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人権なしのランク0。よくわからないけど、塔、登ります  作者: つくたん
オワリに向かって
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終わりまで駆け上がれ

たった1階が長い。螺旋階段をひたすらに駆け上がる。

壁のところどころにある採光窓から見える景色で自分たちのおおよその位置と高さを知るが、それでも頂上への扉は見えない。

空間的にはとっくに1階分など登っている。それでも頂上(32階)が遠い。


「ホラ、ガンバレ!」

「破壊神ハ25階ヲ食ベチャッタワ!」


横から囃し立てながら状況を知らせてくれている精霊たち曰く、もうすでに破壊神は中層のほとんどを飲み込んだという。

その怪物はついに書架さえ平らげようとしている。書架を食うということは、書架の番人である司書はすでにもうこの世界にはいないということだ。


「長い階段で階をごまかすなっつぅの!」

「ほんと、同意するわ」


急がねばならないのに。早く頂上に行って、すべてを終わらせなければならないのに。

もう何階層分登っているだろうか。単純な高さで言えばもう10階分以上は登っているはずだ。

精霊の幻覚や悪戯で足止めされているわけでもなく、ひたすらに駆け登っているというのにまだ頂上は見えない。


「昴さん、待、って……」


さすがに体力が限界だ。息が切れた。

フォルの足がふらつく。段差につまずいてよろめく。無様に転がり落ちる前に壁に手をついて体を支える。

立ち止まってしまったフォルに合わせて全員が止まる。時間がないとはいえ走りすぎたか。

止まるわけにはいかないが、ペースを落として歩くくらいの時間の余裕はあるだろうか。



「フォル、大丈夫か?」

「っ、はい……でも……」


でも、このまま登っていいのだろうか。

本に告げられた予言では、頂上で昴たちは死ぬと言われている。

その原因も理由も知らされていない。だが、本に記載されている以上それは確かなことなのだ。

なのに、どうして迷わずに進めるのだろう。


その疑問がフォルの足を止める。

策はあると昴は言った。だがその策とはなんだろう。

もしかしたら、あの時とっさに出たごまかしで、本当はノープランなのではないか。

疑いたくはないがそんなことまで思ってしまう。


「本当に、わたしたちは大丈夫なんですか……?」

「……うん。大丈夫だよ」


心配することはないと、力強く昴が頷く。

走りながら喋っていたら舌を噛んでしまうから、説明は頂上に着いてから。

だから行こう。そう昴が手を伸ばす。


「でも……」

「安心しろ。コイツの策はアタシも知ってる」

「私もね。……それで問題ないと思ってるから、迷わず進めるのよ」


手を取るかどうか迷うフォルにリーゼロッテとサイハが言い添える。

大丈夫だ。頂上に着けばすべて終わるはずだ。めでたいかどうかはともかく、円満に終わる。

だから大丈夫。フォルはただ、最後にひとつやることがあるだけだ。

そう言って、昴はフォルの手を取った。行こう、と促す。


そうして、また頂上を目指して駆け上がっていく。


***


終わらせて。終わらせて。

身の内より湧き出る衝動が止まらない。


手を伸ばし、そして空を望む。天は遠く、また地の底も深い。

何故この世界はこれほどまでに果てがないのだろう。

わからない。だがすべてを平らげねばならないと思った。


すべてを更地にしたら、新しいものが生まれるかもしれない。

確証のない希望に向かって手を伸ばす。何もかもを食い尽くせば、きっと何かが変わる。


終わらせて。この世界を。どうか。


「……あぁ、面白い」


外から塔を眺め、ネツァーラグはうっそりと笑った。

破壊神メタノイアは手だけを伸ばして塔の下半分を飲み込んだ。

散々食い散らかして取り込んで、もはや塔と同化している。


「とても面白い光景じゃないか。なぁ?」


破壊神が破壊神としてきちんと機能していた時のことを思う。

あれは技術の粋を結集して作ったヒトの悲願であったし狂気であった。

神を殺すための兵器であったそれは今では神の手先となっている。

世界を壊すという機能だけを残して、それ以外の役割を削ぎ落とされてしまったもの。


だが、破壊の能力がふるわない。

おそらくは経年劣化によるものだろう。何度も使い回されすぎて限界なのだ。

何度も何度も世界を更地にし続けて、繰り返し続けて、ついには擦り切れてしまう寸前なのだ。


だからきっと、メタノイアの活躍はこれっきりだろう。

『全消去』にともない、破壊神メタノイアは永遠に破棄される。

『次週』ではもう見る影もないだろう。それでいい、もう十分に働いた。


空白となった役割には誰かが割り当てられるのだろう。

誰かが終末をもたらす破壊神の役割をあてがわれ、そして『次週』以降に活躍する。

いつか、何億回目の繰り返しで疲れて擦り切れてしまうまで。


だからこれは、破壊神メタノイアの最後の大舞台なのだ。

それならば見届けてやらねばならない。かつてこれが神殺しの兵器であった時、それを生み出した者のひとりとして。


「ほぅら、そろそろ上層に手が届くぞ」


もうすぐ巫女の一行は頂上に着くと知らせを受けながら、ネツァーラグはかつての日々を思う。

だが感傷に浸っている場合ではない。もう物語はクライマックスだ。


破壊神メタノイアが手を伸ばすよりも、巫女の一行が先に頂上に着くだろう。

頂上には障害物も何もない。『扉』と『鍵』を作るための装置があるだけだ。

そこで何をするのか、ネツァーラグは知っている。とても残酷な行為だ。


さぁ、見せてもらおうか。ヒトの願いが叶えられる瞬間を。


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