82 村人、庇われる。
「きュアが……キゅアガ魔法ヲ……!?
馬鹿な! アれハ……あレハ、俺の気ノ所為……気の所為ダったンダ!!」
「フゥーッ……フゥーッ……!!」
『 敵 』 がベラベラと、無駄話をしている。 『英雄譚』 じゃあるまいし、この口上中に追撃を掛けられれば良かったのだが……キュアの意識は、限界に近かった。
内臓は、鈍く重い痛みを訴え。 全身の骨は、ヒビが入っているのか……軋み痺れる。
暑い。 そして熱い。
今、感じる高熱は…… 『 敵 』 が放つ炎の熱だけでは無いだろう。
キュアがまだ気絶していないのは、奇跡の賜物。 運以外の何物でも無い。
「( クリティカル…… )」
───もし、運以外のナニカが有るのだとすれば……それは、キュア中に垂れる一条の綱。 祈るように、願うように、その綱をつかむ。
【 メイクハンマー 】は、『 敵 』 の左肩から鳩尾辺りまでを切り裂いた。 彼の魔光が通った道筋に有ったモノも、全て。
肉も。 骨も。 太い血管も。
心臓が見える。
残念ながら心臓は無傷だったが、人間なら致命傷。
それだけの傷を、『 敵 』 には与えた。 人体。 人智。 人間。
炎以外は普通だ。
───それでも。
『 敵 』 は。
『 あれ 』 は。
残す訳にはゆかない。
得体が知れな過ぎる。
しかも、言動から鑑みるに……キュアを知っており、尚且つ恨まれているようなのである。 クリティカルも同様の可能性が有った。
座して 『 敵 』 の死を待つのではなく、今……この場で止めを刺さねば成らない。 然れど……キュアに余力は無く、持って一撃。
一撃に全てを賭け、『 敵 』 の心臓を破壊するしか無かった。
「きュアあああアああァぁぁぁ!!!」
「( ……そうだ、来い )」
が。
「き……キュアから離れろ、化物!」
「( っ!? )」
「……んダああアあァァぁァっ!?」
キュアと 『 敵 』 、同時に声のした方角……階段を見る。
其処に居たのは。
「……ヘイスト?」
「誰ダぁァァ、貴様あアぁぁ!?」
「キュア! い、いい今助け───」
「邪魔ヲすルナぁぁぁァあアア!!!」
怒りと痛みとパニックの極地に至ったらしい愚鈍な 『 敵 』 は……目標をキュアから、新たな客───ヘイストへと代えた。
「……あ」
ヘイストの弱った視力では、ハッキリとは分からない。
ただ……ヘイストの 「 貧民街の問題は貧民街の住人の問題だから 」 という言葉を、キュアは太い腕で押さえこみ……一人でグサビキのアジトへ乗り込んだ。
一旦は、眼病の自分が行っても足手まといだからと大人しくしていた。
が……アジト最上階から、物凄い勢いで何かが飛びだしたのをキッカケに───居ても立ってもいられなくなったヘイストは、キュアの下へと駆けつけた。
其処で───自分達の代わりに成ってくれたキュアが、母の身を案じてくれたキュアが……炎の化物に殺されかかっているのを辛うじて見た。
見てしまった。
声を出す、ヘイスト。
動きだす、『 敵 』 。
「死ネぇェぇぇ!」
「…………ヘイ……ス……ト───」
そして、キュアは。
最後に残った渾身のチカラを。




