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absorption ~ある希少種の日常~  作者: 紅林 雅樹
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五十三節、因果応報

「ディエル、行くのか」

廊下の窓から外へ飛び出そうとしたディエルを、ダインは呼び止めた。

「ええ」、とこちらを振り向く彼女に、「決定的なものはあるのか」、そう訊いた。

ディエルはやや歯痒そうな表情を浮かべる。「いいえ」

首を横に振る彼女だが、すぐに顔を上げて真剣な顔を彼に向けた。

「でも色々おかしい部分はあるんだもの。そこを突けば切り崩せるはず」

自信を覗かせるディエルだが、「相手はその手のプロだろ。分が悪い」

ダインはいった。「奴がどれほどのキャリアを持ってるかは分からないが、あの手この手を使っていまの地位にいる。口だけじゃ勝てないぞ」

「分かってるけど…でも私には…」

弱りだしたように声を小さくさせていく彼女に、ダインは「ん」、と制服の中に仕込んでいた大きめの封筒を差し出した。

サイズからしてA4ほどだろうか。

「何これ?」

「何かの役に立つだろ」

ディエルは封筒を受け取り、中に入っていた数枚の書類を取り出し目を通す。

すると彼女の表情がみるみる驚愕に変わっていき、そのままダインを見た。

「こ、これ…」

「ああ」

ダインが頷いてみせると、ディエルも真剣なまま頷いて書類を封筒に収める。

「先生もいってたけど、早く帰ってこいよ」

「ええ」

封筒をカバンにいれる彼女に向け、「んじゃ行ってこい」、ダインは片手を挙げた。

「忘れ物、ちゃんと取ってこいよ?」

その行動の意味を理解したディエルは、「もちろんよ」、口の端に笑みを浮かべつつ、同じように片手を挙げる。

そしてお互い手を打ちつけ、パァンッ!、という小気味良い音が廊下に鳴り響いた。

ディエルは黒い翼を背中に広げ、窓から外へ飛び出していく。

そんな彼女を見送ってから、ダインはディエルと打ちつけあった手を見た。

その手には見た目には何の変化もないが、あの一瞬の触れ合いの中で確かに感じたものがある。

それは明らかなディエルの魔力だった。

「…ようやく、素直になってくれたか…」

ダインも笑みを浮かべながら窓に背を向け、教室を目指し歩き出した。



「申し訳ございませんでした」

前をずかずかと歩く父ロアンの背中を小走りで追いかけつつ、ミレイアがいった。

「まさかあんな動画まで撮られていたとは…」

平謝りなミレイアに、「全く、困った娘だ」、未だに早足のロアンは、憤慨したような声でいった。

「よもやこんなことになろうとはな」

両肩が普段より上にあがっている。

その背中だけで、ロアンは怒り心頭だということが窺い知れた。

「あの事実だけで良かったというのに。動画まで残されていたとは、全く…」

周囲に人通りの無い林道の途中、ロアンの足取りが突然ぴたりと止まる。

「全く…予想以上だよ」

さきほどまで怒っていたはずなのに、ミレイアに振り向いてみせたロアンはニタリとした笑みを浮かべていた。

「ミレイア。あの動画の映像を録画できていたのか」

ミレイアも同じく意地の悪そうな笑みを浮かべる。「はい。誰にも気付かれてないと思います」

「ちゃんと、殴られた瞬間も収めてあるな?」

「問題ありません」

「くく…そうか。よくやった。さすがは私の娘だ」

満足げにいったロアンの足取りは緩やかになる。先ほどとは違い、上機嫌だ。

「バカな奴らだ」

これからの展開を想像していたロアンは続ける。

「私がどれほどの場数を踏んできたか知らないのだろうな」

「浮かれている頃合でしょう」

ミレイアも笑いながらいった。

「あれで終わったと思っているんでしょうね。ほんと、浅はかな奴ら。おめでたいわ」

くく…と笑いを堪えていたロアンは、「この動画さえあれば、後はどうとでもなる」、ミレイアから記憶媒体であるピラミッド型の水晶を受け取った。

「名門とはいえ、一介の教職員の言葉など誰も信じないだろう。世間の信用は知名度によって簡単に左右されるからな。議員の私の言葉といち教職員の言葉。どちらが民衆に響くのか、考えなくても分かることだ」

どのような不利な状況に追い込まれても、巧妙な情報操作によって有利にひっくり返す。

幅広いコネと人脈を持つロアンだからこそできることだった。

「早速専門家に編集作業を依頼しよう。マスコミ各社にもリークを頼む」

「はい」

「転学の手続きはもう済ませてあるから、来週からはそっちに通ってくれ。色々と融通が利くようにしてあるから、あそこよりは過ごしやすいだろう」

根回しの早い父ロアンの手腕に驚きつつも、ミレイアは「セブンリンクスも楽しくはありましたけどね」、また底意地の悪そうな笑みを浮かべた。

「クラスメイトを取り込んでいくのはなかなか大変でしたけど、追い詰められたときのあいつの表情は見物でした」

邪悪に笑うミレイアを見て、ロアンもまた愉快そうに笑った。

「少し欲を出してしまったがな。ま、あれはついでのようなものだし、あの方も許してくださるだろう」

それから二人は今後の対応について、道すがら話し合う。

映像のどの辺りを編集すればいいのか、効果的な文面や見せ方の方法などを提案しあっていると、ふと道端に誰かの姿が見えたような気がした。

先ほどまで周囲には誰もいなかったはずなのに、突然人影が現れたように見え、ロアンとミレイアは同時に「ん?」、と振り返る。

そこには━━

「あそこまでいわれたのに、やけに嬉しそうなのね、二人とも」

ディエルがいた。

彼女は背後の木にもたれかかったまま腕を組んで、ロアンたち二人を静かに見据えている。

「な、なんでお前がここにいる!?」

思わぬ登場人物にロアンは驚いてしまい、先ほどの会話を聞かれていたのかとひやりとする。

ミレイアは咄嗟に表情を険しくさせ、身構えた。

しかしそんな二人の警戒を気にも留めず、「忘れ物を取りにね。途中までの道が同じだったみたい」、呑気にいった。

「だったら無視して行けよ。何待ち構えてんだよ」

ミレイアは警戒心をむき出しにしたままディエルを睨む。乱暴な物言いはミレイアの地なのだろう。

「こっちから話すことは何もないんだけど?」

凄みを利かせるミレイアだが、「いや、ついでに釘でも刺しておこうかと思って」、ディエルは相変わらず平然とした様子だ。

「は?」

「よくよく考えてみれば、おかしな部分は多々あったのよね」

ディエルはゆっくりと歩き出し、ロアンとミレイアの前まで移動する。

「自分は直接手を出さず、買収したクラスメイトを使ってミーナをいじめの標的にしていた。その方法も提案するだけで、あなたから物的証拠になるようなものは一切出したことはない。首謀者だということもひた隠しにして、影ながらクラスを操っていた。そんな卑劣なあなたが、どうして下克祭のときはあんなに大胆で目立つようなことをしたのか。おかしいわよね?」

ディエルもまた警戒心を抱きつつ、持論を続けた。

「それに動機も弱いわ。ミーナが鬱陶しかったという理由だけで、あれだけのことをするかしら? クラスメイト全員を巻き込んでまで、あの子を排除しようとするかしら?」

口を開きかけたミレイアを、「まだあるわ」、そういって封じ、さらに続けた。

「犯行現場があのフロアだったのはどうして? あのフロアの監視カメラが故障したのはたまたま? 禁書にしたって、あれは所持していただけでも厳しく罰せられる代物だったはず。簡単に入手できるはずがないし、厳重にプロテクトがかけられているあの本を焼失するように細工することだって、あなたみたいな人にできるはずがない」

ディエルが話している間に、ロアンとミレイアは見て分かるほどに動揺していた。

反論の言葉を探しているのか、視線は泳ぎ、無理やりにでも口封じをしようかという気配も感じる。

ディエルは殺気を漂わせ彼らの反撃の機会すら圧殺し、さらに持論を展開した。

「あらかじめ計画でもしてなきゃ、ああもスムーズに物事が動くはずはないのよ。それにミーナが気に入らないから、という理由だけであそこまでの計画を考案し、リスクを冒してまで実行するとも思えない。冷静に考えたとき、別の可能性が見えてきたのよね。可能性というか、真の狙いが。例えば…」

そこでディエルの目は細められ、二人に向かって鋭い眼光が放たれる。

「…例えば、ミーナを標的にしたら、あの子を守るために誰が動くのか…とかね」

思わず身震いしたのを気取られないようにしたのか、「何をいいだすのかと思えば、ただの妄想か。付き合ってられんな」、ロアンがいった。

「勝手にいってろ、ばーか」

ミレイアは憎しみを込めた台詞を吐き捨て、歩き出したロアンに続く。

そんな二人の背中に向け、ディエルはやや声を張り上げて、

「ディビツェレイド大陸沿岸、システリア平野」

と、いった。

その瞬間、ロアンの足が止まり、弾かれたように顔がディエルに向けられる。

顔面には驚愕が張り付いている。そんな彼に向け、ディエルは独り言のように静かにいった。

「ロアン・キリノフ。キリノフ…どこかで聞いたことのある名前だと思ったのよ。昨日家に帰ってお父様に尋ねたら、一冊のパンフレットを見せてくれたわ」

そこでディエルはカバンからパンフレットを取り出し二人に掲げて見せた。

それは二年後に、システリア平野部を開拓し遊興施設としてオープンした際の、施設紹介用のパンフレットだった。

「土地開発の一端を担ってるんですってね? コネや根回しで土地を買収して業者に安値で斡旋し、見返りにお金をもらっていた。今回もその予定だったそうだけど、その遊興施設の面積を広く取りすぎて、一部が民間の敷地に入ってしまった。邪魔だったのよね? その土地が。スウェンディ家の所有する別荘地が」

核心を突くディエルの台詞に、「何の話か分からないんだが」、ロアンは視線を泳がせつつもいった。

「とぼけても無駄よ」、ディエルは彼から目を逸らさず、睨みつけたまま話を続ける。

「このパンフレットを持ってきた人が、あなたの名前を出して脅しをかけてきたんだもの。そのときはお父様は歯牙にもかけなかったそうだけど、まさか私に狙いをつけ弱みを掴もうとするだなんてね。ミーナを狙って私を煽り、怒らせて暴行事件として発展させるまでがあなた達のシナリオだったの? マスコミに根回しして、公開寸前のところでまたお父様のところにいって、そのネタで土地の売却を迫ろうとしたわけ?」

ディエルは短く息を吐いた。「まさかこんなつまらない罠に私がはまってしまうなんて。この点に関してだけは、反省すべきところだわ」

「だから何の話をしている! 妄言も大概にしろ!!」

ロアンが叫び、隣のミレイアも睨み返してきた。

「お父様が誰か、良く分かってないのねお前。そっちまでお父様の権力が届かないと思ったら大間違いよ。議員にたてつくことがどういうことか、少しは考えたら?」

その台詞を聞いて、ディエルの射抜くような眼光はミレイアに向けられる。

「何かあればお父様だ議員だなんて親の威光振りかざして。自分に何の力もないといってるようなものなんだけど、恥ずかしいと思わないの?」

「何だと?」

「根回しもいじめも他人の力。結局あなたは最初から最後まで、自分の力だけでは何一つ為し得ていない。そんな奴に何を言われたところで、私は何も感じないわ」

そこでまた「娘を侮辱するか貴様!」、とロアンが怒鳴る。

「殴っただけでは飽き足らず、いいがかりまでつけるとは言語道断、このことは貴様の親にきっちり報告させてもらうからな!」

「ええ、どうぞご自由に」

一般人なら震え上がるような睨みを受けても、ディエルは動じず冷静だ。「議員が土地の買収に斡旋だなんて、侮辱以上の罪だと思うけど」

「だから妄言を…!」

「システリア平野、一部区分け案」

ロアンの反論を阻止するかのように、ディエルはカバンからもう一枚の書類を取り出し読み上げた。

「問題の土地買収について、計画の目処が立ちましたのでご連絡させていただきます。現在スウェンディ家が所有している土地に関して、買収の有効な手段が確立しましたので、実行の際にはご協力のほどをよろしくお願いいたします。成功した暁には、そちら様のご要望どおり土地の一部区画を譲渡させていただきます。円滑に計画を実行するための“品”をいくつか希望したいのですが、ご用意願えますでしょうか」

それは、ロアンの秘書が“誰か”に充てた、スウェンディ家所有の土地を買収するための計画書だった。

数ページに渡ってその計画の全容が書かれており、ラビリンスの一部フロアにある監視カメラの破壊や、円滑に計画を実行するための“品”として禁書のことが書き記されている。

「お互いの今後の発展のため、なにとぞよろしくお願いいたします。ロアン・キリノフ。送付先…ガーゴ都市開発部部長、ロスコ・グラビエ」

一通り内容を読み聞かせてから、ディエルは二人にその書類を見せつけた。

「ご丁寧なことに、偽造できないキリノフ家の印まで押されてある。正式なものだという証明のね」

顎を落としたような顔のまま、固まる二人にディエルはいった。「これでもまだ私が妄言を吐いていると主張するつもり?」

その書類はもはや疑いようの無い、決定的な証拠、そのものだった。

「な…何故…お前が…そ、それを…」

ロアンの口はようやく動いたが、そこからは絞り出すような声しか出てこなかった。

顔面は蒼白で、表情には恐怖の色すら浮かんでいる。

それほど、ディエルが持っている証拠は危険なものだったのだろう。

「ガーゴまで一枚噛んでいるとは思いもしなかったわ。道理でシャドウケルベロスが出たというのに、あの連中が動かなかったわけだわ。これ、外部に漏れると色々とまずいんじゃない?」

「か、返せ…返せえええぇぇぇッ!!!」

突然ロアンがディエルに飛び掛る。

百キロはあろうかという巨漢が迫ってくるが、ディエルは身軽にかわした。

「まぁ所詮紙切れだし、私にとってはゴミ同然だから、捨ててもいいんだけどね。あなたに恨みを持つ議員のポストに捨てたら面白いことになるかしら? 例えばガレットさんのところとか」

ロアンの対抗組織筆頭の名前をディエルがいったところで、

「お父様、どいて!!」

ロアンの背後からミレイアの声がした。

ロアンが飛び退いた瞬間、後ろで呪文を詠唱していたミレイアがディエルに向け光の矢を放つ。

弾丸に近いスピードの攻撃すらディエルはかわし、「今度はそっちが暴行を働く気? ドローンでも持ってくればよかった」、デビ族らしい嘲笑をあげた。

そんな彼女にミレイアは再び光矢の魔法を放ち、ディエルが受け止めた瞬間、それは爆発する。

「はあああぁぁぁ!!」

光の爆炎に向け、ミレイアは次々と光弾を浴びせていった。

「やっぱりその程度の実力か。うちのバカエンジェより何万倍もしょぼいわね」

ディエルはいつの間にかミレイアの背後に回りこんでおり、ミレイアは驚愕しつつも咄嗟に振り向いて彼女に攻撃魔法を放った。

「調子乗ってんじゃねぇぞてめぇ! 誰を相手してるのか分かってんのか!!」

セミロングの髪を振り乱し、無茶苦茶に魔法を放ちながらミレイアが叫ぶ。

「デビ族風情が常識面すんじゃねぇよ!! ヒューマ族の議員にたてついたらどうなるか思い知らせてやるよ!!」

「どう思い知らせるつもりなのかしら」

「こうすんだよ!」

印を結んだ右手を横に広げ、半円状に振る。

その軌跡に乗って魔法陣が次々と浮かび上がり、様々な姿形をしたモンスターが湧き出てきた。

その様を見て、ディエルはつまらなさそうに息を吐く。「だから、数に頼るのは自分が弱いって認めてるようなものだって分からないの?」

呆れているところで、「そうだろうか」、ミレイアの近くにいたロアンが声を出した。

ようやく動揺が落ち着いてきた彼はいう。「召喚するものが強ければ、その術者も強いということになるのではないか」

どこか余裕のある笑みを浮かべたそのとき、彼の背後にある林から背丈の大きな男達が現れた。

どれも真っ黒なスーツに身を包んではいるが、スーツが張り裂けんばかりに筋肉が盛り上がっている。細長い目つきに顔面は傷だらけで、相当な手馴れを窺わせる。

「ボディガードを雇っておいてよかったよ。このような場面でも役に立つ」

複数の強面に睨まれながらも、ディエルは平然とした様子だ。「襲うつもりなんてないんだけど」

「私の地位を脅かそうとしているではないか」

身構える黒服の男たちの背後で、ロアンはニタリと笑う。

「少々記憶を弄らせてもらおう。手荒になるかもしれないが、仕方が無い」

軍歴でもあるのか、男たちは隙の無い動きでディエルとの距離を詰めていく。

その筋肉は魔法で得たものではないのだろう。純粋に屈強な男たちのようだ。

「生憎ここは学校の外だ。奴らの魔法は届かんし、ルールも適用外。多少の怪我は覚悟してもらおうか。女相手に気が引けるがな」

気が引けるといいつつ、ロアンの表情には邪悪な笑みが浮かんでいる。

ディエルの全身を舐め回すように見ながら舌なめずりした瞬間、ディエルは一瞬警戒を解いた。

「あ〜、それいっちゃのはまずいんじゃないかしら」

「なんだ、今更命乞いか?」

「いえ、反応しちゃったじゃない」

と、ディエルは手首につけていたリングを見る。

「アミュレットなんだけどね」

小さな宝石をちりばめられていたそのアミュレットは、赤い光を放っていた。

「学校の外で、私に悪意が向けられた瞬間発動するように細工されてあったものなんだけど…」

彼女が説明してる間に、その周囲の空間が歪む。

何も無いところから、ロアンのボディガードよりも数倍も大きな男たちが現れた。

さらに上空からも高スピードで男の集団がやってきており、続々と彼女の周囲に降り立っていく。

「は…?」

彼らは即座にロアンたちを取り囲むようにして、林道は瞬く間に黒服の男たちで埋め尽くされた。

「は…は…? は…!?」

その数はざっと百人以上。

当然ミレイアが召喚したモンスターよりも多い。

「お嬢、大丈夫ですか」

一団の先頭にいた男がディエルに話しかける。

「大丈夫も何も、まだ何も始まってないわよ」

呆れたようにいう彼女に、「危険信号をキャッチしたのですが」、男はチラリとロアンたちを見た。

「アミュレットが勝手に感知して信号送ったんでしょ。全く…」

「な…んだよ、こ、これ…」

突如現れた黒服の軍団に、ロアンたちは完全に包囲されている。

まるで武装した警護団が凶悪な犯罪者を追い詰めたような状況に、ボディガードや召喚されたモンスターまでたじろいでいる。

「別に手出ししなくて良いっていったのに、お父様は…もう…」

仕方ないといいつつも、ディエルは表情を引き締めロアンたちを睨みつける。

「でも…そうね」

血の力を解放させたのか、全身を赤く光らせた。

「あなたがいった通り、ここは学校の外。何があっても学校の規則は適用されないし、何が起こっても目撃者がいない限り処罰されない」

圧倒的な物量の差を突きつけられ、何度も周囲を見回しているロアンとミレイアは顔を青くさせている。

警戒しようとしているようだが、全方位を囲まれているためどこに意識を向ければ良いのか分からないようだ。

そんな彼らに向け、「あなた達の方こそ、私が誰だか分かってないようね」、ディエルはいった。

「スウェンディ家を相手にするということがどういうことか。大切な人を傷つけ怒らせたらどうなるか。その体にたっぷりと叩き込んであげる」

ディエルが構える。

百人以上はいるであろう黒服の軍団も構え、攻撃魔法の準備を始めていた。

「本気で相手してあげる。死ぬほど後悔すればいいわ」

その言葉は、ただただ一方的な蹂躙の合図に他ならなかった。

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