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absorption ~ある希少種の日常~  作者: 紅林 雅樹
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百十二節、宵闇に浮かぶ一輪

これで休憩時間は三度目になるだろうか。

奇襲戦開始から九時間は過ぎているので、外はすでに真っ暗になっていた。

モンスターの出現も一時的に止んでおり、不気味なほどに静かだ。

教室で各々椅子にかけていた生徒たちは支給された携帯食を食べており、身体を休めている。

激戦に次ぐ激戦で、彼らの体力は底を尽きかけている。皆ぐったりとした様子で、疲れの余り談笑の声も少ない。

そんな静まり返った教室を背に、廊下に出ていたディエルは携帯を耳に当てていた。

「━━ええ、いまのところは何とかなってる」

携帯に向けてそう声をかける。

『結局あのレギオスの残滓は何だったんだ?』

その携帯から聞こえる声はダインのものだ。

廊下の人影が少ないことを確認し、ディエルは答える。「使ってる召喚石がラビリンスと同じ仕様のものだったらしく、前のバグ祭りのときのまま修正してなかったから出てきたらしいわ」

クラフトの説明をそのままダインに伝えると、『本当か?』、案の定訝しげな返答があった。

「怪しいところだけどね。いまも少ないけど定期的に湧いてるようだし」

『直してないのか』

「修正効かないらしいわ。まぁでもこれも訓練の一環だということで、そのまま続行してる」

『そうか』というダインの声に、「そっちは?」、ディエルは討伐の進捗具合をきいた。

「アブリシアは早くに討伐できたんでしょ? 二体目もとっくに終わってると思ってたんだけど…」

『いや、それがエティン大陸に着いたはいいんだけどさ、封印地までの道のりが複雑で迷っちまってるようなんだ』

「は?」

ディエルは意外そうな声を上げた。「討伐隊って割と大所帯でしょ? 迷うことなんてあるの?」

『ここって神秘の大陸っていわれてるだけあって立ち入り禁止エリアが多くてな、基本森しかないから方角が分からなくなるんだと』

すぐに戻ってこれないと分かり、ディエルは「はぁ〜」、と残念そうなため息を吐いてしまう。

「つまんないわねぇ。あなたがいないと盛り上がらないじゃない」

教室が静まり返ってるわよ、とディエルが続けたところで、ダインから『あー』と声が上がる。

『あれから結構経つけど、あいつまだ調子が上がらない感じか?』

ダインはいまもシンシアのことを気にかけていた。討伐の召集がかかり「私は大丈夫だから」、とダインを送り出したシンシアの表情が脳裏を離れなかったのだろう。

「まぁ、良くはないわね」

廊下からシンシアの様子を窺いつつ、ディエルはいった。「頑張ろうとしてる感じは伝わるんだけど、空回りしてるっていうか」

ご飯を食べるシンシアは何度もため息を吐いており、心配そうに話しかけてくるニーニアに謝っている。

とそこでニーニアがディエルの視線に気付き、とことこと近づいてきた。

「ニーニアが来たわ。代わる?」

ディエルが尋ねると、『ああ』、ダインの返事を聞いてから、ニーニアに携帯を差し出した。

「ダインよ」

「あ、うん」

ニーニアはすぐさま携帯を受け取って耳に当てる。

「ダイン君、私だけど…まだ戻ってこれそうにないの?」

ニーニアはダインの帰還を心待ちにしていたようだ。

しかしすぐにその表情は暗くなっていく。もうしばらくかかりそうだといわれたのだろう。

「うん、無理はしないしさせないよ。任せて」

そういった後、彼女はまたすぐに笑顔を浮かべた。ダインから応援でもされたのだろう。

「うん、代わるね」

はい、とニーニアはディエルに携帯を返してくる。

「シンシアとも話す?」

ディエルが提案すると、『話せそうな感じか?』、ダインは遠慮がちにきいてきた。

「話すぐらいなら大丈夫でしょ」

とディエルが話しているところで、気を利かせたニーニアがシンシアを呼んできてくれる。

「え、な、何?」

戸惑うシンシアに、ディエルが携帯を差し出す。「ダインからよ」

「あ…は、はい…」

シンシアはやや緊張した面持ちでダインと通話を始めた。

開口一番、「ごめんなさい」、とダインに謝りだす。だがすぐに携帯の向こうからダインの笑い声がした。

それから何事かシンシアに伝え始め、シンシアは神妙な面持ちで彼の声を聞いている。

盗み聞きはどうかと思ったディエルとニーニアは、シンシアを廊下に残したまま教室に戻って椅子にかけた。

「ダイン君がいれば、もっと上手にシンシアちゃんを慰められるのになぁ」

お茶を飲んでから、ニーニアは笑った。

「なに、ダインってそういうの得意なの?」

意外そうにディエルがきくと、彼女は笑顔のまま頷く。

「落ち込んだときにはね、いつも頭を撫でてくれたり、抱きしめたりしてくれてたんだよ」

過去ダインに慰めてもらったシチュエーションを話すニーニアは、当時の様子を思い出したのか顔が赤い。

話を聞くうちにディエルの顔も赤くなっていき、「へ、へぇ〜」、と感嘆の声を出してしまった。

「私もやってもらおうかしら…」、と、ぽつり。

「え」、ビックリした顔になるニーニアに、「私も混ぜてもらうことにしたんだもの」、ディエルは小声ながらいった。

「あなたたちより出遅れちゃったからね。少しでもそういうイベントを回収して同じ位置に立ちたいもの」

何の話をしているのか、理解できたニーニアは嬉しそうに笑う。

「ディエルちゃんも私たちの同盟に入っちゃったね」、そういった。

「同盟?」

ディエルが尋ね、ニーニアが答えようとしたときだった。

教室内にあるスピーカーから耳障りなサイレンが鳴り出す。

同時にライトが照らされた校舎外からモンスターが湧き出てきたのが見えた。

「もう休憩終わりか」

やれやれとディエルが立ち上がった瞬間、

「行こう!」

教室に戻ってきたシンシアが、ディエルに携帯を返しつついった。「頑張るよ!」

その表情は先ほどとは打って変わって元気一杯だ。

「どうしたの? ダインに何か特別なことでもいわれた?」

「ううん、でもダイン君の声聞いてたら、何だか元気が湧いてきて…」

そう話す彼女は、確かに以前の元気はつらつとしたシンシアだ。

「頑張ったらご褒美くれるって!」

「何それ…単純ねぇ」

思わずディエルはいってしまい、「ふふ、良かった」、ニーニアは嬉しそうだ。

そして彼女たちは表情を引き締め、身支度もそこそこに教室を出て行った。



九時間以上にも及ぶ戦闘は、休憩を挟んではいるものの生徒たちの体力を確実に奪いにきていた。

魔法力の枯渇も著しく、一部では防衛を突破されてモンスターが校舎内まで侵入されている箇所もある。

シンシアとニーニアはそういった侵入者の対処のため、校舎の防衛に回ることにした。

余力のあったディエルは外に出て、“壁”の薄そうな防衛部隊のサポートに回る。

湧いてくるモンスターの数は、奇襲戦開始のときから減っていく様子はなかった。

校舎の四方はモンスターに囲まれたままで、夜ではあるのだが、それ以上に外の景色は真っ暗で何も見えない。

それどころか黒い壁が徐々に狭まってきているようだ。

「殲滅部隊は何してんだよ!!」

明らかな生徒側の劣勢に、敵の猛攻を食い止めながら男子生徒の一人が叫ぶ。「どんだけ倒しても湧いてくるじゃん!」

「ブモオオオォォォ!!!」

嘆く彼の側面からイノシシ型のモンスターが突進を始めていた。

「げっ!」

ぎょっとして身構えた瞬間、その敵の側面にどこからか風球が飛んできて、そのままぶつかり吹き飛んでいく。

「嘆くのはいいけど周りをちゃんと見て」

彼の側に降り立ったのはディエルだ。

「あ、ああ、悪い…サンキューな」

ディエルとは顔見知りだった彼は、再び集中して敵の侵攻を塞ぐ壁を作る。

「でも確かにおかしいわよね」

敵の侵入はないか見回しながら、ディエルはいった。「校舎外の森に設置された召喚石って全部で十個ほどでしょ? 破壊されたらその都度放送されるはずなのに、それがない」

何も進展がないことに、彼女は疑問に思っていた。

数日間にわたって繰り広げられるらしい奇襲戦だが、誰しもが早く終わらせたいと思っているはず。探索と殲滅部隊を任されたメガクラスとギガクラスは、その期待と威信にかけて血眼になって召喚石の探索を続けているはずなのに、九時間も経っていて一つも破壊されてないというのはどういうことだろう。

当たり前な話だが、召喚石が減ればモンスターも減る。猛攻を食い止めているだけでは、この奇襲戦は終わらない。

「ちょっと見てくるわね。後は任せたわ」

男子学生にいい、ディエルは地面を蹴って空を飛んだ。

「ギャアアアァァァァ!!」

早速上空からもモンスターが襲い掛かってきたが、火の魔法で瞬時に焼き払っていく。

その“穴”から下界の森を見渡す。

「さてどこに…」

と、真っ暗闇な森の中、ぼんやりと明かりが点っていたところがあるのを見つけた。

探索部隊だ。道中でモンスターと遭遇したのか、戦闘を始めている。

さすがメガクラスといったところか、奇襲をかけられても難なくいなしている…が、そんな彼らの元に異様な気配を放つモンスターの集団が近づいているのが見えた。

「あれは…」

レギオスの残滓だと気付いた瞬間、ディエルは再び襲い掛かってきたモンスターを弾き飛ばしながら彼らのところへ降下していく。


「くそっ! またかよ!」

瞬く間にレギオスの残滓に囲まれ、逃げ場がなくなったところで男子生徒が叫んだ。「ちょっと湧きすぎじゃね!?」

探索に出るたびに残滓が立ちはだかる。その遭遇率の高さに、彼は嘆くしかなかった。

「外にいんの全部こいつらなんじゃ…」

「いいから足止めして!!」

周囲の仲間が一斉に敵に向けて攻撃魔法を放つ。

爆炎に包まれるモンスターだが、敵はよろめきもせず悲鳴すら上げない。

まったく効いている素振りはなく、そのまま飛び掛ってきた。

「グルアァッ!!」

「ちっ!!」

数人の男子たちがすぐさまバリアを展開する。

並みのモンスターなら触れることすら適わないはずだったが、漆黒の敵はいとも簡単にバリアを破壊した。

「なっ…!?」

「ガルアアァァッ!!!」

人型のモンスターが持っていた棍棒を振り下ろしてくる。

生徒たちがぐっと身構えたとき、

「はあああぁぁッ!!」

空からやってきたディエルがモンスターを思い切り殴り飛ばした。

ガッという音がして、顔面が破壊されたモンスターはそのまま消滅する。

ディエルは着地したと同時に探索部隊の周囲に炎の円を作り、視界を明るくさせた。

「怪我はない!?」

「あ、ああ、どうにか…」

「あいつ等には魔法が効かないんだから、魔法に頼らない戦い方を…」

アドバイスしようとしたとき、

「ディエル!」

すぐ側から彼女を呼ぶ声がした。

ディエルはその声の主を確認し、「え、セレス先輩?」、驚いた表情を浮かべた。

「探索部隊の中にいたんですね」

「うん、そうなんだよ」

フェアリ族の彼女は、ホッとしたようにディエルの前に回りこむ。

「探索は奇襲戦の中じゃ花形だから、やりがいあるなーって思ってたんだけど、意外と大変で…」

元気良くしゃべる彼女の後ろで闇が蠢いた。

ディエルは瞬時に移動し、敵の腹部に風の魔法を込めた一撃を叩き込む。

「アアァ…」

鎧型のモンスターは全身に亀裂が生じ、そのままボロボロと崩れていった。

しかし安心したのも束の間、周囲からまたわらわらとレギオスの残滓が湧き出してくる。

「…なるほど、これが障害になってるってわけ」

奇襲戦が進まない原因を特定したディエルは、全身に風を纏わせた。

自身がまさしく風になったような身のこなしで、モンスターの一団に圧縮した空気と炎の塊を多数設置する。

離れた瞬間に爆発が巻き起こり、その爆風によってモンスターは全て弾き飛ばされていった。

「わぁ、さすがだね!」

視界が開け、セレスは笑顔で手を叩く。

「物理寄りの攻撃なら効果がありますよ」

呆気に取られる彼らに向け、ディエルはいった。「まぁこっちの方が体力の消耗は激しいですが…」

ディエルの肩は大きく上下している。何時間も全速力で動いていれば、いくら彼女でも体力的に限界がきていた。

九時間以上の戦闘で疲労も隠しきれず、呼吸を整える彼女を見ながら、「そういうことなら」、とセレスがいった。

「私がサポートするよ」

と、彼女は戦闘の最中なのに軽快なリズムで歌いだす。

しかしそれは別に彼女がふざけているわけではない。

フェアリ族の歌声は、聴く者の潜在能力を高める不思議な力がある。

その効果量こそフェアリ族それぞれだが、セレスの歌声の力は特に顕著に現れていた。

モンスターを相手取るディエルの動きは段違いに素早くなり、レギオスの残滓であろうとまさに翻弄する勢いで薙ぎ倒していく。

「ふっ…!!」

斬撃をかわし、敵を蹴り上げてから後ろに控えていたクマ型の顔面を拳で殴りつける。

「っせい!!」

仰け反った腹部に数発の打撃を浴びせ、左右から襲い掛かってきたモンスターには回し蹴りを放った。

ディエルを中心に、群がろうとしていたモンスターが全て弾かれていく。

散り散りになった彼らは天高く舞い上がったり木や地面に全身を打ちつけたりと、全て数秒間の出来事だった。

ディエルの攻撃によって傷つけられた箇所が突然凍りだし、それは全身に広がっていく。

攻撃した際に氷の魔法を仕込んでいたようで、完全に凍って動けなくなった彼らに、ディエルは最後に爆発魔法を放った。

集められた火気が一気に膨張し、衝撃波と共に半円状の巨大な爆発が巻き起こる。

大気が揺れ草木は吹き飛び、煙が晴れたときには、何十体もいた残滓たちは跡形もなく消え失せていた。

「す…すげぇ…」

ディエルの戦いっぷりを見ていた男子学生が呟く。「属性魔法をあんなに簡単に使い分けるなんて…」

「ディエルは強いから」

友達であるセレスは自慢げだ。「お疲れ、ディエル!」

戻ってきたディエルを労うも、やはり彼女の呼吸は乱れている。

「あー、大丈夫?」

汗を流し何度も肩を上下させている。セレスのサポートで攻撃力が増したが、体力が増幅したわけではないので当然だろう。

「ふぅ…とりあえず探索を続けましょう。私も着いていきますから」

このままではいつまで経っても奇襲戦が終わらない。

ディエルの提案に頷いた彼らは、再び探索を始める。

が、森の中を進むたびにモンスターの群れが立ちはだかってきた。

セレスの歌声のおかげでどうにか切り抜けられていたものの、その量は防衛時の比ではない。

探索部隊を守りながら戦うのは厳しい上に、湧き出るモンスターの中にはレギオスの残滓も混ざっている。

「はぁ、はぁ…あー…もう…なんなのよ、これ…」

体力の消耗が激しく、ディエルの動きはどんどん鈍くなっていく。

「い、一旦校舎に戻らない?」

見かねて女生徒の一人がいった。「このままじゃジリ貧になるような気がするんだけど…」

激戦が相次いだおかげで回復アイテムの残量も心もとないし、彼らも疲労困憊だ。

とりあえず補給だけでもしようとリーダーが判断し、校舎へ方向転換したときだった。

突然、前方の地面からめきめきと音がし始める。

何が起きたと身構えた瞬間、前方の地面が割れ、巨大な何かが突き出てきた。

「…な…」

探索部隊は全員が見上げたまま固まっている。驚愕に染まった彼らの瞳には、月夜に反射された大きなモンスターの顔が映っていた。

真っ黒な素肌からしてレギオスの残滓だというのが分かる。まるでミノタウロスのような姿形をしているが、その大きさは山にしか見えない。

突然ラスボスが目の前に現れたような状況に、探索部隊は口を開けたまま動けない。

「…ちょっと…でかいの出てきちゃったじゃない…」

ディエルは誰にいうこともなく愚痴った。「どうなってんのよほんとに…」

しかしいくら嘆いたところで、状況が良くなるはずはない。

「フシュルルルルルル!!!」

噴火したような鼻息を漏らした後、敵は手に持っていた巨大な斧を振りかぶってきた。

「ちょ…れ、レノン! バリア!! 早くッ!!」

女子生徒の指示に、「い、いや、防げないだろ!!」、レノンと呼ばれた男子生徒は狼狽していった。

「あんなのどう動いたって直撃だから、早く!!」

振りかぶったモンスターの筋肉が盛り上がる。力を溜めているようだ。

「レノンッ!!」

「く…!!」

レノンは大慌てで防御バリアを展開した。

バリアを張れる他の生徒も次々と詠唱をはじめ、壁の構造を複雑化させていく。

セレスも歌声を響かせバリアの強度を上げ、さらにその内側にディエルも氷で壁を作った。

鉄壁に近い防御壁だった。

だが、それでも振り下ろされた戦斧にはまるで効果がなかったようだ。

バリアが切り裂かれ、簡単に氷を砕いて、それはディエルたちのすぐ目の前の地面に打ち立てられる。

(ドガッ!!)

「うわっ!」

あまりの衝撃で地面が揺れ、その震動でディエル含む探索部隊はバランスを崩してしまった。

「グオオオオオォォォォッ!!」

隙が出来たと見たのか、敵はすぐさま斧を握りなおし、横に構えて薙ごうとする。

巨体なのにその動きは素早く、気付いたときにはもう攻撃が始まっていた。

集団の側面にある木がバキバキと薙ぎ倒され、地面を抉りながら巨大な斧が迫ってくる。

「や、やば…!!」

疲れきっていたディエルは咄嗟の判断が遅れ、身を固めるしかなかった。

轟音と共に斧がすぐ目の前までやってきて、鋭い刃がディエルたちの横腹を捉えようとした瞬間━━

ピタリと、寸でのところで斧の動きが止まった。

「…?」

いつまで経っても衝撃を感じず、ディエルたちは恐る恐る目を開けてみる。斧は静止したままだ。

「グ…グゴ…ゴ…」

頭上からモンスターのくぐもったような声が聞こえ、辺りがやたらに明るい。

「え…?」

見上げると、敵の喉下には一本の巨大な光の矢が突き刺さっていた。

敵はぶるぶると震えたまま、やがて巨体がふらりと揺れ、そのまま仰向けに倒れる。

ズシンという震動を最後に、モンスターは完全に活動を停止させた。

「え…だ、誰がやったの…?」

蒸発していくモンスターを見ながら、困惑する探索部隊は周囲を見回す。

そんなディエルの元に、一人の女子生徒が近づいていた。

「━━ディエル、残念だったわね」

その声に振り向いたディエルは、思わず「げ」と声を出してしまう。

「時間切れよ」

ブロンドの長い髪をした、背中に翼を生やした“生徒会長”はいう。

「あなたの活躍はここまで。ここからは私に任せなさい」

そこに立っていたのはラフィンだった。

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