84 村人、浮気する。
「───ちょっとだけ……ちょっとだけだ」
「何がだ?
ほら、【 水の杖 】の魔法名は【 ウォーターボール 】だ」
キュアは、オードリー兄妹の居る【 城下町 】…………ではなく、ケビンの祖父コスナーの魔法屋がある村へと来ていた。
金が入ったキュアは、ついつい【ドラゴンハーツ】を始めるキッカケに成った 『 杖魔法 』 から手を出したのだ。
浮気者、キュア。
「───理由は……有る…… 『 炎 』 を消すには、『 水 』 だから───」
「だから、さっきから何がだ?」
「……ん? さあな。
俺の中の残った部分に従った、とでも言うか……自分でも良く分からん」
「はあ? ……まあ、金さえ払ってくれるんなら儂は何でも良いがね。
で、どうする。 買うのは【 水 】だけかね」
「うーん……」
本音を言えば、有り金をはたいて杖魔法の名前を買いまくりたい。
が、指輪も買うと決めたのだ。
散財は出来ない。
「……だから、あと三本だけ買おう」
「兄ちゃんの、そーゆーとこキライじゃ無いがね」
今、キュアが持つ魔法の杖は───
○初心者の杖( ファイヤーボール )
○鍛冶師の杖( メイクハンマー )
○強酸の杖( アシッド )
・敵視の杖( エネミービジョン )
・水の杖( ウォーターボール )
・霧の杖
・風盾の杖
・強化の杖
・拡散の杖
・倍加の杖
・衰弱の杖
・箱の杖
・操獣の杖( 幹部ハムスター所持 )
───である。
( ○は、スキルを獲得した魔法。)
風盾の杖は敵が使うシーンを見たので、イメージ出来るが……ソレ以外。
道具屋で買ったり、宝箱から手に入れたり、敵が魔法を使う前に倒して手に入れたり。
ほぼほぼ、正体不明なのだ。
「【 霧 】は多分、霧を出す魔法……隠蔽攪乱用かな。
【 隠れて攻撃すると追加ダメージ 】【 しゃがむと隠蔽力UP 】と、相性は良さげでは有るんだが」
キュアが気になっているのは【 拡散 】【 箱 】【 強化 】である。
【 拡散 】はキュアの知らない単語だから。 【 箱 】は好奇心。 ……箱が出てくる魔法なのか? 気になる。
【 強化 】は。
「何を強化するのかは分からんが、『 俺の何か 』 だよな。
───俺は、強くならなきゃならん。
ならなきゃ…………」
「ん? また兄ちゃんの残りかい?」
「…………決めた。
【 強化の杖 】の魔法名を買いたい」
取敢ず、好奇心は横に置いたらしいキュアはコスナーに【 強化 】用の金を払う。
「まいど。
【 強化 】の魔法名は【 ヘイスト 】だよ」
「へっ、【 ヘイスト 】だと!?」
「なんだね……その反応はまた、知り合いの名前か?
子に、強化なんて名前を付けるかね」
「あ、ああ……。
ヘイストは同僚で、守らねば───ん?
……守る、守る?
いや、守れなかった……偶々 『 敵 』 が逃げだして───」
「兄ちゃん!」
「はっ!?
あ、ああ……済まない。
自分でも、上手く思いだせないんだ」
「そうかね、まあ無理だけはすんな。
アンタは孫の恩人なんだ」
「そうするよ。
ヘイスト……お互い守ると約束したんだ。
君も守ってくれ。
───後は【 霧 】と……そうだな、【 拡散 】を頼む」
「霧は【 フォッグ 】、拡散は【 ワイド 】だよ。
……今度は知り合いの名前じゃ無いかい?」
「ああ」
しかし何処かには居るのかな、と不安になるキュア。
「 しかし【 ワイド 】か……名前からは全く想像出来ないんだが……」
「『 他の 』 魔法名の前に唱えると、威力は弱くなるが、効果範囲が広がるんだ」
「効果範囲が……」
「まあ村の外で試してみな。
序でに、【 フォッグ 】は兄ちゃんの予想通りだ。
【 ヘイスト 】は、迅速っつう意味で早く動けるぞ」
「なるほどな、早速試すよ」
「おう。
また、杖と金を持ってこい」
◆◆◆
【 コスナーの村 】の外。
誰も居ない荒野。
「まず【 拡散の杖 】を装備してと。
【 ワイド・ファイヤーボール 】!
……うをっ!?」
杖の先に灯った火球は、普段より大きく膨れたかと思うと……火球が5つに分裂。 扇状に広がって飛んでいった。
「ふむ。 分裂した火球は普段のより小さかったが……気持ち程度 ( 70%程 ) で、対多戦には充分だな」
序でに【 ウォーターボール 】は【 ファイヤーボール 】の水球版。 威力もほぼ同じっぽい。
【 フォッグ 】は、前方に3m程の霧が出現。 予想より小さいが愚鈍な敵には効きそうだ。 【 ワイド 】と併用すれば、倍の6mほど。
( 【 スイッチ 】で杖を変更させている。)
そして【 ヘイスト 】は……。
「……うーん。 早くなった気はするが……自分だけじゃ良く分からんなあ」
客観視の出来ないキュアは、微妙な魔法だったかな……と思いながら各魔法実験を終える。
……しかし。
この時、遠くにいた人間は極小規模の竜巻の如き 『 何か 』 を見た。
少くとも人の動きでは無かった───が……そんな事は知るはずも無いキュアは、オードリー兄妹が居る【 城下町 】を目指す。




