56 村人、妹を見送る。 ( ただ眠る妹を見つめるだけ。)
「…………」
「…………」
疲れた様子の、キュアとクリティカルの兄妹。
キュアはクリティカルに、己れの高所恐怖症のような───変なトラウマを持って欲しくなくて、綱渡り以外のVRを選ばせたワケだが……結果、無駄に終わってしまい、海恐怖症に成ってしまったクリティカル。
「く、クリティカル……大丈夫か?」
「……ええ。 こんな所でヘコたれてなんか居られないもの!」
キュアの魔法の謎の為、クリティカルは気合いを入れなおす。
すると、【仮想現実装置】の画面が変化し始めた。
「あらっ? もっと沢山の絵が出てきたわ」
「ソレが今、【仮想現実装置】で遊べる全てのアクティビティらしい」
「兄さん、【ドラゴンハーツ】はどれなのかしら?」
キュアが【仮想現実装置】を使う時、『 綱渡り 』 のアクティビティを絶対見ない。
同じく、クリティカルも 『 潜水 』 のアクティビティを絶対に見ないまま、キュアに質問する。
「討伐隊みたいな格好をした戦士と、杖を持って炎を繰り出す老人が……なんか巨大生物に立ち向かう絵柄が分かるか?」
「えっと……あ、コレね?
ま、まさか兄さん、こんな巨大生物と戦っているの?」
「まさか。
こんな危険な生物 (【アローデビルスパイダー】以外 ) 見た事ないさ」
「……そう。
…………じゃあ、行くわ!」
【ドラゴンハーツ】を起動するクリティカル。 猛烈な眠気に包まれる。
「牢───爆発───ワイバー───気をつ───ん───ぞ……」
クリティカルはキュアの話を聞きつつ……フルダイブしてゆく。
◆◆◆
「───はっ、ココは……」
無事、【ドラゴンハーツ】の中に入ったクリティカル。 自分の身体を見下ろすと、薄汚れたボロ服を着ていた。
場所は檻の中ようである。
ついさっき、檻の中で酷い目にあうアクティビティをプレイしたばかりなので、軽くパニクっていると───
「───よう、お嬢さん。 アンタはどんな罪でブチ込まれたんだ?」
「え? わ、私??」
対面の檻に入る、ボロ服を着た囚人に話しかけられたクリティカル。 以前キュアに聞いた人相を確認し、「( ああ、そういえばココは【ドラゴンハーツ】だったんだわ )」 と、落ち着きを取り戻した。
「あ、貴方が兄が世話になった方ですね? どうも有難う御座います」
「はあ? あ、兄貴? いや……誰の事を言っているのかは知らんが───おっと、見張りが来た……ん? なんだ?
随分と騒がしいな?」
……やはり、未だ少々パニクっているのか───今一つVRの理解が及んでいないクリティカルが向かいの囚人に挨拶をしていると……クリティカル達が収監された部屋に別の囚人が飛び込んで来た。 同時に聞こえてくる爆発音。
この辺は、キュアから聞いた話通りだ。
「おいっ、魔物の襲来だ!
衛兵室がいきなりフッ飛んで、鍵束がオレの目の前に落ちてきやがった!?」
「なにィ!」
「さあ!
この混乱のウチにサッサと脱走しようぜ!」
「はっ、ハイ!」
怒涛の展開に、若干ついてゆけていない部分も有るが……この後、背後の壁が爆発するというキュアの話を思いだしたクリティカル。 朗らかに、「 夢の中で、一回死んだんだぞ 」 と笑うキュアを怒ったのは懐かしい想い出だ。
慌てて、囚人が鍵を開けた牢屋から脱出するクリティカル。
……直後、キュアの言う通りクリティカルのいた牢屋が爆発。 彼処に居たら死んでいただろう。
≪シークレットトロフィー 『 牢屋の爆発に、巻き込まれない 』 獲得。
SP 5ポイント贈呈!≫
「きゃっ!?
……ああ、コレが兄さんの言っていた頭に響く声ね?」
SPやスキルについてはキュアから聞いているが、今はどうしようも無い。
敢えて特別な行動はしない。




