57 村人、アゴを打つ。
「ひいぃ!
ち、ちくしょう……出やがった!」
「コレが……魔物!」
現れたの魔物は体長3m程の翼竜。
今までキュアに守られていたクリティカルは、危険な魔物と対峙した経験がない。 足が震えるが……兄を思えば、唯の夢で立ち止まるワケには行かない。
「オマエ等、戦闘経験は有るか!?
衛兵部屋から武器をくすねておいたから、好きなのを選べ!
じゃあな!」
「武器……」
鍵開け囚人が『剣』『弓矢』『杖』を適当に列べて走り去る。
「私は……杖にします」
「なら俺は剣にしよう。
前衛は任せろ」
言って、クリティカルが杖を握った途端───
「うぐっ!?」
「お、お嬢さん……どうした!?」
「……あ、あの魔物……毒を吐くとか?」
「毒? いいや、そんなモン吐かんが……どうした!?
奴にヤラレたのか!?」
「い、いえ……大丈夫です。
……行きましょう!」
「あ、ああ?」
形容し難いが……空気に 『 混ぜ物 』 が含まれた───が一番近い表現か?
吸った空気が不自然だ。
クリティカルは杖を握った途端、空気が変わったと感じたのだ。
【ドラゴンハーツ】のゲームシステム的には、プレイヤーが武器を握った瞬間からHPやMP等の各種データが動きだす。
そういった意味では……この世界に初めて、魔力が顕現する瞬間なのだ。
「( まさか……コレが、この世界の魔力かしら?
息を吸うたびに魔力が 『 無理矢理 』 貯まるみたいな…… )」
身体に悪影響は感じない。
【ドラゴンハーツ】が産まれた、『 魔力の無い世界の住人 』 や、生まれつき 『 魔力を使えない人間 』 は違和感無いをだろう。
が……おそらく、魔法を使える人間は一生慣れ得ない感覚だろうと、クリティカルが───いや、クリティカルの 『 本能 』 が理解した。
「( この魔力……いえ、コレは……たぶん私では─── )」
「おい、ボーっとするな!」
囚人の一喝で、思考から抜けでるクリティカル。 そうだった、取敢ず目の前の魔物を何とかしなければ……と気をとり直す。
「『杖』の使い方は、相手に向けて魔法名を唱えるんだ!
ソレは『初心者の杖』だから『敵』に向けて『ファイヤーボール』だぞ!」
「わ、分かりました……ファイヤーボール!
……きゃっ!?」
クリティカルの詠唱と共に、ゴルフボールサイズの火球が魔物目掛けて飛んでゆく。
キュアが生まれて初めて魔法を使い、感動したように……クリティカルも地味に感動していた。 クリティカルが現実で使う魔法は防壁魔法。
攻城兵器すら防ぐ魔法ではあるが……自身も動けない。 そのせいでキュアにだけ危険な目に会わせた。 攻撃魔法は、クリティカルの夢だったのだ。
「( ……そういえば、現実の魔法は使えるのかしら? )」
クリティカルは防壁魔法を使うも……今一つ、上手く使えない。
例えるなら、何かに追われる夢の中だと上手く走れないのに似ているか。




