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1・『グリムの森のバス停』


ステルスドラゴンとグリムの森・1『グリムの森のバス停』


※ 本作は自由に上演していただいて構いません、詳細は最後に記しておきます



 時   ある日ある時

 所   グリムの森とお城

 人物  赤ずきん

 白雪姫

 王子(アニマ・モラトリアム・フォン・ゲッチンゲン)

 家来ヨンチョ・パンサ


 幕開くと、グリムの森のバス停。表示板と街灯が、腰の高さほどの藪を背景に立っている。

 街灯の周囲だけがなつかし色にうかびあがり、その奥の森の木々は闇の中に静もっている。

 時おり虫の声。ややあって、赤ずきんがスマホでしゃべりながら花道(客席通路)を小走りでやってくる。


赤ずきん: ……うん、わかってるって。でも朝が早いから、うん、やっぱり帰る……ありがとう。

 婆ちゃんも、近ごろ森もぶっそうだから、オオカミさんにも言ってあるけど、戸締まりとかしっかりね……。

 変なドラゴンが出るから、戸を開けちゃだめよ……え、ああ夜泣き女。

 それは 大丈夫、人間相手だったら赤ずきん怖くない……もう、そうやって人を怖がらせるんだから……。

 じゃあ、またね、バイバイ(切る)……もうお婆ちゃんたら長話なんだから……最終バス……(時時刻表を見る)

 わ、出ちゃったかな……わたしの時計も正確じゃないから……排気ガスの臭いも残っていないし、バスはよく遅れるもんだし……。

 大丈夫よね……なんとかドラゴンに、夜泣き女……。

 オオカミさんも婆ちゃん守らなきゃとかなんとか言って、レディを送ることもしないで……。

 本当は自分がビビってんじゃん(;^_^A……でも、わたしは良い子強い子赤ずきん! 怖くなんか(;゜Д゜)……


 間、静寂、虫の声も止む。


赤ずきん: ……怖くなんか……(;'∀')


 静寂の中から、女のすすり泣く声が聞こえる


赤ずきん: ……なに、今の……?


 森の闇と藪の間に、幽霊のように、顔を手で被って泣く女の影が浮かび上がる


赤ずきん: 出たあああああああああああああああ!……(舞台の端まで逃げて、ふと思いつく)

 ……って、ひょっとして、そのコスチューム……ひょっとして、もしかして……あなた白雪姫……?

白雪: (泣いたままコックリする)

赤ずきん: あ、あなたって呼び方むつかしいのよね。思わず白雪姫って、呼びすてにしちゃったけど、どうお呼びすればいいのかしら? ユアハイネス? 殿下? 白雪姫様? プリンセス・スノーホワイト、それともシュネー・ビットヒェン?

白雪: ……雪でいいわ。

赤ずきん: 雪だなんて、まるでそっ気ない冬の天気予報みたい……。

白雪: なら、雪ちゃん。日本で最初の翻訳では雪ちゃんだった。

赤ずきん: 雪ちゃん……?

白雪: 白雪でもいいわ、同じグリム童話の仲間としては。

 でも、わたしとしては、より親しみの感じられる雪ちゃんの方が嬉しいんだけど……。

赤ずきん: ん……でも、それだと対等にわたしのことを呼んでもらった場合、赤ちゃんになっちっちゃうでしょ。

 年上でもあるし……白雪さんてことで……。

白雪: ありがとう、敬意をはらってくれたのね、赤ずきんちゃん。

赤ずきん: どういたしまして……でも、その白雪さんが、どうしてこんなところで泣いているの? 

 ひょっとして近ごろ評判の夜泣き女って……。

白雪: ……多分、わたし。夜になると、こうして泣きながら森をさまよっているから……( ノД`)シクシク…。

赤ずきん: 白雪さんて、ゲームで言えばミッションコンプリートの一歩手前、九十九パーセントクリアの優等生でしょ?

白雪: はい……。

赤ずきん: 無事に毒リンゴ食って仮死状態になり、小人さんたちにガラスの棺に入れられて。

 花屋十軒分ほどの花に囲まれて、あとはいよいよ待つだけでしょ……。

 その、王子さまがあらわれて……その、いいことすんのが……(n*´ω`*n)。

白雪: そんな、いいことだなんて……

赤ずきん: わたしなんか、せいぜい、おばあちゃんがホッペにキスしてくれるぐらいのもんだからね、子供ってつまんないわよ。

白雪: ……



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