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absorption ~ある希少種の日常~  作者: 紅林 雅樹
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二十八節、潜入

名門セブンリンクスは、他校と同じく週明けには朝礼がある。

校長の挨拶から始まり、クラブ活動での試合があった際にはその結果報告、テストで優秀な成績を収めた者への表彰。

そして週の目標が生徒会長により掲げられ、校則違反者が出た場合には処罰内容の報告と、その注意喚起といった流れがある。

その日も定例どおりに校長の挨拶が始まり、魔法研究部による活動実績などが発表され、そこまではいつもの流れだった。

だがいま、壇上に見慣れない二人の人物が現れたところで講堂がざわつき始める。

見たことがある顔だと思っていたのはダインだけではなかったようで、一部には色めきたつ学生もいるようだ。

「ご紹介いたします」

生徒会長であるラフィンが、手渡されたメモを戸惑い気味に読み上げた。

「本日臨時で赴任することとなりました、聖魔犯罪対策課部長、ジーニ・ジルコン様」

エル族のその女は、相変わらずの鋭い目つきで壇上より下の生徒たちを睨むように見回している。

「次に、防衛第一部隊隊長、サイラ・キーリア様」

次に軽く会釈したエンジェ族の女は、ジーニほどきつそうな顔つきはしてないが、どこか冷たい印象がある。

赴任してきたという割りにはこれ見よがしにガーゴの制服を着ており、どちらも眼光が鋭く生徒を監視するような表情だった。

「学校の内情視察とのことで、ジーニ様は三年ギガクラスの副担任、サイラ様は魔法学科講師を勤められるとのことです」

「はー」ダインの隣で、同じように口をあんぐり開けていたディエルが息を吐く。「露骨に攻めてきたわねぇ」

「そうだな」ダインも頷いているところで、サイラの演説が始まった。

「この学校は由緒正しき魔法学校ですが、最近の生徒たちの行動には目に余るものがあります」

それは、今回何故突然赴任したのか、その説明だった。

「セブンリンクスの品位や評判を著しく下げることは避けたいとのことで、私たちは赴任することとしました。評判の回復、生徒の質の向上。違反者には、それ相応の処罰を考えていますのでそのつもりで」

最後の台詞をいったときには、サイラの視線はダインに向けられた…ようだった。

壇上ではラフィンが再び司会を代わり、注意喚起を始めている。

「…昨日話していたのはこれか…」

ダインは一人、昨夜のジーグとの会話を思い出していた。

あれだけ探り合っていた相手が直接乗り込んできた。

またややこしいことになりそうだ…。

彼のため息はまた一つ増えたのであった。



教室に戻っても、生徒達は未だにざわついていた。

無理も無いだろう。憧れとするガーゴ組織の上層部が二人、声の届くところまでやってきたのだ。

本人の性格は別にして、顔が知れ渡り人気のあるジーニとサイラの電撃赴任。その熱はなかなか冷めそうに無い。

「じ、ジーニって人、確かダイン君を追跡してた人たちの上司の人、なんだよね?」

シンシア、ニーニア、ディエルは自然とダインの机に集まっていた。

「私たち生徒の姿勢を正すためっていってたけど…」

ニーニアの呟きに、「ま、それだけじゃないわな」数分後の授業で使う教科書を取り出しつつ、ダインはいった。

「この間のことが原因なのは間違いないだろ」

「まさかここまでしてくるなんてね」ディエルは首を捻っている。

「あなたとの口論だけで乗り込んでくるはずはないでしょうし、何が狙いなのかしら?」

ディエルだけは詳細を知らないので、不思議そうな表情だ。

「いやまぁ…」言いたげな顔のまま止まっているダインに、「何かあるの?」とディエルは顔を向ける。

「ここでは話せないな」

「え、なにそれ。すごく気になるんだけど」

「それは今度説明する…」

言いかけて、ノートを探す手に何かぶつかった気がしたダインは、それを掴んで引っ張り出す。

出てきたのは封筒だった。

「おん、何だこれ?」

封筒を開けると中には一枚の用紙が入っている。

が、その用紙には何も書かれてない。もちろんそんな封筒は持ち込んだ覚えも無い。

「いたずらかな?」

シンシア、ニーニア、ディエルと順に用紙を手に取り確認していくが、何も分からなかったようでダインに返された。

「ん〜…まぁ、誰かが間違えて入れたんだろ」

そう話すダインの表情に僅かな変化があったのだが、封筒から再び電撃赴任の話に切り替わった彼女たちは、誰も気付く様子はない。

ジーニ達がどんな嫌がらせをしてくるのか。ディエルの妄想話にシンシアとニーニアは嫌そうに表情を歪める中、ダインだけは別のことを考えていた。



「失礼します」

校長室に入室したダインを見るなり、デスクに座るグラハムは嬉しそうな笑顔を向けてきた。

「君なら気付いてくれるだろうと思っていたよ」

ほら、いっただろう、と、彼は側にいたクラフトを見上げる。

「相変わらずお前は読めん奴だ」

クラフトは仏頂面のままいい、ダインにソファを勧める。

昼休みの時間だった。

昼食を手早く食べ終えたダインは、シンシア達に詳細は夕方に話すと別れ、こうして校長室へやってきたのだ。

「いやまぁ、そういうのに敏感なんで…」

と話すダインの手には、朝見つけた封筒がある。

封筒の中に入っていた白紙の紙切れ。そこには、グラハムの聖力が込められていたのだ。

その聖力から、グラハムが自分を呼んでいるということに気付いたダインは、こうして昼休みにやってきた次第だ。

公に呼び出さなかったのは、つまりガーゴ絡みということだろう。ジーニとサイラが赴任してきた手前、堂々と呼びつけられなかったということだ。

「ちょうど俺からも聞きたいことがあったんで」

そう話しつつダインはソファに座り、対面にグラハムとクラフトも腰を下ろす。

「そうであるな。まずは君からの質問に答えることにしよう」

「ガーゴが赴任してきた件についてだろう?」察しよく、グラハムはいった。

「我々も驚いたよ。何しろ赴任の話を聞いたのが朝の早い時間であったからな」

「今日っすか?」

「ああ。通常であれば、ちゃんとした手続きを踏んで、こちらで一ヶ月間の受け入れ準備を進めてから、招き入れるのが正式な手順であるのだが…」

そのときグラハムに代わって、「前にもいったように、ガーゴはこの学校の上司みたいなものだ」クラフトがいった。

「学校とガーゴは我々以上の長い付き合いがあるだけに、例外的に認めざるを得なかったんだよ」

そう話すクラフトはまだ電撃赴任に納得いってないようで、ガーゴに対する不信感がにじみ出ている。

「名目上は、生徒達に気の緩みが散見されるため、規律の矯正のため一時的に介入を認めて欲しいということであった」

グラハムがそういったところで、「あ〜」ダインは腕を組む。

「生徒たちっつってるけど、どうせ俺のことをいってるんすよね?」

前回の口論が原因だろうとダインがいうと、グラハムは「切っ掛けに過ぎんよ」と笑いながら首を振った。

「君が関与せんでも、連中は何かしらの理由をつけてこの学校に介入していたであろう。多種族を受け入れるという私の方針が気に食わんようだったからな」

「とはいえ」そのとき、横からクラフトが割り込む。「ジーニだったか。最初、あいつが希望した赴任先はノマクラスだったよ」

「やっぱ俺じゃないすか」

「いや、あいつは元からノマクラス否定派だ。潰す気でいたんだろう。だが、ノマクラスを担当したいだなんて、さすがガーゴ様だと俺が褒めちぎったところで鞍替えしやがった」

ジーニの迷惑そうな顔でも思い浮かべたのか、クラフトは意地悪そうに笑う。

「まぁ、この間のやりとりとは別にして、ガーゴが君を追っているというのは我々も関知するところではあるが」

グラハムの言葉に目を大きくさせたダインは、そのまま「よく知ってんすね」と聞いた。

「多少気になったものでな。視させてもらったよ」

そうグラハムが話しているところで、彼の周辺に蝶のような羽を生やした小さな人物が飛び交う。

どうやら精霊魔法を駆使し、ダインの身の回りで起きていたことを視ていたようだ。

「あー、じゃあ、俺のことはもう…」

全て知ってるんすねと尋ねると、グラハムはとぼけたように「何のことだね?」といってきた。

「プライベートに抵触しない範囲で視せてもらったに過ぎんよ。我々が気になるのはガーゴの動向のみだ」

ふいに彼の視線は優しげなものに変わる。

「君はヒューマ族のダイン・カールセンなのであろう? それ以上のことは私は何も知らないが」

その口ぶりから、ダインの正体を知っていることは明らかだ。とぼけているのは彼なりの気遣いなのだろう。

種族を偽っての入学をグラハムが知っているといってしまえば、立場上見過ごすことなどできないのだから。

「…そっすか」

ダインは薄く笑い、姿勢を正してグラハムとクラフトを見た。

「で、俺を呼んだのもガーゴ関連なんすよね?」

「うむ。さきほどの話の続きになるが」

グラハムは軽く咳払いをした。

「ガーゴがこうも強引に学校に乗り込んできたのは今回が初めてだ。連中には焦りの色が窺える。今回君に質問したいのは、ガーゴは何故あそこまでして君を追っているかということなのだが…」

質問の意図が読めてきたダインは、手を突き出して「あーその前に」グラハムの言葉を遮った。

「ひとつ確認したいことがあります」

「何だね?」

「お二人の本当の立場ですよ」グラハムとクラフト。エル族の二人それぞれに視線を送ってから、ダインは続けた。

「魔法力の薄い俺を入学させてくれた上に、色々と世話してくれて恩義は感じています。でも、かといってこちらの内情を打ち明けられるほど信用してるわけじゃないんすよ」

結局二人は何のためにガーゴに探りを入れているのか。

単なる先生という立場だけではないだろうという思いから、ダインはグラハムとクラフトに疑念とはいかないまでも疑りは持っていた。

校長先生に向かって信用してないは失礼千万だ。しかしグラハムは怒るどころか、「確かにそうであるな」とダインの疑惑に理解を示した。

「我々が何であるかを説明せずして、君にあれこれ尋ねるのは不躾であったな」

グラハムは笑顔のまま、隣に控えてるクラフトに視線を送る。

話を振られたクラフトは、「時間も無いから手短に説明しよう」といってきた。

「この組織…といっていいのか分からんが、先生含め改革派はこの学校内に五人ほどいる」

「改革?」

「ああ。お前は知ってるかどうか分からないが、どこの国でも種族間の差別は未だ根強く残っている。この学校は多種族を受け入れているためそういった差別意識は希薄だが、しかし完全にないわけではない」

「まぁ…そうっすね」

魔法力は種族によっても保有量が違う。そのため種族による優劣意識というものはどうしてもできてしまう。

エンジェ族は他の種族を下に見る傾向があり、ドワ族は卑屈な性格の者が多い。

「国によってはまだ争いが起きている所もある。本来では優劣など無いはずで、つける必要も無いことなのにだ」

グラハムと同意見だったダインは素直に頷いた。

「先生は…俺もそうだが、これまで色々な学校を赴任してきた。その中で、差別や偏見を数え切れないほど見てきたんだ。学校外でも虐げられる者、優位に立とうとする愚かな奴ら。混乱期まで続いていたという種族間戦争は、そういったところから始まったんだろう。同じ事を繰り返さないためには、まず差別をなくさなければならない。多種族が通い、差別意識の希薄なこの学校ならば、ここからそういった善の意識を広められるんじゃないかと思って、先生が改革派という組織を作ってくれたんだ」

「ずいぶんと大それたもんすね」

嘲笑でもなんでもなく、素直にそういったダインに、クラフトは「何もしないよりはな」と笑って見せた。

「しかしそれには障害がある」クラフトはそう続け、校長室から見えるグラウンドに目を向けた。

そこには、他の先生から校内の案内を受けているジーニとサイラの姿があった。

「この学校の設立にはガーゴ組織が大きく関与している。ルールブックを作ったのも奴らだ。この国の治安維持組織として、ガーゴはもはや無くてはならない存在になってはいるが、あの連中こそ優劣意識は根強い」

彼の視線は、ふいにダインに向けられる。

「ガーゴのトップは代々エンジェ族が受け継いでいることは、お前は知っているか?」

「まぁ…何となく。確か上層部も聖族に統一されてるんすよね?」

「そうだ」頷くクラフトは、差別意識そのものに嫌悪しているのか、苦々しい表情だ。「ドワ族やデビ族も多少はいるが、そういった魔族はすべて末端に配属されている。単なる駒だと言わんばかりにな」

「そういった意識の根強いガーゴがいる以上、差別のない世の中を作ろうという我々の理想は成し遂げられないであろう」

グラハムがそういったところで、クラフトはダインを真っ直ぐに見た。

「だから、俺たちはまずこの学校とガーゴとの関係を絶ちたいんだ」

「魔法力至上主義はもう古い」そういってのけるクラフトの台詞を聞きながら、ダインが思い出していたのは幼少時代の記憶だった。

ダイン自身も何度も経験したことだ。魔力の無さをバカにされ、人格否定までしてくる。

自分が優位に立ちたいがため、自分をよく見せたいがためだけに、自分より劣るところを見つけたらそこだけを徹底的に攻撃する。

どこの国に行っても、どんな種族に会っても、そういった優劣思想を持つ奴は必ずいる。

ヴァンプ族であるダインの場合は、あまりにしつこい奴には間接的に力を見せつけ黙らせたことはあるが、しかしヴァンプ族のような特異能力を持たず、魔法力の低い人たちは抵抗する術を持たない。

そこに人権というものは無く、言われるがまま、虐げられるがまま、ただひたすらに耐えて我慢するしかないのだ。

グラハムが掲げる目標は、確かに大それたものだろう。

差別意識はどれほど糾弾したとしても決してなくならない。グラハムの思想が成就する日は何年経とうともやってこないかもしれない。

だが無理だと諦めるよりは、抵抗した方がよっぽどマシだ。

グラハム達の活動により、虐げられている人たちに少しの光でも見出せることができるのなら。

魔力の低さをバカにされ、人格や容姿すら攻撃してくる奴らに一矢でも報いることができるのなら。

「信用してくれなくても構わん。が、ガーゴとの関係を絶ち、優劣や差別意識の無い社会を広めていこうと活動していることは事実だ」

そう話すクラフトの表情は真剣そのもので、隣にいるグラハムもまた大真面目な顔でゆっくりと頷いている。

エル族は本来、のんびりとした性格の人が多い。寿命が長いためだが、いまダインを見つめる二人の目つきには強い信念のようなものを感じる。

二人の過去に何があったかは計りかねるが、彼らがそんな大それた信念を持つほどの“何か”を見てきたことは容易に想像が付く。

「大体は分かりました」

ダインは嘆息し、少し姿勢を楽にさせた。

「ガーゴの動向を探っているのは、世間的にまずい行動をしているという証拠を掴んで、学校との関係を断ち切る切り札にしたいってわけっすね」

「その通りだ」

クラフトは頷き、「だがガーゴ組織そのものを潰したいわけじゃない」と続ける。

「彼らのおかげで、これまでこの国に大きな事件が起こってないのも事実。治安維持としての役割はちゃんと果たしているのだから、そこまで踏み込むつもりは無い」

「それで改革ってわけっすか…」

なるほど、と納得した様子のダインに向け、膝の上で両手を組んでいたグラハムが改めて彼に質問を寄こした。

「あの連中は君の何を追っているのだろうか」

少し考え、「先生方はエル族っすよね?」ダインは口を開く。

「そうだが…」

「であれば、俺を見て何か感じるものはないっすか?」

両手を広げて見せるダインに、今度はクラフトが納得したように「やはりそうか」といってきた。

「お前から大きな何かを感じていた。魔力や聖力とはまた違ったもので、最初は気になって仕方なかったんだよ」

そう打ち明けるクラフト。頷いたダインは「多分、奴らが狙っているのもそれだと」という。

「お前は何を持って…」ダインをジッと見つめていた彼は、何かに気付いたように「いや、誰かいる、のか?」と尋ねてくる。

彼ら二人は“気配”は感じているようだがその正体までは見えないようだった。

恐らくガーゴも同程度の認識しか得られていないのだろうと確信したダインは、「最近知り合ったんすよ」と答える。

「奴らも俺からそいつの気配を察して探ってきてるんじゃないっすかね」そう話すだけで、正体は何なのかダインは言わなかった。

「なるほどな」

グラハムが髭を撫でながら口を開く。

「君は、その誰かを守りたいがために多くを語らんでいるのだな」

ダインの心情を察するかのような台詞に、ダインは一瞬固まってしまった。

少し話しただけなのに見抜かれるとは。伊達に何年もセブンリンクスの校長を勤めてないな。

そう思いなおした彼は、再び背筋を真っ直ぐに伸ばした。

「では、何故追われているかまでは分からんわけか」

「まぁ、そうっすね。俺もそこは知りたいところなんすよ」

グラハムはソファにもたれながら瞑目し、クラフトは腕を組んで首をひねる。

「君を追っている以上、何かしら目的があるのは明白だ。彼奴らのこれまでの行動を推察する限り、君が匿っているその何者かを利用する気でいるのか、はたまたその何者かから秘密を得るためなのか」

グラハムもクラフトも考え込むばかりで、ガーゴの意向にまでは気付いてないようだ。

「ちょうど事情を知ってるっぽいガーゴ上層部が来てるんだし、直接聞きゃいいんじゃないすか?」

軽い調子でいうダインに、クラフトは慌てたように「正直に聞くバカがいるか」と突っ込んでくる。

「我々改革派の存在は、いまのところガーゴに知られてないんだよ。気取られたら色々と面倒なことになるし、これまでのことが水の泡になるだろう」

確かにクラフトのいうことも最もだ。

グラハム達改革派は最近できたものではないようで、かねてからガーゴと決別する手がかりを模索していたのだろう。

いくつか証拠は握ってるようだが、連中に改革派の存在が知られたら、かき集めた証拠を潰される可能性もある。

秘密裏に動きたいというクラフトの気持ちも理解できたダインは、「いいっすよ。じゃあ俺がいってきます」と彼らに向けていった。

「何を?」クラフトが不思議そうに尋ね、「俺が聞いてきます」、ダインはそういって立ち上がる。

「お、おい」

戸惑い気味に呼び止めてきたクラフトは、下手な動きを見せるなと言いたげだ。

「いや、改革派のことは話さないっすよ」振り向きつつ、ダインはいう。

「いまのところ、俺は改革派ともガーゴとも無関係っちゃ無関係なんで。ただ、俺がいま知りたいことと先生方が知りたいことは一致してるし、だったら俺が個人的に聞いてくるって形だったら大丈夫っしょ。それに連中の狙いは俺なんだとしたら、なおさら話す必要があるんじゃないすか?」

「それは…しかし…」

クラフトの表情には懸念が浮かんでいる。

ダインのいうことには理解できるが、生徒を利用しているような気がして躊躇いがあるのだろう。

グラハムも同じような表情で唸っており、二人の心配そうな顔つきを見てダインは笑った。

やっぱりこの人たちは“良い方”だ。

「ま、これまで良くしてもらってたから、そのお礼みたいなもんす」

「ちょっくら行ってきます」校長室を出て行くダインは、なんとも軽いノリだった。



昼休みの終わりまで残り十分と少し。

ジーニの姿を探してる途中、ダインの携帯にサラからの着信があった。

『一つ面白いことが分かりました』

通信機に出て一番にいったサラの話に興味が引かれ、ダインは携帯を耳に当てたまま人気の少ない校舎裏へ移動する。

『エレイン村と資材の取引がある、貿易会社から得られた情報です』

改めて周囲に人がいないことを確認し、「続けてくれ」ダインは静かに耳を澄ます。

『その貿易会社はガーゴとも取引があったのですが、そこから最近頻繁にある資材の発注があるようなんです』

「ある資材?」

『鉄筋、鋼鉄といった鉄材です。他にもございますが、全て魔法の影響を受けにくい材質のものばかりのようです』

「何か作るつもりなのか?」

『入手した発注書を持って専門家に聞いてみたところ、あくまで予想段階ですが、ある特殊作用を引き起こす装置ができるかも知れない、とのことでした』

「特殊作用?」

『反作用を引き起こす照射装置です』

反作用。つまり魔法の効果を反転させる効果を持つ照射装置、とサラは説明した。

「よく分かんねぇな。なんだってそんなものを…」

『もちろん、真っ当な目的でそれらの資材を使う可能性はございます。しかしながら、それら資材の発注は秘密にしたいのか、中間業者を通じてガーゴに横流ししているようですし、きな臭さは拭え切れませんね』

「親父たちはなんていってるんだ?」

『何か思うところがあるらしく、ずっとどこかと連絡を取り合っております』

そのとき、誰かが近づいてくる気配がした。

「分かった。また後で話そう」

短くいって通信機を切ると同時に、その気配はダインの前に現れる。

ジーニだった。

向こうもダインと鉢合わせになるとは思ってなかったようで、驚いた顔をする。

が、それも一瞬のことで、「こんなところで何をしているんですか」、表情を険しくさせ、棘のある声をかけてきた。

「校内での携帯の使用は校則違反じゃないかしら」

「いまは変わったらしいんすよ」

ダインは怯まずにそう答え、挑むようにジーニと対峙する。

早速グラハム達も聞きたかったことを尋ねようと思った。だがジーニがダインを見る目つきは普段以上に険しく、どう切り出しても答えてはくれそうにないのが雰囲気で分かる。

かける言葉を考えているところで、「呑気なものね」、ジーニが口火を切った。

「他の生徒達は休憩時間であろうと勉強や聖力の向上に取り組んでいるというのに。ノマクラスはこれだから」

呆れたようなその台詞は、ノマクラスを潰したがっている、というクラフトの話を裏付けるものだった。

このジーニというエル族の女は、徹底的な差別主義者なのだろう。格下と判断した相手には、とことん冷たくなる奴なのかもしれない。

「弱者同士のお友達ごっこは楽しい? 将来性のある学生たちを邪魔してるって自覚はあるのかしらね?」

証拠に、ジーニの目つきにもその台詞にも、侮蔑の色がありありと浮かんでいた。

「着任初日で初対面に近いのに、ずいぶんと突っかかるいい方するんすね」

ダインは薄く笑いながらいった。「教師として生徒に対するその接し方はどうなんすかね?」

目つきがさらに鋭くなった以外、ジーニから反論は無い。

「しっかしガーゴってところはみんな忙しいんじゃないんすか?」ダインは話題を逸らした。「上層部はさらに忙しいはずなのに、よくうちの学校に赴任できたもんすね」

当たり障りの無い、しかし嫌味を込めた台詞だった。

「あなたのような生徒がのさばってるからじゃない」

ダインを睨みつけたまま、ジーニは反撃する。

「由緒あるセブンリンクスはいま現在もエリートを育成し、世に送り出している。確立された地位や名誉を揺るがすようなことがあってはならないの。その不安因子はできるだけ早急に取り除かなければならない。ノマクラスなんてくだらないもの、私が在学していたときはなかったのに」

ジーニがこの学校の卒業生だったことにダインは内心驚いたが、彼女に別の感情が見えてきたダインはいった。

「え、まさか今回赴任してきたのって私怨っすか?」

自分の判断で電撃赴任してきたのかと尋ねると、監視者のように腕を組んでいたジーニはそのまま口を開く。

「セブンリンクスの在校生は、ガーゴの内定をもらっているようなもの。ある意味でガーゴの顔でもあるこの学校の規律を正すのは、こちらのためでもあるわ」

幹部であるジーニの、さらに上からの命令だといいたいのだろう。

「つまりまたそっちの都合を押し付けてきたってことっすか」

「この学校は他とは違うの」ジーニはきっぱり言い放つ。「他校のように、みんな仲良しこよしでは成長が無いし将来も無い。セブンリンクスの生徒というものの価値、そのものが失われることになる」

確かにジーニが言っていることも分かる。その試験内容や進級の条件など、特殊なものが多いことから、他校とは違う。

セブンリンクスそのものにブランド力を見出し、同校へ入学してきた生徒も中にはいるのだろう。

かといって、全員横へ並べで個性を殺すことこそ、何の意味も無いようにダインには思えた。

学生は勉強も大事だが、まだまだ子供だ。社会の厳しさは社会に出てから学べばいいことで、学生のうちは仲良しこよしでも大いに結構なのではないだろうか。

人の気持ちの分かる、しかしエリート気質を持った生徒の育成こそ、グラハム校長の意思のような気がしてならない。

それにジーニはこの学校の価値が高いと思っているようだが、価値が高いだけであってここが全てというわけではない。

国家規模になりつつあるガーゴ組織にしても、それがこの大陸の全てというわけでもない。

他にも由緒ある学校は沢山あり、天才や秀才もこの学校に納まりきらないほど世の中には沢山いるはずなのだ。

頂上なんていくつあってもいい。いくつもあった方が良い。

自信満々でいるジーニにそう論じたかったが、学生身分であるダインのいうことなど、ジーニは歯牙にもかけないだろう。

そもそもそんな話をしたいわけではない。昼休みは残り五分、彼女には聞かなければならないことがある。

「それで、どうしてこのタイミングで赴任なんてしてきたんすかね?」

腹の探り合いに飽きてきたダインは、単刀直入に尋ねた。

「どうもガーゴ側のこれまでの行動を考えると、規律矯正のためだけとは思えないんすよね」

一瞬、ジーニの表情から感情が抜け落ちる。

「何がいいたいの?」

そういったときにはその目つきは再び鋭いものになり、さっと警戒したのが分かった。

「いや、先日のことなんすけど、そちらさんの部下の方からちょっとした挨拶をされたもんで」

ジーニから返事は無い。

「上司に話を通してくれるよういったはずなんすけど。何か聞いてないっすか?」

相手をジッと見つめながらダインは問うものの、「さぁ?」微塵も動揺する素振りを見せず、ジーニはいった。

「何か聞いたかもしれないけど、こっちも忙しいから。いちいち覚えてないわ」

挑むような視線はそのままで、それらしい仕草は無い。

「そっすか」

どうもこのジーニという女は、サラがいっていたとおりの奴のようだ。

温かみを微塵も感じない、鋼鉄のような女。そんな単語を思い浮かべつつ、ダインは続ける。

「じゃあちょうど良いんでいま聞かせてもらいたいんすけど、何か企ててたりしてません?」

ジーニが口を開きかけたところで、「あーいや」ダインは手を突き出し止めた。

「何か知ってたところで、ノマクラスのいち生徒でしかない俺に話すわけないか」

独り言のように続ける。

「俺に話したところでメリットもないっすからね。つっても、そちらさん側も何か知りたいことがあるようですし」

「知りたいこと?」ジーニの眉が釣りあがる。

「ノマクラスの俺なんざ取るに足らない相手でしょ? なのにこうして話に付き合ってもらってるっつーことは、この間に俺の何かを探っているってこと」

そのとき、初めてジーニの視線が少しだけ泳いだ。

格下であるはずだが、油断のならない相手━━そう意識した瞬間に思えた。

「魔法力が薄い分、そういう感覚っつーか感度っつーか、鋭いんすよ俺」

両手を広げて見せるダインは、その口元に笑みすら浮かべている。

「んで何か分かったっすかね?」

ジーニは口を開かない。ただその目つきは依然として鋭く、まるで睨みつけているかのようだ。

彼女の反応を見る限り、ダインから何かの気配は感じているものの、正体までは見えていないのだろう。

「黙っている限り平行線のままっすよ」

冷たい視線を送りつつダインがいったところで、今度はジーニが笑い出す。

口の端を僅かに歪めた、冷酷そのものの笑みだった。

「自惚れないことね。勘違いも甚だしい」やがて彼女の口から憤然とした声が漏れる。

「勘違い?」

「ええ、勘違い。あなた程度のためだけに、ナンバーの私がわざわざこの学校に赴任してくるはずが無いでしょう? 規律矯正以上の理由なんてあるはずがないじゃない」

ジーニがそう話していたとき、彼女の背後から足音が近づいてきた。

ジーニと対峙しているダインを確認し、一瞬驚いたもののすぐに警戒心を露にさせたのは、エンジェ族のサイラだった。

「ノマクラスの生徒はどんな連中なのか見たかっただけなんだけど、程度も意識も低い連中しかいないのね」

サイラの存在に気付いたジーニは踵を返す。

「他のクラスに影響が出る前に、ノマクラスは即刻解体するべきだわ」

捨て台詞を吐きながらその場を去ろうとした彼女に、「お互いフェアにいきましょうよ」、ダインはそう声をかけた。

「フェア?」ジーニの足が止まり、顔だけをこちらに振り向かせる。

「正直になりましょうよ。そしたら俺も正直に話すつもりでいるんで」

「勝手に言ってなさい」

これ以上の会話は無駄だと思ったのか、ジーニとサイラはそのまま校舎の中へ戻っていった。

二人の姿が消えたと同時に、校舎内にチャイムの音が鳴り響く。

「…勘違い、ねぇ…」

一人取り残されたダインは、小さく呟いた。




「ダイン、やっぱり例の連中に目をつけられちゃったようね」

ダインの机の正面に座り、手に持ったプリントに目を通しながらディエルがいってくる。

来週に差し迫った下克祭の打ち合わせだった。放課後のため教室にはダインとディエル以外に誰もいない。

「校舎の裏庭で、ジーニって人に因縁っぽいこといわれたそうじゃない」

ダインとディエルの仕事は、ラビリンスの監視室に入り生徒たちの動向をチェックするというものだった。

違反者はいないか、バグが生じてないか、救難信号を出している者はいないか。

退屈そうではあるが楽な仕事内容に内心ホッとしながら、「さすが情報通だな」、ダインはそう返す。

「何いわれたか聞いても良い?」

組んだ足を降ろし、こちらに顔を向ける彼女は興味津々といった様子だ。

早くも下克祭の打ち合わせに飽きたのだろう。

「う〜ん、巻き込んじまうのも気が引けるからなぁ」

プリントを眺めながら躊躇うダインに、「大丈夫よ」、ディエルは笑いながら手を振った。

「私のところにはガーゴ組織なんてさしたる影響はないから。国が違うしね」

そういえばディエルは相当なお嬢様なんだった。父親は時期国王と噂されるほどの家柄なら、一国家でしかないガーゴ組織など障害にすらならないのだろう。

前回の口論の時だってディエルは同席していたが、その後ガーゴから何かいわれた様子はないし。連中もディエルのことは気にしてないのかもしれない。

とはいえ、もはや校内にまで連中が乗り込んできたいま、どこで誰が聞いているか分からないここで話すのはまずい。

ディエルもそれは察してくれているようだが、それでも話の内容が気になるようだった。

「ん〜、まぁ簡単にいっちまえば、あんま調子に乗んなよって感じかな」

「何それ?」

「いやまぁ直接そういわれたわけじゃないが…」

「相変わらず上から目線ね」

ディエルの表情が険しそうなものに変わる。

「どれほどの人気か知らないけど、あの二人の赴任で他の生徒達は浮き足立っているようだし、調子乗ってるのはあっちなんじゃないの?」

そのまま彼女が語りだしたのは、ガーゴに対する憤りだった。

「規律矯正とかいいながら、あいつ等が一番学校の規律乱してるじゃない」

そう不満を口にするディエルの表情は怒りに満ちている。

「連中と何かあったのか?」

表情と口ぶりから何かを感じたダインが尋ねると、ディエルは目を吊り上げながら答えてくれた。

「あの連中、一度スウェンディ家が管理している領地に勝手に踏み込んできたことがあったのよ。山菜取りでたまたま私が居合わせたから問い詰めたら、調査したいことがあるから立ち入らせてもらったって悪びれも無く言われたの。こっちはそんなの許可した覚えも無いのに」

「不法侵入ってことか?」

「いえ、後になって手続き上の不備があったって分かったわ。それはまぁ良いんだけど…いえ良くはないんだけど、追い返したときにいわれた捨て台詞が一番頭に来たのよ」

ずい、と机に身を乗り出し、ダインを睨みつけてくる。当時の再現でもしてるのだろうか、可能な限り声を低くさせていった。

「子供がでしゃばるなって。大人の問題で子供は関係ないってね」

「あー、そりゃ腹立つなぁ」

理解を示すダインに、再び椅子にふんぞり返るディエルは「そうでしょ?」とさらに目くじらを立てた。

「確かに私個人としては、パパやママほどの権力も地位も無いけど、でもスウェンディ家の一員であることには違いないわ。誇りもプライドもある。私たちの領地に踏み込んでおきながら、その言い草は何なのよって、あの時はさすがに暴れそうになったわ」

その一件以来、ガーゴのことは良く思えないとディエルは続ける。

だから、彼女はカインと揉めたあの時ついてきたのだろう。ダインが劣勢になれば加勢するつもりでいたのかも知れない。

「自分が正義だと思い込んで行動されるほどはた迷惑なことはないわね。外国にまで出向いて同じ顔されるのは勘違いもいいところよ。ガーゴみたいな組織なんか、世界にごまんといるんだから」

嫌味はその一度だけらしいが、ディエルは根に持つ性格なのかその憤まんは爆発寸前だ。

「だからあいつ等のプライドをへし折れるようなネタがあれば、何が何でも掴んでおきたいのよね」

そういって思慮する様は、悪巧みを考えるデビ族そのものだ。

「つっても、曲がりなりにもこの国を取り締まってる組織なんだから、そういうボロはなかなか出さないんじゃねぇか?」

「そうなのよ。組織全体の動きとしてみればおかしな部分は沢山あるんだけど、個人のガードはなかなか固いのよね」

そのいい方に察するものがあったダインは、「お前まさか」驚いたように尋ねる。

「今日赴任してきたあの二人に、何か弱点でもあればって尾行してたんじゃないだろうな?」

「ええ」ディエルは簡単に認めた。

「でもすぐに気配を察知されて睨まれた」

肩をすくめている。相手がガーゴ上層部でも物怖じしないところは、さすがといったところか。

「サイラって奴はエンジェ族だからきつそうなのは見たままなんだけど、ジーニって奴はのんびり屋が多いエル族でしょ? 外見が優男で中身が女たらしのユーテリア先輩と同じ種族とは思えないわ」

同じ先入観を抱いていたダインは、「ああ、それは俺も思ったな」、とプリントを折りたたんでカバンに突っ込む。

「つっても、この種族なんだからこういう性格であるべきってのは、こっちの勝手な思い込みなんだけどな」

「確かにエンジェ族みたいなデビ族も何人か知ってるけど…」

しかし何か弱点は無いだろうか。

打ち合わせはそっちのけで考え込むディエルを見ながら、ダインはふと気になったことを尋ねた。

「なぁ、さっきのお前の話は、いつぐらいの出来事なんだ?」

「ん? 一ヶ月ぐらい前だと思うけど。別荘があってね、その裏山にいつからあるのか分からない、大きな石版があるの。それを調べてたわね」

「石版?」

「何か文字らしいのは書いてあるんだけど、そこ海辺で潮風がきついから、風化してもう読めないんだけどね」

「へぇ…」

読めない石版。

何故だか妙に引っかかるものを感じたダインは、心に留めた。

そのとき、スピーカーの下部にある時計を確認したディエルが「あ!」と声を上げる。

「やっば、もうすぐ練習試合あるんだった!」

自分の机に戻り、慌しくカバンに教科書を詰め込んでいく。

「じゃあまた明日ね、ダイン! あいつ等のことで何か分かったことがあったらすぐに教えて!」

「おお」

彼女はそのまま窓を開け、黒髪と制服を靡かせながら飛び去っていった。

「便利だなぁ…」

運動場の隅にある更衣室まで向かっていくのを眺めていると、ほぼ入れ替わりにシンシアとニーニアが教室に入ってきた。

「打ち合わせ終わったかな?」

二人の手にはハンカチに包まれた、弁当箱サイズの容器がある。

「家庭科室に行ってお菓子作ってきたよ」

お菓子作りをしながら打ち合わせの終わりを待っていてくれたらしい。

「本当は家から沢山お菓子持ってきてたんだけど、今日からガーゴの人たちが来てるから…」

半分は転送アイテムで家に返却したというニーニアは、かなり残念そうだ。

しかし彼女の懸念も分かる。ジーニとサイラは表向きは規律矯正のために来たのだから、菓子類の持込みなんてまず許さないだろう。

厳しくいくともいっていたし、ダイン部の活動も表立ってはしない方が良い。

「場所をまた例の公園に戻すか。生徒会室使うのはさすがにまずいしな。冗談じゃなくマジでラフィンに迷惑かかっちまうだろうし」

「やっぱりそうだよねぇ」

同意するシンシアとニーニアを見てから、とりあえずティエリアに連絡を取ろうと携帯を取り出す。

ちょうどそのとき、そのティエリアからの着信があった。

『あ、ダインさん』

やや嬉しそうな声が携帯から聞こえてくる。

ダインが声を発する前に、「お聞きしたいことが」と先に続けてきた。

『いまラフィンさんといるのですが、ラフィンさんにダインさんの通信機の番号をお教えしてもよろしいでしょうか?』

「ああ、別に構わないけど…でもなんでまた?」

『いえ、ラフィンさんは私以外の番号は知らないと仰られたので』

そんなティエリアの声の向こう側から、「いや、あの…」というラフィンのやや戸惑ったような声が聞こえる。

どうやらティエリアのお節介が発動してしまったらしい。

ダインはくすっと笑いながら、「じゃあ俺だけじゃなくて、シンシアやニーニアの番号も知らないのか」と聞いた。

『あ、はい、そうですね。ですので後ほどシンシアさんとニーニアさんに許可を…』

「いま目の前にいるよ」シンシア達に視線を送りつつ、「番号含め、話すのは例の公園でやろう」と続けた。

すぐに事情を察したティエリアは『分かりました』といい、そこでダインは通話を切る。

シンシア達を引き連れ、ダインはカバンを手に取り早速公園へ向かうことにした。


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