44 村人、和む。
「毎度ありぃ」
「ああ、有難う」
道具屋ガンヒルを出たキュア。
入る前は現実的じゃないアレコレに、中々入店を躊躇っていたが……実際入ってみれば、かなり有意義だったと満足する。
「収穫は───」
1.回復薬を始めとした正体不明の道具の使い方を知れた。
2.邪魔な所持品を換金できた。
3.有用そうな薬や、『霧の杖』を買えた。
4.リザルト、イベントボードを知れた。
5.黒鼠教の存在、魔法の杖の集め方を知れた。
6.人間の神『光燐教』と、回復魔法を使える『指輪』を知れた。
主にこの6つ。
「ケビンの祖父の魔法屋に行く序でに、光燐教や黒鼠教も探すか」
キュアの……その表情はノンビリとしたモノだ。
【ドラゴンハーツ】を始めて間も無いころなら、キュアはもっと慌てていたかも知れない。 夢の中とは言え……キュアにとって魔法を使うとは、それ程の大事だからである。
しかし今は……クリティカルとの蟠りも無くなり、定職に就け、【アジルー村】でクリティカルを害する人間も居なくなった。
無論、魔法への情熱を失ったワケではないが……魔法を使う為に【ドラゴンハーツ】に入るのではなく、【ドラゴンハーツ】をしたいから入るのだ。
魔法集めは重要だが……【ドラゴンハーツ】に有る、魔法以外の要素も楽しみたいキュアだった。
◆◆◆
「ん?」
マップボードの見方も覚え、順調に進むキュアは……マップボードの北東に突然ワケの分からぬ記号が出現した。
強いて言うなら、モヤっぽい。
「行ってみるか……」
近付くにつれ、モヤが形を持つ。
地形の所為で遠回りになり、距離が離れるとモヤが消える。
距離にして500mぐらいがモヤの出現する条件っぽい。
「見えた、あの建物か?」
建物に近付くキュア。 残り10mぐらいでモヤが金槌の形に変化。 と、同時に『鍛治屋デンダ』と名前が付いた。
「鍛治屋デンダ……」
残り0m。
キュアが敷地に入ったとたん、鍛治屋の扉が勢いよく開く。 中から出てきたのは20歳……に僅か足らぬぐらいの女性。
「そこまで言うなら、女でも打てるって証明してヤるわよ! クソ親父!!」
「へんっ、バカ娘が! 女なんざ『北連山の鍛治堂』に近付くことすら出来ずにヘバっちまうよ!」
「言ったわね、クソ親父! 女で『北連山の鍛治堂』に辿り付いたら……アタシも鍛治師って、認めて貰うわよ!?」
言って、女性は建物を飛び出しキュアにぶつかりそうに成った事すら気付かない様子で北に駆けてゆく。 そのサマを 「 けっ 」 と言いながら見つめ続ける父親らしき男性。
そして……男性の頭の上に、例の『?』が現れていた。