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380 村人、ピン撥ねされる。

 

「俺は……俺たち魔ナシは、世界の 『都合』 の為に作られた?」


「そうねえ……。

他の人間たちが魔法を使うのに使用してる 『回路』 を、アナタたちは世界から強制的に徴用されてるって言えば分かりやすいかしらあ?」


「…………申し訳ありません、主様。

本来この情報は主様の成長と共に、心身怪しめぬよう段階的に御伝えする予定だったのですが……」


「…………。

いや……確かに驚いたし、怒りや悲しみも有るけど……俺には皆が居るからな」




 キュアが差別され続けてきた魔ナシの正体。

 それは、この世界(宇宙)が用意した便利屋だったと聞かされ……ショックを受ける。

 だが不幸中の幸いか。

 良くない意味でのショックの連続だったキュアの人生、耐性は付いている。 怒り狂ったり鬱に陥ったりはしない。 強がりでもなく言葉通り、今のキュアにはたくさんの理解者が居るのも大きいだろう。


 しかし。 敬愛する兄への承認欲求が強いクリティカルは、彼がただ利用されているだけという現状が我慢ならない。




「兄さん……兄さんはそれで良いの!?

楽土とやらは分からないけど、朱雀たちの言葉を信じるなら……世界中の人々はもっと兄さんたちに感謝すべきなんじゃない!」


「其うですよ、主様の妹。

楽土が完全に崩壊してしまえば……其れは此の世の地獄。

精霊だけではなく、人間も藻掻き苦しみながら死滅してゆく事でしょう。

本来なら人間の王如きなど、精霊王(主様)に平伏すべき存在なのですから」


「ならっ───」




 涙を浮かべるクリティカルに、キュアは頭を撫でながら。




「世界に魔法を徴用されてたってのは───

要は、いくら働いても給料をピン撥ねされてたのと同じって事だろ?」


「…………。

……………………ん"ん?

そ、そうなのかしら???」


「利用してきたってんなら、アジルー村の連中がしてきたか世界がしてきたかの違いさ」


「でも……」


「さすが主様。

世界の仕組みの要点を、見事押さえております」


「…………朱雀ちゃあん」




 規模が違いすぎる……と言いたいクミンだが、朱雀が賛同したので敢えては言わない。 天然の扱いは慣れた妹に任せよう、そう決めた神様。

  (妹も、ホントは) (面倒くさく為った) (だけなんじゃあ……) (とかは言わない。)




「それに……魔ナシの正当性を世界中に訴えるには、俺が教会の頂点に立つとかしなきゃいけないんだろう?」


「ええ、()のチカラならば容易い事。

───成されますか?」


「いいや……他の魔ナシには悪いけど、柄じゃない。

義理もないしな」




 キュアは別に正義の味方ではない。

 己の手に余る案件を安請け合いした結果、要らぬ厄介事を招き……クリティカルたちに何か有ったとしたら───そう考えれば、彼等に同情こそしても所詮は見知らぬ誰か。

 そんな博打は出来ない。




「『そこ』 は、ちゃんとしてるのねえ」


「クミン様……?」


「アタシの言う、『歪な人間』 とは 『出来る事と遣るべき事』 を混同してる人の事よお」


「出来る事と遣るべき事……」


ココ(領主館)の皆は、『教会憎し』 と 『レイグラン様への忠誠心』 を混同していたわあ」


「「「…………」」」




 悔しいかな、クミンの言わんとする事は教会軍との戦いを経験し、理解しだした使用人たち。 憎い教会への鬱憤を、ある意味ではレイグランに依存する事で押しつけていたのだ。




「教会が憎いのは分かるしい、レイグラン様を尊敬してるのも分かるわあ。

でも混同は駄目よお、それは人間としてとても歪だわあ」


「「「…………はい」」」




 領主館首脳陣の一人として、神としての言葉。 意地を張っても仕方あるまい。 この場の使用人たちは、完全に納得した訳ではないものの一先ず頷く。




「……そう言えば、『そこはちゃんとしてる』 ってどういう意味ですか?

決闘の最中…… 『俺を許せない』 ───と」


「それはあ……館内で話しましょうかあ」


「え?」




 キュアの問いに答える代わりに、クミンは広場の外れを身遣る。 視線の先に居たのは……。




「リカリスさん……?」


「クミン、レイグラン様がお呼びです」


「はーい。

当然、キュアもでしょお?」


「ええ。

キュアさん、貴方もレイグラン様がお呼びしていますよ」


「は、はい」




 メイド長リカリスが、知らぬ間に一堂を見守っていた。 執事コリアンダーとの会議を終えたレイグランがクミンとキュアを呼んでいるという。




「───と、言うか……来れる使用人全員をお呼びですけどね」


「「「え……? オレ等も?」」」


「あらあ……?

レイグラン様ったら、もう発表する気かしらあ?」


「クミン様?」


「まあ、行きましょうかあ。

朱雀ちゃん、アナタも来なさあい」


「……馬鹿雷、何を企んでいるのです?」


「決まってるじゃなあい」


「「「???」」」




 微笑むクミン。




「『夢を見せる兜』 について───よ」



◆◆◆



「リカリスう?

もしかしてアナタ……アタシの正体に気付いてたあ?」


「まさか。

ただ、其処らの王族程度ではない……そんな底知れなさは感じていましたが」


「コリアンダーは気付いてなかったのにねえ。

魔力も政治勘もアナタより彼の方が上だけどお……こういう所はやっぱ女の勘ねえ」




 リカリス先導の下、領主館内に入ったクミン以下キュアと使用人たち。 だがレイグランの居る部屋へ向かっているのはリカリス・クミン・キュア・クリティカル・ヘイスト・朱雀のみ。

 他の使用人たちは、気遅れと……己等の 『歪』 と向き合うため辞退した。 敬愛する主人とは会いたいが、思う所は有るし……何よりキュアたちの話を邪魔しない方が良いと判断したようだ。

 レイグランも、それは想定内だったらしく領主命令の辞退を申し出た彼等を咎めない旨をリカリスに通達していた。




「クリティカルう?

アナタはその辺、筋は良い方だけどまだまだ御子ちゃまよねえ」


「なっ……!?」


兄好き(ブラコン)も良いけどお、そんなんじゃあ女の勘は磨かれないわよお?

ヘイストお、アナタもねえ」


「じ、自分はキュアと共に 『旅立った』 ので大丈夫です」


「あらあ?

アナタ、長期外出なんてしてない筈だし……まさか朱雀ちゃん、無茶したあ?」




 世間話のようにケラケラと笑いながら語るクミンに対し、ずっと険しい表情の朱雀。




「馬鹿雷……神のチカラを封印していたにしては、随分と事情通ですね?」


「これを使ったのよお」


「其れは……魔道具ですか?」


「『電話』 って魔道具よお。

電波塔の無い現代文明じゃあ故障扱いだけどお、雷魔法を使えるアタシなら王族程度の魔力でも長距離会話が出来るのよお」


「…………さっきから王族程度って……さすが神様同士だなあ」




  (暇を持て余した) 神々の (遊び) 会話を、呆れながら横で聞くキュアたち(人間)

 そんな内に、レイグランの待つ部屋へ。

  

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