番の報酬と成る。」
”報酬“なんて、エルフが使わない言葉だ。エルフ達はしっかりと日本語脳で考え想像し、私に答えてくれる。
ただこのままだと、魚も肉も焼けない。
この岩板の下で火を焚いて熱する事は初めから考えていない。焚火の火が何かの弾みで燃え広がったら大変だから、直火は使いたくない。
そこで、エルフの里国だからこその熱鉱石だ、よし!では熱鉱石を、、、って、私、持って無い。誰もが常に持ち歩いてはいないよなぁ、あー。
リーザには私の意識が伝わり、私がやりたい事を理解してくれる。
「この岩にて創られました岩板での石焼きですか、面白そうですね。」
リーザの『面白そう』って反応、嬉しい。
「リーザ、この岩板を鉄板焼きの代わりに使いたい。岩板を熱くする為の熱鉱石を調達してもらう事は出来る?」
リーザは岩板に手を当て考えてくれる。
「トキヒコさん、この岩板全体を熱っすますれば、こう配置をしましょう。」
リーザが示してくれたのは、左右と真ん中、計4箇所に均等に熱鉱石を配置する事。
「此度の岩板を熱する行いは、熱放射では無く熱伝導が望ましいかと。」
熱放射?熱伝導?岩板を何かで物が焼ける(焦げる)ぐらいに熱くすればいいもんだと思ってた。
「対象が金属であらば熱伝導は望ましいやも知れません。此度は石なり岩、鉱物質の塊同士ですが、それなりの効果を得られるでしょう。」
そう言えば、家庭のガスコンロ代わりに、石を熱して調理する器具ってあったよなぁ。
確か遠赤外線だとか、それは熱放射だ。熱源を良くは知らないけど(多分、電気)で、それは高温物体から照射される赤外線による伝熱。赤外線を吸収しやすい石を使えば物質は昇温が早いのだろう。
遠赤外線の一番の代表格が太陽だ。太陽の熱は電磁波として放出されて、地球の表面・地面に吸収されると熱を発する。
リーザがやろうとしている熱伝導は、熱鉱石を岩板にくっつける(置くのかなぁ)事で同じ固体内としてその中での伝熱をさせようとしているんだ。熱鉱石と岩板との熱の伝導率がどうなるのか分からないけど、熱鉱石と岩板との温度差が有るから熱が移動するんだ。
「トキヒコさんがお考えになられます通り、温度を高くしました熱鉱石と温度の低かろうこの岩板の間にて温度の移動、伝熱現象を起こさせます。」
そうなのか、私の思った事は大体正解なのかも。だけどやっぱり熱伝導なんてさっぱりだ。熱鉱石がこの岩板に対して、どう熱が伝わり、載せた物を焼く事が出来るのか?分からない。もう、そこはリーザ頼みだ。
「うんリーザお願い。私ではさっぱりだよ」
リーザは熱鉱石を得る為に出掛けてくれた。
王宮ででも行って、貰って来るのかなぁ。
程なくして、リーザが大き目の熱鉱石を抱えて戻って来た。
「リーザ、ありがとう。(思っていたより持って来てくれた熱鉱石が大きいなあ)でも何処から?」
「はい、王宮の収納庫より頂戴しました。トキヒコさんご心配無く、我が王の了解は取りましたよ。」
ああ、今度エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーにはお礼を言っておこう。
さて、石焼き用の岩板と熱鉱石も揃った。だけどあれ?熱鉱石の発する熱をどうやって岩板に導く?岩板の上に置けばいいのか?う〜ん、どうしよう?
「トキヒコさん、ロウの持つ力にて、組み込んでもらいましょう。」
ロウが組み込む〜?
「ロウ、リーザが持って来てくれた熱鉱石をこの岩板に組み込むって、、、出来るの?」
「問題ございません。」
ありゃ、即答だなぁ。
ロウが魔力を行使する(魔力は見えません)。
リーザの持って来てくれた、少し大きな熱鉱石は空中に持ち上がると、四つに別れ、それぞれが一辺10センチ程の立体キューブが現れた!
魔力、スゲー!それでまたもや工業製品と見紛う精度!
(エルフの手作業や物との対話は置いといて。)
「ロウ、スゲー、、、」
「トキヒコ殿、この後これらを岩板へ」
ロウの続く魔力の行使で、岩板に4カ所の四角い穴が開けられた。音も無く、塵ひとつ発生させずに。
そして先程の熱鉱石のキューブが同寸と思われる四角い穴に収まる。スムーズに、そして隙間無く。
もう、魔法だ!手も使って無い!工業製品なんかを通り越しちゃってるよ!
だけどロウ、やっぱ物と対話して無いじゃん!