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SIDE:時空神2


「・・・・・うそよ・・・・・威力がまだ上がっていく・・・・・そ・そんな・・・・・創世級ジェネシスの魔法?・・・・・あ・在り得ない・・・・・。」

次から次へと魔物を倒す度に魔法の威力を上げていくシンだが、その度に時空間に歪みが生じ、その歪みから次々と魔物が出現していた事など知る由もなかった。



このままでは未曽有の危機が起こってしまうと考えたシンが自分の限界の魔力を全て注ぎ始めた。

「ヘンティル・・・・・そんな・・・・・悠長な事・・・・・言ってる場合・・・・・ではない!・・・・・これ程とは・・・・・吾も思って・・・・・いなかった。」

その時、テラスとヘンティルの見ている前で、相反する魔法が融合を始めた。



「これは・・・・・まずい!・・・・・次元に・・・・・穴が開く・・・・・?あ・あの子・・・・・このレベルの魔法でも・・・・・・範囲指定・・・・・しているの?」

「それだけではなく、魔法防御も完璧に・・・・・何十にも展開しているみたいです・・・・・ですが・・・・・」

攻撃魔法の威力と防御魔法の強さがあっていない。このままでは、全ての防御魔法が吹き飛ぶ事が創造に容易かった。



「ん! 自分の魔法を・・・・・凄さを・・・・・・分かっていないかも・・・・・・コントロール・・・・・しきれていない・・・・・と言うより・・・・・魔法の威力が・・・・・異常すぎる」

その時、空間に歪みが生じあろうことかヘンティルの聖域にまで干渉を起こし始めた。



「あ・ありえない・・・・・いくら神界とは違うと言っても・・・・・ここは、聖域なのに・・・・・穴が開くなんて・・・・・」

神と謂えども予想を超えた事に、驚くのも無理はない。

超越神のテラスでさえ驚いているのだ。一介の上級神であるヘンティルが驚愕の表情を浮かべる事は無理もない事であった。



その時、ピキッ!ピキピキっと空間に亀裂が入りバリ~ンと言う音と共に一人の少年が飛び込んで来たのであった。

「ヘンティル!・・・・・泡を吹いている・・・・・場合じゃない」

上級神となり5万年の間、ただの一度たりともヘンティルの聖域にひびが入る事など、それどころか、人間が侵入した事などあろうはずもなく、あまりのショックに泡を吹いて倒れてしまった。



「吾が・・・・・時を止める!・・・・・ヘンティル・・・・・許可を・・・・・出して!」

ヘンティルはまだ目を回して倒れていたが、テラスが言い放った時、タイミングよくカクッと頭を下げた。

「許可と取る!・・・・・【時間停止】」

テラスが囁くとヘンティルの聖域以外の目の前の景色の全てから色がなくなった。色もなく音もなく光さえも届かない。全てのものが、動く事を忘れた様に止まっている。



「取り敢えず・・・・・この子を・・・・・ヘンティル!・・・・・この馬鹿!」

名前を呼んでも起きないヘンティルの頭をつま先で蹴った。

「痛たたたた?あれ?私・・・・・何してたんですっけ?」

「今、この子の時も・・・・・止めたけど・・・・・流石に我でも・・・・・神界の一部でもある・・・・・この聖域の・・・・・時間を止めるのは・・・・・キツイ」



「ヒィ~!!! さ・さっきのは夢じゃなかったんですね・・・・・アワワワワ~」

「ピキッ! いい加減にしろ!・・・・・その子の回復・・・・・お願い」

再度、現実だと認識して気を失いそうになるヘンティルにイラっときたテラスの蟀谷に血管が浮き出していた。

ヘンティルを叱るとシンの回復を行わせた。

「は・はひぃ~畏まりました!」



シンの回復を行いながらテラスがここに来た目的をヘンティルに話したのだった。

「畏まりました。生まれてから今までに何があったのかを確認する事と転生前での神界での出来事の確認ですね! では・・・・・・・起きなさい!名前は・・・・・シン、シン・マグワイヤ!目覚めるのです!」

ヘンティルの杖から照射されていた光がパァ~っと一層強い光がシンを包み込むと意識が戻り始めた。



「うぅ・・・・・こ・ここは?・・・・・あ・あなたは?・・・・・あなたが・・・・・貴方達が俺を助けてくれたんですね?・・・・・あ・ありがとうございました。」

ヘンティルがテラスに相槌を打つ。

「私は、この星!ソラリスの神である上級神ヘンティル!一体何があったのか?私達に話してくれないかしら?それにどうやってあれ程の能力を手に入れたのかも教えて貰えるかしら?」



「もう大丈夫です!ありがとうございました。」

ヘンティルの回復によりケガの大半が治り、普通に話す事が出来るようになっていた。

「貴方は、もしかしたら・・・・・記憶を残しているのかしら?」

神界とは口が裂けても言わないが、この聞き方で記憶が残っている者であれば分かるはず。理由はある。何故なら神であるヘンティルとテラスを見ているのに当たり前の様に接しているのだ。間違いないと判断しての利き方であった。



「はい。俺は前世の記憶も神界の記憶も全て残してから転生いたしました。この度は、ご迷惑をお掛けしてしまい。誠に申し訳ございません。」

この瞬間にシンがただものではない事が確定した。それからエルザとどの様な話の流れで転生したのか?

や、転生してからどの様な事があったのか?等を簡単に聞き出したのだった。



「なるほど・・・・・・良く分かりました。如何なさいますか?テラス様」

「ん?吾・・・・・スッキリしたから・・・・・このまま・・・・・元の世界の戻す」

自分が思っていた様な事が無かった事に安心したのか先程までの食って掛かるような態度が消えていた。

「えっ?でもこの者の魔力をこのままにしておいては・・・・・いくらエルザ様の加護があるからと言っても・・・・・創世級の魔法など簡単に使われてしまえば、この星が滅んでしまいます。」



シンが下界を見渡すと白と黒のモノトーンの世界が映っているが、それでも自分が起こしてしまった事を認めるには十分な状況だった。

「ロイドのシリウスと申したな! そなたに話をする許可を与える! 我が前に現れその姿を見せよ!」

ヘンティルが言い放つとシリウスが具現化してシンの前に現れた。

「肉体を持つとは・・・・・この様な感覚なのですね♪ ヘンティル様お初にお目にかかります。我が名はシリウス!マスターの全てを守る者です♪ それと・・・・・マスター・・・・・ハグしても良いですか?」



シンが何言ってんの?っと呆れた顔をして、ダメに決まっているだろうが!と言おうとする前にシリウスが抱き着いてきた。

「はぁぁぁ~幸せです~♪私の願いが叶う事があろうとは・・・・・シリウス・・・・・死んでも良い~♪」

「やれやれ・・・・・やっぱり偶に見せる顔が本音だな。」

そんな馬鹿なやり取りをしていると。



「シリウス・・・・・今言った事・・・・・本当?・・・・・消滅させても・・・・・良いの?」

何を思ったのかテラス様が恐ろしい事を言い出した。

「あ・・・・・いえ・・・・・今のは言葉のあやと申しますか・・・・・人間としての表現と申しますか・・・・・実際に死にたい訳ではございません。」

シリウスにしては珍しく狼狽している。それ程テラス様から放たれている神気が恐ろしかったのかもしれない・・・・・・・・・・あれ?この神気・・・・・どこかで・・・・・?



「シンは、本来・・・・・魔力があっても・・・・・魔法が使えない・・・・・シリウスのせい・・・・・だから消えれば・・・・・問題なくなる・・・・・かな? ちゃんと・・・・・コントロール・・・・・出来る様になるまでは・・・・・危険」

何故に疑問形?と思ったが、流石に十数年間も共にしたシリウスを消されるなど俺が認める事が出来ない。

「言葉を挟んでしまい誠に申し訳ありません。テラス様!今回の魔法の使用は、確かにシリウスを介して発動してますが、今回の騒動はシリウスに口出しを禁止していた俺に責任があります。どうか・・・・・お許しを頂けないでしょうか?」



懇願する俺をヘンティル様が覗き込むと口を開いた。

「確かに貴方が先程言っていた様に、この島は無人島です。貴方が使った範囲魔法に防御結界により、この世界が滅ぶことはありません!しかし、目の前を見て!これだけの魔法の威力は、それらを突破してしまうでしょう!人類には影響が少ない事は事実ですが、この後何が起こるのかは、神である私にでも想像がつきません。

今後、貴方が魔法をコントロール出来るようになるまで、この世界の神として見過ごす訳にはいかないのです。」



ヘンティル様が言う事は、尤もな事だ・・・・・あまりにも前世の世界と違い浮かれていた事は事実だ。

ただでさえ魔法を使えないはずの俺が、自由自在に魔力をコントロール出来るかと言われれば、シリウスなしでは、想像に容易い。



「分かった!・・・・・ならば・・・・・消滅させない代わりに・・・・・封印する」

口約束で魔法を使わないなど信用されるはずがない。

これだけの事をしてしまった俺に反論の余地などあろうはずもなかった。

「マスター♪私は大丈夫ですよ♪マスターと共にいられるのであれば十分です♪」

馬鹿だなシリウス・・・・・お前今・・・・・顕現してるんだからな・・・・・そんな悲しそうな顔・・・・・少しは隠せよ・・・・・



「テラス様!一つ質問しても宜しいでしょうか?」

「ん!・・・・・良いよ」

「シリウスが封印されてしまったら・・・・・もう二度と話せないのでしょうか?」

「ん?・・・・・最初に言った・・・・・コントロール出来るようになれば・・・・・大丈夫」

その言葉を聞いたシリウスの表情が見た事が無い程喜んでいた。



「もう少し詳しく教えて頂けないでしょうか?」

「ん!シンは・・・・・心も身体も・・・・・まだ・・・・・未熟、だから・・・・・成長すれば・・・・・良い。・・・・・自分の力で・・・・・魔法をコントロール・・・・・出来るようになれば・・・・・封印が解けるように・・・・・なる?・・・・・多分」

ちょっと心配だけど可能性がゼロではない!今の俺たちにとっては、この言葉だけで十分だった。



「シリウス!俺・・・・・頑張るから!我慢してくれるか?」

「イエス!マイロード!私はマスターの意志に忠誠を尽くすもの!何なりとお申し付けください♪」

「テラス様!ヘンティル様!この度は本当にご迷惑をお掛けしました。俺は必ず成長しこの惑星!ソラリスが今以上に成長する存在へと必ず至る事をお約束いたします。お二人のご厚情に心から感謝いたします。」

神々に嘘は効かない!だからこそ、俺の思いが伝わる!



「仕方がありませんね~♪そこまでの思いを口に出されたらソラリスの神として認める事しか出来ません。良いでしょう♪では、シリウスよ!私の声に耳を傾けなさい!」

「・・・・・・・・・・・・・」

俺は、悲しげなシリウスを抱き寄せると耳元で「またな」と囁いた。



「これで、今の貴方は、この世界の理通りに魔法が使えなくなってしまいました。」

「ん?吾思うんだけど・・・・・このまま元に戻したら・・・・・シン・・・・・死ぬ?」

下界をみれば、当然の事だ。



「それと・・・・・これだけの・・・・・破壊の力・・・・・どこに吹き飛ばされるか・・・・・分からないし・・・・・無事でいるかも・・・・・分からない。でも・・・・・自分で蒔いた種・・・・・最後に自分に使っていた・・・・・魔法だけは・・・・・吾が掛け直してあげる」



「有難うございますテラス様・・・・・・。」

「それと・・・・・・吾、時の神だから・・・・・・あなた・・・・・・爆発の影響で・・・・・・・時を超えてしまうかも?」

「へっ? それは・・・・・・どう言う事なんでしょうか?」

時を超えると言われても理解など出来るはずもなかった。



「それは、私が答えましょう。時空神テラス様は時間と空間を司る神なのです。そのテラス様が、神魔法を使われるという事は、少なからず時空間に干渉してしまうと言う事です。

本来であらば、僅かなタイムラグ程度で済むのですが、現在、貴方の魔法の力により至る所に時空の歪みが生じてしまいました。」



「そ・そうだったんですか?」

「はい。マスター・・・・・・それは、私も確認していました。 現在、周囲に32ヵ所もの時空間の歪みが存在しております。」

「なるほど・・・・・それでは、どうなる可能性があるのでしょうか?」



「先程も伝えた様にテラス様の時の神の力により、その時空間の歪みに影響というより、互いに干渉してしまう可能性が高いのです。即ち!歪んだ時空間に引きずり込まれるという事です。

この後、爆発により吹き飛ばされる貴方は、ほぼ間違いなく時空間に飲み込まれることになると思われます。

破壊の威力も同じく引きずり込まれるますので、時を超えようとも同じダメージを追うでしょう・・・・・・。 」



「なるほど・・・・・その時空間の歪みのせいで時を超えてしまうという事なのですね?」

「そう・・・・・・吾の力で造った歪みじゃないから・・・・・・どれ位、時が経つか分からない・・・・・。」

「それは・・・・・・俺がいけないんですから、仕方がありません・・・・・テラス様!ヘンティル様!本当にご迷惑をおかけしました。それと、有難うございます。」



「本来ならば、この聖域に人間が介入する事は不可能なのです。

貴方が使った魔法はそれ程の威力である事を忘れないで下さいね。

貴方が使用した魔法は、創世級と言われていた類の魔法です。

本来この世界を一瞬で滅ぼしうる力を秘めた魔法だったと言う事を忘れないで下さい。」

俺はゴクリと唾を飲み込むと現実を受け入れ頷いた。



「クッ! さすがに吾・・・・・限界!」

「では!さらばですシンよ! 成長を続けこの世界の救世主となる事を祈ります。」

俺の身体がフワッと浮かび上がり聖域に開いた穴を通り、後ろを振り返ると先程までの穴が塞がり始めた。

時が止まったままの目の前の光景に唾をのむと俺は覚悟を決めた。いつ時が動き出すのか・・・・・。



ピキ~ン!っと言う音と共に鮮やかに色が戻り始めた瞬間!

「シリウス!必ず・・・・・必ず成し遂げるから待っていろ!おぉぉぉぉぉぉ~~!!!」

神をも驚く破壊の渦に飲み込まれ俺は再び意識を失ったのだった。



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