百四十七節、光と闇と
デビ族が収めるディビツェレイド大陸の沿岸にある“カロイア岬”は、その大陸の最南端にあった。
混乱期以前に勃発していた悲劇、『種族間戦争』時代に作られた岬で、本来の目的は地平線の彼方より飛来するエンジェ族をデビ族が迎え撃つために作られた場所だ。
当時は戦地にもなったその場所はいまやすっかり観光地化しており、大海原を見渡せるパノラマが広がっている。
岸壁に打ち付ける波音、潮風に朝日。どれをとっても、ここが戦争で使われたとは思えないほどの穏やかな光景だ。
朝の早い時間であるため観光客は人っ子一人いなかったのだが、いま突如としてその岬に一人の人物が降り立った。
「あら、早いのね」
転移魔法で姿を現した彼女…ラフィンは、展望台の先端に立っていた人物に声をかける。
「お、来たか」
振り返ったダインは、ラフィンの顔を確認するなり笑顔になる。「悪いな。付き合わせちまって」
「いえ、元々そのつもりだったし、メンバーに選んでくれて嬉しいんだけど…」
と、ラフィンは周囲を見回す。「もう一人は?」
「もうすぐ到着するらしい。何でも走ってきてるってさ」
ダインの台詞が予想外なものだったのか、「は?」、とラフィンは声を上げた。
「ど、どういうこと? 走ってきてる?」
「いや、何でも身体を慣らしたいだとか何とかで…」
「…ねぇ、まさかもう一人のメンバーって…」
メンバー編成を知らされてなかったラフィンは、ある程度予想できてきたのか徐々に表情を曇らせていく。
ちょうどそこで遠くから激しい足音が聞こえてきた。
陸地からこの展望台まで、猛烈な勢いで誰かが近づいてきている。
「ごめーん!」
砂煙と共に現れたのはディエルだった。
「途中でモンスターに遭遇しちゃってさー、適当にあしらってたら結構時間がかかっちゃって…」
と喋ってる途中で彼女もラフィンの姿が視界に入ったようで、「げ」、と明らかに嫌そうな表情になる。
「だ、ダイン、まさかこいつとなの?」
ディエルも他の同行者が誰かは聞かされてなかったようだ。「てっきりラフィン以外だとばかり…」
「私も同感よ」
腕を組んだいつものポーズをとるラフィンは、明らかに不服そうだ。
「ダイン、本当にこいつを連れて行くの?」
ラフィンはダインの心中が図りかねると言いたげだ。「プノー相手にうまく立ち回れる気がしないんだけど」
「それはこっちの台詞よ」
ディエルがすぐに噛み付く。「あなたがテンパってめちゃくちゃになる未来しか見えないわ」
「んなっ…!? それはこっちの台詞よ! ふざけてばっかりのくせに!」
ラフィンはすぐに反論する。「この間私の中にいたダインに襲い掛かろうとしてたこと、まだ覚えてるんだから!」
「もう昔の話でしょ」
「今週始めの出来事でしょ! おまけに昨日までずっと私かシンシアたちを疑ってたでしょ。またダインが潜んでいるんじゃないかって」
「いまする話じゃないでしょ」
「信用置けないって話してるの! あなたになんか背中を預けられないわ!」
また言い争いが始まった。
予想通りの展開にダインは苦笑するばかりで、何事かと彼の持つカバンから小さなドラゴン…シャーちゃんが頭だけをひょっこり覗かせる。
「ダイン! いまからでも遅くないから、編成を見直して!」
そうラフィンがいい、「上等じゃない! リコールよ、リコール!」、ディエルまで騒ぎ出した。
「悪いな」
変更する気がなかったダインは軽く謝りつつ、カバンからシャーちゃんを引き抜いて胸に抱く。「もちろん、ちゃんとした理由があってお前らに来てもらったんだ」
「ちゃんとした理由?」
「ああ。割とでかい問題があったことに気付いてさ」
ダインは答える。「シャーちゃんを大きくさせて、目的の島に行くことが決まったはいいんだけど…ここからその島って結構な距離があるだろ? 確か一万キロだっけ?」
「ええ、そうね」
事前に現地の情報を調べていたディエルが頷く。「普通に飛んでいけば七時間ぐらいかかるかしら」
「だろ? んで、成体となったシャーちゃんの身体を維持するには、俺の定期的な魔法力の供給が必要になる」
そこで何が問題かにラフィンとディエルも気付いたようで、「あ…」、とたちまち顔が赤くなっていく。
「悪いがそっち方面のことも頼んでいいか? こればっかりは俺だけじゃどうにもできなくてさ」
シャーちゃんが飛行し続けるための燃料として、ラフィンとディエルの魔法力が必要不可欠だとダイン。
「結構な時間、吸魔のあの感覚に晒されることになると思うんだけど…」
「も、もちろん大丈夫よ」
ラフィンは自分の胸を叩いた。「魔法関係は任せて。私だって精神鍛錬は続けてきたんだし、何時間だろうと耐え抜いて見せるわ」
その返事に頼もしさを覚えつつ、「ディエルは?」、ダインはきく。
てっきり、ラフィンに対抗して自分も問題ないといってのけてくれると思っていたのだが、
「ぶっちゃけ自信ない」
ディエルはすぱっといった。「この間の学校でのこともあって、もしかしたらダインに襲い掛かってしまうかも」
「おそっ…!?」
ラフィンが固まる。「な、何いってるのよ!」
「ダインは知らないでしょうしラフィンも理解できないでしょうけど、女だって“色々と”我慢することもあるのよ? 特に私はデビ族だから」
何とも素直な奴だ。
「あ、あ〜、じゃあ無理そう、か?」
チラッとパーティ変更が脳裏を過ぎったが、「代わりのものを用意してくれれば我慢できるわ」、とディエルはいった。
「代わりのもの?」
「ええ。手間はかからないしすぐに準備できるものだから」、微笑むディエル。
「ちょ、ちょっと、また何かとんでもないこと要求するんじゃないでしょうね」
警戒するラフィンだが、「こんな状況でそんな変なこといわないわよ」、とディエルは笑った。
「ま、それは出発前にやらせてもらうとして」
含み笑いを漏らしつつ、彼女はダインに顔を向ける。「改めて確認よ、ダイン。プノーの封印地はどこか分かってる?」
ダインも一応調べてきたらしく、すぐに答える。「ブラッディスワンプって島だろ?」
「そうね。じゃあその島の特性については?」
そこでダインは首を捻る。「毒沼があるってことぐらいしか…他に何かあるのか?」
「メイドのラステに調べてもらっただけだから、私もそこまで詳しくはないんだけど」
前置きし、ディエルはいった。「封印地の周囲は、七竜の“特性”になぞらえた環境に変化するっていうのは知ってるわよね? ヴォルケインは火、シアレイヴンは風、アブリシアは冷気といった具合に。つまり毒魔のドラゴンとされる、プノーの封印地には…」
「毒沼だけじゃなく、島全体に毒気が満ちているかもしれない、ということね」、とラフィン。
「多分だけどね」
頷いたディエルはまたダインに顔を向けた。「私たちは解毒魔法か何かでどうとでもできるけど…ダイン、あなたの毒対策は何か考えてあるの?」
魔法が極端に効きにくいヴァンプ族だが、効果がないのは魔法だけで、自然発生した災害や毒には当然ながら影響を受ける。
七竜から発せられる特殊効果も自然現象と同じ類とされており、だからディエルは心配に思っていたのだろう。
「一応、ニーニアからこんなもの貸してもらったよ」
そういってダインがカバンから取り出したのは、口元に円柱状の呼吸口が二つほどつけられたマスクだ。
「このガスマスクつけてりゃ、毒沼の中を泳いでも平気らしい」
「…ほんとに?」
「何しろリステン工房製だからな。危険地帯の探索でも使われてるものらしいし、問題ないだろ」
「これ一つで全部の毒を無効化できるのかしら…」
ディエルは疑わしげだ。「島にはどんな毒があるか分からないのよ? ダインの身にもしものことがあったら…」
「ダインはあなたや私より強いのよ? もしもなんて起こるはずないじゃない」
ラフィンが口を挟んできた。「ヴァンプ族は基本的に頑丈すぎるぐらいの種族なんだし、例えウィルスか何かの影響を受けても、彼らなら風邪程度の症状に留まるってきいたわ。そうなんでしょ?」
「まぁ、そう…だな。村の中でもでかい病気した人はいないな」
「でしょ? そんなことより、まず私たちが心配すべきことは、そもそも島にたどり着けるかってことよ」
心配事を切り替えたラフィンは、暗記していた世界地図を脳内で広げ、展望台の先を指差す。
「ここを真っ直ぐ行くだけでいいらしいけど…見える? もうあの地点からかなりの荒れ模様じゃない」
今日のカロイア岬は気持ちいいぐらいの晴天で、見晴らしのいい展望台からは三百六十度見渡せる。
前方には海しかなく、そこでも眩いばかりの景色が広がっていたのだが、ラフィンが指差す先だけは暗雲が立ち込めていた。
まるでそこだけが台風に揉まれているかのようで、雷雲が光を放ち、海上に大雨を降らしている。
「あの中を突っ切っていくのよ? 黒い雲と雨のせいで視界が悪くなるでしょうし、風だってものすごい勢いで吹き荒れてる。よっぽどの方向感覚がないと、どこが前か後ろか分からなくなるはずよ」
ラフィンの指摘は尤もなものだった。
だだっ広い海だけに周囲に目標物となるものは何一つなく、その上嵐の中を真っ直ぐ突き進むのはなかなかに困難だ。
「あ〜…確かにそうだな」
また新たな問題点に気付き、ダインは頭を抱える。
彼に抱かれていたシャーちゃんも、若干不安そうな鳴き声を上げていた。
「そうね、心配よね。迷っちゃったら、たどり着けないどころかみんな危険になる」
ラフィンはそういうが、何故かその顔には笑みが浮かんでいた。「でも…ダイン。あなたの選択は間違ってなかった」
「ん?」
「私が“照射”の魔法で目的地までの道を光で照らし続けるわ」
「え、そんなのあるのか」
驚くダインに、「こんなの初歩の初歩よ」、ラフィンは得意げにいった。
「自然災害の影響を受けないようにバリアを張って、ついでに不可視の魔法も張っておくわね。シャーちゃんの姿を誰かに見られたらまずいでしょうし」
「マジか。すげぇ助かる」
ダインが素直に感激すると、「そうでしょそうでしょ。役に立つでしょ私」、ラフィンは腕を組んでふんぞり返った。
「もっともっと私に頼ってくれていいのよ。どこぞのデビ族は手持ち無沙汰で苦しむが良いわ」
ディエルにも威張り散らしたかったらしい。ディエルは悔しそうに歯を食いしばっていた。
相変わらずなやりとりにダインはまた笑い声を上げてしまい、「ディエル」、と彼女に顔を向ける。
「吸魔はディエルに比重を置くことにするよ。ラフィンにばかり負担かけるわけにはいかないし。頼めるか?」
自分にも役目がある。
ダインにそういわれたような気がして、「え、ええ、任せて」、ディエルも自分の胸を叩いた。
「じゃあ早速向かいたいところだが…ディエル、さっきの話って?」
吸魔を我慢するための条件。
話を戻してダインが尋ねると、ディエルはにまりと笑った。
「途中で襲い掛かってしまわないように、ダイン成分の補給を要求するわ」
「せ、成分?」
「簡単よ。ギュッとしてくれるだけでいいから」
抱きしめてくれと彼女はいいたいのだろう。
「やっぱり変なことじゃない」
ラフィンが突っ込む。「私たちはいまから何しようとしてるのか分からないの? 遊びじゃないのよ?」
「分かってるわ。だからこそよ」
ディエルは至極真面目な顔になって返す。「大事なとき、大事な場面でこそ、大切な人の温もりが欲しくなる。ラフィンは違うの?」
ラフィンにとっては思わぬ切り返しだった。
「わ、私は…そういうの、良く分からないし…」
顔を赤くさせただけで反論できない。
「ま、どうでもいいけど」
ディエルは余裕のある笑みと共に、「ということで、ダイン」、ダインに向けて、両手を広げた。
「ん」
「ま、まぁ、こんなことで我慢してくれるのならな」
ダインは苦笑しながらシャーちゃんを地面に降ろし、ディエルを抱き寄せた。
「んふ〜」
ダインに包まれた瞬間、ディエルは満足そうな声を出す。
「やっぱりダインの体って気持ちいい…あ、もちろん変な意味でね?」
「変な意味かよっ!」
突っ込むと、ディエルはおかしそうに笑った。
そうしてしばし、ディエルが満足するまで抱き合っていると、
「ちょ、ちょっと、いつまで抱き合ってるのよ」
見かねてラフィンがいってきた。彼女の顔は赤い。
「なに、あなたも欲しくなっちゃった?」
「そ、そんなわけ…!」
ない、とはいわなかった。
「はは。ついでだ。お前もほら」
ディエルを離し、ラフィンを手招く。
「い、いや、でも…」
「今更遠慮する間柄じゃないだろ」
ラフィンの手を取って手前に引き寄せた。
「きゃっ」
ぽすんと、彼女の身体を受け止めつつ、
「…ありがとな」
ラフィンの背中に腕を回しながら、礼を言った。
「救出作戦なんて、本来ならお前もディエルも関係ないことなのにさ」
ダインには、まだ彼女たちを巻き込んでしまった若干の後ろめたさがあったのだ。
もし知り合ってなければ、こうして誘うこともなかった。
大切な休日を潰し、危険地帯にまで向かわせることもなかったはずなのに。
大人しくダインに抱かれていたラフィンは、
「関係ある、わよ…」
他人行儀のようにも聞こえたダインの言葉に、憤りを感じつつ反論した。
「あなたの役に立てるだけで私は嬉しいし…あなたのためになるのなら、私はいつだって喜んで力を貸すわ」
これまで、ダインとラフィンの間には色々あった。
初登校時の印象はお互い悪いもので、始めの頃は敵視しあっていた。
その後和解し、ラフィンが密かに憧れていた命の恩人がダインであったことが分かり、そこからお互いの距離が急速に近づいていった。
ダインを通じてシンシア、ニーニア、ティエリアという親友ができて、表情が柔らかくなったおかげかクラスメイトとも少しだけだが話せるようになった。
そんな中で奇襲戦というイベントが勃発。ラフィンは最終的にダインを退学に追い込んでしまう。
ダインの出現によってラフィンは様々な変化を見せるようになった。沢山笑わせられ、泣かされたりもした。
彼に感謝してるから。退学させたという負い目があるから。
だからダインの力になりたかった…と、以前の彼女ならそういっていたかもしれないが、いまは違う。
大切な人だから。大好きな人だから。だから彼の力になりたいのだ。役に立ちたかったのだ。
いまや、ラフィンの気持ちはシンシアたちと同じところにある。
「…ありがとな」
義務感で力になりたいといわなかったその気持ちがダインは嬉しくて、再び彼女の耳元でお礼の言葉を囁いてしまった。
「ちょっと〜、長くない?」
今度はディエルからクレームがあがった。
「また同じぐらいダイン成分を要求したいんだけど〜」
また新たな問題が発生しかねなかったので、ダインは笑いながらラフィンを解放する。
「悪いけどもう時間切れだ。いい加減行かないと、早朝に集まった意味がなくなるよ」
シャーちゃんの元へ近づく。
大人しく待ってくれていた彼は、「しゃー?」、と、いくの? といっているかのような鳴き声を上げていた。
「ああ。よろしくな。シャーちゃん。一緒に頑張ろう」
小さな頭を撫でると、心地良さそうにしていた彼は「シャー!」、と両翼を広げてやる気を見せた。
「姿消すわね」
ラフィンが不可視の魔法を唱え始め、その間にダインは透明な触手を伸ばしてシャーちゃんの胴体と繋げた。
魔力を流し込んだ瞬間、彼の小さな全身が眩く光り、たちまちダインたちの何百倍も大きくなる。
「はー…っ、やっぱり何度見てもでかいわねぇ…さすが七竜といったところかしら」
成体となったシャーちゃんを見上げ、ディエルは改めて驚いている。
「よし。じゃあ…改めて、ラフィン、ディエル、よろしくな」
二人に身体を向け、ダインはいった。
「道中何があるか分からない。身の危険を感じたら遠慮なくシャーちゃんを連れて魔法か何かで避難してくれ。例え俺がどんな状態であってもな」
急に不穏なことをいわれ、ラフィンとディエルは反論しようとする。
「繰り返すが、あくまでもお前らは俺の…いや、俺たちの私用に付き合ってもらっているだけなんだ」
二人の反論より先に、ダインは釘を刺した。
「まず優先すべきはラフィンとディエルの身の安全だ。俺のことやプノーの救出は二の次でいい。救出後に何か法的な問題が生じても、俺が一人で全部被るつもりだ」
冗談などではなく、真剣な表情でダインは続けた。「何よりもまずは自分を大切にすること。この約束を守れないなら、俺はお前らを連れて行かない」
それが絶対条件だと、ダインは強い口調でいい終えた。
「…分かったわ」
ディエルも真剣な表情で頷く。「足手まといになんてなるもんですか。スウェンディ家の名にかけて、作戦を成功させるわ」
「私もよ」
保護バリアをシャーちゃんに張り巡らせ、ラフィンはいった。「これは私の力試しも含まれてるんですもの。伝承のドラゴンがいる封印地に赴くなんて、こんなやりがいのある作戦はないわ」
これから危険な場所へ行くというのに、二人の決意はびくともしないようだ。
力試しというラフィンの言葉はその通りなのだろう。天才と称される二人にとって学校の実技は簡単すぎて、ラビリンスで湧いてくるモンスターも相手にならない。
以前このメンバーでラビリンスの最下層へ向かい、そこでダングレスの幻影相手に壊滅させられたことがある。相手は違えど、今回はそのリベンジという思いもあったのかもしれない。
「うし、じゃあ…」
彼女たちの揺るぎ無い気持ちを再確認したダインは、何故か目の前の二人をそれぞれ抱き寄せた。
「ほわっ!?」
驚く彼女たちを抱いたまま大きく跳躍し、上体を屈めたシャーちゃんの背中に飛び乗る。
「いっちょプノーとやらを助けに行きますか!」
「シャアアアアァァァァ!!」
気合の咆哮を上げたシャーちゃんは、そのまま大きな翼をはためかせた。
周囲に暴風のような強風が発生し、前進を始めその巨体が岬を飛び越える。
「ひゃああああぁぁぁぁ!!」
ダインたちごと落ちていく巨体。
海にぶつかりそうになったところでシャーちゃんはまた翼をはためかせ、その瞬間巨体が浮いた。
海面スレスレで低空飛行が続き、さらにもう一度シャーちゃんの翼がはためき、岬よりも遥かに高いところまで上昇する。
「ひゃああああああぁぁぁぁ!!」
飛行能力のあるラフィンやディエルでも出せないほどのスピードで、大空を駆け抜けていくダインたち。
七竜の一つ。毒魔のドラゴン、“プノー”。
封印地の中に捕らわれた彼を助け出すため、ダイン一向は暗雲漂い、荒れ狂う大海原の中へ身を投じていった。