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absorption ~ある希少種の日常~  作者: 紅林 雅樹
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九十一節、晩餐

「びっくりしたよ」

夕食会が始まってすぐ、シンシアは隣で行儀よくステーキを食べているディエルにいった。「ミレイアちゃんがここのメイドになってるなんて」

他のメイドたちは、ダインたちの要求にいつでも対応できるようゲストルームの端に控えているが、当のミレイアは別室で掃除させられていた。

「ああいう悪人は外に出したらまた何かするでしょうからね」

スープを飲み、ナプキンで口元を拭ってからディエルはいった。「だから義理はまったくないんだけど、しばらくウチで預かることにしたの」

どうやらディエルが父に進言したらしい。

キリノフ邸はグリーン所属の捜査員によって中に入れなくなっており、ロアンか秘書の指示なのか、ミレイアの母は行方をくらましている。

親戚もいないようだったので、帰るあてのないミレイアをスウェンディ家のメイドとして引き入れてはどうかといったようだった。

悪いことならいくらでも思いつくミレイアだ。復讐の可能性もあるので、だったら目の届く中で置いておこうとディエルの父も了承したらしい。

「本人は納得してるのか?」

ダインがきくと、「してるわけないでしょ」、メイドに取り分けてもらったサラダを受け取りつつ、ディエルは答えた。

「始めの頃は何度も脱走しようとして手を焼いたわ。その都度捕まえて、今度逃げようとしたら“あの映像”をバラまくっていったら固まってたわね」

「そ、そうか…あの映像か…」

ダインはすぐさま、ディエルが携帯に送りつけてきたロアン親子の“拷問映像”を思い起こしてしまう。

「あの映像って?」

現場も映像も見ていないシンシアたちには、何の話か分からなかったのだろう。

「アヘ顔ダブルピースって知ってる?」

「あへ…?」

ディエルが説明しようとしたところで、「ロアンはどうなったのか聞きたいんだけどな!?」、咄嗟にダインは遮った。

「ほ、ほら、悪さ加減でいえばあいつが一番ヤバイだろ? どうなったんだ?」

これ絶品だぞ、とシンシアたちにはダシホタテの香草テリーヌを切り分け、興味をそっちに移させる。

「ん〜!」

テリーヌを口に含んだ途端、その美味さにシンシアたちはとろけたような顔で体を震わせている。

「ロアンだったら、グリーンに引き渡したわよ」

魚介類を詰め込んだ巻き寿司を口に含み、ディエルがいった。「今後は人身売買の件で追及されることになりそう」

「そうか。とりあえずガーゴの手が届かなくなりそうなんだな」

ダインはほっと息を吐き、生卵に浸していたローストビーフを口にする。

「とはいっても、グリーンのこともそこまで信用してないんだけどね」

「そうなのか?」

「ええ。世界規模の裁判なんてそんなにしてないでしょうし、活動内容も良く分かってないし」

ガーゴよりはマシな程度よ、と続けるディエル。

「相変わらず簡単に信用しない奴だな」

「当然でしょ。私に近づく奴らなんて、私欲に目がくらんだ奴しかいなかったんだから」

アマノドグロの刺身を口にし、「まぁ…」、ディエルはシンシアたちの方に目だけを向ける。「あなたたちは違うようだけど」

「いや、分かんねぇぞ?」

ダインはニヤッと笑う。「このメシにありつきたくてお前に近づいたのかも知れないぞ?」

もちろん冗談だった。

「だったら可愛らしいことこの上ないわ」

ディエルもクスッと笑い、「大体の人は、私がもらっているお小遣い目当てか、セレブ御用達のアクセサリーとかブランドグッズとか狙ってくるのに」、といった。

「いや、うまい料理の方が金やブランドもの以上の価値があるだろ」

独自の価値観と共にダインはいった。「みんなうまいもん食べたくて高い金払ってるんだからさ」

「あはは、そうね」

どれを食べても美味しそうに頬を緩めるシンシアたちに、ディエルは上機嫌に笑った。「少しは恩返しできたかしら」

「十分すぎるって。うまいメシにメイド隊の洗練されたおもてなし。これ以上の贅沢はないよ」

そのメイド隊は、シンシアたち一人一人に世話係としてついている。

ニーニアは声に出してないのに、周囲を見回す動きを見ただけで、察したメイドが彼女にスプーンを差し出し、ティエリアには新しい取り皿、シンシアにはグラスに新しくジュースを注いでいる。

「かっこいいよねぇ…」

てきぱきと動くメイドたちを眺めながら、シンシアがいった。「何だか、デキる女! って感じがするよ」

配膳、歩き方、物の渡し方、あらゆる所作に気品を感じると彼女は続ける。

「私についているのは特に有能な人たちだから。まぁ他のメイドたちも同じようにできるんだけどね」、と、ディエル。

「すごいなぁ…」

揚げ物を食べながら、ニーニアも憧れに似た視線を彼女たちに送っている。

「簡単に出来ることではありませんね」

ティエリアもそういってメイドたちの動きをジッと見ていた。

「もしかして、あなたたちもメイドになりたいとか?」

ディエルは笑いながらいった。「可愛いあなたたちなら大歓迎だけど」

「う〜ん…いまはやること沢山あるから無理だけど、でも憧れはあるな」

正直にいったのはシンシアだ。「メイドさんってみんなかっこいいイメージがあるよ。ここの人たちもそうだけど、サラさんを見て特にそう感じたな」

「サラさん?」

「俺んとこの使用人兼俺の世話係だ」

ダインが答える。「色んな意味で出来る人で、例の書類を見つけたのもそいつだし、前回ここに忍び込んだこともある」

「良かったら今度正式に紹介してくれない?」

そういうディエルはかなり興味深そうだ。

「あなたの口ぶりから相当なやり手なんでしょうし、ちょっと話してみたいわね」

「完全に裏方の人で表に出ることは滅多にないから、ウチに来てくれればいつでも会えるぞ」

「スケジュール空いたら連絡するわ」

そうして自然とダインの家に行く約束を取り付けているところで、「あの…」、ティエリアがダインの近くまで来ていた。

「おお、先輩、どうした?」

「あの、明日のことをお話したくて…」

「ああ」

すぐさまティエリアの椅子をメイドの一人が持ってきてくれたが、「必要ないわ」、ディエルはそういって、ティエリアの脇を掴んで自分の膝上に座らせた。

「ひゃっ」

「先輩の位置はここですからね〜」

そういってティエリアをぎゅっと抱きしめる。

「お前ほんと先輩抱っこするの好きな」

「何か先輩見てると抱っこしたくなっちゃうのよねぇ」

「まぁ分かるけどさ」

「あ、あはは…」

困ったように笑うティエリア。「さ、私のことは気にせず、続けて」、と、ディエルはそのまま食事を再開した。

「先輩、明日の話って? 先輩の家に遊びに行くのに関連したことだよな?」、ダインはきいた。

「あ、はい。そのプランを考えてきましたので、ご一読いただければと…」

ティエリアからノートを受け取り、その内容を読み込んだダインは、「温泉か。いいねぇ」、嬉しそうに笑った。

「観光や食事のことまで書かれてあるし、何かマジでツアー旅行のパンフレットみたいだな」

「す、すみません、色々と考えているうちに、堅苦しいものになってしまいまして…」

「いや、基本的に先輩とだったら何でも楽しいだろうから、この内容云々に俺が意見することは何もないよ」

「そ、そう、ですか?」

「ああ。それで温泉はどういうものなんだ? 男女別々だよな?」

「あ、いえ、バベル島に一つだけある温泉はとてつもなく広く温泉の種類も沢山あるので、みなさんで周っていこうかと…あ、もちろん全て混浴です」

「じゃあ水着がいるな」

「は、はい」

「すごく羨ましいんだけど…バベル島かぁ…」

黙って会話を聞いていたディエルがぽつりと漏らす。

「ニーニアはまぁ大丈夫なんでしょうけど…私は駄目だろうなぁ…」

なにやら意味ありげだ。

「何の話だ?」

「ほら、聞いたことない? ゴッド族しか住んでないバベル島は、過去に不可侵バリアが張られてあったって」

伝説の島といわれる所以になった話だ。

存在自体が奇跡といわれるゴッド族なので、政治や、それこそ宗教の道具に使われたことなど過去に沢山あった。

そのため、種族間の対立が顕著になっていた時代、戦争の道具やトラブルに巻き込まれることを危惧して、どの種族との交流も遮断していた時代があった。

バベル島に侵入できないどころか認識できないバリアも張られてあったそうで、同じ地上でありながら完全に独立した時代が長く続いていたのだ。

「ゴッド族が扱う聖力という力の性質上、その効果は魔族に対して特に強く現れるものだから、魔族の血が濃い私たちデビ族は立ち入ることすらできないでしょうね」

「そうなのか?」

ティエリアに目を向けると、「あ、そ、そういえば、バベル島にデビ族の方が訪れたことはございませんでしたね」、と、彼女はいった。

「そのときはどうしてだろうと思うこともあったのですが、仰るように、不可侵バリアの名残は島全体に染み付いていますから…」

「あー、じゃあ俺もどうなるか分かんねぇなぁ」

同じ魔族だし、と続けると、「あなたも大丈夫なんじゃない?」、ディエルはジュースを飲みながらいった。

「ティエリア先輩のバリアも貫通してるし、基本的に魔法は効かないんでしょ? 大丈夫よきっと」

「そうか?」

「まぁあなたが平気なだけで、島には何かしらの影響が出てしまう可能性はあるけど…」

さらりと不穏なことをいう。

「…俺、やっぱ行かない方がいいんじゃ…」

「だ、駄目です!」

ティエリアは慌てだした。「日ごろのお礼を私もしたいですし…ダインさんには、絶対に…」

「いや、でも俺が行くことによって島民の人たちに損害被るようなことがあったら…」

「ありませんし、出させません!」

彼女は必死な様子だ。ここへ来てのダインのキャンセルは考えられなかったのだろう。

「お願いですから、来てください…来て欲しいです…」

「あー、水を差すようなこといっちゃったわね」

ごめんね、とディエルは謝りながら、落ち込むティエリアを再び抱きしめた。

「私からもお願いするわ。いってあげて」

この楽しい食事会の場では、暗くなるような話はご法度だ。

「行かせてもらうよ。でも少しでも悪影響があると分かったら離れるからな?」

ダインはティエリアの頭を撫でながらそういった。

「あ、ありがとうございます!」

「礼をいうのはこっちなんだけどな」

会話中、やけに静かだったシンシアとニーニアは隣にいない。

彼女たちはいつの間にかメイドたちの輪の中にいて、料理のレシピを聞いて回っているようだった。

相変わらず料理に関しては抜け目ない彼女たちに笑いつつ、ダインは再び手元のノートに目を向ける。

「ん〜、でもここまで書いてくれてあれなんだけどさ、翌日の項目は実現できるか分からないんだ」

「え? 翌日…というと、明後日のことですか?」

「ああ。ひょっとしたら朝早い時間から出かけなきゃならないかも知れない」

その理由を、彼女たちに打ち明けた。「ドラゴン退治の連絡が来てるから」

「え!? も、もうですか!?」

ティエリアが声を張り上げる。

その声を聞きつけたシンシアたちは、何事かと近づいてきた。

「随分早いのね?」

「ヴォルケイン退治の話題はいまだに醒めてないからな。この熱がある間に次々と退治して宣伝効果を高めたいんだろうよ」

それからダインはサラからの情報と共に、昨日ガーゴからドラゴン退治の連絡を受けた旨を伝える。

「マレキア大陸のシアレイヴン、ねぇ…」

フォークを口に咥えたまま、ディエルは思案する。「確か封印地は森の奥深くだったような…」

「知ってるのか?」

「噂程度にね。エル族の中では聖域とされる場所だったはずよ」

「聖域?」

「ええ。地名は…何だっけ」

ディエルが後ろを振り向く。そこにはやたら骨格のいい長身のメイドがいて、「“不可侵領域サイレントフォレスト”という場所ですね」、彼女は答えた。

「森林部であるにも関わらず、常に風の吹き荒れる場所でして、暴風に晒されながら歪んで育った木々が特徴的な場所です」

博識らしい彼女はさらに続ける。「奥へ行けば行くほど風はきつくなり、呼吸すらままならない。そこからサイレントという名前がつけられたそうです」

「へぇ〜」

新しい情報を知って声を漏らすダインだが、説明してくれる彼女自身に対して小さな違和感が湧いた。

その声を聞いた瞬間に確信が生じてしまったのだが、少し前にディエルがいいかけた“例外”が彼女であることに気付き、「情報あざっす」、軽くお礼をいうだけに留めた。

「クリスティーナ様、あの子がまた妙な動きを…」

別のメイドが近寄ってきて、博識の彼女に何やら耳打ちをする。

「も〜またなの? しょうがないわねぇ」

クリスティーナは困った表情のままディエルの方に向き、「お嬢様、申し訳ありませんが少々席を外しても…?」、そうきいた。

「ええ。あいつのことは任せるわ」

興味なさげにディエルはいい、クリスティーナはダインたちに一礼しつつ部屋を出て行った。

その背中を見送ってから、「なぁ、あの人ってさ…」、ダインは何事かいおうとしたが、ティエリアの強い視線を感じて止まった。

「あの、ダインさん…」

「うん?」

「明後日ドラゴン退治だということは、明日のお泊りは…」

彼女は一気に不安になったようだ。

シンシアもニーニアもお泊り会だと説明してある。なのにダインだけ、先週ニーニアと揉めたようにまた一人だけ帰ろうとしてしまうのではないか。

「いや、迷惑じゃなければ泊まらせてもらうよ」

彼女の不安を払拭するように、その小さな頭を撫でながらダインは笑いかけた。

「ただ明後日の朝はごたついてそうで、せっかく組んでくれたプランが実行できるか分からないだけでさ」

「そ、そうでしたか…」

ティエリアはほっと息を吐く。

「ルシラちゃんは説得できたの?」

取り皿に沢山の食べ物を乗せながら、シンシアがダインにきいた。「ダイン君がどこかに行くってなったら、ルシラちゃんいつも嫌そうな声上げてたよね?」

「いや、それが珍しくあいつも明日と明後日は忙しいらしい」

「え? そうなの?」

「ああ。俺の両親がルシラを連れてトルエルン大陸に…まぁリステン邸なんだけど、何か用事があっていくらしいんだ」

「え…わ、私、何も聞いてないんだけど…」

ニーニアが驚いたようにダインを見る。

「俺も昨日聞かされてさ。ルシラのために必要なことだとしかいってくれなくて…」

「何なんだろ」

気になりだしたニーニアは携帯を取り出そうとするものの、「お互い知らないんだったら教える気はないんだろ」、ダインはそういって制止させた。

「親父も母さんもサラまでもさ、どうも俺に黙ってなにやらコソコソしてるっぽいんだよな。俺を驚かせたいためだっていうのは何となく分かる。過去に何度も色んなサプライズ仕掛けられてきたからさ」

「あはは、そうなんだ」

「ああ。つってもニーニアの親も巻き込んでいる以上、妙なことにはならないだろ。そこは信用していい気がするから、俺らも黙って騙されようぜ」

「ふふ、うん」

「いいわねぇ楽しそうで」

そのとき、ディエルが羨ましそうにいった。

「お泊り会とかドラゴン退治とか、胸が躍るようなイベントが目白押しじゃない。私なんか明日ダサい衣装着せられてダンスレッスンよ?」

「ダンス?」

「ええ。体幹と記憶力を鍛えなさいってお母様がね。小さな頃からやらされている中で一番面倒な稽古事よ」

「そんなのやってんだな」

「明後日は一部ヒューマ族の民族衣装の“キモノ”っていう窮屈な衣装着せられて、俳句大会だし。面白いことなんか何もないわよ」

さすがお嬢様だと思うような愚痴だった。

「もしお時間があるのでしたら、ディエルさんもお招きできたのですが…」

残念そうにティエリアはいう。

「週末に時間が作れないんだったら、今日みたいに放課後みんなで落ち合うっていうのはどうかな?」

とシンシアが続くが、「リィンさんとの稽古はどうするんだよ」、ダインは笑って突っ込んだ。

「お前がやる気を出してくれてあの人喜んでるんだろ? 稽古つけてくれってお願いしたのに、サボるのは良くないよ」

「あう…それはそうだけど…」

「シンシアが優先すべきは剣の修行だ。退魔師を目指すんならなおのこと」

「むぅ…」

「ま、どうにか時間を作るわ」

そこでディエルがいった。「私だけが週末スケジュールが詰まってるんだし、またこうして遊べるように都合つけるから」

「うん、お願いね!」

すぐさま元気を取り戻したシンシアはいい、「ディエルさんとのお泊り…!」、ティエリアはまた全身を輝かせ始める。

「面白いもの私のお家にも沢山あるから、ディエルちゃんならいつでも来てもらっていいからね」

ニーニアまでそういって、ディエルの顔にまた嬉しそうな表情が広がっていく。

「あなたたちは私の癒しでしかないわ」

彼女はかなり上機嫌な様子で、側にいたメイドに何やら合図を送る。

するとそのメイドは奥の部屋へ消えていき、数人のメイドたちと共に戻ってきた。

それぞれ両手に蓋がされたお椀を持っており、ダインたちの前に置いて、一斉に蓋を取る。

「マッ茸の包み揚げでございます」

大きくカットされたそのマッ茸からは、独特の芳醇な匂いが漂ってくる。

「ふわぁ…」

その香りにシンシアがくらくらしているところで、後ろに控えていたメイドたちがダインたちの隣に移動し、持っていたティーポットをその揚げ物に傾けた。

アツアツでダシの効いた液体に晒され、マッ茸揚げの衣部分が混ぜあうように溶けていく。

するとまるで花が開くように食材が動き、中から沢山の米粒が現れた。

「す、すごい…!」

ニーニアが感嘆の声を漏らす。

「マッ茸揚げのお茶漬け、最近ハマってるのよね」

「もう食べちゃっても…」

食欲が再び刺激されたシンシアがスプーンを手にするものの、「いえまだよ」、ディエルはメイドが持ってきた大きなつぼを受け取り、テーブルの中央に置いた。

「これ、試してみて。きっと気に入ると思うから」

大人の手の平ぐらいはあろうかという広いスプーンをつぼの中に突っ込み、すくい上げると…中からは金色に輝くペースト状の何かが現れた。

「え!? そ、それ、もしかして…ウニ?」、シンシアが驚いたように尋ねる。

「ただのウニじゃないわよ? バカみたいに美味しいって評判の、バカウニよ」

ディエルは舌なめずりしながら、そのウニを豪快にお椀の中に入れた。

「これをかき回して一気に頬張るの」

レンゲでずずっとお茶漬けを啜ったディエルは、「っはぁ!」、何とも美味しそうな表情で息を吐いた。

いそいそとディエルの真似をしたシンシアたちもそのお茶漬けを食べ、「んまーい!」、喜びの声を上げた。

「沢山あるからどんどん食べてね」

「こ、こんな…駄目だよ…止まらないよ…」

がつがつと、まるで部活帰りの学生ばりにお茶漬けにがっつくシンシア。

「さ、さすが、お食事という至福の快楽にも手を抜かない…ですね…デビ族の方々は…」

普段行儀良くご飯を食べているティエリアなのに、いまや頬が膨れるほど口の中いっぱいにお茶漬けを貪っている。

「お、お腹…いっぱいなのに…手が勝手に…」

ニーニアに至っては自制すら効かないようだった。

無心になってひたすら食べ続けるシンシアたち。

「何か変なもんでも入ってるんじゃないだろうな?」

あまりの変貌っぷりにダインが笑いながらいうと、「あなたも食べてみれば分かるわ」、ダインの分を作ってくれたのか、ディエルがお椀を彼に差し出した。

素直にそのお茶漬けを食べたダインは、一口目で衝撃を受けたように目が見開かれ、無言になってしまう。

そしてそのまま勢い良く貪り始めた。

「ふふ。気に入ってくれたようで何よりだわ」

どうやら食事会は成功したようだと、子供のようにがっつくダインたちを見て、ディエルは満足そうに息を吐いた。

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