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狂犬令嬢は領地の危機を救う

作者: 魁星

この小説は、「狂犬令嬢は乙女ゲーシナリオをぶち壊す」(https://ncode.syosetu.com/n8451hs/)の続編です。よろしければこちらも。

 


「なぁ、頼む。一生のお願いだから……!」


「無理なものは無理なんです。諦めてください」


「いーや、できる。お前ならできるさ!」


「無理ですよ兄様……」


 私は、懇願する兄様の視線を振り払うように背を向け……


「──巨大人型兵器(モ◯ルスーツ)なんて創れません!!」


「そこをなんとかぁ!!」


 兄様のくだらないロマンに付き合わされるなんてごめんだ。私は部屋に戻らせてもらうわ!!



 ◆◇◆◇◆◇



「いやぁ愛してるよ我が妹よ。やはり持つべきものは優秀な妹だな!!」


「うぜぇ、兄様うぜぇですよ」


「ひどい!」


 結局私は、巨大人型兵器(モ◯ルスーツ)を創ることになってしまった。でも私の持つ能力、【空想投影】には当然ながらいくつか制限もある。基本的になんでも創れはするが、創るものは5m×5m×5mの立方体に収まるものでなければ出せないのだ。そして巨大人型兵器なんて、だいたい全長20mとかその辺。普通に制限がかかるから無理だって言ったのに……


「まさかCADで設計図描いてくる上に、パーツ分割で創れとは……」


「はっは、前世での経験が生きたな!」


 兄様の前世は工学系の何かだったらしい。なんでも、魔法やらで強度とか色々ズルができるから、前世でやるよりも恐ろしくイージーだったとか。でもまさか、そこまでしてでも欲しいとは思っていなかった。


「くっ、義姉様(ねぇさま)を人質に取られてはやらざるを……っ!」


「人聞きの悪いことを言うんじゃない。ただビデオ通話ができるようにしてやるだけじゃないか」


 兄様の能力は【電脳接続】。これをうまく悪用すれば、端末通信くらいなんてことはない。


「…………やっぱりヴェルナーごとこっちに」


「他家の嫡男を住まわせられるわけがないだろう!?」


「チッ」


 まぁ、他家に嫁いだのは私の選択だし、そこは後悔してないけど、それとこれとは別だ。



 ◆◇◆◇◆◇



「はぁ……ヴェルナーが廃嫡されたらよかったのに」


「突然物騒なことを言うな!?」


 私、コルネリア・ウルツハイマー改め、コルネリア・ブラントは、紆余曲折を経て先日、婚約者と見事ゴールインを果たした。その紆余曲折がまーたごっちゃごっちゃしたものだったけど……まぁ、現在こうしているから問題はない。ないったらない。


「……コル、確かにルイーゼ嬢はやばい。やばい以外に形容する言葉がないくらいにはやばいが、過去の俺以上に入れ込んでないか?」


「そりゃ、あれほどやばい天使がいたら入れ込むのも仕方ないでしょう?」


「あぁ、その気持ちはとってもわかるが限度を考えろと」


「ブーメランって道具があるのを知っていますか?」


「俺は節度は守っていたぞ!?」


 嘘つけ。そもそも婚約者がいるのに他の女に入れ込む方が非常識だか……そういえば、ヴェルナーの義姉様に対する接し方は、確かにせいぜい『それなりに仲のいい男友達』程度だったような…………


「そんな……私の目が、曇っていたと言うの…………?」


「おい待て、なぜそこまで絶望した表情を浮かべているんだ。お前は俺のことをなんだと思っていたんだ」


「……手綱を握っていないとあちこちフラフラ行ってしまうワンコ?」


「思ってたよりひどい評価だな!?」


 仕方ないじゃないか……婚約者に浮気されてると思ってたんだから……まぁ、あの頃の態度とかを勘案して『手を握ってないとどこかへ行ってしまいそうな子供』くらいには評価をあげてあげよう……べ、別に私の目が曇ってて悔しかったからじゃない。ないったらない。


「……評価はもうこの際気にしないことにする。それはそれとして、ルイーゼ嬢との、びでおつうわ? には俺も参加させろよ」


「じゃあその代わり私を甘やかしてください」


「がめついな!?」


 ……と、その時、ガンガンと扉を強くノックする音が数回響き、


「伝令です、至急お伝えしたいことが!」


「……入れ」


 ヴェルナーが、先ほどまでは感じさせなかった威厳を出して答えれば、彼直属の伝令部隊の1人が部屋へ入ってくる。額に大粒の汗が浮かんでいて、かなり焦ってここまできたことが伺える。


「何があった?」


「はっ、つい先ほど、魔の森近辺にて、魔物の大群が確認されたとのこと。大暴走(スタンピード)発生の予兆ありです!」


「「なっ!?」」


 それは、領地の危機を知らせるものだった。



 ◆◇◆◇◆◇



 ブラント領は、『魔の森』と呼ばれる未開地と接している。なぜここが未開の地となっているかといえば、そこに大量の魔物が生息しているからだ。一般兵2、3人で対処できるような下級下位の魔物から、3個師団で挑んでもなお全滅しかねない特級下位まで、確認できただけでもかなり大量の魔物がいる。ちなみに特級上位の魔物は、全世界の最高戦力が結集しても全滅必至クラスだ。そんなのが出てきたら世界の滅亡と同義だ。


 で、今回の大暴走では、下級下位の魔物が7割、下級中位から中級中位までの魔物が2割、中級上位から上級中位までが残りの1割という内訳らしい。中級中位までなら常駐している軍でどうとでもなるが、それより上はかなり厳しい。というか、まだ未確定情報だが、上級中位の地竜(アースドレイク)までいるらしい。


 地竜(アースドレイク)の特徴は、何と言ってもその堅牢さだ。生半可な攻撃や魔法では傷一つつかず、その巨大な体躯を生かして突進し、城壁すらも軽々と突き破る。見た目は前世で言う所のトリケラトプスが近いが、全長が軽く50mを超える。


 これに対処できるのは──それこそ、特殊な能力を生まれ持つ転生者くらいだ。



 ◆◇◆◇◆◇



「ということで、兄様に救援要請出しました」


「出来したコル!」


「もっと褒めてください」


「すごい! えらい! 愛してる!」


「んむ、及第点としましょう」


 周りからは、こんな時になにいちゃついてんだ的な視線を向けられるが気にしない。なぜならこれはいつものことだから。


「えーとウルツハイマー領の領都からここまで直線距離でおおよそ50km……あー、兄様1人なら数分で着きますね」


「……は?」


 私がなんのために冒頭の茶番を挟んだと思ってるのか。兄様は現在、秘蔵っ子の巨大人型兵器(◯ビルスーツ)を持っている。しかも兄様の強い希望で、可変機、つまり戦闘機に変形して高速移動が可能な機体になっている。


「……なぁ、なんか地響きのような音が聞こえてきたんだが。しかもだんだん大きくなっているんだが!?」


「あぁ、兄様がきましたね」


 要するに、文明の勝利ということだ。



 ◆◇◆◇◆◇



「やぁ、妹とその家族よ。ルイーゼも連れてきたぞ」


「ねぇさまぁーーーーー!!!!」


 ひしっ。


「ひゃっ!? こ、コルちゃん、いきなり飛びつかれると危ないよ……?」


 兄様が義姉様(ねぇさま)を連れてきてくれた。勝ったな、風呂入ってくる。


「おいコル、ルイーゼ嬢をナチュラルに浴室へ連れて行こうとするな」


「チッ」


「ナチュラルに舌打ちもするな!」


「これは『投げキッス助かる』とでも言っておいたほうがいいか?」


「兄様、VTuber狂いもいいですが、ここだと私と兄様しか伝わりません」


「そうか……」


「えっと、ライナー様、元気出してください、ね?」


「うぅ……るいーぜぇ……」


 兄様、流石に頭を撫でられながら女性にすがりつくのは気持ち悪いですよ。


「……それはそれとして、ライナー殿……その、それは一体……?」


「ん? あぁ、これはデルタプ──」


「兄様、それ以上はコンプラです」


「おっと。まぁ地竜対策とでも思ってくれればいいよ」


「地竜対策……この、鉄の鳥が、地竜に対抗できる策と?」


 そういってヴェルナーは、目の前にある戦闘機を見上げる。ブルーグレーに塗装された機体は、その威を示すかのように悠然と佇んでいる。


「そう、これを使えば地竜の頭をぶち抜くくらいは朝飯前さ」


 ドヤ顔をして機体の自慢をする兄様。確かに万全の装備なら(・・・・・・・)地竜の装甲を貫くくらい造作もないだろうけど……


「兄様兄様、ここで1つ悲報が」


「……なんだい?」


「今の装備、間に合わせのハリボテです。次に行った時に完成させようと思ってたので、まともに使えるのは頭のバルカン砲くらいです」


「「「…………」」」


 兄様が地面に崩れ落ちた。



 ◆◇◆◇◆◇



 ここで、私の能力【空想投影】の、もう1つの制限を紹介しよう。

 それは、『1日に創り出せるものは3つまで』というものだ。


 大きさ制限と数量制限があったから、兄様の巨大人型兵器を創り上げるのにも、1週間近くかかった。それでも武装が未完成なのだから、大きなものを創るのにはやはり向いていない。


 とりあえず、兄様の機体には間に合わせのビームサーベルを一振りつけておいた。兄様は半泣きだった。機体が壊れかねない、って。それとは別に何やらこそこそ改造していたが……それで壊れたら保障対象外だ。私は知らない。


 で、戦闘が始まると、ルイーゼ義姉様は、基本的にブラント領の領都で待機だ。


 ヴェルナーは、ここで功績を立てて箔を付けるためとかで、全軍指揮の地位についた。まぁ実際に指示を出すのは領の騎士団長だけど。


 で、肝心の私はというと。


「……なぁ、なぜコルがここにいるんだ?」


「攻撃のためです」


 魔の森の戦線前に手ずから作った塹壕の中に待機している。


「……どうせ、何らかの脱出手段は確保しているだろうからそこはもうとやかくは言わない。だがこれだけは聞かせてくれ……その、背後の巨大な箱と、黒光りする筒の束はなんだ?」


「大型ビームガトリング砲です」


「ちょっとなにいってるかわからない」


 巨大な箱は超大出力ジェネレーター、筒は6連装大型ビームガトリング砲だ。これを設置して、うまいこと掃射すれば、下級中位か下級上位くらいまでの魔物なら肉片に変貌するはずだ。


「というか、私がここで操作するわけないじゃないですか」


「……そ、そうか」


 なんか意外そうな顔をされているが、とても心外だ。私が好き好んで命をかけるわけがないだろう?


「私の魔力属性は土ですから。ゴーレムにやらせるに決まってるでしょう」


「……!」


 おい待てヴェルナー、なぜ今目から鱗な表情を浮かべている? 私が喜んで前線で暴れるような性格に見えるのか?? よし、この戦いが終わったら全力でわからせて(甘えて)やろう。ヴェルナーはどうやら、頼られたり甘えられることに弱いみたいだし。


「……さて、っと。準備も終わりましたし、本陣に戻りますよ」


「あ、あぁ」


 なぜか困惑してるヴェルナーを連れて、陣へと戻る。当然、いちゃつくのは忘れずに。



 ◆◇◆◇◆◇



「伝令、大暴走(スタンピード)の発生を確認。これより戦闘に入ります!」


 ついに始まった。諸々の会議の結果、最初に私の設置したガトリング砲を起動させて先陣を減らし、撃ち漏らしのみ騎士団で対処する。


「よし。コル、起動してくれ」


「りょーかいです。『Gatling(機関) guns(), open(発砲) fire(開始)』!」


 耳に取り付けたインカムに対して、起動コマンドを唱える。兄様の【電脳接続】を用いることで、通信機器を使用しているのだ。


 起動コマンドは正確に届けられ、戦場のある一点から、幾筋もの光が右に左にと扇状に首を振って、森から出てきた魔物を襲う。先んじて出てきた魔物は、だいたいこれによって殲滅されているようだ。私たちはこの様子を、魔の森に最も近い街……戦場となる街の城壁の上から眺めていた。通信機器が配置されているので、戦場を俯瞰しやすいこの場所に本陣を置いている。


「んー……見た感じ、中級下位くらいまでは殲滅できてますね」


「そのようだな。想像以上に威力が高かったようだ」


 嬉しい誤算というべきか、当初の想定より多くの魔物が殲滅できている。これなら、下で戦意を高めている兵士たちも、多少は楽ができるだろう。


「その分、残るのは強い魔物になるんだが」


「…………まぁ、それは彼ら(兵士たち)なら大丈夫でしょう」


 さっきからずっと、インカムから


『野郎ども、武器は持ったな?』『『『ooooooooo!!!!!!』』』『よろしい、ならば殲滅(ジェノサイド)だ』『『『殲滅!! 殲滅!! 殲滅!!』』』『征くぞおおおおお!!!!!』『『『WRAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!』』』


 っていう、狂気を感じる叫び声が入ってくるのだ。正直SAN値が削れそう。


「……この領の騎士団って、もしかして:蛮ぞ」


「言うな、それ以上は言うな……」



 ◆◇◆◇◆◇



「報告します。地竜(アースドレイク)の姿を確認。地上部隊は戦線の後退を開始」


 ついに出たらしい。と、いうことは……


「よし……コル、ライナー殿に出撃要請を頼む」


「わっかりましたー!……兄様兄様、例のアレが出ました。神風してください」


『神風したら私は死ぬぞ!? それはともかく……了解した。これより地竜(アースドレイク)を討伐する。デルタプ──』


「兄様、だから著作権」


『おっと、それじゃあ……ライナー、いきまーす!』


 兄様のふざけた声とは裏腹に、城壁の前で膝立ちで待機していた兄様の機体が動き出す。轟音を立てながらスラスターを噴かせ、森から顔を出した地竜に突撃する。


『地竜の一匹二匹くらい、こいつで受け止めたらぁ!!』


「兄様、その機体は回避主体なので装甲は紙ですよ」


『そうだった!!』


 受け止めるのは諦めたようだが、急造のビームサーベルを発振させて、驚き固まっている地竜の眉間に突きを放つ。


『……妹よ、想像以上に硬いんだが』


「いや、流石にビームサーベルは通ると思うじゃないですか」


「お、おいコル、地竜に傷がついた様子が全くないんだが?」


「悲報ですね、やばい方の誤算です」


 ビームサーベルの突きは、地竜の眉間に刺さることなく、機体の方が弾かれる結果となった。


『ッスゥー……人生、何が起こるかなんてわかったもんじゃない。だが、男にはやらなきゃならない時ってもんがある……幸せに暮らせよ』


「ちょっと兄様、Ge◯ Wildのイントロ流しながら何言ってるんですか」


 なんか嫌な予感がする。主に、兄様がネタに走った時、だいたい大惨事が起こるから……


「こ、コル? なんかものすごい嫌な予感がするんだが……」


「奇遇ですね、私もです」


「……よし、全軍退避!! 死にたくなければ戦線を退けぇ!!!」


 ナイス判断ヴェルナー! ああなった兄様は何をするのかわからないから大正解だ!!



 ◆◇◆◇◆◇



 地上部隊がかなり後退したことで、魔物も戦線をあげてくると予想されたが、兄様の機体が踏みつけたり、地竜のブレスに巻き込まれたりで、ほぼ壊滅した。現在は兄様と地竜の一騎打ちだ。


 そして、兄様が一瞬の隙をつき、地竜の右目を穿った時、事態は起こる。


『──何も……怖くはないぃぃぃいいいい!!!!』


 穿った勢いをそのままに、地竜の眼窩に腕を差し込み、地竜の顔面に取り付く。


 脳までは達しなかったのか、地竜は痛みに悶え、機体を振り落とそうと滅茶苦茶に暴れている。


『……なぁ妹よ』


「急に何、兄様」


『──自爆はロマンだよなぁ!!』


「は?」


 その瞬間、視界が白一色に染まる。地を揺らすような轟音が耳を叩き、暴力的なまでの熱風が何もかもを掻っ攫っていく。


 全てが収まった時、そこはまるで、終末の様相を呈していた。周囲にあったものはどれも吹き飛ばされたか、瓦礫が衝突したかで破壊され、薄らと灰と埃が積もっている。

 周りにいたヴェルナーや伝令役の人間は、運よく無事だったようで、すぐに起き出してきた。


「……こ、コル、一体何が起きたんだ……?」


 いち早く復帰したヴェルナーが、困惑を隠しきれない様子で聞いてくる。


「……自爆ですよ、自爆」


「な、自爆だと!?」


 地上へ目を向ければ、そこにあるのは頭を炭化させ絶命し、横倒しになっている地竜と、なぜか無傷の地上部隊がいる。当然、兄様の機体はどこにもない。


「そんな……ライナー殿……」


 ヴェルナーが愕然とした様子で呟くが……まぁ、兄様のことだし……


 と、その時


 ひゅうううううう…………


「……ん? なんだこの音は」


 空から、何かが落ちてくるような音が響いてきて──


 ドガッ!!


「なっ!?」「ひゃっ!?」


 私たちのすぐ近くに、直径3mほどの赤い球体が落下してきた。その表面は煤けているが、様々なモールドの掘られた金属になっており……バシュッと音を立て、球体の一部が開口する。


「ひっ!?」


 おいヴェルナー、ビビるのはわかるが、仮にも女子にすがりつくのは一体どうなんだ。


 それはともかく……球体の開口した部分から、何かが這い出してくる。ヴェルナーはそれを見て一層私にすがりついてくるが……


「あ゛〜……やっぱあれだなぁ、自爆はロマンだけどやるもんじゃないな……全身が痛い……」


「……ら、ライナー殿……?」


 ヴェルナーが恐る恐る尋ねるが、あんなアホなこと言いながら出てくるのは兄様くらいしかいない。というか、イジェクションポッドを採用したのは兄様だし、実際に組んだのは私だし、このくらいならまだ予想の範疇だった。


「あぁ、ヴェルナー君、無事だったかい? まぁ大惨事なのは仕方ないかあっはっは!」


 ヴェルナーが愕然としている。そらそうだ。なんかもう色々と滅茶苦茶になってるんだから。それはともかくとして、


「に〜い〜さ〜ま〜?」


「ヒッ…………な、なんだい我が愛する妹よ」


「私の1週間……私が苦心しながら組み上げた1週間……どうしてくれる(・・・・・・・)?」


「あっいや……えっと、これはその……」


「兄様、わざわざ自爆する必要(・・・・・・)なかったですよね(・・・・・・・・)? 地竜の目を穿った時、そのままサーベルでグリグリしてやればおっ死んだはずなのに、わざわざ、サーベルをオフにして、全身を地竜に固定して、自爆する必要…………なかったですよね(・・・・・・・・)?」


「いや、その、あの、え〜っとぉ…………」


 兄様の目が泳ぐ。やはり、私の予想通りだったか。兄様は、わかっててロマンに走りやがった。


「こ、コル……自爆の必要がなかったというのは、本当なのか……?」


「はい、全く」


 ヴェルナーが白目をむいた。そりゃあそうだろう。こんな被害を出しておいて、それが不要な行為だったんだから。


「兄様」


「は、はい……」


「このことは、義姉様と父様に報告させていただきますね♡」


「そ、それだけは堪忍をおおおおお!!!!」


 知らん、自業自得だ。



 ◆◇◆◇◆◇



 それから、大暴走(スタンピード)は無事に収まり、領内に平和が戻った。


 ヴェルナーは後始末に追われ、しばらくは帰れないそう。

 兄様は、無茶をしないでと義姉様に、他領で一体何をしているのかと父様に、こってりと絞られていた。詫びとして、かなりの額をブラント家に渡したらしい。あと個人的に兄様から色々とせしめた。



 それからというもの、私は毎日のように、義姉様やヴェルナーとビデオ通話をしていた。


「ほんとひどいんですよ。私が丹精込めて作ったプリンを、ヴェルナーは一瞬で平らげたんですからね。もっと味わって欲しかったです」


『ふふ、それはコルちゃんの作ったプリンがとても美味しかったからじゃない? 美味しいものって、気がついたらなくなってしまっているもの』


「そうだよいいんですけど……むぅ、それで治らないのが乙女心ってものなんですよ」


『それもそうね……あ、そうそう、昨日ライナー様がね──』





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