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absorption ~ある希少種の日常~  作者: 紅林 雅樹
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七十九節、もやの中に浮かぶ輪郭

「何か分かったことあったのか?」

ダインは、自分の隣でくつろいでいたジーグに尋ねる。

サラを含めた久々の家族での定例報告会だった。

もうすぐで深夜という時間だったので、窓の外は真っ暗で、彼らの話し声以外には何も聞こえない。

「あのフードの男が単独で倒したドラゴンが、本物かどうかが一番気になっているんだけど」

リビングの明かりにぼんやりと映し出されたシエスタとサラも、疑惑の篭った視線をジーグに向けている。

「間違いないらしい」

蒸留酒の入ったグラスを見つめながらジーグは答えた。

「混乱期に大暴れしていたヴォルケインの皮膚組織と、今朝方回収したドラゴンの残骸の遺伝子情報が一致したらしい」

ジーグが詳しく説明しても、ダインたちはしばし反応しない。本物だと聞き、余計に疑惑が深まったためだ。

「ヴォルケインはあの程度の強さだったということ?」

やがて、シエスタが浮かんだ疑問をそのまま口にする。「世に溢れてるエレンディア創世記のお話は、盛りに盛られたものだったの?」

誰にいうこともなく呟いたが、「いや…ここだけの話なのだが」、ジーグが前を見つめたまま口を開く。

「あのドラゴンは本物なのは間違いない。遺伝子情報が合致した時点で、それはもう疑いようのないことだ。しかしいくつか不審な点が見られたのだよ」

「不審な点?」

「うむ。その構成組織に謎がある」

ジーグは続けた。「筋肉や血管といった、生物であるなら当たり前に存在する器官はあるにはある。しかし、それらを形作る要素が一般的なものとはまるで違っていたのだ」

「どういうこと?」

「私はそれほど医学知識を持ち合わせてはいないし、検査したのは残骸の一部に過ぎないので全容はまだ分からないのだが…」

そう前置きし、さらに続けた。「それら生物というものを形作る器官が、何かしらの不可思議な力によって無理やり繋ぎ合わされているような形をしていた」

いまいちピンと来ないシエスタは、「というと?」、再び尋ねる。

「つまりだな、超自然的な力であの“カタチ”ができたようには思えない」

「誰かが意図的に作ったもの…ということでしょうか?」

サラが尋ねる。「例えばホムンクルスのような?」

「そうだ。しかもそれらを繋ぎ合わせる“不可思議な力”というものも、聖力や魔力といった色のついた魔法力には見えなかった」

まったく別種の力に見えた、とジーグはいった。

「七竜を生み出したのはレギオスって話よね。混沌の神と呼ばれるぐらいなのだから、常識なんてものはないんじゃないの?」、と、シエスタ。

「それは確かにその通りだ。レギオスがどのような魔法を使って人々を窮地に追いやったのか、何という魔法でドラゴンを使役したのか、我々には理解の追いつかない領域の話だろう。だが…」

そう返すジーグは、まだ不審な点があるといいたげだ。

「何か見つけたのか?」

ダインがきくと、「ああ」、ジーグは蒸留酒を一口飲んで、再び口を開く。

「これは完全な憶測で、私の個人的見解に過ぎんのだが…あのドラゴン、何かしらの“細工”が施されたように思う」

声を潜めて続けた。「肉体組織がちぐはぐなのは置いといて、筋肉量や皮膚や鱗の硬度は驚くべきものだった。それらの塊のドラゴンだったならば、朝に見たようなあんなもっさりとした動きにはならないはずなのだ」

それはシエスタがずっと口にしていたことだ。

「つまりもっと強くないとおかしいっていうこと?」

「ああ。封印されている間、ドラゴンがどのような状態だったのかは分からんが、目覚めたばかりにしてももう少しまともに動けていたはずだ」

「ドラゴンのブレスも防がれていたしね…」

再び考え込んでしまうジーグたち。

「そういえば、残骸の処理ってガーゴがしたんだっけ」

シエスタが何かに気づいたように顔を上げた。「もしかしてその“細工”を施していたのを隠すために…?」

「いや、ここまでは憶測の段階だ。その憶測を前提に思考を進めるのは危険だろう」

シエスタの考えを、ジーグは遮る。「まだ調べる余地はある」

そこでヴォルケインに関する話が落ち着きそうになったが、「あの子供のドラゴンはどうなんだ?」、ダインはもう一つ気になっていたことをジーグに尋ねた。

「遺伝子情報から、子供とか残影だったりするのか?」

「それなんだが…」

最大の疑問点が浮き彫りになったとでもいいたげに、ジーグは眉間に深い皺を寄せる。

「あれも本物なのだ」

「本物?」

「うむ。子孫や本体というものではなく、あれ“も”ヴォルケインのようなのだ」

「…は?」

ダインだけでなく、シエスタやサラも顔に疑問を貼り付けた顔をしている。

「これが最も奇妙なところでな」

ジーグも同様の顔つきでいった。「倒されたヴォルケインとダインが拾ったあのドラゴン、大人と子供ほど見た目は違うが、どちらもまったく同じ存在ということだ」

その彼の台詞は、『ヴォルケインの隠し子』や『張りぼてと本体』といった可能性を否定するものだった。

分身でもなくその一部ということでもない。ヴォルケインという一個体の存在が、二つあったということ。

「それは…本当に奇妙ね…」

シエスタはまた考え込んでしまった。

「…ギベイル様はどのように?」

ふとサラがジーグにきいた。「こちらで預かっているピーちゃんの処遇については…」

本物のヴォルケインだと分かったのだ。今朝話し合ったときとは状況が違う。

ギベイルの意見が変わっているかもしれないとダインが思っていると、「ダインに一任することに変わりはないようだ」、ジーグは息子を見ていった。

「生かすも殺すもお前次第というわけだ」

「そうか」

「成長後はあの姿になることはほぼ確定したといってもいい。それでも育てるつもりなのか?」

ダインの顔色を窺うような表情でジーグが尋ねてくるが、「ああ」、と、ダインは少しも考えることなく頷いてみせた。

「今日はほぼ半日一緒にいたけど、やっぱりアイツはそんな悪い奴じゃない気がするんだよ」

ダインのピーちゃんに対する印象は、ルシラと戯れて嬉しそうに鳴いているあの可愛らしい姿しかなかった。

「目つきに悪意はまったく感じられないし、中庭の手入れまで手伝ってた。シンシアたちは始終アイツの可愛らしさにやられていたし、とても文献に載っていたような悪逆非道のヴォルケインだとは思えない」

「それが奴の常套手段だとしてもか?」

ジーグは真剣な表情で尋ねた。「わざと愛くるしい姿になって敵の懐に取り入り、反逆の機会を窺う聡いモンスターも中にはいる」

その彼の言葉は、数ある裏切りの経験から出たものだ。「アレはそうではないと言い切れないのではないか? 本物のヴォルケインだという事実も変わらないのだぞ」

「それでもだ」

ダインも真っ向からジーグに反論した。「本体が二体いた。この点を慎重に考えるべきなんだよ。過去に大災害を巻き起こしたのがアイツだとは限らないだろ」

分からないからこそ不安がある。その不安は時として軋轢を生む。

「突然朝に見たような姿になるかもしれない。この村で暴れだすかもしれない。私たちなら押さえ込むことは可能でしょうけど、誰かに見られた時点であなたがヴォルケインを持ち帰ったことが明るみになる。世界中から批判や弾劾されるということは考えないの?」

シエスタも真面目にいってきた。「これは私たちだけの問題じゃ済まされないのよ」

「もしそうなれば、この小さな村はあっという間に地図から消えるでしょうね」

サラも便乗していってきた。「関係のない大多数を巻き込むことになる。その覚悟はおありなのですか?」

ダイン以外は、全員がドラゴン…ピーちゃんの存続に否定派のようだった。

彼を見つめる目つきは戸惑いが半分、非難が半分といったところだろうか。

「だったら、真相を究明せずあの赤ちゃんを殺せっていうのか」

ダインもまた、真面目な顔で彼らに視線を送った。「ろくに飛べず満足に歩くことも出来ないあの幼体のまま、食べ物もなにもない封印地に放り込めと」

「これは単なる感情論でいってるんじゃないんだ」、ダインは努めて冷静に、説くような口調で続けた。

「本体が二体あるというのは、ヴォルケインに限った話じゃないような気がするんだよ」

「…どういうことだ?」

「レギオスを介して七竜は繋がっているって話だろ? だったら、他の六体のドラゴンにも、同様に本体が二体あると考えられないか?」

体の色が違うだけで、七竜の姿形はほぼ均一だった。

「検査した結果、大きなヴォルケインの内部構造がちぐはぐだと親父はいってたけどさ、体内を見たわけじゃないがピーちゃんにはそんなちぐはぐな部分はないように思えるんだ。つまり、遺伝子上は本体が二体あるということなんだろうが、ヴォルケイン本来の姿というものは、ピーちゃんのような気がしてならないんだよ。そしてその本来の姿が、他の六体のドラゴンにもいる」

思い当たる部分でもあったのか、ジーグは黙り込んでしまい、シエスタとサラは再び思慮に耽ってしまう。

ダインはそのまま続けた。

「本来の姿が他の六体のドラゴンにも存在する。そしてその存在を守ろうとしている奴も、この世界…かどうかは分からないが、確かに存在している」

「ダインが聞いたという、例の“声”か…」

「きっと、その本来の七竜は殺してはならない気がする。危険だから排除しようという感情のまま動くと、多分…取り返しのつかないことになる」

「それに、奴が安全だという絶対の根拠があるからな」、そう続けたダインを、ジーグたちは不思議そうな顔で見た。

ダインは不穏な空気を振り払うような笑みを浮かべ、「ルシラが気に入ってるからな」、といった。

「ルシラはもうあのドラゴンを育てる気満々だよ。自分の“後”に来たからか、お姉さんぶりたいようだ」

それはあまりに弱い根拠だろう。いや、根拠ですらない。

しかし、不思議な魔法を使い、不思議な着眼点を持つルシラがいうのだから、間違いないだろうという妙な説得力はあった。

「ふ…そうだな」

論破されたわけでもないのに、ジーグは頬を緩めて笑い出す。

「お前が決めたことなのだ。試すようなことをいって悪かったな」

素直に謝罪するジーグに続き、シエスタも、「私たちは初めからそのつもりだったわ」、といって息子に優しい笑みを向けた。

「あなたはこれが正しいと思ってあのドラゴンを保護したのでしょう? だったら、親として私たちも息子のことを信じてあげるべきなのだから」

「いや、でも世間に露見すりゃ世界中から顰蹙を買うっていうのはその通りだと思うんだけど…」

「それでもいいのよ。例え世界が敵に回ったとしても、あなたのことは守るわ。信じるわ」

「同感ですね」

サラまでそういった。「真相が分からない以上下手なことはしないほうがいいという、ダイン坊ちゃまのお言葉はその通りなのですから。何が正解か分からないのなら、それが正解だと信じて突き進んでいくのみです」

ダインの揺るぎ無い覚悟を聞いたからか、ジーグたちもまた、その瞳に明確な意思が宿っていた。

「今後起こりうる可能性のある最悪のシナリオについては想定済みですし、ジェイルから村の方々にこっそりと伝言済みです。ですからこちらのことはお気になさらず、ダイン坊ちゃまはそのまま自分の正しいと思うことを続けてください」

サラのいう通りだといわんばかりに、ジーグとシエスタは頷いた。

「何ていうか…悪いな…俺のわがままみたいなもんなのに…」

今頃になって自分のしたことの大きさに気付いてきたダインだが、「自分のためじゃなく、誰かのためにしていることじゃない」、シエスタは笑顔のままいった。

「私たちも同意見で、あのドラゴン…ピーちゃんだったかしら。守りたいとは思っているんだもの。あなた一人だけで考え込まないで」

「ああ」

改めて理解力のある親とサラに感謝していると、「ああ、それともう一つ報告したいことがあったのだ」、ジーグがぽんと手を叩いた。

「“古の忘れ形見”が反応したという話なのだが…」

「ああ、あったな」

世界に点在する用途不明の遺物。学校の近くにある“戦神の斜塔”もその一つで、いま現在もその謎は解明されてない。

「ちなみにトルエルン大陸で見つけたのはなんていうモノなんだ?」、と、ダイン。

「“賢者の心臓”だな」

ジーグは静かにいった。

「えらく仰々しい名前だな」

本物の心臓のように生々しい形を想像していると、「まぁ実物は単なる丸い石の玉なんだがな」、ジーグは笑っていった。

「表面に解読不能の文字列が浮かんでいるから、忘れ形見で間違いないのだろうが…」

「それがどうなってたんだ?」

「文字列が青白く光っていたのだ」

「青白く…?」

「ああ。とはいっても、光っただけでそれ以外は何も無い。検査機に通しても、内部には何の反応も見られなかった」

「ドラゴンとは関係なかったっていうことか?」

「いや、光りだしたタイミングが、ドラゴンが倒された直後のことらしい。だから関係はしてると思うのだが…」

そこで彼らの疑問は、その“古の忘れ形見”に向けられる。

光ったということは、何かしら意味があるはずなのだ。

「確かセブンリンクス近郊にある忘れ形見も、以前に同様の反応が出たと聞いたのですが…」

サラが思い出してダインに尋ねた。「あの後は確か、規制線が張られてガーゴが調べに来たのですよね?」

「そんなこともあったな」

ダインは答えると同時に、ディエルから関連する話題を聞いていたことを思い出す。

「そういやディエルの別荘の近くにも忘れ形見があって、ガーゴが調べようとしていたらしい」

「ほう?」

「そのときは門前払いしたから何を調べたかったのかは分からないが、他の大陸でも同じように出向いてるのかも知んねぇな」

その彼の発言によって、場の空気は一気に疑わしいものへ切り替わっていく。

「ドラゴンにしろ古の忘れ形見やルシラのことにしろ、結局行き着く先はガーゴっていうわけね」

誰もが思い浮かんだことを、シエスタがいった。「全てのカギを握っているのはガーゴっていうことになるのかしら」

「これはもう本格的に奴らの動向に探りを入れるべきだろうか」

ジーグは顎を触りながらグラスを見つめている。「奴らにはあまりにも隠し事が多すぎる」

「どちらにしろ、連中はこれから動かざるを得ないんじゃない?」

グラスを傾けつつ、シエスタがいった。「ドラゴンを倒した組織として世界中に知れ渡ったんだし、いまごろ事務所は問い合わせでパンクしてるんじゃないかしら」

「確かにそうですね」

思慮していたサラは頷いた。「場所によっては七竜の存在は天候や地形に影響を及ぼしていた。目の上のたんこぶが取れるのでしたら、ぜひ退治してくれといってくるところは沢山あるでしょう」

これから連中の動きはもっと活発になるはず、というサラの台詞に、シエスタも「そうね」、と返した。

「確かガーゴの幹部が臨時で何人かセブンリンクスに行っていたのでしょう? 明日は来る暇もないんじゃない?」

「ジーニ様とサイラ様ですね。どちらも中継映像でメインで出てきておられましたから、明日の学校では話題沸騰でしょう」

「それは確かにそうであるな…」

こちらから動けることは何かないか。

考え込むジーグを見ているうちに、ダインはまったく別のことを口走ってしまった。

「はあ〜ぁ、ったくさ、何だって伝承やら七竜やら、スケールのでかいことに首を突っ込むことになっちまったんだろうな」

それはもはや愚痴に近いものだった。「ルシラのことだけで手一杯なのにさ、なんで無駄に広がっていっちまうんだ」

「お前がピーちゃんを拾ってくるからだろう」

方眉を上げ、半笑いでジーグの突っ込みが飛んできた。

「ルシラのこともそうだし、お前が何もアクションを起こさなければこんなことにはならなかった。何だったらいますぐ全てを放棄してもいいのだぞ?」

挑発するようなジーグの言葉を聞いて、「はっ」、ダインは諦めたような笑顔で肩をすくめた。

「んなことできる性格だったんなら、シンシアたちとも誰とも友達にはなってなかっただろうよ」

「わかってるではないか」

酒を口にし、ジーグは豪快に笑った。「私の息子だからな」

その息子であるダインを見る彼の目は、期待が込められている。「自慢の息子なのだ。物分りのいいお前ならば、今後どうすればいいかも分かってくれているのだろうな」

ダインは明確に答えない代わりに、ソファの肘当てに肘を突きながら額を押さえている。「頭がこんがらがってきたよ」

ルシラの問題に学校の問題。ガーゴとの腹の探り合いに、ドラゴンのことまで出てきてしまった。

一つ一つが解決の糸口が見えないどころか問題は増えるばかりで、さすがのダインも頭の中がパンクしそうだ。

「何も問題なくルシラと知り合えて、シンシアたちと学生生活を謳歌したかったのにさ…」

決まった時間に起き、決まった授業を受け、決まった友達と遊んでありふれた夕飯を食べてその日を終える。

何の不安も刺激もない、平坦な道のような“日常”は、一般学生にとっては確かに退屈なものだろう。中にはその日常を抜け出そうと、部活に精を出したり妄想に耽る者もいる。

だがダインこそ、誰よりもその平坦な“日常”を望んでいたのは間違いないだろう。つまらない日常、刺激のない日々。大いに結構なことだ。

「しばらくその望みは叶いそうにないかもしれないわね」

慎ましやかなダインの願望を、シエスタが打ち砕く。「あなた、あのフードの男と対峙したんでしょ?」

「そうだけど…」

「耳に通信機がつけられていたらしいけど、仕込まれたのはそれだけじゃないでしょう」

「分かるのか?」

「ガーゴの特殊戦闘員なんでしょ? ドラゴンと戦うなんて初めてのことでしょうし、戦闘のデータを取るために他にも色々と仕掛けられていたはず」

「まぁ…そうだと思うが…」

「分からないの?」

シエスタは横目でダインを見た。「あなたと対峙した場面も、あの連中はしっかり見ていたはずよ。いえ、もしかしたらピーちゃんを持ち帰ったところも見られたかもしれない」

「…あ〜」

そういえばそうだったと、今朝の出来事を思い出しダインはまた額を手で押さえた。

「目の魔法だったなら、辺りは煙に覆われていたから状況はよく見えてなかったかもしれないけど、声は聞かれたかもしれないし」

「では明日あたり、またなにかしらちょっかいをかけてくる可能性も…?」、と、サラ。

「十分あり得る話でしょうね」

面倒ごとが増えそうだと、シエスタは大きく息を吐く。「あの連中が学校に来るのなら、どうしたって顔を合わせなくちゃならないだろうし、何かいってくるかも知れないわ」

「い、いやいや、ないだろ」

途端に不安に駆られたダインは、手を振っていった。「あの二人はテレビ中継で顔がアップで映ってたんだ。一躍有名人になっただろうし、初対面から敵視していた俺のことなんて相手にするはずないだろ」

エル族のジーニ、エンジェ族のサイラ、どちらも容姿はいい。

絵面的にも“映える”二人なので、インタビューや番組のオファーで引っ張りだこのはずなのだ。

これ以上厄介なことになりたくなかったダインは、「俺なんかの相手してる暇なんかないって」、現実から目を逸らすようにいった。

「そうね…」

息子を見るシエスタの目はどこか憐れんでいるようにも見える。「そうだといいわね」

ジーグもサラも、特に何もいわずシエスタと同じ目でダインを見つめていた。

朝から色々ありすぎたからか、そのときのダインはあまり細かいことを考える余裕はなかったのだろう。

だが、その翌朝…シエスタの予言は見事なまでに的中していた。



「あなた…ガーゴに興味はない?」

登校して下駄箱に入っていた指示書通りに会議室へ向かうと、そこにいたジーニがダインに向けてそういってきたのだ。

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