72 村人、アジトのボスへと斬りかかる。
「黄色のモヤの手前に一人、両脇に八人。 赤いモヤの配置から、部屋は楕円でやや高い位置に居る。 気付かれたら俺達は的だな」
ボスの部屋と思われる部屋。
其処は……中央が低い通路と、その周囲が 『 コ 』 の字形に成った高台の二段構成であった。
高台に敵が配置されている。
低い通路を駆け抜ける間、高台の敵から弓矢だの魔法だのを浴び続けるだろう。
「このデカいスイッチ……扉のやよね?
絶対に気付かれる仕組みになっとる筈やけん、危険よ?」
「だろうな」
キュアの戦法、不意討ちは通用しない。 如何なキュアの強さが戦法に依存しない、鍛え上げられたモノとは言え……オードリーは怖かった。
己が命を惜しんで、ではない。
キュアの身を案じて、だ。
「……だが、君がくれた【 鼠特防の指輪 】が有る。 さあ、兄さんを共に助けよう」
「キュア殿……うん、分かった。
アタシ、アンタの 『 肉盾 』 になるけん」
「盾じゃない。 俺と君とで 『 双剣 』 になるんだ」
「…………うん!
行くよ!」
オードリーは兄が捕らえられている筈の部屋へ行くため、大扉の開閉スイッチを倒す。 轟音と共に開く大扉。
大扉が、杖一本分のスキマが開いた瞬間に、杖を挿し込み魔法を唱えるキュア。
「ファイヤー───むっ!?」
然れど一瞬、嫌な予感がしたキュアは杖を手放しその場を退避。 その瞬間にキュアの立っていた場所に落雷。
『ヂヂッ!? ヂィィイィィィッッ!?』
大扉のスキマから見えたボスらしき黒鼠教団の鼠が、杖を高々と上げている。 どうやら先程の落雷は、ボスの魔法のようだった。
キュアは直ぐさま杖を掴みなおし、再びファイヤーボールを撃つ。
「ヂゃあ!」
≪シークレットトロフィー『 黒鼠教団幹部、ハムスターへ先に攻撃を当てる 』 獲得!
SP.5P贈呈!≫
「よし!」
「「「 ヂッ! 」」」
ボスが怯んだ事に気付たのかは定かでは無いが、開く大扉には気付いた邪教徒たちが一斉に向かってくる。
「ボスは、恐らく魔法が効きにくいタイプだ。 今の一撃も、対したダメージにはなって無いはず。
油断するなよ!」
「キュア殿が言うんなら確かじゃけんね!」
「【 スイッチ 】!」
キュアは、オードリーから借りた【 右手に着ける左籠手 】を装備して、50回攻撃した時に解放されたスキル【 スイッチ 】にて、魔法の杖から腰に装備した剣に持ち変える。
【 スイッチ 】を獲得した途端に装備欄が変化し、『 サブ武器 』 なるモノを装備出来るようになったのだ。
その時、手頃な物理攻撃用の武器が無かったキュアは……何故か部屋の隅にデカデカと存在した謎の箱 ( オードリー曰く、宝箱。 キュアにとっての宝箱とは絵本のモノ。) から獲得した【 鎮火の剣 】を装備していた。
「「「 ヂィッ! 」」」
突入前の予想通り、邪教徒たちは両脇の高台から魔法や弓矢を撃ってきた。 ソレを払いながら……キュアは左壁沿いを、オードリーは右壁沿いを、駆け抜けてボスの手前の階段を上がる。
「「【 鼠喰い 】!」」
「ヂ!?」
キュアとオードリーの二人がかりで迫られたボスは、二人同時相手に構える。 が……オードリーはボスを無視して別の方角へ。
ザコへと向かう。
不意を食らったボスは、キュアの【 鼠喰い 】をマトモに受ける。
「キュア殿と共に鍛えたけんね!」
「無茶はするなよ!」
「キュア殿もよ!」
ボスは未だ未だオードリーの手には余る───そう判断したキュアは自分がボスを、ザコならば圧倒出来る程度にスキルを得たオードリーをザコに向かわせた。
相手は数こそ多いが……一旦高台へと上がれば、高台上部の狭い通路がオードリーを囲ませない。
1対1を8回繰り返せば良いだけだ。
「ヂ、ヂヂ……!?」
魔法使いであるボスは、攻撃に一瞬の 『 タメ 』 が有る。 そんな隙を見逃すキュアでは無い。
トドメの一撃を与えるため、キュアはボスへと斬りかかる。




