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absorption ~ある希少種の日常~  作者: 紅林 雅樹
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百三十七節、シグ・ジェスィという男

「っあーーーー! 生き返ったああああぁぁぁ!!」

飲料水の入ったペットボトルを片手に、シグは心の底からの歓喜の声を上げた。

生き返ったという台詞の通りに、彼の肌は血色が蘇り、目も輝いている。

「脱水症状直前での水はどんな高い酒よりも美味ぇな!」

体内に水分が巡るのは相当な心地よさがあったのか、やけに興奮している。

そんななんとも嬉しそうなシグを、ダインは冷ややかに見ていた。

「で、何してるんすか、こんなところで」

巨大な“鉄箱”の陰で涼みつつ、ダインはシグに問いかけた。「見たところトレーニングしてたっぽいっすけど、砂漠でランニングなんて自殺願望でもあったんすか?」

「いや、ちげーよ」

シグは笑って手を振る。「たまにここらで走りこみしてんだよ。日課…っていうほど頻繁にはしてねぇけど、ここってだだっ広いしランニングには最適じゃん?」

「じゃん? って、ここ砂漠っすよ」

「だからいいんだろが。汗をかけるし空気も薄いからすぐに息が上がる。自分を追い込むにはもってこいの場所だろ?」

「…マゾっすか」、ダインはさすがに引いた。

「ばっか、だからちげーっての!」

シグはすぐに反論する。「筋肉もそうだけど、人体ってもんは負荷をかければかけるほど成長する。苛酷な環境であればあるほど、鍛錬に適してるってことなんだよ」

どうやらこのシグという男は自己鍛錬に余念がなく、強くなれるなら手段を選ばない男のようだ。

ただ苛酷な環境で、と安直に砂漠をランニングコースに選ぶ辺り、あまり頭のいいほうではないのかも知れない。

それでもガーゴの幹部にまで成り上がったのだから、元々の地力が強く、雑なトレーニングでもシグの体には理に適っているということなのだろう。

「まぁいいっすけど。俺はもう行きますね」

適当にあしらって石拾いを再開しようとしたダインだが、

「待てよ。せっかくだしダベろうぜ」

と、シグがいってきた。「本来俺とお前は敵同士だが、今日は俺は非番だからな。仕事のこと抜きにして、ちょっと語り合おうや」

「んなこといって、何か探り入れるつもりじゃないでしょうね」

顔に明らかな警戒色を浮かべるダインだが、「俺がそんな器用なことできる奴に見えるか?」、シグは笑って肩をすくめた。

「今日のマキニア平野部は超高温警報が発令してたってのを忘れて、ランニングしてぶっ倒れちまう俺だぞ?」

シグは自嘲気味にいってまた笑い、ペットボトルを傾ける。「今日はマジでやばかったからな。もう少し生を実感してたいんだよ」

付き合う必要はない。

そういいそうになったダインだが、シグの言動から、何か企んでいるように見えないことは確かだ。

それに二度もやりあった相手なのだ。ガーゴのナンバーである彼のことが気にならないといえば嘘になるし、このまま鉄箱の側で放置していたら何をしでかすかも分からない。

「しょうがないっすね…」

ダインは仕方なくといった様子で岩の上に腰を降ろし、手提げカバンから新たにペットボトルを取り出して水を飲む。

「んで、お前こそなんでこんなところにいるんだよ?」

シグが尋ねてきた。「ここはレジャーには不向きな場所だろ。罰ゲームでもさせられてんのか?」

「細かいことは話せませんが、俺は単なる付き人っすよ」

ダインは簡単に答えた。「“この中”で友達が遊んでるんす」

と、日陰になっている巨大な鉄箱を親指で差す。

「そういや前から気になってたんだが、これ何なんだ?」

「新しいレジャー施設っすよ」

シグにいっても問題なさそうなので、ダインはそのまま説明した。「セブンリンクスのラビリンスみたいに半バーチャリアリティ空間で、色んなアトラクションが楽しめるそうです。友達はいまそのモニターしてるんすよ」

「へ〜。そりゃちょっと興味あるな。正式にオープンしたときはダチ連れて寄ってみるか」

言葉どおり、鉄箱を見上げる彼は相当な興味を抱いたようで、また目を輝かせている。

その少年のような横顔を見て、ダインは少し笑い声を漏らしてしまった。

そんな彼の声が聞こえ、「何だよ、急に笑い出して」、シグが不思議そうに見てくる。

「いや…ちょっと、他の人とは違うなと思って」

「あ? 他の人?」

「“メガネの人”も、“背中に翼を生やした人”も、どっちも目つきが鋭くて、とっつきにくい人ばっかでしたからね」

ダインは敢えて伏せていったが、それがジーニとサイラのことであるのは、シグにもすぐに分かった。

「あんな腹黒の連中と一緒にすんじゃねぇよ」

シグはすぐに嫌そうな表情に変わる。「仕事上の関係がなけりゃ、あんな奴らとは会話したくもねぇ」

明らかに不機嫌そうな横顔から、仕事仲間に対する不満を相当抱えているというのが窺い知れた。

「俺のこと脳筋だのなんだのバカにしやがって。まるで強いことが悪だとでもいいたげんなんだよ、奴らは。俺の方が立場は上なのに、あいつ等の俺に対する言動は何もかも見下してやがる」

噴出しだした彼の不満はなかなか止まらない。「頭いいから何だってんだよ。物を知ってることがそんなに偉いのかよ。計画が成功してお偉いさんから賞賛されいい気になってるが、その計画を実際に誰が実行してるか、誰が一番苦労してるか、分かってねぇんだよ。モンスターの掃討作戦だって七竜の討伐計画だって、結局一番割を食ってるのは現場に駆り出されてる奴らじゃねぇかよ」

愚痴を吐きながら、シグはまるで酒を煽るような勢いで水を飲んでいる。「お前もそう思わねぇか?」

「ま、まぁ、そうっすね。言うだけなら誰でもできますもんね」

とりあえず賛同すると、「だろ?」、シグは調子を良くして、さらに続けた。

「指示するだけなら誰でもできる。無理難題を押し付けられたとき、だったらやってみろよ、っていう現場の声はもっともだ。計画に不手際があれば部下のせいにして保身に走り、成功したときの手柄は何が何でも横取りしようとする。自分のためにしか仕事してない上層部はどいつもこいつもバカばっかりだ」

…語り合おうといいつつも、いつの間にかシグの毒吐き場になっている。

ダインはそう突っ込みたかったが、とりあえず聞き役に回ることにした。

「おまけにハイドルとかいうインテリヤクザまで出てきやがってさぁ」

彼が飲んでいるのは確かにただの水のはずなのに、愚痴るシグはまるで酔っ払っているかのようだ。「強いから何なんです? とか抜かしやがる。俺のことをハナっから舐めてやがった。俺もアイツを見た瞬間にコイツとは分かり合えねぇと思ったよ」

眉間に皺を寄せ、明らかに憤っているシグを眺めつつ、ダインはその“ハイドル・ヴィンス”という弁護士の嫌味ったらしい顔を思い出していた。

細身でメガネのオールバック。確かに見た目からして頭が良さそうだった。物腰は柔らかく、相手によっては好印象を抱く奴もいただろう。

しかし言動の端々に鋭利な棘のようなものは感じた。シグの愚痴が事実だとするならば、きっとそのハイドルという男は相手が自分より上か下かを勝手に判断し、対応を変えるタイプなのだろう。

ガーゴの顧問弁護士に抜擢されるほどの切れ者なのだ。力仕事全般を請け負っていたシグとは対照的で、彼にとっては最も相性の悪い相手なのだろう。

「何が暴力だよ。言葉が通じない相手にはそうするしかねぇだろが。暴れまわるモンスターに悠々と説得なんかできるかっての」

悪態をつき続けるシグだが、その威勢は突然なりを潜めた。

ふと黙り込んでしまった彼は、地面の一点のみを見つめたまま、

「…なぁ、力が強いってのはバカっぽいか?」

少し落ち込んだ様子で、彼はダインにきいた。「インテリとパワーじゃ、パワーのほうが不利なのか? 俺は少年漫画なのか?」

彼が何を思い出してダインに問うたのか、現場を見てないダインには当然知る由もない。

「い、いや、何をいってるのかは分からないっすけど…」

困惑しつつも、「でも」、ダインは答えた。「パワーはあったほうがいいんじゃないっすか? 強いのがいいか弱いのがいいかの二択だったら、きくまでもないでしょ」

「…そうか?」

「ええ。探偵もののドラマみたいに、どんな難問も頭脳と知識で解決するってのもカッコいいっすけど、現実問題として、そういう頭脳や知識だけじゃ襲い来るモンスターは止められませんよ。災害から人を助けられないし、守ることもできない。いまでこそ法律というものに多くの人が救われるようになりましたが、単純な暴力や災厄の前には無力だ。混乱期には七英雄に助けてもらい、現在は魔法力と力の秀でた警護組織に守られている。法というものはそんな基本的な“力”の上に成り立っているということを忘れてはなりませんよ」

「そう…だよな?」

「はい。どこの国にだって警護組織はありますし、完全にノーガードの国家なんてどこにも存在しませんよ。侵略してくれといっているようなものなんですから」

ダインがそういったところで、「だ、だよな!? 強さを求めるのは間違いじゃねぇよな!?」、シグは再び元気になり始める。

「それともう一つ」

そんな彼に、ダインはニヤリと笑いかけた。「最強ってなんかいいじゃないすか。ロマンがあるというか」

「ロマン! それだよ、それ!」

シグは突然ばっと立ち上がる。「いやー、最初から感じていたが、お前、やっぱ話せる奴だな!」

ダインの真横に移動し、ざっくばらんな様子で肩を抱いてきた。

急な接近にダインは内心身構えたが、シグの無邪気な笑顔を見て警戒心が薄れる。

「敵同士じゃなけりゃ、このまま飲みにでも行きてぇところだったんだけどなぁ!」

「いや、俺一応未成年なので…」

「でも学校は退学になったんだろ? もう学生じゃねぇじゃん」

「それはそうっすけど…っていうかガーゴの人がそれいっちゃまずいでしょ」

「細かいことはいいんだよ!」

そういってまたシグは豪快に笑う。

「なんすかそれ…」

戸惑うダインだが、彼の横顔を見て、「あ」、と何かに気付いたような声を上げた。

「そういや…今更なんすけど、治ったみたいすね」

「あん? 何のことだ?」

「怪我っすよ」

少し気まずそうにダインはいった。「ちょっと心配してたんす。割とマジで殴っちまったから…」

「…あー」

シグも奇襲戦でのことを思い出したようで、同じく気まずそうな顔になる。

「あん時は色々と興奮しちまってたからな。お前とターゲット…ティエリアっつったか? あいつと親しいなんて知らなかったんだよ」

「はぁ…」

「ま、でも確かにあん時は悪ノリが過ぎたな。少なくとも女相手に、しかも年下の奴にすることじゃなかった」

大人気なかったと素直に認めた彼は、そっぽを向けつつ、「…悪かった」、といった。

「え」

ダインは思わずシグに顔を向けてしまう。まさかガーゴのナンバーである彼が謝罪を口にするとは思ってなかったのだ。

気まずそうに、しかしどこか申し訳なさそうにする彼の横顔を見ていたダインは、「ははっ」、と突然笑い声を上げてしまう。

「確かに、あんた…いや、シグさん、か? シグさんは他の連中とは違うようっすね」

シグの全く表裏のない態度に、ダインももう警戒することは止めた。「でも頭を下げる相手は俺じゃないっすよ」

「分かってるっつの。でも俺がガーゴである以上、お前の仲間と顔を合わせるわけにはいかねぇだろ。お前…いや、ダインがいっといてくれよ」

「はいはい」

「それと、俺のことはシグでいいぞ。特別に呼び捨てを許可してやる」

「はぁ…え、なんすか急に」

「単純な話だ」

ダインの肩に回していた腕を下ろし、シグはおもむろに立ち上がる。「お前は俺より強いからな」

青々とした大空を見上げる彼の顔は、どこか清々しく見えた。「あんな一瞬で倒されちゃ、認めざるを得ねぇだろ」

「いや、たまたまっすよ。偶然俺の手が当たっただけで…」

必然ではないとダインはいおうとしたが、「へっ、もうその手は通用しねぇぞ」、シグは笑った。

「あんな強烈なパンチをもらったのは初めてだった。目が覚めて説明されても、何をされたかすら分からなかった。ノマクラスのいち生徒相手に情けねぇって陰口叩いてる奴らもいたが、周りがどういおうが、どんな先入観を持ってようが、お前は強い。初対面のときからお前に感じていた“異様さ”は俺の勘違いなんかじゃなかったんだよ」

「いや、そんなことは…」

「もうとぼけなくていいんだって」

笑っていたシグだが、「なぁ」、ダインを見下ろしたときには、その顔つきは真面目なものに変わっていた。

「教えてくれよ。その強さの秘密を」

「え?」

「魔法力の強弱でいえば、お前は落ちこぼれとされるノマクラス内でも最弱だった。セブンリンクスで最底辺のはずのお前が、何でレッドキラーと呼ばれた俺を倒せたのか。単純に力が強いだけじゃ説明つかねぇ。納得もできねぇ。だから教えてくれよ。何をしてそれほどまでの力を得られたのか。どういった原理なのか、教えてくれ」

「証拠は見たからな」、ダインがなおもはぐらかそうとしたことを予感し、シグは先制した。「お前がさっきまで軽々しく背負っていたあの袋、中身全部石だろ。軽く見ても一トンは超えてるだろあれ」

シグが指し示す先には彼の背丈よりも大きな袋があり、袋を突き破らんほどにパンパンに石が詰め込まれていたそれは、まるで巨大なオブジェのように鎮座している。確かに一トンは超えている重さだろう。

「う〜ん…」

このまま逃げても良かったが、鉄箱の中にはいまもシンシアたちがいて、七竜相手に奮闘している。しつこそうなシグだから、待ち構えるぐらいのことはやりそうだ。

説明しようかと思ったダインだが、しかし強さの秘密は何かと改めて問われると、どう説明したらいいものかと首を傾げてしまった。

彼にとっては普通の日常を送っているに過ぎなかったからだ。特別なトレーニングをしているわけでも、ましてや妙な薬を服用しているわけでもない。

三食きっちり食べて、趣味のガーデニングをして、たまに家事を手伝い、午前と午後に分けてピーちゃんたちと裏山を散歩する毎日だ。

散歩の途中で友達の“キングバグベアー”と居合わせたときには、遊びと称した力比べをするが、それ以外には何の代わり映えも無い生活を送っている。シエスタとサラの精神鍛錬はあるが、あれも筋トレじゃない。

「あー、やっぱいいや」

ダインの困惑した顔を見て、シグは笑う。「細かいこと説明されても、俺バカだからよくわかんねぇし。もっと分かりやすい方法でお前にきくよ」

「分かりやすい方法?」

「“これ”だよ」

といって、シグは力こぶを見せるような動作で右手の拳を突き上げた。

「相当古い言い方だが、男なら拳で語り合えっていうじゃん」

まさに脳筋な発想だった。「こういうことは実際にやりあうのが一番単純で理解しやすい。トレーニングの途中だったんだし、俺と付き合え、ダイン」

「え〜」

ダインはあからさまに嫌そうな声を上げる。「この炎天下の中、あんま余計な動きしたくないんすけど…」

「何もタダで付き合えといってるわけじゃねぇよ」

シグはニヤリと笑う。「俺に付き合ってくれたら、お前の知りたがっている情報を何でも一つだけ教えてやるよ」

「情報?」

「ああ。ジーニやサイラがお前を付け回していた理由とか、カインの考えていること。ガーゴが何を為そうとしているのか、とかな」

ダインはつい無言になってしまう。

ジッとシグを見上げるその表情はやや懐疑的で、どこまで本気なのか窺っているような視線だ。

「俺は曲がりなりにもナンバーの“サード”だ。ジーニやサイラなんかよりも色々と情報を持っているぞ?」

シグは続ける。「もちろん嘘はいわねぇ。回りくどい答え方なんてのも不器用だからできねぇし、聞かれたことにはちゃんと答える。男として正直にな」

「いや、でも…いいんすか?」

「何がだよ?」

「サードっていうからにはそれなりの地位にいるんすよね? 内部情報漏らすなんて何かの規則に引っかかっちまうんじゃ…」

「確かに情報漏えいは重罪だ。だが、んなもん黙ってりゃわかんねぇだろ」

何ともシグらしい、大雑把な持論だった。「俺が情報を漏らしたってお前がいわねぇ限りはな。まだ知り合ってそんなに経ってねぇが、例え敵同士でもお前はそんなつまんねぇことはしない奴だと思ってるよ」

随分と買いかぶってくれているようだ。

「まぁ、相手次第なんすけどね」

頬を掻くダインは、言葉を選びながらいった。「陰険な手段で来る奴には陰険な手段で返すし、周りから攻め込んでくるなら同じ手を使う。やられた分はきっちりお返ししないと気が済まない性分なんで」

「はは、だろうな。だから俺はストレートにお前に提案してるんだよ。拳で語り合うお礼として情報を提供する。いいだろ?」

逡巡するダインは、もう一度シグの笑顔に目を向ける。

彼の笑い方は本当に少年そのもので、見てくれは不良っぽいが、言動から屈託のなさが滲み出ているようだ。

以前、シグは強い奴が好きだといっていた。

その言葉から、彼が脳筋だなんだとバカにするジーニやサイラ、それにハイドルの気持ちも分からないでもない。統率を取りたがっていたガーゴ組織を一番かき乱しているのは、このシグであるというのは容易に想像できる。

しかしこれほどに分かりやすく、表裏のない奴は、ダインは正直にいって嫌いではなかった。

愛すべきバカ。

ふと、そんな単語が脳裏を掠める。

「いいっすよ」

思わずダインは含み笑いを漏らしてしまい、そのまま立ち上がる。

「やるからにはとことん付き合ってあげますよ」

「へへ、やっぱノリいいなお前。好きだぜ、そういうの」

「ただし、昼までには終わらせてくださいよ。この後予定があるんで」

「ああ。俺も午後からはダチと遊ぶ予定だから、一時間もかかんねぇだろ」

動きやすい場所まで移動しようぜ、といってシグはさっさと歩き出した。

ダインはオブジェと化した袋の側に手提げカバンを下ろし、そこから飲料水の入ったペットボトルを取り出してポケットに詰める。

「悪ぃ! ダイン、俺の分も頼むわ! マジ暑だわここ!!」

遠くからシグがいってくる。

「妙なのに絡まれちまったなぁ…」

ダインは呟きながら、シグの分の飲料水も手にして振り返る。

「早く来いよー!」

暴れたくてうずうずさせているシグは遠くにおり、こちらに手を振っている。

その屈託のない笑顔も何もかも、陽炎の中にいて、ゆらゆら揺れているかのようだ。

「何の拷問だよこれ…」

ダインはもう一度ため息を吐きながら、日陰もなにもない砂漠へと歩みを進めた。

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