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73 村人、バーンを救う。

 

「ヂィィイイィイ!!」




 邪教徒アジトのボスへとキュアの剣が肉薄する───寸前、悪寒が走ったキュアは……ボスから【 バックステップ 】にて急速離脱。 攻撃をキャンセルした。




「ヂ?」


「以前、盗賊団のボスで見た!」




 キュアがボスから距離を取った直後、ボスを中心に五芒星の刃が二重に出現。 一瞬だけ高速回転をして消えさった。

 もしもキュアの離脱がほんの僅かでも遅れたていたら、キュアは腹を斬り刻まれて大ダメージを受けていただろう。




「キュア殿~!

ラットマンは極稀に、ラットマン特有のスキル【 窮鼠猫噛 】ってスキルを持っとるんよ~!」


「で、出来れば最初に言っておいて欲しかった……」


「ゴメェ~ン!?」




 【 窮鼠猫噛 】とは、例えどんな状況でも……ソレが体を動かせない状況であろうが、『 死 』 が決定した瞬間であろうが───任意のスキルを放つスキルである。


 このボス、【 黒鼠教団幹部ハムスター 】の任意スキルは……彼オリジナル魔法の【 デススター 】。 物理・魔法の両方で5回ずつ、計10回ダメージを食らわせる魔法だった。


 如何なキュアが、【 鼠特防の指輪 】を発動させていようと確実にオーバーキルとなっていた極悪魔法である。




「盗賊より先に、オマエと戦っていたら負けていたな」


「ヂィ……ッ」




 死を悟ったか、悔しそうなボス。

 キュアにとって躊躇ためらいなど鼠のエサだと……微塵も容赦なくボスへと【 鎮火の剣 】を降り降ろす。




「……ヂ───」


「キュア殿……凄いなあ。

あんな一撃を、しかも【 窮鼠猫噛 】を知らんかったのに、避けるんやけん……!」




 オードリーは、自分なら確実に死んでいた一撃を見て血の気が引きかけたが……未だ兄の救出作戦中。 己を奮い立たせて、気を取りなおす。




「アタシだとボスには勝てんけど、ザコの群には勝てる。

キュア殿の作戦は当たっとるんやけん、アタシは勝てる!

バーン兄ちゃんを救えるんよ!」




 1対1を8回。

 今のオードリーなら、問題ない。

 元々、オードリーは不意討ちでは無く、真正面から衝突する戦法を得意としている。




「【 鼠喰い 】【 鼠喰い 】【 鼠喰い 】ぃい!!」


「オードリー!

ソイツで最後だ、ブチかませっ!」


「うん!

行くけんねぇぇぇ!!」




 そして───オードリーは最後の邪教徒を撃破。 斯くてキュアとオードリーの二人は、廃砦の黒鼠教団教徒を全滅させた。



◆◆◆



「オードリー!」


「バーン兄ちあゃん!」




 黒鼠教団に拐われたオードリーの兄であるバーンは、ボスが座る椅子の奥の小部屋に捕らわれていた。

 オードリーと髪色と目許がよく似た、分かりやすい兄妹である。


 全身キズだらけであったが……確り自らの足で立ちあがり、駆け寄るオードリーを自らの両手で抱きしめる。




「うんうん」




 キュアの世界に、テレビなど無い。

 無論ゲーム機も、世界に唯一つの【仮想現実装置パーシテアー】しか無い。 小説や絵本などは無くもないが、未だ手書きによる写本であり高級な物である。


 魔ナシでも知識・技術を得ようと本はソコソコ読んだキュアではあるが……そう多くの 『 物語 』 に出会った訳ではない。 お涙頂戴物に耐性の無いキュアは目が潤みかけていた。




「バーン兄ちゃん、こちらはキュア殿。

こん方と共に、鼠に拐われたバーン兄ちゃんを助けたんよ」


「そうか……礼を言うのである」


「いや、妹さんから謝礼金は頂く。

ソレ以上の礼は不要だ」




 出会った頃のオードリーの口調の兄、バーンの喋りを聞いて……「 オードリーは彼の真似をしているのかな 」 等等考え、潤みかける目をごまかすキュア。

 

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