55 村人、サメなんか知らない。
「にににに兄さん……!
魚……大っきな魚が…………!?
キバが、キバがぁぁ…………!!?」
「くっ、クリティカルゥゥゥゥゥ!?」
◆◆◆
【仮想現実装置】を始めるため、キュアも行ったVRに慣れるための操作を幾つかこなしたクリティカル。
キュアに比べ……クリティカルは難航していた。
クリティカルが、真面目にやっていない訳では無い。 キュアの魔法の謎について調べるのだ、真面目さでは寧ろクリティカルの方が上だったのかもしれない。
───が、良くも悪くも……キュアの方が子供っぽかったのが勝因か。 子供の遊びに対する集中力を舐めてはいけない。
「俺の方が子供……」
「じゅ……純粋って意味よ、兄さん!?」
「……まあ、いい。
次は簡単なアクティビティを数個選ぶ事になるが───」
「あっ、この沢山の絵ね?」
「ああ。 その中の 『 長い棒を持った男 』 の絵だけは……絶っっ対に選ぶな!」
「え……ええ、分かったわ兄さん。
この魚? の絵にしてみるわ」
クリティカルが選んだアクティビティは……パッと見、美しい珊瑚や色とりどりの魚の映像だ。
兄妹は【アジルー村】と領主館の間を移動した事しか無く、海を見たことが無い。
地下水を利用した井戸しか使わないので、川すら今日まで2・3度しか見たことがないクリティカルは……魚を領主館で調理されたモノしか知らない。
( 働き始めて間もないキュアは、未だに見たことが無い。)
「な、なんだか牢屋みたいな所に入れられたわ!?」
「な、なんだと!?」
キュアは【ドラゴンハーツ】にハマってから、他のアクティビティをプレイしていない。 なので、どんなアクティビティが有るか知らなかったのだ。
「み……水の中? に沈められて……こ、怖いわ兄さん!」
「俺がついているぞ、クリティカルゥゥゥ!」
もし領主館の各部屋が防音でなければ、問題になりそうな叫びである。 誰も、二人の部屋を訪れない事を祈るばかりだ。
「……あ、でも水の中は綺麗だわ……」
「そ、そうか……呼吸できるんだな?」
ちなみに、クリティカルが見ても気付けないだろうが……アバターは潜水スーツを着ている。
「あ、あの赤色のクニャクニャした石……領主様のお部屋に有るわ。
他のカラフルな石も綺麗……」
「く、クニャクニャ?」
まだこの部屋と倉庫、使用人が使う休憩室ぐらいしか移動していないキュアは、クリティカルの発する単語に警戒心しか抱けない。 石の魔物を連想したからだ。
( 後に領主に呼ばれたキュアは部屋で珊瑚を発見し、大層ビビる。)
「文献で見たことは有る……クリティカルは海に居るのかもしれん」
「こ、コレが海……素晴らしい所ね。 一度行ってみたいわね」
「給料が貯まったら、旅行も良いな」
「そうね………………あら?
今、大きな黒い影が───」




