86 村人、のじゃロリと会う。
「恥はかいたし、無一文だし……もう行く」
「ああっ、そんな~!
ヤルだけヤッて帰る男みたいですよぉ~!?」
「意味が分からん!」
キュアとしては、金も無い事だし……苦手なホタテからも逃げたかったのだ。
呆れ顔にすらなる。
「もう~、冗談ですって~。
オードリーさんに御用なら、どんなに早く帰ってきても深夜になるハズです~。 なので明日来てくれると助かります~」
「分かった。
しかし明日か・・宿代がな」
「ではこの鍵をどうそ~」
「?
何の鍵だ?」
「私の部屋の鍵ですよ~」
「なっ!?」
「ああ、安心して下さい~。
変な意味ですから~」
「オードリー! 助けてくれ!」
女性経験の無いキュアにはイッパイイッパイである。 うっすら泣いているように見えるのは気のせいだろうか?
「序でに明日までの暇潰しで、このチケットもどうぞ~」
「ち、チケット?」
警戒しきりのキュア。
爆弾でも受け取るかの如く、ホタテから差し出されたチケットを手に取る。 今、「 ドーンッ! 」 とかやったら本気で飛び上がりそうだ。
「マップボードを失礼~、サラサラサラ~っと。
此方のお店が、異国の商品を売っている店だそうで~」
「異国?」
「滅多に開いていないそうで、私も内容は知らないんです~」
「そうか」
マップボードには、【 異海探険 】とあった。 まあ流石に、マップボードにドッキリは出来まい。
キュアはホタテと ( 内心ホッとしながら ) 別れる。
◆◆◆
「ココか……」
キュアはマップボードに記された【 異海探険 】なる店に辿りつく。 真っ黒な木板で建てられた、不気味な店である。
店のドアノブに、キュアが手を触れると───
≪インターネットに繋がっていません。
ダウンロードコンテンツで───≫
「ん? いんたー……どっかで聞いたな?」
今一つ思いだせないキュアだが……この建物の扉が開かないという事は、ホタテの言う 「 滅多に開いてない 」 という言葉通り、今も開いていないのだろう。
「仕方無い。 帰るか───」
キュアがドアノブから手を離そうとした時……一瞬、全てが歪んだ。
地震だとか、そういった自然現象などでは無い───文字通りの、歪み。
景色の形が歪み。
景色の色が歪み。
掴んだドアノブが歪み。
町の喧騒が歪み。
世界の全てが……一瞬、歪んだ。
「なっ……なん…………!?
───むっ!?」
永遠にも思われた一瞬の歪みが収まると、閉まっていたハズの【 異海探険 】の扉が開く。
「───い、イベント……なのか?」
キュアは、自分で自分の言葉が 『 間違っている 』 と感じた……が、現状を無視するのも後悔しそうだ。
生唾をのみつつ……恐る恐る、店の中へと入ってゆく。
「いらっしゃいなのじゃ」
「ど、どうも」
カウンターに座っていたのは、4~5歳ほどの幼女。 店主の子か孫か。
大人の見様見真似のつもりか……ソレにしては、堂に入ったものである。
「ホントは、越権行為なんじゃがのう……御主に儂のペットが多大な迷惑をかけたんでな。
まあ、ちょいとズルをしたのじゃ」
「ぺ、ペット……?
何の事だ?」
「御主は直接は見とらんかものう。
はあ、アレでもメスなんじゃが……ソレに引きかえ、ソッチの妹。
ありゃあ、良い娘じゃなあ」
「( 妹……オードリーの事か? 彼女の兄の、バーンと間違えられているのか?)
あ、あの───」
キュアが幼女の間違いを訂正しようとクチを開こうとするも、先んじてキュアを制止する幼女。
「 何も言うな 」、という事らしい。
「本当は課金せねば、ロックは外れんのじゃが……ホレ。
この店の商品を、全てタダでくれてやるのじゃ」
「はあっ!?
いや……ソレは悪いし、金は払───あ、今無一文だった……」
「良いのじゃ。
どちらにしろ此処に必要な金は、特殊な金なんでな。 御主には入手不可能なんじゃよ」
「はあ……」
キュアは、今、自分が立っているのか座っているのか……【ドラゴンハーツ】の中なのか、現実なのか……どんどんアヤフヤとなる。
知らぬ間に、差し出された道具の全てを受け取っていた。
「───あの鳥はなあ……。
己が神の鳥である事を誇っとるが……儂は神でも何でも無い、ただの調律師なんじゃがのう……」
「……神?」
「創造者の戯れ言じゃよ」
「はあ」
「そろそろ、越権行為の返しが来るの。
もう二度とこの店には入れん。
その商品は、捨てたり売らん方が良いのじゃ」
「わ、分かった」
「さらば───ああ、最後にもう一つだけ。
今回の儂のペットの暴走は、御主の妹にも迷惑をかける。
詫び……に成るか分からんが、今度此方に来たならば此方の魔法をソチラに合わせて進ぜよう」
「はあ」
さっきから、殆んど 「 はあ 」 としか言っていないキュア。
オードリーを肉弾戦から魔法戦タイプにしてやろう……とか、そんな話をしているのかな? と、ぼうっとした頭で考えていた。
「ではな。
出来れば、もう会う事がなければ良いがの」
「はあ」
【 異海探険 】を出たキュア。 ドアノブを引くが……二度とその扉は開かなかった。 知らぬ間にチケットも消滅している。
……ちなみに。
キュアはホタテの鍵は使わずに【 城下町 】の外で野宿した。
ホタテとの結婚方法。
①オードリー生存→キュアが取らなかった選択肢を選ぶ。
②オードリー死亡→私設兵団が大規模反乱を起こすイベントが発生。
私設兵団側を勝利に導くと、ホタテからプロポーズされる。