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エルフの里国での始まり

「はっ!やばっ!」

 寝坊した!遅刻だ!遅刻〜!あれ?


 その朝トキヒコは、リーザの住居で目を覚ました。

「あれ?ここは、、、ああ、そうか」

 トキヒコが目覚めたベッドの隣、既にリーザの姿は無い。それは何時もの事だが。

「そうか、そうだった。今日からオレは、エルフの里国で暮らすんだった、、、」

 昨日は盛大な歓迎会をして貰い、久々にお酒も飲んだ。

 だが何時、寝床に入ったのかは覚えていない。

 トキヒコがエルフの里国へと移住を果たした一日目は、こうして始まった。


「おはようございます」

 いつも通りに食卓に着けば、リーザが朝食の用意をしてくれている。

 私は席へと着く前に、リーザに近付き、その手を取った。

 何か、色々な事が思い浮かび、様様な思いは頭の中をめぐる。

 

(「オレは、、、」)

(「これからエルフの里国で何をしよう。」)

(「暮らして行くって、、、大丈夫か?」)

(「エルフの皆は、オレを受け入れてくれるのか?」)

(「リーザは向こうの世界で、やり残した事は無かったのかな?」)

(「オレは、、、」)

 でも、どれも曖昧で頭の中がまとまらない。まだ寝ぼけてる?いや、

「リーザ、これからよろしく」

 そんな言葉しか出なかった。

「トキヒコさん、おはようございます。でもですね、『これからも』ですよ。」

 リーザが微笑む。

 ああ、ありがとうリーザ。


「おはようございま〜す」

 さくらが二階から降りてくる。まるでいつの日かの休日のようだ。

 この光景は家族が揃えば、自分が何処に居ようが変わらないモノなのかな。


 だが、さくらはこの先、ザーララの住まいとなる北山の山岳城へと向かい、ザーララと過ごす事と成る。

 さくらはザーララより、魔力についての指導を仰ぐ。

 さくらはエルフの持つ“魔力”では収まらない『力』を持つ。私などでは想像すら付かず、到底理解は出来ない。

 ただ、エルフの持つ魔力を行使し術を行うのは、親から伝承的に行われるのが通例である。

 

 それは『独立したエルフ』であれば、済ましている事。

 さくらは『独立したエルフ』との扱いであっても、親であるリーザより伝承的に術の指導は受けていない。

 それは、人間社会で暮らしていたから。人間社会に於いて、”魔力“も『術』も不要なモノとして、私が位置付けていたから。

 だからこの後、リーザもさくらと揃ってザーララの山岳城にて生活の多くを移す事と成る。


 私はと言うと、

「リーザ、せっかくエルフの里国で暮らす事になって、改めてあちらこちらを案内して欲しいのだけど、」

 私は、エルフの里国の極一部の事や場所しか知らないのであろう。全てを知り、理解する事は出来ないだろうけど、これからココの多くを知りたい欲求は有る。

 今まで通り、会社に行く訳では無いけど、日中をリーザと一緒に過ごすばかりとは、成らない。

「しばらくは別行動かな。まあ、離れて暮らす事では無いにしろ、」

 どちらか言うと、行動は別々の時間を過ごす事になりそう。

 何処か知らない諸外国だったら、何が起こるかの不安を持つかも知れないけど、エルフの里国は私の持つ考え方として安全だから許されるのだろう。初めて出会ったエルフであっても、向こうから脅して来たり攻撃したりして来ない。

「さくらの事をお願いします」

 さくらが『独立したエルフ』としても、さくらがひとりで暮らして行く姿が思い浮かばない。加えて、さくらが『進む道』も示されてはいない。私の過保護さは、続く。

 このままだとさくらは何となく親と暮らす、、、衣・食・住をそこそこに親に依存する、、、それは人間っぽいけど、さくらは人間とエルフとのハーフだ。だからそんなもんだ。

「トキヒコさん、ご心配なく。」

 まあ、リーザに任せる事は、全てを解決してしまう事と同じだ。

 そんな私も、さくらと別に暮らす感覚を持てていない。

 何処かに嫁ぐ分けでもないし、何処かで一人暮らしを始める分けでもないし、、、やっぱ子離れ出来ていないのは、オレだな。


 私はと言うと、、、エルフの里国で”自分の家“を建てようと思っている。

 それは漠然としたモノであるが、エルフの里国に移住して、先ずは住む所だ。

 リーザには、エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーから与えられた住居がある。

 そこで暮らして行けばいいのかも知れないが、ちょっとな、何かな、オレ的には、ついの住まいになるかも知れないと考えた時に自分で何とかしたい。

 人間社会では無理でも、ココ(エルフの里国)であればそこは自由に出来るかな、何とかなるかな、と安易に考えた。


 だけど、エルフの里国には建設会社も無ければ設計事務所も無い。工事を発注すべく業者が存在しない。

 例え様々な業者が存在しても、支払うお金は持って無い。そもそもこの世界には貨幣文化が無い。

 さて、どうしよう。


 この世界でのやり方は『頼む』事。

 自分の出来ない事は、誰かに頼む、誰かにお願いする。

 自分が希望する分野に特化したエルフに頼む事。

 そしてその対価は、自分が何処かで何かを行う、働く事である。

 頼み事をした相手に直接で無くとも、頼んだ内容とは全く別の事だとしても、巡り巡ってそれは対価となる、、、私の知識に有る『共産主義』的な構成を持って、エルフの里国は回っている。


 さて、では誰に頼もう。

「トキヒコさんは長きを働き続けました。それは私達の生活を築きました事。今暫くお休みされても良いのではないでしょうか。」

 リーザはそう言ってくれるけど、まだまだ隠居生活をするには早いな。

 『長い時間』確かに人間の過ごす時間軸なら、20年強はそれなりに長い時間だったかも知れない。でも単純にその時間、人生の内でどれぐらい?と考えたら、仕事に割いて来た時間よりも、それ以外の時間の方が多いだろう。全体として見たら、大した時間では無いのかも知れない。まあしばらくは、ぼぉ〜として過ごしたいのは確かだなぁ。


「先ずは、家を建てる事を協力してくれる誰かを探すよ」

 女王ユーカナーサリーに頼めば一発だろうけど、そこは変に煩わさせたくない。女王様が申せば、命令になっちゃっても嫌だからな。

 直近の住む所はこのリーザの住居でいいから、別に急ぎもしないしなぁ。

 『納期が無いのは仕事ではない』突如として、今までの生活で染み付いた言葉が頭の中でこだまする。あ〜、中々今までの生活感から抜けられ無いかもな。



「じゃあリーザ、さくら、夕飯は呼んでよ。ザーララさんとロウによろしく」


 私は朝食を済ませ、少しだけ身なりを整えた。

 向こう(日本社会)からこちらに来る時に身に着けていた洋服、下着、靴下に靴は、リーザに一度洗濯をしてもらった後に、リーザのクローゼットの奥に仕舞ってもらう事にした。

 そして、こちらで皆さんから頂いた服~シャツから始まり、ズボン、サンダルの様な靴、リーザのお母さんから頂いた上着~を身に着けた。

 先ずは身なりを切り替える事で、こちらの暮らしに順応する、、、つもり。

 いつも何かスポーツ等を始める時と同じく、、、、外観から入る、、、まあ、いいじゃん、気持ち、気持ち。

 そしてエルフの王宮へと向かう事にした。

 リーザの住居から徒歩3分。

 昨夜のお礼と今後のお願いに、改めて挨拶に向かった。


 エルフの王宮、王の座する間『花の間』の扉の前に立つ。

 だけど私は魔力を持たないので、この部屋の扉は開けられない。

「あ〜、スルガトキヒコ、突然ですが参りました」

 花の間の扉は音も無く、部屋内に向かい、漂う香りと入れ替わる様に開かれる。

 エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーは、穏やかな表情で私を迎え入れて下さる。



「さて、トキヒコ殿は何を行おう。」

 エルフの里国にて行う、仕事の話しなら何も決めてないし、準備も思いも無い。

「え〜、実はですね、家を建てようと思ってます」


「トキヒコ殿の住処と成ろうか。我も協力したく。」

「いえいえ、女王様の手は煩わさせたくありませんし、何とかご協力して下さるエルフを探そうと思ってます」

 まあ、先ずはこちらで始める第一歩。なんとかなるかな?なんとかなるでしょ?


「協力など、トキヒコ殿の命で良い。各も多くの者が揃おうぞ。」

「いやぁ〜、私が誰かに命令だなんて、ぶん殴られますよ。それとちょっと私も家を建てる作業に何やら手を出して関わりたいですし、皆で一緒に作れたらいいなぁ、と思ってます。」

 時間は有るかも知れないけど、正直何から手を付ければいいのかサッパリだ。


「まあ、何ぞ在らば我に申せ。我とてこう見えても、何ぞ力は貸せようぞ。」

 いえ、女王様が関わりましたら、何であっても5分で終わっちゃいそう。


「トキヒコ殿、ひとつ忠告しようぞ。」

「忠告、ですか?」

「うむ、トキヒコ殿は対価など考えるな。トキヒコ殿の悪い癖ぞ。」

「はぁ」ですが、対価を求め、対価を支払って来たのが普通の世の中で今まで過ごして来ましたので。

「多くを成した者は、我らの未払いが発生してしまおう。トキヒコ殿より対価を求められれば、我らでは払えぬよ。そう思うが良い。」

 今までそんなに何か褒めてもらえるような事、したかなぁ?

「は、はぁ、ありがとうございます」

 いずれにせよ、エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーには、これからも何かと頼らさせて頂きます。悪しからず。



 王宮を出ると、何時もの穏やかな気候だ。

「いや、でもやっぱ考えるよなぁ。何かしてもらったら、言葉や気持ちだけでは無く、何かお礼の品を準備したりさぁ」

 そう言って、何時も自分は手ブラなんだけど。

 さてさて、エルフの里国で頼れる者、、、それはエルフの皆んなだ!

 私は何時もの様にジエジオラ湖の湖畔の食堂へ、徒歩で向かう事とした。


「今日、今からエルフの里国での生活が始まったんだ」

 正直、実感は無い。

「そして、これはその第一歩だ!」

 と、足を踏み出すも、特別に改まったり、この先に向かう強い意志を持ったりも、無い。

 劇的に意識や思考を変える事なんて、なかなか無理かもな。

 ただ単に、

「会社には行かなくていいんだけど、何かコレだといつの日かの休日みたいだなぁ〜。いいのか?」


「いいんだよ。何に負い目が有る?いや、何か有るんだよなぁ〜」

 現代社会(自由資本主義経済社会)で暮らすなら、職に就き、金銭を得なければ生活は成り立たない。

 尚も、周囲や周辺に気を使わなければ、、、近所付き合い、人間関係、決まりに法律、倫理感を持ち、国民としての義務、民族としての習慣、嫌な事だって無理してでも行わなければならない時も有るし、、、それはココ、エルフの里国でも同じだ!ただ、私の持つ倫理感や生活習慣がこの場でも通用するのか、許されるのか?それは自身で測り、感じて理解しないと、自分が目指す『自由』である環境は作れない。

 かと言って、物怖じしたり変に遠慮はしたく無い。窮屈に暮らしたく無い。

「そう、今まで出会って来たエルフ達との関係性が、どれだけ構築出来ていたのかは今後の生活に影響しそう、、、オレって、皆に別段優しく接して来なかったからなぁ〜どうだろう?」


 徒歩での移動は、それなりに色々と考える時間が得れた。

 湖畔の食堂へは『術』で連れて行ってもらったり、トゥクルトッドドゥーに乗せてもらって来る事が殆どであった。

 今回改めて徒歩で向うと、、、いや多分オレ時間で1時間近く歩いている。なのにジエジオラ湖と湖畔の食堂が先に見える、あの草原まで来れてない。森を抜けてない。迷った?


「でも、こうやって歩いてこの森を抜けるのは初めてかも」

 目に映るモノが凄く新鮮だ。

 こんな花を付ける木が有るんだ。

 上を見上げれば、多くの鳥達が枝枝を渡る様に飛び交っている。

 虫達だって多い。何かの甲虫が木を這い登り、足元には多くのバッタの類が飛び出して来る。

 、、、地球上の知らない何処かの土地、何処かの外国にでもいるみたいだ。


「木々が作り出す影の向き、風の流れ、生える植物の群生傾向、匂い、、、うん、道は間違ってはいない」

 トキヒコは、いつの日からか、エルフの里国の森の中で暮らす一部である『観察』が身に付き出していた。


 前方の光か明るく強くなる。森を抜ければ草原が広がり、その先には、エルフ達の水源であるジエジオラ湖の水面がキラキラと美しく輝く、そしてその湖畔に建つエルフ達の食堂が見える。

「なんかこの景色、懐かしいと言うか、帰って来たと言うか、だけど何時も通りと言うか、、、」

 湖畔の食堂にはまだ距離が有る。

 トキヒコは走り出したい衝動に駆られたが、朝から歩き続けて疲れていた。

 そのまま徒歩の速度を落とす事無く、歩き進んだ。

 


「よっ、みんな元気〜」

 挨拶は、いつもこんな感じだ。

「歩いて来て疲れた。ウォッダ(水)をお願い」

 いつもの3エルフ組。リュバック、シエック、ロダッズが陣取る席へと無理矢理座り込む。


「どうした、トキヒコ。」

「うん、オレはさ、ここで家を建てたい。だから協力してくれるエルフいないかなぁ」


「家、トキヒコの住処か。」

「そう」

「何故、トキヒコは住処を持とうとする?」

「『越える者』の住居が在ろう。」

「オレは今日(昨日)から、エルフの里国で暮らす事にしたんだよ」

 驚かれた。表情を顔に表す事が苦手(下手)なエルフが驚いた顔をした。笑える!


「そうかトキヒコ!」

 バンッ!

「そうかトキヒコ!」

 バン、バンッ!

「あー!痛てぇよ!、強いよ!」

 何時からか、私が屈強な男達に挨拶代わりに行う『肩バンバン』が彼らにも伝わっていた。

 だけど、、、手加減しろよ、エルフ馬鹿力!でもこれは歓迎の意志表示だ、何か喜んでくれたみたいだ。


「よし、トキヒコの住処、造ろうではないか。」

「おっ、手伝ってくれる?」“当て”にはしてたけど。


「では、どの様な。」

「イメージは有るんだよなぁ〜」


 紙類と書き道具を持って来てもらう。

「こんな風に楕円の断面で、それがずーと真っ直ぐ奥まで続く平屋。

 柱が少なくて、階段を二、三段上がると入口で、左右どちらからでも入れる。

 明かり取りの窓が天井にも有って、左右の壁にも大きな窓、」

 初めて具体的に絵で表したけど、自分の中の思いを何かの形で可視化して表すと(今回は拙い絵だけど)スゴク実感というか、真実味が増して来るような不思議な感覚を得る。

 その上、オレの想像力ってステキ!オレって素敵過ぎる!

 

「変わった形だな。屋根に当たる部分は船底の様だ。」

『造する舟の者』ロダッズが見ればそうなるか。

「ただ、舟とは違う。地に据える物であらば、構造が異なろう。それは強度を伴う。何処か建築する者も呼ぼう事。」

 あ〜、助かる〜。

「機能面、生活様式、、、我らとトキヒコは違おう。されど、トキヒコが描き出したる住処、如何なる形状を持つ?」

「見慣れぬな、見慣れぬ、、、。」

 エルフの里国に、台風が直撃するとか、集中豪雨、竜巻や嵐に見舞われる機会、災害被害はほぼ無いとは聞いている。

 そんな中でエルフ達の住居は永く、丈夫さを求められ、石造りの上に木材が組まれる物が多い。木材部分は痛めば新たな物に組み換えられ、繰り返し、繰り返し、住み続けられる。

 だけど私はエルフでは無いから、同じ様な永い期間を過ごす事を考えなくてもいいだろう。だから最低限の雨風が凌げれば、それは良しだと思ってる。快適さは二の次かなぁ。

 ただ、私の描いたイメージ図が変だと言いながらも、興味をもってもらえたみたい。だけど称賛の声は無い。


「それでトキヒコ、何処と成る?」

「何処ってぇ?」

「トキヒコの住処を建てます場だ。」

「場所か!」


「う~ん、そう言えば場所って、、、、」

 何処にでも勝手に家なんて建てちゃっていいのか?ダメだろう。

 上水も下水も引きたいし、何かを保護する地域も有ったりして。近くに別の里が在ったり、、、あ〜。

「皆んなの住処の場所は、どうやって決めたの?」

 漁師のリュバックはジエジオラ湖で出漁を行う為に湖が近く、船を造るロダッズは木材を調達し易い森へと続く道中、網や罠を作るシエックは多くの者達と共同作業の機会も多く、城下に軒が連なる街の並びの一角だ。

「自身がこの場が良いと思ったからだ。」

 そんな理由?適当だなぁ。

 だけど、彼らの生活(仕事)に直結する場所なのか?

 エルフの『自身で決める』の一環か。

「オレはまだ、コレと言って仕事も進む道も決めてないからなぁ」

 さて、どうする?


「では、好きにすれば良い。トキヒコの思うままに、だ。」

 好きに、思うままにかぁ。


「そうだなぁ、オレはさ、森の中で暮らしたい。木々に囲まれ、多くの虫や動物達が集まる場所。それで彼らを観察するんだ。家の窓から彼らの姿を見る。近くに小川が有ると最高だな」

「トキヒコは狩りを行おう申すか?」

「いや、オレは狩りには向いてないよ。例え獲物を捕らえても、捌け無いしな」


「オレの居た社会には『学者』と呼ばれる存在の者が居て、直接直ぐには生産性に繋がらないんだけどさ、研究した事が、何時か誰かの役に立つ。そんな仕事もあるんだ」

 そうか、エルフの里国で動物や虫達、植物や菌類を記そう。エルフ達はそれぞれに持つ知識を意識として誰かに伝達や伝承するけど、書物っぽい物が有ってもいいだろう。

「どうしたトキヒコ?」

「ああ、うん。ひとつやりたい事が見付かったよ。皆んなありがとう」

「良く分からないが。」

「いや、いいんだ」

 そうか、こうやって改まって何かを考えた事が有った様な、いや、実際は無かったんだ。

 何かが具体的になって来ると(今回は住処だけど)、湧き上がって来る思いも具体性を持つ事になるんだ。


 それで、場所だ。

「あー、何処でもいいって言ってくれたけど、やっぱ女王様には許しを貰っておかないとなぁ」

 オレはエルフの里国の民とは、正式に認められて無いだろうから。

「我が王の許しか?」

「そう、一応話しは通しておかないとな」

 オレは皆んなみたいな、エルフの里国の民とは立場が違うし。


「トキヒコは恐れを持たぬか。」

 恐れ〜?女王様にか?

「そりゃあ怖いモノは有るよ。それと女王様に自分の事をお願いする畏れ多さも有るけど、言っておかなくっちゃ、と思う」

 私はエルフ達みたいに、意識を相手に飛ばして、やり取りする事は出来ない。

 それとしばらくは、王宮横のリーザの住居に暮らす事になるだろうから、女王ユーカナーサリーとの物理的な距離は近いしな。自分の中では、付き合いも長いと思ってるけど、礼儀は通しておかないとな。

 エルフの里国は基本自由だ。だけど人間の『自由』は、自分で創るモノさ。


「よし、皆んな暇か?場所探しに付き合ってもらえない?」

 あたふたと、忙しいエルフは珍しいけど、暇なエルフは誰一人としていない。

「ギュラック(遊び)の延長でさ、付き合ってよ」

 案内してほしいのは、正直なところ。


「トキヒコの住処と成る場探しが、ギュラックと成るか?」

「そんなトコ」気軽にさ。

「トキヒコ、生活の基を置く成らば多くの検討は必須。」 

「基とするならば、この先の自身の行く末に影響を与え、生末とも成るか。」

「トキヒコ自身の生を育む場と成ろうか。」

 わっ、ちょっと説教された。


「トキヒコ、向かおうぞ。多くの場へと向かおう。」

 リュバックがサムズアップして来た。

「ああ、ありがとう。そうだな、皆が言う通り、もっと真剣に考えなくっちゃな」

 シエックから肩バンバン!ありがとう、だけど強いよ!痛てぇよ!

 よし、オレの住処となる場所探しだ。


 

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