64 村人、指輪をタダで貰う。
「───報酬はソレで納得した」
「そうであるか、助かる。
兄が拐われた黒鼠教団アジトは世界中に有るウチの一つだ」
キュアが請けた依頼内容は 『 邪教に拐われた兄の救助の助っ人 』 。
妹が邪教徒のアジトは知っているらしい。
「ところで、その……兄が拐われてどのくらい経っているんだ?
黒鼠教とは人間を───」
「兄は【 鼠特防の指輪 】を着けているから……無事なハズである。
MP回復薬もまだ、持っていると思われるのでな」
「鼠特防?」
「ラットマンのみにしか効かないが……奴等の攻撃全てを弱める防壁魔法である」
女性…… 『 オードリー 』 が、右手に光る指輪を見せる。 盾に鼠の絵が描かれたデザインの指輪だ。 立ち振舞いから彼女は左利きと感じたキュアは、利き手で武器を、反対の手で指輪を使っているらしい。
「指輪魔法は回復系と聞いたが……防壁も有るんだな」
「回復系というより持続系であるな」
「持続系?」
「HP回復系だと……回復薬が一瞬で少量、指輪だと魔法の使用中はMPが有るかぎり回復し続けると思えば良いかな。
杖魔法と違い、剣などと同時に使えるのだ」
「なるほど」
「其方は、指輪魔法を幾つ使えるのだ?」
「いや……まだ0だ。
今回の報酬で、教会に魔法名を聞こうかと思っている」
「なんと……回復魔法を持たず、この辺の魔物を倒してきたのか。
……………………」
何やら、考えこむオードリー。
暫し経ち───
「キュア殿。
黒鼠教団アジトへ行く前に、私達のアジトへ行こう」
「……はあ?」
◆◆◆
「此処が我等のアジトだ」
オードリーに案内されたのは、この地方の領主が住むという城下町。 その奥、騎士団詰所───の、端ッコ。
「な、中々コンパクトな詰所だな」
「……素直に狭いと言ってくれて良いのである」
明らかに、道中にあった詰所より小さな詰所。 その中に案内されるキュア。
「ホタテ! ホタテは居るか!?」
ホタテ……キュアが嘗て見た本では、海に居る貝だったはず。 何故にホタテ。
「は~い、はい。
ホタテさんですよ~?」
「彼……キュア殿が兄の救助を手伝ってくれる事になったのである」
「あ~らら、あの御方が救助しないと決めたんですよね~?
……良いんですか~?」
「私にとって、バーンは大事な兄である。
なので……指輪魔法を持って居ないらしいキュア殿に、【 癒しの指輪 】と【 鼠特防の指輪 】と、その魔法名を私にツケて販売して欲しい」
「「 えっ!? 」」
キュアからしたら、願ってもない事では有るが……やや奮発し過ぎなのではないかと、警戒しきりである。
隠しイベント。
通常、回復魔法ナシで始めるにはキツいこのイベント開始時までに、HP回復系の指輪を持っていなければ最弱の指輪をタダで貰える。
ホタテ
ス○力イリムに居る、『 アワビ 』 なる名前の女性から。
普通に変な名前なので、大概のプレイヤーは彼女の名前を見て軽くパニックになる。
外国産ゲームであるスカイ○ムの日本語版の翻訳時に誤訳したらしい。
( 立場は全く関係ありません。)




