93 村人の妹、警鐘の音を聞く。
「オードリーさん達ですか~?
ヘップ様の所ですよ~。
何時戻ってくるか……は、正直分かりませんね~。
それこそ、数日単位で」
「そ、そうか」
ひょっとしたら、オードリー達の兄弟ヘップのミスで……この国は戦争に成っていたのかもしれない。
( ちなみに【ドラゴンハーツ】における一国の大きさは、日本の一県に近い。 戦国時代のイメージか。)
その尻拭いを、オードリー達私設兵団とキュアがしたのだ。
経緯と結果、そしてソレがもたらす未来はタップリと調べたい所だろう。
「たぶん~待ってても帰ってこないんで~、別の冒険に出た方が宜しいかと~」
「わ、分かった。
じゃあ指輪を見せてくれ」
「ソコは 『 君の全てを見せてくれ 』 と言う所ですね~」
「そ、そう言うのは良いから」
照れるキュア。 潜在的にはマメなタラシ男であろうと……魔ナシであるキュアには、異性へマトモに近付た経験など無いのだ。
「うーん……」
「欲しい指輪が無ければ~今日は諦める手も有りますよ~?
結構入れ替わりが激しいですからね~。
今日ムリして買って~明日もっと欲しい指輪が入荷したのに、お金が無い……なんて成ったら───」
「一理あるな……仕方ない。
今日はコスナーさんの魔法屋にでも行くか……。
【 鎮火の剣 】も、もうすぐにでもスキルがスキルボードに出る筈だし……道中の魔物か野盗でも狩るか」
◆◆◆
「クリティカル、食事だ。
君とキュアの分」
「有難う、ヘイスト」
現実世界。
キュアが現実で【 ヒーリング 】を使い、医者に見せてから4日経っていた。 未だ目覚めぬキュアの介護をするクリティカルとヘイスト。
「【仮想現実装置】か……教会の事も有るし、確かに平民の手に余る魔道具だな」
「ええ……」
「何時何時かは領主様にお渡しした方が良いだろう。
もちろん、自分からは領主様に【仮想現実装置】の存在は明かさない。
キュアやクリティカルに任す」
「有難───」
───カーン、カーン、カーン……
「あら? へ、ヘイスト……まさかこの鐘の音って」
「あ、ああ。 警鐘だ。
しかも 『 街からの避難 』 ……この街に15年住んで、聞いたのは二回目だぞ!?」
一回目はヘイストが8歳の時、街の2割が焼失する程の大火災の時である。
そのレベルの危険でなければ鳴らない鐘。 それが今、鳴っている。
「クリティカル、済まないが自分は盲目の母さんを避難させなければ……キュアの怪我はどうだ!?」
「出血は完全に止まったわ。
でも……先に内臓を治しているみたいで、骨折とかは後回しにされているの!」
「生命維持を考えれば、詮方無いが───一体、何が起きているんだ……」