62 村人、買い物は計画的にすると誓う。
「回復薬の看板……この村の道具屋か」
元・魔法屋、ケビンの祖父の店をマップボードで確認しながら探すキュアは途中で道具屋を見つける。 【 道具屋ガルヒン 】では魔法の杖を売っていた。
この村でも杖を売っているかもしれないと思ったキュアは、村へ来るまでに出会った野盗や魔物の装備・素材で要らない物を売るついでに立ち寄る事にした。
「ぐぬぬ……相変わらず滅茶苦茶高い杖が有るな、【 操骨の杖 】か。
どんな魔法なんだろう……」
「あまり期待しない方が良いですよ」
「何故だ、店主?」
「基本的には、杖の内蔵魔力だけで売値が決まります。 なので凄い魔力を使うクセに役立たずな失敗魔法も有ります」
「失敗魔法なんか高値で売れるのか?」
「【 錬金術 】や、高Lvの【 鍛冶 】で、必要になるとか」
「ふむ」
いずれ試すチャンスが有るかもしれないが、今は覚える為の魔法の杖だ。 所持金だけで買える魔法の杖を買い、キュアは道具屋を後にする。
◆◆◆
「ココか」
道具屋から暫し。
キュアの目の前に有るのは、看板を支える台は残るものの……他は何も無い、如何にも潰れた店といった感じの建物。
「済みませーん」
「なんじゃ? 潰れとるんが、見て分からんか?」
キュアの来訪に、奥から出てきたのは一人の老人。 ケビンを皺クチャにし、白髪にしたらこうゆう感じであろう老人だ。 ケビンの祖父に間違いないと確信したキュアは、話を進める。
「いや。 貴方の孫のケビンに、ココを紹介されたのだが」
「ん? あやつが儂に許可なく、ココを話すのは珍しいな」
キュアが事情を説明すると、『 コスナー 』 と名乗った彼は軽くタメ息をつき、古くなったカウンターに着く。
「まあ、そうゆう事ならエエじゃろ。 じゃが、只じゃあ無いぞ」
「う、金が要るのか」
「当たり前じゃ、魔法 『 屋 』 じゃぞ。
儂にも生活は有る。
コレでも親切価格で見てやるんじゃ。 有りがたく思え」
コスナーは当然の事を言っている。 しかも親切価格。 思慮不足だったキュアが悪い。
……何故ならば。
「さっき、道具屋で魔法の杖を買ったからなあ……」
「知らんわい。 取敢ず杖を見せろ、値段を言うてやる。
杖によって値段は違うぞ」
「今、所持する杖は……」
キュアがカウンターに杖を列べる。 今のキュアが所持する杖は、
・初心者の杖( ファイヤーボール )
・鍛冶師の杖( メイクハンマー )
・敵視の杖
・霧の杖
・強酸の杖( 野盗の装備 )
・風盾の杖( 野盗の装備 )
・水の杖( この村で買った )
・強化の杖( この村で買った )
である。
ちなみに野盗は…… 「 ふっ 」 とか 「 う"んっ 」 とか、唸り声で魔法を使ってきた。 コレが【ドラゴンハーツ】の 『 不思議なアレ 』 なのか 『 スキル効果 』 なのかは分からない。
「それぞれの値段は、こんなモンじゃな」
「…………」
コスナーに告げられた値段に、白くなるキュア。 全部の魔法名は買えないからだ。
現実で役立ちそうなのは、一番高い 『 水 』 だが……一本しか買えない。
他は 『 敵視 』『 強化 』 がそこそこ高く、残りの 『 霧 』『 強酸 』『 風盾 』 が一律で安い。
「領主様に【仮想現実装置】が、バレるまでに出来るだけ沢山の魔法が欲しいからな……」
『 水 』 は井戸もあるし、現実では有り得ない魔法の方が面白いかもしれない。 という訳で、『 水 』 は諦めたキュア。
ならば候補は、
①『 そこそこ一本、安いの一本 』
②『 安いの三本 』
の、二択になる。
「『 強化 』 は何を強化するのか分からんし、確実に便利そうな 『 敵視 』 と…… 『 強酸 』 にするか。
コレを使う野盗は面倒くさかった」
『 強酸 』 は、眼前に少量の酸をばら蒔く魔法である。 カスッただけなのに痛いし、防具もボロボロになり防御力が落ちる。
『 風盾 』 は、一瞬だけ盾状の強風を吹かせる魔法。 コレを使う野盗も、それなりに面倒だったが……『 強酸 』 程では無かった。
「はいよ。
『 敵視 』 は【 エネミービジョン 】。
『 強酸 』 は【 アシッド 】だよ」
「アシッド!?
何故、奴の名前が出てくる!?」
思わぬ場所で聞いた、幼馴染みの名前。 ついつい声を荒らげるキュアに、コスナーも警戒を不信げな顔になる。
「あ? 知り合いの名前か?
ずいぶん変な名前だな、我が子に 『 強酸 』 なんて名付けるかね」
ちなみに、アシッドとはキュア達の住む地方では珍しい名前ではない。
「アシッド……強酸……【ドラゴンハーツ】の 『 不思議なアレ 』 ───か」




