第45話 第二章【獣人族 獣霊山編】6
体感温度マイナス40度以上の状況でも腕を動かし続けていれば、今の俺ならさほど問題はなかったのだが、2人を休ます為にロープを握り続けた事で、かなり酷い凍傷になっていた。
さらに、両手の指と掌の皮膚が凍り付き凍傷を起こしていた。
3人分(実際は5人分以上)の重さが、強風で大きく揺らされるロープを一人で支えた事で、凍り付いた両手のあちこちが裂けて血が噴き出していた。
「残り200m・・・・・もしかしたらそれ以上あるかもしれない。今の体力を考えると一気に降りないと危険だと判断した。 なので・・・・・この状態のまま一気に150m下まで落ちる事にする。2人はロープをゆったりと持って決して放さない事!150m降下した時点で、俺が全力でブレーキをかけるから万が一地面が見えない場合は、悪いんだけど、その後の残りは2人で何とかしてもらうしかない。今回は時間に余裕がないから10秒後に落ちるから集中してくれ!10・9・8・・・・・・・」
「何言ってるの?ソロ君! それよりも貴方の手が・・・・・」」
「ソロ!どうしたんだ?いくらお前でもそんな事をしたら・・・。」
「悪いけど余裕がない!集中しろ!!!2人共!!3・2・1・0」
ギシュッと凍り付いていた血の塊が砕け重力に従って落下を始める。
俺は、頭の中で落下速度による150m降下にかかる秒数を計算した。
重量約200㎏距離150m 到達時間は・・・・・。
「1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、5,5秒・・・・・・・ここだ~!
身体強化状態の俺の握力を遥かに上回る負荷にブシュ~っと俺の両手から血が噴き出したが、全力でロープを握り続けた。
時速195㎞の速度による凄まじい重さが両腕に圧し掛かる。
減速するものの、このままでは地面に激突する衝撃は計り知れない。
「うぐぐぐぐぐ~! 全力だ~!!!」
オーラを全て両腕に集中し全力でロープを握りしめるとかなりの速度で減速し始めた。
ビタッと止まり下を見ると10m程下に地面が見えたのだった。
「や・・・やった・・・・・・・・・・・・」
凄まじい負荷が全身にかかった事で、力を使い果たした俺は、気を失って成す統べなく地面に叩き付けられたのだった。
「ソロ・・・・君?」
「ソロ~~~~」
慌てた二人は、ロープから飛び降りると背負っていた袋の中からソロが作った回復薬を取り出し飲ませようとしたが、2人の腕も限界にきており上手に飲ませる事が出来ずにいた。
2人は自分の口に回復薬を含み咀嚼するとソロの頭を優しく抱きしめ自分の口の中にある回復薬をソロに無理やり流し込むのであった。
20分ほどで意識を取り戻したソロが自分の胸やお腹に重さを感じ、ぼやける眼で見ると俺の両手を労わるように抱き抱え両目を赤く腫らしたメロとマロンの姿があった。
「メロ・・・・・マロン・・・・・? あぁ・・・・・また2人に心配を掛けさせちゃったのか・・・・・・ごめんね2人共・・・・・。」
「ソロ(君)♪気が付いたの?」
「だ・大丈夫か?ソロ・・・・まだ痛いよね? ごべん(ごめん)で(ね)~・・・・・・ヒック・・・・ソロ~ ウワ~ン」
「グスン、グスン・・・・・ウェ~ン・・・・・・心配したんだから~本当に~ウェ~ン意識が戻ってよかった~」
「ここわ・・・・・どこだ?」
「ヒック・・・・・十霊堂の中だよ・・・・・。寒くない?大丈夫ソロ君・・・。」
「ウゥ ・・・・外は寒いから・・・・・中にベッドがあったかr・・・・・・グスン。」
「ちょっと・・・・・・起き上がるからどいてくれるかい? ヨッと・・・痛っててて! はぁ~良かった~2人共無事で♪
2人共怪我はないか?メロ、マロン手を見せて。」
恐る恐る手を見せる俺に手を見せると2人の手も皮が剥けて血が滲んで、薄っすらと紫色に変色していた。
「っ!大変じゃないか!ちょっと待ってて!」
俺は急いで自分の袋の中から二つの水が入った半透明のガラスの入れ物を出し、慌てて2人の手をその中に付け始めた。
「これ位の凍傷なら数分もすれば大丈夫だと思うからじっとしているんだぞ!2人共俺の大事な宝物なんだから・・・・・・ごめん・・・・・・結局ケガさせちゃったね・・・・・・痛くないか?」
「ソロ君・・・・・・これは? ううん、そんな事よりも・・・・・・ごめんなさい。私達が不甲斐ないせいで、ソロ君がいなかったらどうなっていた事か・・・・・・。ありがとう・・・ソロ君・・・・・・大好き♪」
「痛くないよ・・・・・・ソロの方が、もっと酷いんだから~ 僕達の事より!自分の事も心配してよ・・・・・・。本当に心臓が止まる位心配したんだよ・・・・・・・ごめんねソロ・・・・・僕も大好き♪ ソロの事~大~好き♪」
「うん♪俺も2人が大好きだ♪ それとその水は、温泉の濃度を濃くしたものだから本当は実験を兼ねて持って来ていたんだよ・・・・・何が起こるか分からなかったし念のためにね♪だからジッとしていてくれよな♪」
「「だったら!ソロ(君)がさきでしょう?」」
「ダ~メ!2人が傷ついている姿なんて一秒でも見たくない!これも命令!治ったら俺も使うから♪」
優しく微笑みを浮かべて二人を見つめるソロの顔を見たメロとマロンの顔が、火が付いたように赤く染まると胸を押さえて妙にモゾモゾしだしていた。
2人を見ると何か考え事をしている様子がうかがえた。
「はぁ~ん ソロ君・・・・・かっこいいよ~♪ あぁ・・・・我慢できない~ 今すぐキスしたい・・・・・・あ~もう!ギュ~ってして~ 私の事を無茶苦茶にして~~ あぁ~も~う大~好き♪ Sのソロ君もゾクゾクするけど・・・」
「あっ! そ・そんな目で見つめられたら・・・・僕の胸がドキドキして・・・・・ック 僕の中がムズムズする。付き合っているんだからキスしても・・・・・・それ以上しても大丈夫だよね・・・・・ご主人様~ん♪」
「えぇ~っと・・・・・2人共どうしたの?」
「えっ!な・なんでもないよ? 別つにソロ君の事なんか考えてないからね♪ オホホホホ♪」
何言っているんだメロは・・・・・・声に出てたぞ?
「なななな、何でもないよ・・・・どどどど、どうしたの?何でもないよ~ホントだよ~エッヘッヘッヘッヘ♪」
何がご主人様だ?いつそうなった?マロン・・・・・?
((やばい!獣人の本能が完璧に目覚め始めてる!))
その後、妙におとなしくなった2人をおいて十霊堂の外に出た俺は、その景色に圧倒された。
「す・・・・・凄い!何て綺麗なとこなんだ・・・・・・。」
俺の眼前に広がっていたのは、霧が晴れ太陽に照らされた木々や美しく整った緑の芝生。色鮮やかな花が咲き乱れ、横を望むと獣霊山の中腹から荘厳な滝が見えた。人の手が入らない山だからこそ神秘的なまでに美しさを感じたのだろう。
「さっきまでの嵐のような気流もなくなってる。こんな場所があったなんて・・・・・・。これて良かった・・・。」
自然の圧倒的な力強さと美しさ・・・・・・見る者の息を呑む荘厳な景色を見ていたら涙が零れてしまった。
「アハハハハ♪姿が変わっても・・・・・前世の親父との思い出が残ってるんだな・・・・・懐かしいな。」
前世の地球での父親は、凄まじく頭の良い人物で、変わり者と言われていたが、地球を救った英雄だった。
父親から色々教わったが、その中でも大好きな父と一緒にサバイバルをした時に大自然の美しさに感動した時の事を思い出していたのだった。
「うん♪なんか!力がみなぎってきた♪あっ!そう言えばモフメロは?モフメロ~!」
「キュィ♪ キュィ♪ 」
「あぁ~!いないと思ったら!また俺の中にいたのか?しょうがない奴だな♪中に戻るぞ♪」
「ピィ~ピィピィ~」
「よしよし♪相変わらず可愛いな♪」
「どうだい?ケガの調子は、良くなってると良いんだけど・・・・。」
「ソ~ロ~君♪ 早く~ 来て~ 私をメチャクチャにして~♪ 私をもっといじめて~♪」
「ご主人様~♪ 僕~もう~我慢できない~! 僕を好きにしていいから~ 早く~ぅ♪」
「バタン!」
何が何やら分からず入ってきた扉を勢いよく飛び出すと姿をくらましたソロだった。
「な。何がどうしてあ~なったんだ? 何だ?あの二人の艶めかしい姿態は?下を舐めまわしてエロ過ぎるだろうが~~!!」
俺だってもう立派な男なんだぞ!プンプン2人共けしからん我が儘ボディだ!ちょっとだけ覗いてみるかな?
「・・・・・・・・♪~~~~~~♪♥♥」
ハワワワワ!見てはいけないものを見てしまった。ゴクリ・・・・俺の記憶に録画しておこう♪ご馳走様でした。
それから、30分程して戻ると妖艶な姿のまま眠る2人の姿があった。
「ホレ!2人共。もう起きてくれないか? ペチペチ」
「アン♪ あれ? ここは・・・・・ハッ!何て格好してるの私~~~!!」
「はぁ~ン・・・・・ん・・・・・ん~~?キャァァ な・何んで僕・・・・嫌ぁぁぁ~」
まったく~しょうがない奴らだ・・・・・修行が無ければ・・・・・・勿体ない!・・・・・・でもご馳走です。
暫くして平静を取り戻した2人の手の状態を確認して
「うん♪2人共スッカリ元通りに回復したようだね♪ どれ位で回復したのか分かるかい?」
「あ~ え~っと~エヘヘヘヘ♪多分5分位で治ったんじゃないかな~・・・・・。」
「多分5分?もしかして・・・覚えてないの?」
「ちゃんと時計を見ていたんだよ!ただ・・・・なんて言うか~ちょっと疲れてたのかポ~っとしちゃって・・・・。」
「あぁ~そうだよね・・・。そうか、それは、仕方がないね。でも回復効果は高そうだねこの水」
「ソロ君、質問!この水は温泉って言ってたけどどうやって作ったのか教えてくれない?」
「別に良いよ♪前回作った薬草と混ぜた回復薬があったでしょう?あの回復薬の効果が少し弱かったのと回復するまでの時間がかかったから何とか効果を強めて回復時間も短くできないかな~って思ってたんだけど・・・」
「あぁ~あの回復薬ならさっきソロ君に飲ましたよ?あ!その前に!ソロ君のケガの方が先だよ!見せて!」
「ん~?もう痛くないから薬が効いたんじゃないかな~?」
「あれだけのケガが30分やそこらで治る訳ないでしょうが!良いから見せて!」
痛くないんだけどな~そう思いながらも包帯を取って見せて上げた。
「うそ・・・・でしょ・・・・治ってる・・・・・・何で?」
「回復薬も効果を変えたって事?」
「う~ん・・・確かに改良したけど、5分位したら痛く無くなってたから、治るのに30分もかかってないと思うんだけど・・・・・」
絶句している二人を他所に話を続ける。
「ね♪だから俺は嘘をつきません! で、どうしたら良いかを考えたんだけど、前回は温泉のお湯を煮詰めて残った成分を薬草に混ぜて作った丸薬だったんだけど煮詰めた事で、回復成分みたいなものまで薄れてしまったんじゃないかって考えたんだ。」
2人を見ると・・・・・ハハハハハ2人共、変な顔。話を続けるとしよう。
「今回の丸薬の方は、温泉のお湯ではなくてお湯が湧き出ている砂に着目してみた。これは、以前メロとマロンが、魔力を込めると変化する金属があるって言っていた言葉と温泉に初めて入った時に魔力が強いって言っていた言葉がヒントになった。」
まだ、呆けていやがる・・・・・・・おっ!コクコク頷き始めた! プププ♪何か可愛い顔♪
「それで、もしかしたら、この温泉の魔力が周りの石や砂にも長い年月をかけて蓄えられているんじゃないだろうかって考えたんだ。
その砂を砕いて温泉にお湯が溢れて零れて流れていく水路のようになっている場所に生えている苔と混ぜ合わせてみたら温泉に入浴している時と同じ位の回復速度と回復力になった事が分かったんだ。」
2人は相変わらず呆けた顔ではぁあ、そうですか・・・・。と答えている。 ハハハハハ♪面白い顔♪
「さらに、この結果を得た事で、もっと回復効果を上げる事が出来ないかと思って作っていたのが、さっき2人に使って貰った水だね♪
これは、さっき教えた新しい回復薬の成分を温泉のお湯混ぜてから全て煮詰めないで、5分の1程度まで煮詰めて 作ったものだね♪」
おっ!2人の顔が元に戻った。
「ふぅ~相変わらず・・・・・・ソロ君だね~♪」
「凄いよ、ソロ!強いだけじゃなくて頭も良いんだね♪」
うんうん♪マロンの素直な言葉は嬉しよ♪ 少しは見習ってねメロさん・・・・。
「何か言いたそうね?」
ヒャァァァ~ 女の第13感!
「コホン!兎も角、液体の方は、まだまだ改良の余地があると思うけど丸薬は成功かな♪」
「どっちも十分凄いと思うんだけどね・・・・・流石は、私がホレた人だわ♪」
「えぇ~僕がホレた人でもあるんだけど~!」
俺・・・・・ハニカム。 嬉しい♪
「ありがとう・・・2人共♪。さて!そろそろ本題に移るとしようか・・・・・この・・・・・十霊堂について調べよう。」
その後、三人で手分けして色々な事が分かった。
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十霊堂の周辺は広さ300m位の平地になっていて山から湧き出る豊富な水が建物の横にある金属で出来た器の中に注がれていた。
傍にある木々には何種類かの果実が実っていて最悪食べ物には困らない。
中に入ると真ん中に通路があり右側がさっきまで俺たちが居たベッドが6つもある大部屋で生活に必要な全てのものが、一通り揃っていた。左側には台所やトイレ、お風呂まで用意されていた。
2階に上がると一つの大部屋があって左半分にあるいくつもの本棚には書籍がギッシリ詰まっていた。
右側には、工房の様になっていて何かを作っていたのか色々な道具や鋼材が綺麗に並べられていた。
この十霊堂は、石と木で造られた教会みたいなイメージで、見た目は高さが20m、幅25m位のさほど大きくない建物の様に見えたが、真ん中の通路の先には物凄く頑丈そうな扉があり、鍵を外して開くと暗闇が奥まで続いていた。
何とも言えない奇妙な空間に、ゴクリと唾をのんで不意に何かの出っ張りの様なものを触れた瞬間、通路の中が明るくなった。どの様な仕組みなのかは分からないが、かなり明るく問題なく進めそうだった。
通路は幅5m高さは10m位で、大きい洞窟の様なイメージだった。
その通路を歩き300m程進んだ辺りで行き止まりかと思ったら、また頑丈そうな扉があった。
同じ様に鍵を外してドビラを開くと中が、先程と同じ様な暗闇だったので、扉の内側を同じ様に手で触ると、やっぱり出っ張りがあった。
触れると再び周囲が明るく照らされた。そして俺たちは固唾を飲んだ。そこには、高さ50m広さが100m四方程の大きな空洞が広がっていたからだった。
「何?・・・・・ここ・・・?・・・・・・何でこんな空間があるの?」
「何か僕、怖いかも・・・・。」
2人が、ブルブルっと震えていたのを見た俺は
「うん♪他にも色々気になるけど・・・・・取り敢えず一旦戻るか!書籍を見れば何か分かると思うし、お腹も空いたからね♪」
「クスクスクス♪はいはい♪じゃ~戻ってご飯にしましょうか♪」
「賛成~♪僕も手伝うね♪」
何かの気配を感じながらも俺は扉を閉めた。2人を見ると肩を抱えて震えていたので、大丈夫だ!俺に任せておけっと肩を抱き寄せた。
2人は照れ臭そうに笑うと俺の肩に頭を傾けたのだった。
その後、メロとマロンが食事を作っている間、俺は書籍を読み漁っていた。
いくつか面白い事が分かった。
この十霊堂に引かれているお風呂のお湯も龍窟洞にある温泉と同じ成分である事が書いてあった。
しかし、どうしても俺の知識では読めない古い書物があったので、食事の時にメロとマロンに確認する事にしたのだった。
「そう・・・だったんだ・・・。」
「驚いた・・・・・ここが、あの場所だったなんて・・・・。」
俺が二人に見せたのは、一目分かる程、古い書物だ。いくつかの書物を二人は食い入るように読み漁ると驚愕の表情を浮かべ語り始めた。
「何だよ2人して、俺にも教えてくれない?」
「あぁ・・・・うん。ごめんねソロ君・・・・・ちょっと驚いちゃって。」
「驚くほどの内容が書かれていたのか?」
「うん、これは、驚くのも無理はないよ・・・・・だって・・・・・・・獣人族の失われた歴史だから・・・・・。」
失われた?・・・・・・・歴史? どうやら俺たちは、とんでもないものを発見してしまったようだ。
そして、俺たちの途轍もなく長い6日間になるのだった。
そして、メロとマロンから、この巻物に書かれている事を教えて貰うと本当にとんでもない事が書かれていた。
「なるほど・・・・・・つまりは、ダンジョンみたいなものって事だな?そして、俺たちが入ったあの広い場所が特訓場所になっていたと・・・・・・それよりも、この重力操作って凄いよな・・・・・。」
巻物に書かれていた事は・・・・・・
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この十霊堂には地下10階までフロアが存在し、各フロアには、過去最強と謳われた歴代の獣王達の祖霊が、宿っており、新たに門を開く者が、次なる獣王となる資質があるかどうかを試す場所であった。
見事打ち破る事が出来れば次のフロアに繋がる階段が現れるとの事だ。
この試練には己の肉体のみだけで挑まなければならない。
一階の広場は訓練の間と呼ばれ、特殊な装置が備えられており、重力負荷の倍率操作が可能となっている。
この場で、鍛錬し各階の祖霊に立ち向かえる特訓をするようだ。
洞窟内は、全て黒金剛石と呼ばれる素材で出来ていて、別名【黒龍石】と呼ばれ、古龍の力により変化したアダマンタイトで出来ている。
その強度は、神の金属オリハルコンに匹敵するらしい。
この訓練の間には、獣王が認めたものだけしか、入る事を許されない。
十霊堂にある試練の間をクリアした者だけに新たな獣王の資格を与える。と共に歴代の獣王に引き継がれし、真なる力を与えられると書かれていた。
一つのフロアに挑めるチャンスは3回のみ。
失敗した場合は、強制的に外に出され二度とこの訓練の間に入る事が出来なくなる。
十人の祖霊を全て破らなければ、この十霊堂で鍛えた全ての力、技を奪われるだけではなく、この場所に関する全ての記憶を封じられることになる。
故に十か零、成功か失敗しか許されない十零山と呼ばれる所以であった。
この十霊堂とは、本来歴代の獣王達の働きを評価した神々が作られた場所で、10階層を守護する祖霊が新たに獣王となる者に倒される事で、神々の末席に加わる事を許され、その実を神へと昇華する事が出来る。
獣王の一人が神へと昇華すると十霊堂を守護する祖霊が減ってしまう為、真なる力を得た獣王が亡くなるまで、十霊堂での修行を行う事が出来ない。
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いくつかの書物に書かれていた事を纏めて貰い教えて貰っていたが、本当にメロとマロンが驚くのも無理がない内容になっていた。
「スゥ~ ハァ~ ふぅ~ いや・・・・・参ったね・・・・・・本当にとんでもないな・・・・・・・どうする?2人共・・・・・・。試練を受けていない今ならば、まだ引き返せるけど・・・・・・って決まっている!って顔だね♪」
力強い意志の込められた目を見て俺も出来る限りの事をすると心に誓った。
「じゃ~早速、修行を始めるか?今日を入れて残り6日間・・・・・・今まで以上にハードな修行になりそうだな♪」
「僕は、やる。ソロとメロの足は引っ張らないから! でも迷惑を掛ける事はあるかも・・・・・けど頑張る!」
「別に獣王になりたい訳じゃないけど・・・・・・。私はお父様の無念を晴らしたい!あの卑怯者のソンメルを許すことが出来ない!だから・・・・・・・無駄になるかも知れないけど・・・・・・・私も泣き言何て言えないよ♪」
そして、決意の固まった俺たちは、重力制御がある訓練の間に辿り着いた。
「恐らく、これが重力装置ってやつだな。」
最初は見つける事が出来なかったのだが、入り口の扉を閉めたら、入り口の左側に少しだけ奥まった小さい部屋が現れ、中に入ると何やら複雑な文様が描かれた台座と上下に動かすレバーが幾つもあり、後は4つのスイッチの様なボタンがあった。
どの様な仕組みなのかは分からないので、俺が適当に左上にあるプレートを触れた時、プレートが淡い光を放つと静かな音を出し動き出した。
「大まかに分けると左と真ん中と右のレバーに分かれている様にみえるんだが・・・・?」
「多分、重力の重さを変えられる操作レバーだよね?メモリが細かく刻まれているし・・・・・この一つが重力で、残りの二つは・・・・・なんだろう?」
「う~ん・・・このレバーは4つしかメモリがないから人数かな~? なんだろう?」
「そうしたら・・・・・最後のレバーは何なのかな?」
「もしかしたら・・・・・・・難易度か?敵が現れるとか?」
俺の言葉にハッ!とした表情を浮かべたメロとマロンが目を合わせ頷いていた。
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