70 村人、方言というモノに初めて触れる。
「アタシ……学も無いし、強うなる以外にどうしたらエエんか分からん。
だからアタシは、敵を倒して倒しまくるしか無いんよ」
「…………はぁ」
「( 強くなる事に、敵に止めを刺す事とは関係ない───ああ……ココ【ドラゴンハーツ】なら、それが可能なのか…… )」
現実で在れば、鍛練・訓練・実戦といったモノ以外に強くなる手段など無いと考えるキュアだが……【ドラゴンハーツ】には、スキルが有る。
敵に止めを刺した回数で会得するスキルも有り、ソレはつまり強くなる。
強さに憧れる、というより……強く成らなければいけない……という、強迫観念に縛られたオードリー。
気持ちは、分からなくも無いキュアは……身につまされる思いである。
「分かった、オードリーが強くなる事に協力しよう。 だが、ソレで現状を打破できるかは俺には分からん」
「ソレで充分やよ!
有難う……キュア殿!」
いきなり、キュアに抱きついてきたオードリー。
鎖帷子越しでも分かる。 ナニが?
「うわわっ!?」
「───あっ……ご、ゴメン!
アタシ、そんなハシタナイ女と違うんよ!?
ただ私設兵団以外の人間でアタシの話をマジメに聞いてくれたんは、キュア殿が初めてやけん……う、嬉しゅうて───」
「そ、そうか」
とにかく強さだ。
然れど、鍛練・訓練といったモノは年単位の時間を要する。 オードリーが今すぐ強くなるには、【ドラゴンハーツ】の強さ……スキル頼りとなるだろう。
オードリーの戦法は、【 油泥の杖 】のネバつく油で相手の動きを封じて【 鼠喰い 】などで止めを刺す。 父親の……「 肉盾 」 の話を考えれば、正面から来た敵を正面から叩き伏せる戦い方しか知らないようだ。
「なら単純に、攻撃力を上げるスキルと防御力を上げるスキルからだな。
確か 『 パッシブスキル 』 だったか」
「アタシも複雑な動きが必要なスキルは苦手やけん……ソレでエエよ」
今、キュアは幾つかの 『 サブイベント 』 や 『 シークレットトロフィー 』 、スキル獲得の結果───
残りSPは9。
物理攻撃スキル、
ナシ
魔法攻撃スキル、
【 他の杖でもファイヤーボール 】
【 他の杖でもメイクハンマー 】
【 魔法攻撃力5%アップ 】
総合攻撃スキル、
【 隠れて攻撃すると追加ダメージ 】
【 総合攻撃力2%アップ 】
防御スキル、
【 敵からのダメージ2%カット 】
【 敵からのダメージ1%カット 】
移動スキル、
【 バックステップ 】
【 二段ジャンプ 】
その他スキル
【 鍛冶LV.4 】
【 鑑定LV.2 】
【 暗視 】
───と成っていた。
「ダメージ1%カットを会得出来る【 ドッグマンのボロ服 】はまだ持ってて助かった……と、女性にこんな服は失礼か」
オードリーの着る服は、肉盾を強要するような下種じみた実父から支給された物とはいえ……其なりにキレイな服だ。 其に比べ、キュアが着せようとする【 ドッグマンのボロ服 】は、その名の通りボロい。
「う……ううん、キュア殿がアタシの為に選んでくれた服やけん……」
「そ……そうか」
地下に兄が囚われているのも忘れ、モジモジするオードリー。
まあゲームに有りがちな、ボス部屋に行かなければイベントは進まないので……理論上は一年兄を放ったらかしにしてイチャイチャしても平気なのではあるが。
敵の居なくなった一階の、別の部屋で着替えるオードリー。
「き、着替えたけど……」
「どれどれ……おわ!?」
【 ドッグマンのボロ服 】は、男性キャラが着るぶんには普通のシャツ・ロングパンツだが……女性キャラが着ると、胸だけを隠すスポブラタイプのシャツ、ヘソ出しルックに生足を出すショートパンツとなる。
「き、キュア殿がこういうんが好みなら……アタシゃあ───」
「ち、違うぞ?」
各キャラは好みの服装・装備が有り、ある程度好感度が上がらないと好みでは無い格好をしてくれない。 無理に勧めると好感度が下がる。
受け入れた格好であれば、気に食わない格好であれ好感度が下がる事は無い。
オードリーの好みの格好。
寒村出身のオードリーは生まれてこのかた厚着しかした事がない。 露出度の高い服はNG。