第28話 第二章【獣人族編】2 俺の名前は・・・・ソロ!
YESにしたら俺の前にあった半透明のボードが横向きになっていった。
「面白っ!何か知らんが横向きになったけど、次はどうすれば良いんだ?」
俺が二人に話しかけると二人とも俺の前にあるボードに集まってきた。
「あれ?もしかして見えてるのか?」
「うん♪見えているよ!仲間だけが見える様にする事も出来るんだよ」
「なになに~・・・あ~・・・ダメだったか~ もしかしたら、分かると思ったのに~」
メロが額に手を当てて残念がっている。
「ん?何が?」
「う~ん・・・君の名前が分からないかな~っと思ってね。ダメだとは思っていたから今までやっていなかったんだけどさぁ~少しだけ期待していたんだよね~ それにしても・・・」
名前の欄が、記憶喪失と記載されており、初めて見るコメントに二人して感心していた。
「へぇ~名前を忘れると記憶喪失って記載されるんだ~初めて知ったよ。」
「僕も初めて知った。面白~い♪じゃ~君の名前は記憶喪失君だね!」
「「フフフ♪アハハハハ~♪」」
などとからかって笑っていたが、
「本当に記憶がないんだから仕方がないだろう! ふ~んだ!」
と拗ねてプンプンとそっぽを向いてしまった。
「ごめん、ごめん。でも記憶喪失君だと不便だよね・・・。プッ・プフフフフ・・・ア~ハッハハハハハ~♪ヒィ~お腹が~、お腹が痛~い♪」
「プッ・・・だ・ダメだろメロ。記憶喪失の人に記憶喪失君って・・・ブフッ・・・ププ・・ア~ハッハハハ♪ヒィ~ダメだ~お腹が痛~い♪」
俺・・・拗ねた。
「フン!トイレに行ってくる!」
「あぁ~あ~拗ねちゃった~マロン笑いすぎ!」
「えぇ~笑ったのメロも一緒だよ~」
「でも、名前がないのは、可哀そうだよね~あっ!そうだ!たしか最初に目が覚めた時に自分の名前を思い出そうとして・・・何て言ってたっけ?・・・あ!そうだ!最後に思い出そうとした名前が・・・ソロって言ってたっけ!」
「へぇ~だったら・・・取り敢えずソロって名前で良いんじゃないのか?」
「うん♪私も今そう思っていたところだよ♪」
そんな会話をしていると扉がガチャッとなってソロが戻ってきた。二人はヒソヒソ話で、
「「じゃ~名前はソロ(君)って事で!」」
ニッコリ微笑みないながら悪戯っ子の様な無邪気な顔をしていた。
「このステータスウィンドウの消し方教えてくれない?俺と一緒についてくるから違和感が半端ない。」
トイレから戻ったソロが椅子に座りなおすと出したままのステータスウィンドウが目に入った。
「あっ!」
驚いた表情を浮かべてソロを見つめるメロ。何事かと思いメロの視線を辿ると今度はマロンが驚いていた。
「うそ!?」
「何だよ二人とも俺の方を向いてあっ!とか、うそ!?とか何か言いたい事があるなら言っても良いよ!」
少し拗ねた顔をして二人に目を向けた。
「驚かないでね・・・・ソロ君・・・」
ソロの手を取ってマロンの方に目線を向ける。
「ん?ソロ君・・・・・って何?」
何を言っているのか分からず頭を傾げてしまった。
「自分でステータスウィンドウの名前を見てくれるかい?」
メロからバトンタッチされた様に言葉を繋げるマロン
「ステータスウィンドウの名前~? どうせまた、笑うんだろう?はいはい、名前ね・・・・・えっ?」
目を見開き思いがけない事が起こると人間は固まってしまう事を理解した。
「どう?ソロ君・・・・・・」
メロが下から俺の顔を覗き込んできた。
「ソロ?って誰の事? これは誰のステータスウィンドウなの?」
「ソロ君落ち着いて!驚かないでねって今言ったばかりでしょうが!ソロ君が開いているステータスウィンドウなんだからソロ君のものに決まっているでしょうが!」
「やっぱり・・・・・・俺の、なの・・・・・・? でも何で名前が・・・・・・?」
「何故だか理由は分からないけど、今二人で、貴方の名前を【ソロ】君にしようって話し合っていたの・・・そうしたらステータスウィンドウにまさか表示されるとは思わなかったわ・・・。」
「でも、ステータスウィンドウに名前が表示されたんだから君は、今日からソロだね!」
ニコッと可愛らしい笑顔を俺に向けマロンがそう囁いた。
「そ・そうなのか?・・・・・・ソ・ソロね・・・・・・。 ピンと来ないけど、分かった! メロとマロンがそう言うのであれば、今日から俺の名前はソロだな! 二人とも改めて宜しくね!」
「此方こそ、改めて宜しく・・・・・・・ね!ソ~ロ君♪ へへへ♪】
メロが、無邪気な笑顔を俺に向け照れ臭そうに俺の名を呼んでくれた。
「名前が決まったのは、良かったんだけどさぁ~僕は、こっちの内容の方が驚いたんだけど・・・ソロって14歳なの・・・?僕達と同い年だったんだ・・・。」
「うそ!? 名前の方が気になってたから見ていなかった・・・・・・・年齢の表示が見えるようになったの? どれどれ~・・・・・・ほ・本当だ・・・・・・ソロ君って私より年下なんじゃないの? えぇ~ソロ君!私たちより小っちゃいから年下かと思っていたんだけど・・・・・私たちと同い年なの~?」
目を大きくしながらメロとマロンが驚いていた。
「そうみたいだな!俺も今知った!しかも14歳と11ヵ月」
どうやらドヤ顔が好きらしい。
「ふ・・・・ふ~ん・・・そうなんだ~同い年か~へぇ~♪」
何がそんなに嬉しいのか・・・尻尾がフリフリ揺れている
「って事は・・・・・?今は3月だから~ソロ君の誕生日って4月って事だね♪」
「そうなのか?そうなると、この国の三月って随分と寒いんだね~ 朝方の散歩が寒いわけだ。」
「う~ん・・・・・今年は、例年よりも寒いかな~ でも、来月になったら温かい陽気になって来ると思うわよ?」
「なら良かった♪温かくなるんだったら食材には困らなそうだね♪」
俺とメロが他愛もない会話をしている間もマロンが食い入るようにステータスウィンドウを眺めていた。
「どうしたマロン? そんなに見たってさっきと変わらないんだろう?」
「それとも、また何か気になるものが、見つかったのかしら・・・・・?」
「う~ん・・・・・・これは、おかしいと思うんだけど、僕が気になったのは~レベルだね!」
ん?レベルだと?レベルがあるの?俺・・・何でか、知らんがワクワクする言葉だぞ!
「レベル表記されてたの?どれどれ~レベルは~えっ?・・・ゼロ? エェェェェェ~!!!!!嘘でしょう~!?あれだけの回復力があるのに~?」
「イヤイヤこれはおかしいよ!ソロだって14歳だよ?コレはないだろう!」
「あぁ!そうだよね・・・・・・確かにありえない。」
2人共何に驚いているのか分からないが・・・・・・レベルと聞いてワクワクしていたのに・・・・・・
「期待していたのに・・・・・・・ゼロとは・・・・・・・ガックリ。」
俺・・・凹む。
「ソロ君!これはどう考えてもおかしいわよ!だって少なくとも今日は、2匹も獲物を取ってきてるんだから最低でも2にはならないとおかしいわよ!ってその前にゼロってこと自体がおかしいのよ!」
「そんなに・・・おかしい、おかしいと連呼されましても・・・俺・・・おかしい人なのか?」
俺・・・再び凹む。
「あ!違う違う。そうじゃなくて~もう~落ち込まないでよ~マロンも何とか言ってよ~!」
「そうだぞソロ!君はおかしくはないが、ステータスの表示がおかしいんだ。これはあり得ない事なんだよね~記憶喪失で忘れてしまったんだろうけどソロは14歳ってステータスウインドウに記載がある。14歳ならば、誰でもレベルの表記が最悪でも絶対に1になっているはずなんだよ。」
ヘェー、なる程~レベルって、そういう物なんだ・・・・・・・それなら、確かにおかしいかもな・・・・・・・絶対に変化するものがされていないんだから・・・・・・すると、やっぱり・・・
「これも・・・記憶喪失のせいなのかな・・・どう思うメロ?、マロン?」
「多分そうなんだろうねって言うか、それしか考えられないかな~」
「僕も同意見だよ」
「それにしても、肝心のステータスの部分が何でこんなに擦れてるのかな~」
「うん、僕も話を聞いてソロのステータスが気になっていただけにね~」
「「残念」」
やっぱりステータスウインドウ自体がおかしかったのか・・・。
「何か一つでもステータスが分かると良かったのにね・・・。」
「ん~でも、魔力があるかどうかは分かるんじゃないのか?」
そんな提案をマロンが言い出した。
「あ~あの魔法か~」
「そうなの?どうすれば分かるんだ?」
「ソロ君、イグニッションって呪文を唱えてみてくれない?」
「イグニッション?」
「そうだった・・・・・・・覚えていないよね~ ゴメン、ゴメン。イグニッションって魔法はね・・・・・。」
メロが人差し指を立てて【イグニッション】っと呪文を唱えると、指先からライター程度の小さい炎が現れた
「おぉ~メロは魔法使いなのか?」
「ウフフフフ♪そんな大した呪文じゃないよ~♪ 魔力があるなら誰でも使える魔法だもん」
「そうなんだ・・・・・・・魔力があれば、誰にでもか! へぇ~・・・・・・イグニッションか~!」
「そう、ソロ君は、魔力の流れって分かるかな~」
簡単な説明を教えて貰ったんだけど・・・・・・。
「う~ん・・・良く分かんないけど、兎に角やってみるよ! いくね!・・・・・・・・・」イグニッション!」
シーン・・・・・。
「グヌヌヌヌ! イグニッション~!」
シーン・・・・・。
「クッ! イ・グ・ニッ・ション~~!!!」
シーン・・・・・。
シクシクシク。俺・・・泣く。
「う~ん残念だけど魔力は全くなさそうだね・・・。」
「そうだね・・・魔力があれば、生活魔法程度なら誰でも簡単に出来るもんね・・・。」
「それもそうだけど・・・・・・この魔法の消費魔力・・・・・1だもん」
チ~ン・・・・・・俺・・・・・・・魔法の才能ゼロが発覚 シクシクシク
◆◆◆◆◆
ってなことがあって今の話に戻る。
「そんな事言われてもな~20㎞もあるとは思わなかったな・・・・・・山頂付近まで行っても片道40分くらいだぞ?それで、着いてから適当に筋トレと狩りをしてから戻ると大体2時間ってとこだし。まぁ~昨日はラビ(兎)とキジだったから楽勝だったけど、今日は80㎏位の重さがあるピグだったから帰りに時間がかかっちゃったけどな!さすがに重かった~♪」
「うん・・・。知っているし。今も思っていたところ・・・。ソロ君・・・人族だよね~本当に人族?獣人族並みなんですけど~」
「そんな事言われても分かりません!記憶喪失だから!」
ドヤ顔しながら胸を張っている。
「はぁ~何か凄い人助けちゃったのかも・・・。ソロ君って一体何者なんだろうね~」
「はい!全く覚えておりません!記憶喪失なもんで!」
ニッカリ笑って、再びドヤ顔。
「ハハハ♪ソロ君が、元気そうで、何か嬉しいや♪」
「そう言えばさぁ~俺何でソロって名前なんだ?」
「えぇ~覚えてないの? 一番最初に私が名前を聞いた時にソロ君が自分で言った名前だよ~?いくつかの名前の中に含まれてたから・・・えぇ~とね~確か・・・
お・俺の名前は、し・・・・? しり・・・? テラ・・・? せうす・・・・セイ・・・・・ リュウ・・・・・・? セワ?、そ? ソロ・・・・・って最後に言ったのがソロだったからソロ君!」
「安直なネーミングだったんだな・・・。」
「えぇ~私は結構気に入ってるんだけどな~嫌だったら他の名前にする?」
(メロとソロって何か良い感じじゃない・・・。出来れば・・・変えて欲しくないな~)
「変える訳ないじゃん!メロとソロって何か良い感じだもん!可愛いメロがくれた名前なんだから気に入ってるに決まっているだろ!」
そう伝えた途端、耳まで真っ赤になって後ろを向いてしまった。
(な・な・何で私が思ってても口に出せない言葉をハッキリと言うのよ~か・可愛いとか・・・。)
「それじゃー解体してくるね~」
そう言うと玄関の扉を閉めて外に出て行ってしまった。
耳まで真っ赤になった顔を机にうずめて手で、ドンドンと机を叩いている
「はぁ~何かドキドキするな~なんでだろう~」
「それは、恋と言うヤツかも知れないな!おはよう~メロ。」
ソロと入れ替わりで、入って来たマロンに気が付かずに呟いていたので、聞かれてしまっていた。
「キャァァァァァ~ ビ・ビックリした~マロン来たなら来たって教えてよ~」
ビクンと背筋を伸ばして目を見開いているヤッパリ猫の様な感じがする。
「ん?先程、ソロが外に出た時に入るぞ!って声を掛けたぞ!メロが、耳まで真っ赤にして机にうつ伏していたから気が付かなかったんじゃないのか?」
(こ・恋~って・・・恥ずかしい~耳まで真っ赤になっているの?・・・・わ・話題を変えなきゃ!)
「そ・そうなの?じゃ~仕方がないわね!そ・それよりもどうしたの?こんな朝早くから何かあったの?」
「あぁ・・・・・・・その事なんだけど・・・・・・そう言えば今、見たんだけどピグを背負っていたって事は、ソロって隣の山まで狩りに行っていたりするのか?」
「うん・・・さっき知ったけどそうみたいだね~」
「そうか・・・ならば、尚更言っておいた方が良いね!武器屋のディは知っているだろ?」
「うん・・・武器屋のドンさんの息子さんのディ・バンブーでしょ?」
「そう、そのディが、武器の素材を探しに隣の山に良く行くらしいんだけど、10日程前にあの山で、見た事がない魔物を見たって、その後、兵士たちが、森を隈なく探したら、どうやらギガント・オーガがいたらしいんだ。
だから、ソロが知らない様だったら危ないから行かない様に伝えておいて貰えるか?」
「ギガント・オーガってAランクの魔物の?別名ギーガって魔物のことでしょ?」
「そう!そのギーガが見つかったらしい。だからメロの大事なソロにもシッカリ伝えておいてくれよな!」
「べ・別に、大事とかそんなんじゃないけど、ありがとう必ず伝えておくね。でも、こんな近い場所にギーガが現れる何て・・・何かあったのかしら・・・。」
「まぁ~この町の戦士は強いからAランクの魔物一体位なら10人位で倒せるから問題ないと思うけど油断は禁物だからね!万が一ギーガの上位種なんか表れでもしたら・・・・・・兎に角!絶対に近づかないようにね!」
マロンはコクリと頷くメロを見ると玄関を出て行った。
「そう言えば、ソロ君・・・ピグの解体するって言ってたけど、捌き方知っているのかな~?ってそれよりも解体包丁使っているのかな~私・・・渡してないよね?そもそも解体包丁がある事も知らないだろうし・・・。」
そんな事を呟いていたら、何やら外で、ソロ君とマロンの声が聞こえて来た。
「ソロ・・・君は一体何者なんだ!」
ど・どうしたんだろう~?心配になって私も外に出てみたら・・・私はその光景に驚きを隠せなかった。
だって・・・だって・・・さっきのピグが既に解体されていたんだもん!8分も経ってないんだよ!お店の人並みかそれ以上の速さで捌くってどう言う事???
「これは・・・さっき背負っていたピグなのか? ソロとすれ違ったのは、ついさっきだぞ!それを・・・もう解体し終わったのか? 」
ワナワナと震えながら目を見開くマロン。
「さすがにこのスピードは有り得ないだろう~!どうやったらこんな速度で・・・・・・全ての部位をここ迄綺麗に捌けるんだ? しかも、手に持っている包丁は、普通の包丁じゃないか~~~~~!!!!」
さすがのマロンもテンパっていた。気持ちは良く分かる。だって有り得ないもん。
「ん?普通の包丁で解体したらダメだったのか?
適当に、こ~やって~、それから~こういう感じで~そんで~ここは、こんな風に捌いて~ってやったら出来ただけだぞ!そんなに驚く様な事でもないだろう?普通だよ、普通!だって俺記憶がないし!」
ゼスチャーをしながら、またしても意味もなくドヤ顔を決めていた。
「私たちが捌いたら30分以上はかかるよ。」
「否、これだけ大きいピグだと1時間以上はかかるな・・・。しかも、料理包丁だけって・・・。捌けるものなのか?」
「捌けるものなのかって信じられないものを見た様な顔をされてもね~ 既に捌き終わってるでしょ!?」
「「うん・・・そうでした・・・。」」
「おぉ~!獣耳の美女が双子の様に・・・これはレアだな!・・・うん?あれ・・・」
獣耳がレアってどう言う意味だ?
記憶がないからそう思っただけなのか・・・。自分で思っていながら矛盾のある考え方に疑問を持った。
「どう言う事だ?まぁ~考えても無駄だな!覚えてないんだから仕方がない!」
そして、またしてもドヤ顔を決めるのであった。
その後も俺は、順調に回復し、2日後には完全に問題ない状態になっていた。
筋力も相当に落ちていると考えて、いつもの山ではなく教えてもらった獣霊山と呼ばれる家から東に行くとある山で、この頃はハードな筋力トレーニングを行っていた。
そんな毎日を送って60日程が過ぎていった・・・・・。
余談だが、この山に入って10日過ぎた頃にステータスウィンドウを開く事があったんだけど、俺の年齢が15歳になっていた。
「おりゃぁぁぁ~・・・グヌヌヌヌ! ずぇりゃぁぁぁ~・・・トゥ~ウ! どりゃぁぁぁ~・・・まだまだ~そりゃぁぁぁ~」
大ケガが回復してから何でか知らんが、全てが絶好調だった。
思いつく限りの筋力トレーニングを毎日行っているせいか日に日に力が付いてきた実感があった。
メチャクチャ重い大きな岩を持ち上げて斜面の上に投げ飛ばしたり、その岩が転がって俺の方に戻って来たものを手で抑え込んだり、メチャクチャ思い他の金属を加工して身に纏って負荷を掛けたり、手を使わずに木や岩を蹴りながらジャンプして登ったり、切り立った岩肌をジャンプしながら登ったり、岩を抱えて走り回ったり、高所から飛び降りて着地出来るようにしたり、素手や素足で岩を叩き割る特訓をしたり、兎に角思いつく限りの特訓に励んでいた。
自分でも尋常じゃないと思える修行をしているせいか、かなりのケガをしたり、想像を絶する筋肉痛が起こるんだけど、この獣霊山には嬉しい誤算があった。
獣霊山で修行すると1時間程でどんな傷でも痛みでも治りその上体力まで回復してくれる。
正確には、ここにある温泉にユックリと浸かると傷や疲労が、物凄い速さで回復してくれた。
俺は、何度も特訓しに獣霊山に登っている内に、今まで気が付かなかった穴?と言うか切り立った斜面に大きな隙間が空いている事に気が付いた。
いつもなら霧が濃く10m先も見えなかったんだけど、この時は霧が晴れていたのかハッキリ見る事が出来た。
恐らく標高4500m位の場所だと思う。
不思議な事にその隙間の中だけは50~60m位のなだらかな場所があったので、基本となる修行は、この場所で行うようにしていた。・・・温かいし!
但し、少しでも、その場所を外れると傾斜角が70度以上ある場所も多く、気を抜いては危険な場所だった。
頂上に向かう険しい道には強い魔物もいるし何より環境が厳しいので、力を付ける度に頂上を目指した。
そして、この場所で修行を始めて5日位経った頃だった。
メチャクチャな特訓をした後に帰ろうとしたらフラフラして崖から落ちた事があった。
流石に転がり落ちる途中に身体を岩肌に強く打ち付けてしまい俺は気を失った。
そして、気が付いたら温泉の中にいた。
どれ位気を失っていたのかは、分からなかったけど、気が付いた時には体中、傷だらけで全く体を動かす事が出来なかった。
自分でも、これは助からないな・・・と思っていたら目に見える速さで傷が回復して体力まで回復していた。
身体が動くようになったので、周りを調べてみたら10m位の広さがある温泉に落ちていた。
雪解けの水が入り込んでいたからか、熱湯じゃなく丁度良い温度で助かった。
登って来る時に気が付かなかったのは、霧や雲がかかっていた上、風が匂いを逆方向に流れていたからか匂いも全くしなかった。
あの頃は、俺が家を出る時間も早すぎた上、まだ4月初旬だったので俺が、獣霊山に到着する時間だと周りがまだ薄暗かった。
標高の高い山の特徴であるモヤがかかっていたから気が付くはずもなかったのかも知れない。
日中に晴れている時に来ていれば、湯気位は、目に入ったと思う。
最初は、疲労で記憶が定かじゃなかったから何かの勘違いだと思った。
冷えて疲れた体を温めたから疲労が回復した程度だと思っていたけど、特訓の終わりに毎日温泉に入る様になって確信した。
疲労回復だけでなく修行や戦闘で出来たそれなりに深い傷までも綺麗に治っていた。
何度も温泉に浸かって分かった事は、1時間以上浸かっても、それ以上の回復効果に変化がなかった。
逆に言えば、1時間で殆どの傷やダメージは完全回復して、体力も完全に元に戻った。
これならもっとハードな特訓しても問題ないだろうと思って自分で考える限りの事を続けていたって訳だ。
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