41 村人、( 暫くの間 ) 村人じゃ無くなる。
「……キュア君」
「は、ハイ!」
「一応、聞いておくが……自分が魔法を使った事について───心当りは無いのかね?」
「あ、有ったら魔ナシなんて呼ばれていませんが……」
キュアは、教会から魔ナシ認定を受けようと……こっそり魔法練習はしていた。 万が一アシッドに見つかりでもしたら、酷くバカにされる行為だ。
日本人の感覚だと、カ○ハメ波の練習を見られるようなモノ。 そしてソレだけ使えるハズの無いモノなのだ。
「そうか……だが意識だけはしておきたまえ。
もし教会関係者の前で、キュア君が魔法を使ったら───」
「ぐっ……」
「取敢ず、この屋敷の人間は心配しなくて良い。 まあ、貴族と教会はソレなりにワケ有りでな。
治るまで、安心して休むといい」
「は、はあ」
「今のキュア君の症状は、儂付きの医者にも分からんかった。
魔力欠乏に近いらしいが……もしそうなら全治三ヶ月といったトコロか」
「そ、そんな……三ヶ月も御世話になど───」
「だが【アジルー村】は今、兵士や検察監察いろんな人間が出入りしているぞ?
君等とて最早、出入り出来んのだ」
「い、家に帰れないんですか……」
【アジルー村】は田舎、かつ、小さな村である。
それでも。
村人のほぼ全員が逮捕となれば、ソコソコの事件だ。 各組織の複雑な権力図も相まって、ソコソコにチカラを入れている。
住人であろうと、平民など……【アジルー村】には入れなく成っていた。
「宿の手配も出来るが」
「ではクリティカルの分だけ……」
「もう、兄さんっ!」
「はは、兄妹仲が良いのは善いことだ。 まあ、今日一日は泊まりたまえ。 というか、もう既に二日泊まっているのだがな」
「ええっ!?
…………す、済みません」
貴族でありながら、魔ナシに差別を持たない人柄よろしく……レイグランは笑いながら部屋を出てゆく。
兵士達もレイグランに付いてゆき、部屋にはキュアとクリティカルの二人きりとなる。
「兄さん……」
「クリティカル……済まないな。
俺がもっと上手くやっていれば……」
「そんな事言わないで、兄さん。 兄さんは、コレ以上無く素晴らしいの」
「……そんな事ないさ」
「………………。
そうだ。 兄さん、村へ村人の検分へ行った時……序でに家の物を幾つか持ってきたんだけど───」
言って、クリティカルは部屋の角に置いてあった箱や袋のトコロへ行く。 クリティカルが一つの袋から取り出したのは……。
「【仮想現実装置】!?」
「私にとっても、この魔道具は大事な物だもの。
領主様にすら秘密で持ってきちゃったわ」
「そうか……有難う、クリティカル」




