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前編② 命を喰らう害獣

── 一般公開軍事演習当日 ──


「それじゃあ、2人とはここでお別れ」

 会場の入り口に着いた3人。軍事演習に参加するビャクヤと、観客であるエルシディアとシオンは別の入り口に入らねばならない。

 少々不本意な顔をしているシオンだったが、エルシディアが頭を撫でると、小さく頷いて了承する。

「気をつけてね」

「えぇ。シオンは私が守る」

「そうなるような事態が起こらないよう、祈ってる」


 別れたエルシディアとシオンは入り口から会場へ。すると前日、待ち合わせていた2人の姿が目に入った。あちらもエルシディア達に気づき、手を小さく振りながら駆け寄る。

「こんにちは、エル、シオンちゃん」

「こんにちは、エリーザ、クレア君」

 最近はこまめに会っていた為、連絡するのに手間は掛からなかった。エルシディアとエリーザは、今では互いに気の置けない仲となっていた。

 しかし子供達はというと、

「シオン、こんにちは」

「…………うん」

「あれ? えっと、そうだシオン、ちょっと時間あるし、ショップとか、さ」

「…………いい」

「そ、そう……」

 何処となく気まずい雰囲気、というより、シオンが完全に人見知りを発動させている。クレアと長い付き合いだが、未だに彼とすらまともに会話が出来ない。

「私に似ちゃったかな……ごめんね、クレア君」

「い、いえ、俺もちょっと押しが強すぎました……すみません」

「さて、もうそろそろ席埋まっちゃうから行かなきゃね。クレア、一番見やすい席が良いんでしょ?」

「そう! 今日は新型の発表もあるし、絶対見なきゃ!」

 落ち着かない様子でクレアは両手の拳を握っている。基本的に礼儀正しく大人っぽい面もあるが、機動兵器の話題となると途端に子供らしくはしゃぐ。

 パイロットが夢だと語るその顔は、年を追う毎に父親に似てきている。

「じゃあ、行こう」

「うん! ……シオンも、ほら!」

 屈託のない笑みと共に差し伸べられた手。シオンは少し迷う様に俯いたが、やがて恐る恐るその手を取った。

 はしゃいでいる様子とは裏腹に、シオンの歩幅に合わせてエスコートするクレア。まるで本当の兄妹の様に周りからは見られていた。



 会場へ入ったティノンは、軍事演習を運営する担当者と打ち合わせを行いつつ、参加する機動兵器の最終チェックに同席していた。

「ティノンさん、ガルッフ全機の最終チェック終了しました。異常はありません」

「そうか。ありがとう」

 端末を開き、演習内容を確認していると、ティノンの後ろからナドーが近づいて来た。

「ガルッフ、いつ見ても良いデザインだ。無駄がなく、その全てに戦術的良点が詰め込まれている」

「ただガルッフは性能が優等生過ぎます。局地でのゲリラ戦においてあまり良いデータが得られていないことからも分かるかと思いますが」

「初めて君に言われた指摘だった。だがガルッフの反省点を、新型にはきっちり反映させた。やはりハストとセノアが合併したのは正解だったね」

 何度も頷きながら、今度はガルッフの隣にある新型に目を向ける。

「……あれには、例の彼が?」

「はい。何か?」

「あぁ、安心した。初披露日に失態を見せてしまったら、新型が可哀想だ。彼ならきっと良いアピールをしてくれるだろう。実を言うと今回用意したのは彼に合わせてほんの少し調整を……」

 長々と語り始めたナドーを軽く無視し、ティノンはタブレットを指で弾きながら演習の確認を続行する。

 と、耳につけた小型端末に電話が入る。連絡して来た主は、

「はい、こちらティノン」

『私だ私。お前に言われて会場内を見て回った』

 フブキだった。テロ対策の一環で彼女の部隊に見回りを頼んでいたのだ。その定時連絡だろう。

「何か気になる事が?」

『何人かだが、見慣れない奴等がスタッフに紛れてるらしい。設営とは関係ない場所に向かう姿もあったってさ。あくまで一般人からの情報だけど、特定急いだ方が良い』

「分かった。念の為ゼナ達にも伝えておく。引き続き宜しく頼む」



「さて、彼奴等にも連絡」

 ティノンとの通話を切ると、フブキは自分の部下達が集めた情報をまとめる為にそちらへ通話を繋いだ。

「おいお前等、怪しい奴いた?」


『はい姐さん、こちらマリーネ。今観客席にいる。なんか売り子でもねえおっさんがスタッフの格好でウロウロしてるから〆てみる』

 埋まり始めた客席に待機していた女性、マリーネ・クルミンからの通信。ペパーミントグリーンの髪をボブカットにし、焼けた肌には錨の刺繍が彫られている。だが隊内では比較的まともな人物でもある。


『姐さん、私グラス。会場外でずっと上見てるスタッフのおばさんがいる』

『姐さん、私ホッパー。グラスと一緒だから省略』

 グラス・バルファイトとホッパー・バルファイト。薄い水色の髪をアップにした、一卵性双生児の姉妹。見分け方は、グラスは首に彫った刺繍が普通のバッタなのに対し、ホッパーの刺繍は翅がないバッタであること。


『もしもし姐さん、リコべーだけど。誰も怪しい奴はいません』

「私の隣にいるんだから怪しいやつなんかいるわけねーだろタコ」

『イデっ!?』

 頭を引っ叩かれ、壁に額を押し付けるリコベー。そんな彼女を捨て置き、フブキは会場を見渡した。


 以前の任務でテロリストを尋問した際、何やら集団が集まって兵力を蓄えていると吐いた事が頭の中を駆け巡っていた。ここ数年間、小さな勢力は自分達の部隊や政府軍によって鎮圧されてきた。纏まることをようやく覚えたのかと思っていたが、今の今まで何の動きも見せていないのが気掛かりだった。


 既に開会式が始まろうとしている。会場には大量の一般人。狙うなら今日しかないだろう。


 その時、一斉に通信が掛かった。

『姐さん、こいつカバンの中に爆薬入れてやがった!! もしかしたらもう会場にも……!!』

『空に何か……ヘリがいるよ。それも機動兵器が入る輸送ヘリが何機も』

「は?」



「そろそろ開会式だよ、ほら、座って」

「あ、はい、分かりました」

 興奮冷めやらぬ様子でウロウロしていたクレアも席に着く。エルシディア達は会場の中心に注目する。予定では大統領の挨拶をもって開会とし、軍事演習が始まる。広い演習場が見渡せる観客席に空きは見られない。

 と、会場の視線が上へと集まる。


 機動兵器達が、パラシュートと共に演習場へと着地した。数は7機ほど。だがエルシディアは違和感を感じた。

「あ、あれ、グリフィアとジェイガノンだ!」

「…………何で、旧式機体が?」

 ビャクヤから少し聞いた時は、ガルッフを中心とした演習の後に新型機を発表する流れだった筈。しかし目の前に降りたのはグリフィアとジェイガノン。旧式の機動兵器だ。

「ねぇエリーザ、あれは……」

「エル、ここから離れるよ!!」

「え…………っ!?」


 エルシディアの言葉は、前の観客席を呑み込む爆発にかき消された。


 吹き飛ばされる観客、遅れて至る場所に赤い雨が降り注ぐ。爆音を至近距離で聴いたせいで耳鳴りが酷い。しかしすぐ娘の安否を確かめる。

 子供の耳にあの爆音は耐えられるものでなかったのだろう。シオンはすっかり気を失っているが、目立った外傷はない。

「良かった……エリーザ、クレア君は!?」

「だ、大丈夫です……母さんも……」

「早くここを離れましょう! 多分あれは……」


「逃げろ、逃げろぉぉぉ!!!」

「助けてぇぇぇぇぇぇ!!」


 エリーザが声を掛けるより早く、恐怖に駆られた観客達が雪崩のように押し寄せ、エルシディア達を分断しながら押し流していく。

「エリーザ!!」

「私達もすぐ合流するから! 逃げなさい、エル!!」

 その声を聞き、エルシディアは必死にシオンの腕だけは離さないようにする。


『アルギネア・グシオス共和国へ告げる!!』


 会場内のスピーカーから響く男の声。


『これは偽りの平和に感けた者達への鉄槌、目覚めを促す聖戦である。戦争終結より8年、世界から戦いは消えた。否、戦いは一方的な殺戮へと変わったのだ!』


 演説の様に高らかな声。声質からして壮年の男性だろう。


『我等が望むは、8年前のあの時代! 戦いに大義を抱いていたあの時代の再来である! その贄として、戦いを見世物とし、道楽とする者達に血を流して貰おう!!』


「勝手な事ぬかしてんじゃねぇぞ、カス共が!!」

 逃げ惑う観客の間をすり抜けながら、フブキは会場の外へ向かって走る。他の隊員達は既に観客の避難に向かって貰っている。案の定、辺りでは爆発物が炸裂しており、死者も出始めていると通信機から聞こえている。

「おい、待機させてた私のガルッフ、会場前まで送れ!! あとティノンにも避難するよう言え!!」

『そ、それが……』

「出来ないなら殺す!」

『いえいえ!! では貴女のガルッフはそちらへすぐに送ります、ただ……』

 担当の兵士は震える声で告げた。

『ティノン様は、その、先程飛び出していかれまして……何処に行くのかお聞きしたら、自前の機動兵器があるからと仰られて……』

「あ、あの…………!!」

 爆発の音ですら消せないフブキの叫びは、会場から空へと木霊した。

「あのバカ女ぁぁぁぁぁぁっ!!!!」



『リーダー、本当にやっちまっても?』

「構わん。必要な犠牲だ」

『了解』

 先程まで演説をしていた男、ジップ・ヘンザの指示で、機動兵器達は一斉に攻撃を仕掛ける。スキンヘッドに隻眼、ゴリラの様な体格を持つ男だが、この集団のリーダーを務める者でもある。かつて戦争時代に愛機としていたゼファーガノンを白く染め、2本のトマホークを装備している。

「白兵戦まで俺の出番は無しだな」

『おいジップ、何だあの機……うぁぁぁっ!?』

「おいどうした! ……っ、意外と早かったな」

 振り返った先では、コクピットを抉られて地面に伏したグリフィア。そしてグリフィアを討った機動兵器が建っていた。


 ZRH-01ガルッフ。共和国連邦が設立されてから初めて正式採用された量産型機動兵器である。かつてのグリフィアやジェイガノンの系譜を敢えて一切継がずに一から設計し直した結果、容姿はどちらにも属さないものとなった。

 青いツインアイ、小型バックパック、ホバーユニットを兼ねた脚部スラスターユニット。あらゆる状況下で、一糸乱れぬ連携を部隊内で取るために特異性を排した装備となっている。


 だがその機体は通常のガルッフとは異なっていた。


 通常ツインアイであるカメラはモノアイ。バックパックは一般機体よりやや大型、ブースターマズルが2つ増設されている。脚部のホバーユニットもスラスターが1つ多い。

 真紅の装甲が輝いている機体は、本来ガルッフのコンセプトである安定性を欠いていた。


「随分派手だな。金持ちの道楽機体か」

『はっ、どうせ実戦もろくにしてない出しゃばりだろ。たまたま不意打ちが決まっただけだ。俺がやる!!』

 ジェイガノンが走り出し、手に構えたアックスを振りかぶる。

 刹那、紅いガルッフは急接近。滑る様に距離を詰めると、銃剣を頭部と胴体の僅かな隙間へ突きつける。

 火薬が炸裂する鈍い音、力無く膝をつく重い金属音、コクピットから滴る小さな水音。

 その様を見せつけられたジップ達に緊張が走る。

「……前言を撤回しなけりゃならんな。コイツ、やり手だ」


「取り敢えず持って来ておいて正解だったな」

 2機の撃墜と派手な機体色のおかげで、機動兵器達の注意は逸らすことが出来た。念には念を入れ、普段オフの日に演習場で乗り回しているガルッフを持ち込んでいたのだった。試験用を自費で改造したものだが、悪くはない性能である。

「武器が使い辛いが……まぁ、ミーシャに設計を任せた私の落ち度か」

 話しているうちにマシンガンが襲い掛かる。バックパックからシールドを取り出し、身を庇いながら移動。こちらもライフルで応戦する。

「ガルッフの性能なら出来ない事もないが、いかんせん数が……」

 EAの様に一騎当千の機体性能を持っているわけではない。とはいえあまりに逃げに徹していると、何機かが観客を狙いに行く可能性もある。適度に気を引きながら戦わねばならない。

「っ、あのゼファーガノン、こっちに突っ込んでくるな」

 トマホークを手にした白いゼファーガノンが、ティノンのガルッフ目掛けて突進して来る。ライフルを放つが、トマホークの刃を器用に合わせて防いでくる。

「ガルッフのカスタム機だろうが、白兵では俺に勝てんよ!」

 振り下ろされる2本のトマホーク。シールドと銃剣で何とか防ぐが、ここでゼファーガノンの腰からサブアームが展開。腿に装備したナイフを抜く。

「サブアーム……!」

 引かねばコクピットをナイフで、引けばトマホークで斬り裂かれる。選択を迫られる。

「っ、レーダーに反応、また新手か!」

 しかし、ここでゼファーガノンが退く。同時に先程までゼファーガノンがいた位置に弾丸が着弾。演習場の地面を穿った。

『このイノシシ!! 前線から消えた奴が出しゃばんなよな!!』

 輸送ヘリから狙撃し、ティノンの窮地を救った機体。それはフブキのガルッフ重狙撃型だった。


 狙撃ライフル固定用のサブアーム、頭部とバックパックに装備した索敵センサー、敵接近時用の左肩アサルトライフルユニット、腕と脚に備えられたショックアブソーバーなど、従来のヴォイドシリーズとヘカトンケイルの技術を踏襲した機体である。かつての愛機の名を冠した《ヴォイドガルッフ》と隊内では呼ばれている。


「すまない、助かったフブキ」

『ツケにしとく。払ってよ』

「他の機体も片付けたら私からボーナスを出そう。お前の隊員にも」

『…………絶対な』

 狙撃ライフルのリボルビングが回転、次弾が装填される。弾丸の種類を絞った事で、威力を保ったままダウンサイジングに成功した新型狙撃ライフル「ヒュドラ」。

「そんなわけだから死んでね」

 引き金を引くと、狙いを定められたグリフィアの四肢が衝撃で弾け飛び、胴体が砕け散って爆散。テロリスト達は震え上がる。

もう1機・・・・来る前に早く逃げた方が良いかもよ。逃すつもりなんかないけど」

 フブキの言葉は、すぐに現実となる。

『おい、なんかまた新しいのが来やがった!!』

「何だと? この短時間で……」

 ジップ達の前に、新たな機動兵器が姿を現す。


 額から突き出た枝分かれしたブレードアンテナ、大きく突き出した胸部装甲、脚には地面を力強く踏みしめる為のクローが備えられている。バックパックには多数のプラットフォームが取り付けられ、この機体はロングソードとアサルトライフルを背負っていた。

 機体色は太陽光を反射するガンメタ。敵機を睨むツインアイは金色に輝いている。


「ラタトリス……ビャクヤか?」

『遅くなっちゃった。それよりも早く鎮圧しないと」

「分かってる。悪いが白いゼファーガノンの相手をしてくれないか。私のガルッフじゃ相性が良くない」

『本当に相性だけ?』

「……腕も鈍ってるから。こう言えば満足か?」

 小さな笑い声が通信機から聞こえてくる。いつの間に彼はこんな憎たらしい子供のようになったのだろうか。思わず息を吐いてしまう。

 ティノンはその場を離脱、集団でヴォイドガルッフの乗ったヘリを狙う輩の元へ向かった。

「逃すわけにはいかん!」

 それを易々と見逃すわけにもいかない。ジップはゼファーガノンで追いかけようとするが、目の前で榴弾が炸裂。足元を爆風で掬われた。

 ラタトリスの右腕の装甲から露出した砲身が白煙を吐く。

「よくもまぁ、よりによって今日やってくれたよね」

「良いだろう。邪魔立てするなら、貴様からだ」

 トマホークを構え、狙いをラタトリスへと変える。ラタトリスもロングソードを右手に携え、左腕の装甲から榴弾を装填した砲身を展開する。

 だがラタトリスの頭部はゼファーガノンではなく、逃げ惑う観客の方を向いている。

「2人とも、大丈夫かな……」

「よそ見をするとは」

 一瞬にして距離を詰めたゼファーガノンがトマホークを振るう。

 頭の向きを変えず、ラタトリスはロングソードで受け止める。連続で叩きつけられる斧の刃を、見もせずに防いでいるのだ。

「舐められたもの……ぬっ!?」

 ここでラタトリスの左腕から榴弾が発射。攻撃に夢中だったゼファーガノンは吹き飛ばされ、危うく体勢を崩しかけた。


「迎えに行かないとな……早く終わらせて」

 ジップはコクピットで、ラタトリスと目が合った。思わず震えが走るほどの殺気が、金色の眼から溢れ出ていた。

「流石に新型を相手するのは骨が折れる……」

 とはいえ、作戦の都合上ここである程度時間を稼ぐ必要がある。政府軍本隊が到着するにはまだ時間がある。最低でもそれまでは持ち堪えねばならない。

「だが持久戦は不利だ、こちらから仕掛けねば!!」

 ゼファーガノンがトマホークを投擲。ラタトリスは何なく避けるが、その間に距離を詰める。展開したサブアームでラタトリスの腕を掴み、自由を奪おうとする。

 しかしその程度の出力ではラタトリスを拘束出来ず、逆にサブアームをへし折られ、ロングソードが振り下ろされる。

 それをゼファーガノンは肩の装甲で受け、トマホークを脇腹目掛けて振り回した。ラタトリスは装甲に食い込んだロングソードから止むを得ず手を離し、距離を取る。

 ゼファーガノンは肩に刺さったロングソードを引き抜き、トマホークと共に携えて再び強襲。

「随分乱暴な戦い方だな」

 ビャクヤは呆れつつ、バックパックからアサルトライフルを取り出し、連射。装甲に穴が空きながらもこちらへ向かってくるのに違和感を感じるが、同時に左腕の榴弾砲も発射して畳み掛ける。

 それでも止まろうとしないゼファーガノンを目にして、ビャクヤはようやく真の意図に気付いた。


『本隊、到着しました! 状況は ──』

「待って、それ以上近づいちゃダメだ!!」

 通信機から聞こえたゼナの声に気を取られた一瞬、その一種の隙が生まれた時だ。

「ゼファー1機と新型、釣りくらいは来るだろう! 後は任せたぞ!!」

 ジップは通信機に言い残すと、脱出装置を起動。コクピットから射出されると同時に、トマホークとロングソードを投げ捨てたゼファーガノンが火炎を纏う。

 そのままラタトリスへと衝突。火柱と黒雲が巻き上がり、砕けた装甲がゼナの部隊に降り注ぐ。

「自爆……! ビャクヤさん、応答して下さいビャクヤさん!!」

 返答はない。が、代わりに炎を突っ切ってラタトリスが現れた。左腕が破損し、胴体の装甲が剥がれ落ちているが、コクピットの中にいるビャクヤは無事な様だ。

「流石に自爆までするとは思わなかったな……後はお願いしても?」

「は、はい……これより本隊は、残存戦力の掃討に掛かります」

 ゼナが乗る指揮官機を含む6機のガルッフがティノン達へ加勢する。機動兵器の方は問題ないだろう。


 銃声や爆破音が鳴り響く、観客席の方に目を向ける。


「こうしてる場合じゃない……!」


 疲れ果ててしまった新型を置き、ビャクヤはもう1つの戦場へと急いだ。




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