表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/420

95 村人の妹、数少ない恩人と話す。

 

「母さん……」


「ヘイスト……アタシゃ目は見え無いけどねぇ、魔力を肌で感じるチカラが有るんだよ」


「そうだね。 そのチカラに導かれて出た旅が、父さんと出会うキッカケに成ったんだろう?」


「ええ、そうだよ」




 一般的には大火事とされている、今回の警鐘。 この街は地下水は抱負だが、地表に川は無い。 街人は数少ない雨水を貯めた貯水地へと集まって来ていた。




「この火事……唯の火事じゃあ無いね?」


「…………」


「アンタとキュアさんからも……似た匂いがするよ」


「母さん……」


「行っておくれ。 領主館の皆を助けてあげるんだよ。

……たぶん、ソレが一番キュアさんの助けになる」




 見えぬ筈の目で、しかとヘイストを捉えるヘイストの母。




「行け、ヘイスト」


「ジギン」


「キュアの兄さんの怪我にゃあ、俺にも責任が有る。

グサビキは捕らえた。 テメェの不始末はテメェで着ける。

お前の母ちゃんは任せろ」


「…………。

分かったよ、母さん」


「出来れば、そのまま掴まえておくんだよ」


「母さん! ……ったく、行ってくるよ」



◆◆◆



「一班、配置完了。 二班、配置完了。 三班、配置完了。

地域住民、避難完了───」


「射て!」




 【 炎の化物 】を取り囲んだ討伐隊が、一斉に矢を射つ。


 矢に風魔法に纏わせ、速度を上げたり、激しく回転させたり。 通常の魔物ならば原型を残さぬ程の、矢の雨あられ。

 ……しかし。




「コ"あ"ア"あ"あ"ァ"あ"ア"ア"あ"っ!」


「ぐあっ!?」




 魔物の腕の一振りが放つ炎の乱気流が、矢のほぼ全てを途中で失速させ巻き上げる。 僅かに届いた矢も、体表で燃え尽きた。

 更に、乱気流を巻き起こす熱波は討伐隊の一部を呑み込む。 直接炎を喰らっていないというのに、酷い火傷である。




「隊長!」


「───水魔法使いを呼べ」


「しかし、彼等は街の消火を……」


「火元が歩いて、更に火災を振り撒いているんだぞ!?

奴を先になんとかしないと、被害が拡大する一方だ!」


「わっ、分かりました」




 討伐隊隊長の判断により、水魔法使いが呼び寄せられるも。




「こ……こんな距離から魔法を放てと!?」


「奴の熱波の範囲は尋常じゃない!」


「矢に纏わせて飛ばす、風魔法と一緒にしないで頂きたい!

水が、どんなに重たい物質か知らないのか!?」


「街が襲われているんだぞ!?」


「だから消火に回っていたんだろうが!」


「良いから水を奴に向けて放───」




「こ"ち"ゃ こ"ち"ゃ ウ"ル"セ"ェ"!」


「がっ……」




 指向性を持った熱波が、喚く隊長を直撃。 彼の体表から肺の内部まで……その全てを焼き尽くした。




「こ、こんな距離でも届くのか……。

しかも、私の水幕を貫いて熱が……!?

こんな化物をどうやって───」



◆◆◆



「討伐隊の攻撃、届きません!」


「なんと───」




 領主館の執事コリアンダーの下へ届く、数々の凶報。 有り得ぬ強さの魔物だ。

 と、ソコへ……ややうだつの上がらない討伐隊の男が、コリアンダーの前へと出てくる。




「こ、コリアンダー様に話が……!」


「貴様っ!? 平のクセに、御貴族様に向かって……」


「良い。 今はどんな小さな情報でも欲しい。

何か?」




 化物出現にあたり……街の討伐隊だけでは足りないと判断されて、近隣中から集められた各地の村々を守る討伐隊達。

 そのウチの、一隊を纏める隊長である。 とかく、街の討伐隊は……彼等を田舎者と見下す傾向に有る。


 然れど街中にまで魔物が侵入するケースなど殆んど無く……実戦経験は、進言した隊長の方が遥かに上なのだ。




「や、奴は街の破壊より……何処かに進む方を優先させてるらしいんでさ」


「現に街に、とんでもない被害が出ているだろうが!」


「しかし、俯瞰して見れば破壊跡は一本道で───」


「偶々だ、化物にそんな知能が……」




 田舎隊長の言を、纏めて否定する街の討伐隊。 田舎隊長が諦めてクチを閉ざそうとすると。




「あら、シナモンさん!?」


「く、クリティカルちゃん?」


「知り合いか、クリティカル」


「はい、コリアンダー様。

【アジルー村】も担当される方で、実戦経験は確かです。 ソレ等からくる知識は確かな物で、幾つもの村を救っていますわ」


「なっ……」




 キュアが、【アジルー村】の命令で魔物の群や盗賊のアジトへ突っ込まされた時に……色々と世話をした者である。


 魔ナシ差別をせず、様々な知識をキュアに惜し気もなく与えた男であり……今のキュアの強さのみなもとと言っても良い。




「こ、コリアンダー様……田舎者が辺境の魔物相手に得た知識など───」


「シナモンとやら、化物の進路予想図は有るか?」


「コリアンダー様!」


「へ、へぇ……アッチへ向かっているようでさ」


「彼方で魔物が喜ぶ物など無いぞ」


「だから、田舎者など……」


「いいえ、コリアンダー様。

もし化物が 『 奴 』 なら……あの先は」


「……?

───っ、【アジルー村】の村人を収監している施設か……!」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ