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79 村人、爆音を聞く。

 

「彼処が連中のアジトか……。

───【 しゃがむと、潜伏力UP 】」




 貧民街で起きかけている戦争を防ぐため、様子のおかしい頭目とやらの居るアジトへと来たキュア。


 潜入捜査などやった事が無いキュアは、取敢ず【ドラゴンハーツ】で【 ラットマンの潜伏服 】を装備して60回暗殺した時に開放されたスキルで隠れる。

 ……とは言え、ただしゃがんだたけだが。




「( 今の警備員、普通に目の前を通り過ぎてったぞ…… )」




 警備員とは言いつつ、アクビをしており警戒心が有るとは思えない。 そういう相手には、もはや透明人間レベルに効くスキルらしい。

 現に、ビビリっぽいキョドキョドした警備員にはバレそうになった。

( ソレでも、普通ならバレていた筈なのにバレなかったので、スキル効果は有るらしい。)




「( 座り歩きは、『しゃがむ』の定義に入らないらしいな )」




 キュアが、しゃがんだまま一歩進んだだけで反応した者がいた。「( 面倒な )」と思いつつ、キュアは進む。

 潜伏スキルを得る前から、盗賊や魔物相手に潜んだまま近付き退治してきたキュアにとって不可能ではない。


 取敢ず 『 頭目 』 というぐらいだから偉そうな部屋に居るはずだ、と……キュアは最上階を目指す。




「(【ドラゴンハーツ】だと、ボスの部屋に近付くにつれ敵が強くなるが……現実はこんなモンか )」




 アジトには、雑魚が12人しかいなかった。 もしコレが盗賊の殲滅なら30分も要らな───……と、考えてキュアは頭を振る。

 【アジルー村】の人間に命令される事は、もはや無い。【ドラゴンハーツ】なら、もっとワクワクする。


 ───現実のトラブルなど御免なのだ。




「……しっかし頭目もよォ」


「……なあ?」




 少し離れた位置の警備員二人が、アクビ混じりに会話する。 30代後半から40代前半辺りのオッサンである。

 望む情報を喋るかもしれないと、キュアは耳をすます。




「あんな 『 ガキ 』 に、ビクビクしやかって……」


「頭を替えるか? ジギンはもっとガキだが、先代からの資産はデケェ───」


『 おいっ! 』




 二人の会話は、上階から下りてきた50代のオッサンの怒鳴り声で遮られた。 事前にジギンから聞いた人相と一致する。 ココの頭目、『 グサビキ 』 のようだ。




「む、むむ無駄話をしてねえで、さっさと部下を集めやがれ!」


「……ココの警備は?」


「ううう、ウルセェ! アイツが大人しくしているウチに───」




───ズドンッッッ……!!!───




 轟音。 建物が揺れる。

 しかし、キュア達の住むこの地方に地震はココ数百年起きていない。

 ……地震ではなく、突風も吹いておらず、この世界に火薬は無い。


 キュアの人生において、過去にこんな音を聞いた事など───いや、かつて一度だけ……大規模盗賊討伐に着かされた時、討伐隊が攻城兵器を使用した。

 その時の爆音に近い。




「( あの時はこんな物をクリティカルは防ぐのか……と、驚いたが )」




 ジギンにしろ、もう一人の頭目にしろ、このアジトを攻城兵器で攻撃しているとは考えにくい。

 正規軍や討伐隊しかり。




「ひいぃぃイぃぃい!?

は、早くしろ糞呆け共!

アイツが……アイツが怒りだす前に!」


「「 へ、へい! 」」




 次々と建物から人間が出てゆく。

 やる気の無い監視員も。 そして……頭目すらも。 おそらく、ジギンの欲する最低限の情報は得たようだ。




「( 『 アイツ 』 ……か )」




 『 グサビキ 』 は 『 誰か 』 に、脅されている。




「( 本来は、貧民街マフィア同士の……言ってしまえば、たかが縄張り争い。 普通なら、ココでジギンの所へ戻る所だが─── )」




 ……攻城兵器と同レベルの爆音。


 初めて攻城兵器を見て、クリティカルを連想した時……キュアはクリティカルに嫉妬していた。 魔ナシで腐っていた頃である。




「( 攻城兵器に近い 『 何か 』なら…… 万が一にも、クリティカルが呼び出されるかもしれん )」




 そんな事は、絶対に許されない。

 キュアは、クリティカルを守るため……爆音のした上階へと進む。

 

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