75 村人、鍵を見つける。
「オードリー達の様子も見たいし、ホタテさんの所で 『 指輪の魔法名 』 を買うか……。
いや、当初の目的通りコスナーさんの店で 『 杖の魔法名 』 を買うべきか……」
キュアがどうするか悩んでいると、廃砦屋上に女性が。
突入前……敵の有無を確認するために、しっかり見渡したキュアである。 あんな女性の記憶は無い。
「敵っ!? ……ならばネームボードにHPとかが出るはずだが……!」
【ドラゴンハーツ】において生物を意識して探ると、『 ネームボード 』 が出る。 一般人なら名前だけだが、敵ならば【名前:Lv○:HP○%:弱点○】となる。
「ボードが出た……けど、ネームボードじゃない? コレは───【 鑑定 】ボード!?」
人物や魔物ではなく道具……『 物 』 を鑑定した時に出るボードである。 つまり、あの女性は生物では無い。 少なくとも、敵では無い。
「……ま、【 魔神城の鍵 】?」
「…………」
【 魔神城の鍵 】と表示された女性は、キュアが自分を確認した……のを確認して消える。 闇色の光と共に。
『 ? 』 マークは見えなかったが、何らかのサブイベントかもしれない。 キュアは、どうにかして廃砦の屋上へと行く手段を探そうとして───
≪キュアさんの脳に疲れを検知。
健康の為、【仮想現実装置】は一旦閉じます。
御疲れ様でした≫
という【仮想現実装置】の声。
「もうそんな時間か……【仮想現実装置】を使い始めた頃と比べて、長時間プレイ出来ているとは思うが……」
徐々に沈んでゆくキュアの意識。
サブイベントか調べきれず、やや苦く感じながら暗闇に身を任す。
◆◆◆
「兄さん、御早う」
「わあっ!? お、御早う……クリティカル」
目覚め、現実の世界に覚醒したキュア。 起きたら、視界いっぱいにクリティカルの顔。
昨日、クリティカルが【仮想現実装置】を使った時に心配のあまり寝顔を覗きこみ過ぎて、驚かせた事への仕返しらしい。
可愛らしいイタズラに微笑むキュア。 キュアの笑顔に微笑み返すクリティカル。
───内心キュアはクリティカルに、再び夢の中で女性と共に冒険した事に……何時ツッ込まれるのかとヒヤヒヤしていたが。
「さて……まだ魔法は集めきっていないが、俺の魔法については領主様に 『 どう 』 話すか……」
「ソレなんだけど……暫くは、その心配が無くなったわ」
「ん? どういう事だ?」
朝食を使用人用料理人から受けとり、自室で食べつつ会話するキュアとクリティカル。
「【アジルー村】の件で、領主様は暫く出張になったの」
「そうだったのか。
……ん? 領主様の警護秘書であるクリティカルは、付いて行かなくて良かったのか?」
「私は警護秘書隊で副隊長なんだけど……今回、領主様に付いてゆくのは隊長よ」
「隊長……」
「私が 『 守 』 なら、隊長は 『 攻 』 の魔法使いなの」
「ふーん……」
クリティカルが攻城兵器の一撃を防ぐ魔法使いなら……その隊長とやらは、攻城兵器並みの一撃を放つのだろうか。 恐ろしい話である。




