42 村人( ? )、笑う。
「【仮想現実装置】か……」
色々あって、肉体的・精神的に疲れていたキュア。 だが……【仮想現実装置】を見て、一気に疲れが吹き飛んだ心地である。
「あ……でも領主様にも、内緒になさったと言うなら───領主館内では使えないか……」
「ソレは大丈夫よ、兄さん。
この部屋は私たち兄妹の部屋と、領主様が決めたのなら……緊急時以外誰も来ないわ」
「そ、そうか?」
「ソレに……動けない兄さんを守る為、私が扉近くで防壁魔法を張りながら寝むるつもりだったし。
一晩ぐらいなら魔法を使い続けても平気って知っているでしょ?」
「そう……か。
迷惑をかけるな、クリティカル」
「ソレは言わない約束よ、兄さん」
ちなみに、領主は最初……クリティカルの部屋は、キュアの部屋と別に用意していた。
レイグランにも、兄弟は居る。
だが……貴族などは、産まれた時から両親兄弟とも別の部屋なのは珍しくない。 レイグラン家も、そうである。
その常識ゆえ、クリティカルの部屋を用意していたワケだが……。
せめて夜は、動けぬキュアの護衛を自分が付きっきりでする───と、クリティカルは言って聞かなかったのだ。 怖い笑顔で。
斯くて……クリティカルは、自分の部屋を失った。
「……クリティカル、オマエは俺の一番大事な宝だ」
「そんな……♡ 兄さんったら……♡」
クリティカルは心の中で、「 そんな……兄さん、私たち……兄妹なのよ♡ 」 とか思っていない。 ……いない。
「その事に気付かせてくれた【仮想現実装置】も、大事な宝だ!」
「……デスヨネー」
いない。
「実は【ドラゴンハーツ】は、もう直ぐ魔法屋で『魔法の杖』の正体が分かる所だったんだよ」
「魔法の『杖』……?」
「ソレを魔物騒ぎで起こされてなあ……」
「───ね、ねえ……兄さん?」
「ふぁ~……ん? なんだ、クリティカル?」
「魔道具の中の……【ドラゴンハーツ】? だったかしら?」
「……ああ」
「その中で……夢の中で、兄さんは魔法が使えるって言っていたわよね?」
「…………そう……だな。 ……せめて夢の中だけで魔法を使いたい…………と思い、【ドラゴンハーツ】を……遊び初めたんだ……───」
「まさか……その夢の魔法と、兄さんの魔法───何か、関係あるんじゃないかしら?」
「…………スゥ……スゥ」
丁度、キュアが【仮想現実装置】のフルダイブのシステムを起動したのと同時に語りかけ始めたクリティカル。
クリティカルの言葉の途中で、キュアは【ドラゴンハーツ】へとダイブしてゆく。
◆◆◆
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「…………くそ。
……くそっ、くそ、くそくそくそくそ、糞ったれェェェェェェェェェェェ!」
深く、暗い、森の奥。
右腕を、肘から無くし呻く男。
───辺りに撒かれた、その夥しい血の量は……例え医者でなくとも、男が何故未だに死なず生きていいられるのか……疑問に思う程。
それは出血死……という意味でもあるし───なぜ、血の匂いに肉食獣が寄って来ないのか……という意味でもある。
まるで……血の下には、肉食獣よりも恐ろしい存在が居るかの如きである。
……無論、呻いているこの男の事では無い。
「キュアぁぁ……!
殺してやる、殺してやるぞっ!!
……クリティカルもだぁぁ……!
あんな屑を選ぶと言うならクリティカルも殺す!!」
然れど自分に、そんなチカラが無いのは……極限に愚鈍であるこの男ですらも、薄々気付いてはいた。
「くそっ……どうやって、あの糞兄妹を殺す……?」
≪───そのチカラを授けましょうか?≫
「あ……ああんっ!?」
痛みと怒りと……恐怖に、男の精神状態が劣悪に歪む最中───男は、声を聞いた。
幻聴か? そう、男が思いかけた時……頭上から声が再び聞こえる。
≪───そのチカラを授けましょうか?≫
「だ、誰だっ!?」
男が見上げた先に居たのは、全身が燃え盛る……鳥。
≪───そのチカラを授けましょうか?≫
「…………チカラ……くれるのか?」
≪───そのチカラを授けましょうか?≫
「……寄越せ! あの兄妹を殺せるチカラを!」
≪───チカラを、授けましょう≫
その、火のような鳥が一瞬強く燃え盛ると……男の、失った右腕部分から『炎の腕』が生えてくる。
「……!? す……凄い、このチカラは……クリティカルを超える……!
コレなら……コレなら、あの兄妹を殺せるぞ!」
≪……我が主を、強くする為に≫
「ああ……中々だぜ、オマエ!
もっとオレ様を強くしやがれ!」
深く、暗い、森の奥。
狂気に染まった男の笑い声と、炎の爆ぜる音だけが響いていた───
一章、終了です。
ヘイトキャラは、さっさと○せ!
という方は申し訳有りません。
彼は二章ラスボスで・・・・す。




