6 村人、高所恐怖症になる。
「この絵は、さっきまで遊んでいた 『ババヌキ』 だな。
コッチは、VRの中で歩く練習をした 『アスレチック』 か」
おそらく他の 『絵』 も、何らかの 『アクティビティ』 であり……この【仮想現実装置】とは、『遊具の魔道具』 なのだろうと理解するキュア。
「もっとババヌキをしていたいけど……【仮想現実装置】の事をたくさん知りたいし、新しいゲームにするか。
───【ドラゴンハーツ】?
絵柄からすると、コレは 『討伐隊』 かな?」
キュアの注視する【ドラゴンハーツ】というアクティビティは、『剣と魔法の世界の住人となり、魔物と戦う』 という物である。
しかし。
生まれた時から 『剣と魔法の世界の住人』 であるキュアには 『討伐隊』 という、アジルー村を含めたコタリア領の村々を回って魔物や盗賊を退治する、珍しくとも何とも無い職業の 『職業体験アクティビティ』 に思われた。
「うーん……。
でもまあゲームの絵柄に魔法を使う者も居るみたいだし、コレをやってみるか」
≪アクティビティ名【ドラゴンハーツ】はフルダイブ型VRです。
宜しいですか?≫
「フルダイブ……完全に寝て、夢の中に入るアレか。
強制的に眠らされる、あの感覚が不安なんだが……仕方ない。
やってくれ」
≪【ドラゴンハーツ】にフルダイブします───≫
せめて夢の中でくらいは魔法を……そう願いつつ、キュアの意識はブラックアウトしてゆく。
◆◆◆
「───はっ!?
……ああ、夢の中か。
さっきまで自分の家だったのに……ココは牢屋か?」
無事、【ドラゴンハーツ】の中にダイブしたキュア。【ドラゴンハーツ】は、主人公が無実の罪で投獄された所から始まる。
「───ようアンタ、アンタはどんな罪で捕まったんだ?」
「え? 俺のことか?」
キュアは、向かい側の牢屋に入っていた囚人であろうボロボロな服を着た男に話しかけられる。 ちなみにキュアも、何時の間にか同じ服を着ていた。
「俺は何もしていない」
「はっ。
ココにぶち込まれた奴は、みんなそう言うんだよ」
「だから俺は犯罪者じゃ……」
と、言おうとして───牢屋や囚人の余りのリアルさに、ココが【ドラゴンハーツ】というアクティビティの中だった事を忘れかけていたキュアは、VR練習用アクティビティの中にも人間がいた事があったなと、落ち着きを取り戻す。
その中には、何故か変な男に高所で綱渡りを強要されたモノもあった。 あのアクティビティだけは、二度と遣らないと固く誓うキュア。