7 村人、VRゲームを始める。
【仮想現実装置】のアクティビティ、【ドラゴンハーツ】の中で牢屋に捕まっていたキュア。
「何らかの 『役割』 を演じる場合のVRも有ったからな……。
【ドラゴンハーツ】とは、『捕まった討伐隊員』 という役割を演じるんだろう」
この魔道具《 パーシテアー 》を身に着けてから夢中になって仕組みを勉強してきたキュアは、何となくではあるが【ドラゴンハーツ】の内容を理解してゆく。
「ココは?」
「ターゲン帝国の天空牢獄さ」
「ターゲン……聞いたこと無いな。
……アンタは?」
「オレかい? オレぁチンケなドロボーさ。
金持ちの所へ忍びこんで───おっと、見張りが来た……ん?
なんだ? 随分と騒がしいな?」
キュアと向かいの囚人の牢の間に飛び込んで来たのは……別の牢に収監されていたらしき、自分達と同じ格好をした囚人であった。
「何故、囚人が牢屋の外に?」 と、疑問に思うと同時に聞こえたのは───爆発音。
「おいっ、魔物の襲来だ!
衛兵室がいきなりフッ飛んで、鍵束がオレの目の前に落ちてきやがった!」
「なにィ!?」
「さあ、この混乱のウチにサッサと脱走しようぜ!」
「おうっ!」
「えっ? ええっ!??」
いきなりキュアの目の前で始まった脱走劇。 鍵束を手に入れたという男は、何故かキュアと向かいの囚人の牢屋の鍵を開けてゆく。
「いや、俺は……」
アジルー村にて魔法が使えないというだけで 『犯罪者よりはマシ』 と言われてきたキュアは、犯罪者が嫌いだ。 無実の罪で囚われたとは言え、犯罪に一瞬戸惑っていると───
「ぐわあっ!!?」
キュアの背後にあった壁が突如爆発して目の前が真っ暗になり、≪game over≫の文字。 ……どうやら魔物が、背後の壁を破壊して侵入したようだ。
キュアは、ゲームの中で一度死んだらしい。
気がつくと……再び鍵束を手に入れた囚人が、キュア達の牢屋の鍵を開ける場面から再開する。
「あー……び、ビックリした。
思ったほど痛くは無いが……」
目の前では、囚人達による先程の会話がソックリそのまま始まった。