63 村人、もう1つ恐怖症を発症しつつある。
「アシッドの名前はともかく……コスナーさんは、指輪の魔法名は分からないのか?」
「魔法の指輪か。 アレはのう……ヘタしたら光燐教会にケンカを売りかねんから、係わりたかぁ無いんじゃよ」
「教会かあ……」
教会による教義。
キュアを現実で悩ませていた問題が、【ドラゴンハーツ】の中でも悩ます。
自らの権勢を示す手段。
現実では差別すべき人間を決め。 【ドラゴンハーツ】では、回復系とやらの魔法を独占販売する事で示す。
中々、業を煮やす問題だ。
「指輪の魔法名は教会で聞け。
……アッチでも金を取られるから、稼いでからの方がエエぞ。 しかも儂みたいな親切価格じゃないしな」
「……はあ。
何か金策手段を知らないだろうか?」
「んなモン、老い先短い儂が知りたいわい……と言いたい所じゃが、心当たりが無い訳じゃあない」
「ん?」
「酒場へ行け。 何ぞ巨乳のお姉ちゃんが、戦士を探しとったぞ」
「巨……」
咄嗟にキュアの脳裏に浮かぶのは、女鍛冶師ダイとの冒険でクリティカルに怒られた事。 またあの悲劇か。
「良い装備で固めとった魔法戦士風じゃった。 ありゃあ金持っとるじゃろ」
「何か仕事をくれる訳か」
「そーゆーこっちゃな」
他に素早く行える金策は無し……酒場へと歩を進めるキュア。
( クリティカルへの言い訳を考えつつ。)
◆◆◆
「済まない……本当にこの村には腕自慢が居ないのだろうか!?」
「田舎の農村に、ンな奴居るわけ無えだろ。 みんなクワとカマしか持った事無えよ」
酒場に入ると、酒場の真ん中に人の輪が有り、そんなやり取りが。
そりゃ田舎に居るわけ無いな……と、田舎者のキュアが人の輪を確認すると、輪の中にオロオロする女性が一人居た。 彼女の頭の上には、サブイベントを与える人間特有の 『 ? 』 マーク。
おそるおそる話しかけるキュア。
「う……腕になら、そこそこ自信は有るが」
「ほ、本当か!?」
ガバッと、キュアの両手を掴む女性。 近い。 あとデカイ。
女性は、魔法屋の言う通り高価そうな装備で固めたていた。 合皮と丈夫な布製の服の上に、これまた上質なタバード。 服の下には鎖帷子の音も微かに聞こえる。
腰には、やはり高そうな剣と……キュアの知らぬ魔法の杖。 キュアが魔法の効かない敵用に短剣を使うのに似ているか。
「事情を聞きたい」
「……わ、分かった。
実は私は、とある御方の私設兵団なのだが───団長である兄が、邪教に拐われてしまったのだ」
「拐われた? とある御方とやらは、何と言っているんだ?」
「そ、その……討伐団は出せない、と」
「団長が拐われたのにか!?」
「そ、その……自分の護衛が長期間離れるのは駄目だ───と」
【アジルー村】の村民が、自分達の安全のためにキュアを肉盾にしたり……キュアが少しでも気に食わない態度を取ると、放火を仄めかすのと同じである。
目の前の女性や、女性の兄の苦労がハッキリ分かるキュアは……深いタメ息で、仕事を受ける事にした。




