第五十九話/決戦! 文化祭⑦
幼馴染の彼女と同じ大学への進学が決まり、国宝級イケメン高校生、爽哉の人生は順風満帆だった。卒業式を迎えたその日、第二ボタンはおろか、袖のボタンからネクタイに至るまで、全て取られるモテ男ぶりを如何なく発揮する。自らが築き上げた学園ハーレムの総括とでも言わんばかりに、爽哉の周辺は華やかさに満ちていた。
しかし、そんな彼を神は祝福しなかった……
彼女のストーカーに襲撃され命を落とした爽哉は、稀代のブサメンとして高校生活をやり直す現実を強いられる。学園の抱える問題、断ち切れない因縁、消化不良な想い……。ブサメンの自らと向き合う覚悟を決めた爽哉は、果たして絆を取り戻すことができるのか――
今、試練の扉が開かれる。
【登場人物】
中間爽哉 イケメン高校生→ブサメン高校生
藤川千絵 爽哉の幼馴染
木崎優子 第三十六代生徒会長。図書委員
小澤詩織 攻守両立のコミュニケーションお化け
本八幡香奈 大手健康器具メーカーの社長令嬢
宮永遥 陸上部。インターハイ優勝候補
皆川結衣 第三十七代生徒会長
本条鈴音 第三十五代生徒会長。爽哉の姉的存在
中間涼香 爽哉の妹
内藤亮介 爽哉の親友
大里拓馬 ブサメン高校生→イケメン高校生
各設備の撤収と施設の点検を終えた生徒会の面々は、生徒会室へ戻ってきた。長机の上には、既にお菓子と飲み物が用意されている。
「皆さん、お疲れさまでした! 大きなトラブルもなく無事に閉幕を迎えられました。全ては皆さんの努力のお陰です」
疲れもぶっ飛ばすような笑顔で述べた優子は、紙コップに入ったジュースを手に取った。
皆に行き渡るのを見て取ると、祝杯を高く掲げた。
「文化祭の大成功に、乾杯!」
乾杯の声が室内を高らかに響き渡る。
皆、笑っていた。優子はもちろん、結衣も、かなみも、高木も、俺も、そして、鈴音も。そう、特別ゲストとして、鈴音が呼ばれている。鈴音は固辞したらしいが、優子がどうしても結衣と引き合わせたいと頼み込んだらしい。
「結衣ちゃんの演説、すごく良かったよ! 私、泣きそうになっちゃった」
鈴音の手放しの賞賛に、結衣は照れっぱなしだった。
「こ、光栄です! わ、私、優子先輩から本条先輩のお話を伺っていて……。その、一度、お話してみたいと思っていました……」
こんなにしおらしい結衣も珍しい。鈴音の圧倒的な慈愛のオーラに包まれて、恍惚の表情を浮かべている。視線は泳いでいるが、会話が弾んでいるようで、俺は嬉しかった。鈴音から渡されたバトンは確実に繋がっている。万感の想いをのせて。
「怒ってる?」
思考の渦から引き戻されるように、俺は声の主に顔を向けた。いつの間にか、かなみが隣に立っていた。
「なにを?」
「筋トレ体操の件。勝手にお膳立てしちゃって……」
あぁ、それか。
「怒ってないよ。手の平で転がされたようで不承不承なだけだ」
実際、俺は明確に拒否したわけじゃない。楽しくなかったわけでも、ない。
「これ、見てくださいよ!」
唐突に、高木がスマホを眼前に突きつけた。画面を覗き込むと、見慣れた生徒会チャンネルが表示されている。驚いた。筋トレ体操の再生数が跳ね上がっている。
「……これも、お前の予測の範疇か?」
「どうだろ。でも折角の動画なんだし、再生数が伸びるのはいいことでしょう?」
かなみはケラケラと笑いながら、一片のチョコを口へ放り込んだ。
日が落ちてまもなく、優子は解散を宣言した。
結衣が名残惜しそうに鈴音に別れを告げ、高木とかなみに続いて帰っていった。
「……さて、私たちも帰りましょうか」
鈴音は鞄を手に取ると、
「私は予備校へ寄るから、爽哉はきちんと優子ちゃんを家まで送るのよ」
そう言い残して、足早に去っていった。露骨な引き合わせに、俺と優子は顔を見合わせる。
二人とも黙りこくったまま、生徒会室を後にした。
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