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405/420

405 村人、親教会派について会議する。

 

「全ディメイションモンスター、奴等(親教会派)の形跡を見つけられませんでした」


「そうか」




 己だけに見える複数のスクリーンボードを確認し、場の人間に報告するヘイスト。 彼女は、教会軍軍隊長を求めてレイグランの下に乗り込んできた親教会派貴族の男を探していた。

 貴族は、『盟主サジラ・グヌ・セドラーの裏切り行発行為覚』 と 『レイグランの変身』 という……散々にして無茶苦茶な目にあい、這う這うの体で逃げ帰ったようだ。


 だが現在のコタリア領には彼等以外にもアシッド等創造神の妹と四天王たちといった問題が数多山積している。

 そこで一旦領主館主要メンバーで集まり、其々の現状報告とコレからの行動指針を会議することと相成った。 当然メンバーの中には身分や役職など関係無く、キュアやヘイストも居る。




「連中……完全に撤退したのでしょうか?」


「あれは所詮、サジラ・グヌ・セドラー殿に丸め込まれた誇大妄想者どもに過ぎん。

美辞麗句に酔い痴れておるだけよ」




 大言を吐けど中身はスカスカ。 教会の、王公貴族の、シン王国の、世界の、そういった平和の為にと嘯いておきながら───実際には、『革命』 とか何とかそう言う 『カッコ良さげな言葉』 に憧れているだけの (中二病) (みたいな) 連中なのだ。 有言()実行を地でゆくのである。

 彼等にレイグランと戦争してまで掲げたい御大層な 『志』 など有りはしない。 本来ならパニックを起こさねば、攻撃することも出来なかっただろう。




「氏は、軍隊長が既に処刑されたこと……引いては、彼等に自分の裏切り行為がバレるのを承知でレイグラン様の下へと寄越したのでしょうか?」


「おそらくはな。

アレ等に館で喚かせ、街中を我が物顔で闊歩させ、儂等が気を取られている隙にアシッドたちが軍隊長を蘇らす手筈だったのだろう」


「しかしヘイストが奴等を早期発見し、キュアが四天王の企みを限定的ながら潰した……と」




 親教会派貴族は、もしかしたら本当に混乱させる意図は無かったのかもしれない。 それだけ、非常識な言動が目立つ男であった。 自分の異常に自分で気付いていないタイプである。

 だからこそサジラ・グヌ・セドラーに、体の良い駒として利用されたのだろう。




「故に手下たちからは、明確な敵意が感じられ無かったのですね」


「うむ」


「して……キュアよ。

既にクリティカルやヘイストたちから、件の四天王とやらの話は……一応(・・)聞いているのだがな。

もう一度、お前のクチから聞きたい」




 微妙な顔の執事コリアンダー。

 愛する男が燃え盛る処刑場に突っ込み、怪人に殺されかけた彼女等から……説明は受けてはいるものの、やはり支離滅裂というか感情的に成り過ぎていた。

 幸い本人のキュアは荒事に慣れっこであり冷静である。 そんな彼のクチから改めて説明が欲しかった。




「斯々然々……。

ソレで魔石を奪った謎の少年が、教会軍副隊長……バリアを生け贄にしようと企んでいた所を───」


「───其処からは私も説明しましょう」


「「「……っ!?」」」




 キュアが処刑場地下での出来事を説明し始めると、突如胸ポケットから木漏れ出る光。 皆がギョッとする中……美しい立方体がフワリと飛び出てきた。 更にその中から一人の美女が出現。【ドラゴンハーツ】のキューブの中に居た【魔神城の鍵】───分身朱雀である。

 キュアは街中を彷徨く親教会派の思惑も分からなかったので、不測の事態に備えて彼女をキューブに戻して肌身離さず持っていたのだ。




「す、朱雀様……」


「若干ではありますが、彼の少年の正体に心当たりが───」


「───いやあぁぁん!?

朱雀ちゃんカ~ワイィ~~♡」




 緊迫した事態に緊張感ある会議の中、突如気の抜けた声。

 朱雀の姉、クミンだ。

 何がツボに入ったのか、会議そっちのけで【魔神城の鍵】の朱雀に駆け寄り頬擦りし始める。 心底嫌がる朱雀だが……分身体ゆえ神の格が違う。 押し返すことが出来ず、屈辱のされるがままであった。




「ねぇねぇ、キュアぁ?

この【魔神城の鍵】っての、もう1つ無あい?

アタシも朱雀ちゃんとお揃いの分身体を作ってみたいわぁ♡」


「す、すみません。

貴重な道具アイテムなので」


「……謝る必要など在りませんよ、主様」




 クミンは妹が大好きらしいが……妹である朱雀の方は、ある意味自分たちを裏切り出奔した姉を信頼していない。




「クミン、今は大事な話の最中ゆえ静かにな」


「はぁい♡」




 会議そっちのけで分身朱雀に頬擦りするクミン。 彼女は神であり、頭も悪くは無い。 が……あまり細かい事には向いていない。 領主であるレイグランの秘書なれど、こういった場では正直役には立たないのだ。

 クミンの扱いに慣れたレイグランは軽く嗜め、先を促す。




「して……朱雀様、先程言いかけた 『謎の少年の正体』 とは?」


「私も確信が有る訳ではありません。

飽くまで、心当たり程度です」


「それは……?」


「彼の少年は───

【仮想現実装置】( パーシテアー )との関連が予測されます」


「ぱ、【仮想現実装置】( パーシテアー )と!?」




 魔ナシとして生まれたキュアの人生を変えた魔道具。 奇想天外な夢を見せる兜。 神の如きチカラを与える奇跡。 領主館関係者ならば誰もが知る……然れど、館外には知られてはならぬ秘宝である。

 その秘宝と───キュアから精霊の遺骸たる特別な魔石を奪い逃走、復活したアシッドと共に教会軍軍隊長を蘇生させた謎の少年の正体を繋げて語る朱雀。

  

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