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39 村人、事情を聞く。

 

元38・39話を、再編成して38・39・40話に別けました。

ストーリーは変えていません。

 

 

「で……キュア君、何か思いだしたかね?」


「い、いえ……」


「【アジルー村】は問題ない。 面倒は有るがな。

……問題は君だ」


「領主様!?」


「クリティカル、良いんだ。

俺は父さんと母さんに恥じる事なくオマエを守った。

傷害罪だろうと騒乱罪だろうと、大人しく受けとめます」




 キュアは、クリティカルを守るため……相当数の人間を斬った。 正当防衛ではあるが、イチ村人の許容範囲を超えている。

 領主や裁判官が 「 酷すぎる 」 と判断すれば、累積で死罪すら有りうるのだ。




「二人とも慌てるな、ソチラでは無い。

寧ろ、よくぞクリティカル君を守ってくれた」




 領主としての立場が有るので、頭こそ下げないが……たかが平民、しかも魔ナシに礼を言う領主。

 キュアは恐縮頻りだ。


 そして、今更ながら気付く。


 今まで、見た事すら無いような高級ベットに臥せたままのキュア。 自分の足下で立ったまま語る、貴族にして領主のコタリア・グヌ・レイグラン。


 慌てて起き上がろうとするも……身体が殆んど動かない。


 両親が死んでからは、新しい物はクリティカルに、古くなった食材は自分が食べていたキュアの密かな自慢は病気になった事が無い事。

 疲れ果てても、一晩寝れば回復する。


 怪我でも無いのにこんな動けないのは産まれて初めてだ。 ソレでも無理してベットから起き上がろうとするキュアを、レイグランは止める。




「今は休めよ。 そのままで聞くがよい」


「……わ、分かりました」


「問題とは、キュア君が魔法を使った方だ」


「………………。

……俺が、その、魔法ですか?

い、いくら領主様の御言葉とは言え───」




 領主の余りに訳の分からない冗談に……キュア思わず、クリティカルの方を見ると───クリティカルは、困ったように笑う。




「私も、アシッドも、【アジルー村】の人間全員も……兄さんが精霊───しかも火の鳥を召喚したのを見たわ」


「く、クリティカル?」


「貴族である儂も、【アジルー村】に残る莫大な火の魔力を確認しておる。

紛う方無く、キュア君は魔法を使ったのだ」


「……………………」




 クリティカルと領主様、二人の言っている意味が分からない。 俺が? 魔法を? 試しに魔法を使おうと、魔力操作しようとしても───魔力は欠片も動かない。




「は、はは……ほら見ろクリティカル。

俺に魔力は無い。 恐怖のあまり、幻覚でも見たんだよ」


「兄さん……」




 魔力を操ろうとしても、キュアの中に魔力するは無い。 空気中に漂う魔力を操作する技術も無い。




「そもそも、人の身で火の鳥など……一杯のコップに、湖全ての水を容れるが如き。 有りえぬ。

キュア君の魔法は……我々と、全く別のことわりなのであろう」


「兄さん! 兄さんはコレで、魔ナシなんて馬鹿にされずに済むのよ!」




 ……が、ソレでもクリティカルと領主の表情は変わらない。

 困惑、思案、畏怖、羨望。

 キュアの人生で、余り向けられた事のない表情ばかりだ。

 

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