5 村人、VRの基本操作を学ぶ。
≪脳波スキャン終了。
ユーザー登録が出来ました。
『今日は、ユーザー名キュアさん』≫
「うわっ、喋った……!?」
「喋っ……!?
大丈夫なの、兄さん!?」
約10分間、キュアの脳波とやらを計測していたらしい魔道具……【仮想現実装置】。
キュアは魔道具に興奮し。
クリティカルは久方振りに機嫌が良い兄に、表情こそ普通でありながら……内心では歓喜しながら会話していたので、御互いアッという間の10分であった。
「だ、大丈夫だクリティカル。
今まで【仮想現実装置】は、文字だけで意思表示してきたからな……」
「そ、そう……。
私には聞こえないけど……」
「とにかく終わったらし───ん?
≪ネットワークに接続できません≫?
……うーん、何かが足りなくて魔道具の全能力が発揮出来ないみたいだな?」
「兄さん、何か手伝うことはあるかしら?」
「いや。
分からない事は、この魔道具が自ら全部説明してくれるからな」
この【仮想現実装置】が、如何に脳に直接情報を贈る機械であろうと……全く言語が異なる人種に、完全対応出来る訳が無い。
……が、そんな事に気付ける訳のない二人は、そのまま会話を続ける。
「今は無いな」
「……そう、でも必要になったら何時でも呼んでね」
「ああ、有難う」
兄の役に立てれるかも……と思っていたクリティカルは残念に思いつつ、喜ぶ兄を邪魔するほど不粋でもない。
明日も早い彼女は、寝床につく。
◆◆◆
「───やった、勝ったぞ!
コレで 『ババヌキ』 とやらもマスターしたな!」
キュアの脳波スキャンを終えた【仮想現実装置】から問われた、
≪貴方はVRを初めて体験しますか?≫
という質問。
当然 「初めて」 と答えるキュアに、【仮想現実装置】が初心者用の簡単なゲームで操作法を教えるので慣れるまでヤッてみろと指示を出してきた。
空中に浮かぶキーボードに、文字を 『指』 あるいは 『思考』 で打ちこんでみたりする練習の他に、仮想の剣や弓矢を使ってみたり、不自然に眠らされ、夢を見たり。
今は空中に浮かぶカードゲームで遊んでいる。
幾つかのゲームを通じ、VRに慣れて【仮想現実装置】の出した操作課題ゲームを全てクリアしたキュア。
≪インターネットに接続せずに使えるアクティビティは、以下の通りです≫
キュアの目の前には 『絵』 が40個ほど並び、うち10数個にだけ色が付いて、残りは全て白黒であった。
絵の事を 『アクティビティ』 と呼び、色の付いた 『アクティビティ』 のみ遊べるらしい。