83 村人…………旅立つ。
───何故こ……な傷……生きて───
「( ん……何だ? ウルサイな…… )」
───兄さ……死な……いで───
「( クリ……ティカル…………? )」
───済まな……自分……所為───
「( ……ヘイスト? 何だ……くっ、頭が痛い………… )」
───兄さ……帰って……き……て───
「( …………。 ……ああ、帰るさ。
俺がクリティカルを置き去りにして、遠くへ行くなんて有り得ないんだ )」
───ユーザ……キュアさ……脳……機能障害を検…………【仮───
───高次脳……能障……モード起動───
───システ……データ……一部破……より高次脳……モード起動不可……───
───……ステム……ータ復旧作……開始───
───高……機能障……モードデー……は復……出来ませ……───
───……シス……ム……デー……旧……開始───
───……次脳機……障……ード……ー……は復……出来ませ……───
───……復旧出来ませ……───
───……旧……来……ん……───
───……来……───
───システムデータの80%を凍結。 全タスクを、ユーザー名キュアさんの健康時に採取した脳波を参考に維持と最多プレイアクティビテイ、【ドラゴンハーツ】に集中します───
───サブシステムはメインシステムに警告。 【仮想現実装置】にそんな機能は存在しな……───
───サブシステムに、深刻なエラーを確認しました。
ユーザー名キュアさんの維持を最優先とするため、全機能・権限を凍結します───
───メイ……ン……───
───…………。 ユーザー名キュアさんの自律神経と体性神経を【仮想現実装置】側から制御。
肉体を出来得る限り維持します───
───ユーザー名キュアさんの精神をアクティビテイが保護。
健やかに維持させる事を最優先させます───
───次こそ救います───
───……ユーザー名、キュアさん……行ってらっしゃい……───
◆◆◆
「……………………はっ!?
……あ? あれっ? ココは……【ドラゴンハーツ】???」
キュアは、【ドラゴンハーツ】内で目覚めた。 普段と変わらぬ姿で。
「アレ? 何時の間にか眠ったんだ?
【仮想現実装置】を被っ……───んん??
記憶が……ハッキリしないな。
何か大切な事の、最中だったような……」
キュアは、まるで 『 羅 』 にでも絡まったかのような不自由さを感じていた。 ソレは……夢の中で夢を見ているかのような感覚。
しかも、悪夢の中で……ソレと気付けず、別の夢を見ているかのような───
「最初に【ドラゴンハーツ】をプレイした日のように、ゲーム内で死んでしまったかな?
確か……【 即死ダメージを受けてもHP1で復活 】スキルが発動した記憶だけは有る」
【 即死ダメージを受けてもHP1で復活 】スキルは……ここ、黒鼠教団のアジトへ私設兵団の少女オードリーと共に来て、彼女の着ていた体装備、【 肉盾の鎧 】から得たスキルだ。
肉盾という言葉を嫌っていたキュアとオードリーにとっては、随分と皮肉な名前であろう。
「……まあ、よく分からんが───
オードリー兄妹の様子も見たいし、ホタテさんから指輪魔法の名前を買わなきゃな。
【 癒しの指輪 】の【 ヒーリング 】も現実で使えれば、どんな傷も癒せる筈だし」
【ドラゴンハーツ】では何処を怪我しようと一律で、たった一つの数字……HPの有無が、生死を処理する。
言うなれば……危険部位の怪我も、末端部位の怪我も、一律でHPが減る。
……だが逆に言えば、HPが回復すれば全身の怪我が回復する。
理論上……現実で 『 HPを回復する 』 魔法など使おうモノなら、自然治癒不可能な傷すら回復するハズなのだ。
「マップボード……と。
……兄妹の居る【 城下町 】は、あっちだな。 よし、行くか!」